今月の特集

2015年01月2015年の為替相場予想。1ドル=130円を目指すのか

2014年の回顧

黒田バズーカ

2014年は、ドルが全面高、円が全面安の展開でした。米国と、日欧やその他の国との景況格差や金融政策の方向性の違いが鮮明になりました。とりわけ、年後半にその傾向が顕著に現れました。

米FRBは10月にQE(量的緩和)を終了し、2015年半ばごろの利上げが視野に入ってきました。一方、日銀はFRBのQE終了とほぼ同じタイミングで追加緩和(「黒田バズーカ2」)に踏み切りました、また、ECBは6月以降に相次いで追加緩和策を打ち出すとともに、年末にかけてドラギ総裁がQEの実施に向けて前向きの姿勢を示しました。また、年後半には、原油を中心とした資源価格が大きく下落し、資源国通貨や高金利通貨は対ドルで総じて軟調に推移しました。

2015年の展望

2015年の世界経済は、2014年の基調を受け継いで始まりそうです。そうであれば、通貨の序列は、米ドル>英ポンド>資源国・高金利通貨>ユーロ>円(または円>ユーロ)となりそうです。これは、現時点で市場が織り込む2015年前半の利上げ確率の高い順番と概ね一致しています(下表、ただし、日銀は政策金利に目標を設けていないので利上げ・利下げの確率を求めることはできません)。ECBや日銀が追加緩和に踏み切れば、そうした流れに拍車が掛かりそうです。

金融政策の市場予想

ドル円は、リーマン・ショック前の高値である124円台の壁は厚いとの見方が強いですが、米景気や株価の堅調が続くようであれば、それを超えて、130円を目指す展開もあるかもしれません。ユーロドルは、1.2ドル割れからパー(1ユーロ=1ドル)に向けて下落を続ける可能性もありそうです。1.2ドル割れが定着するようなら、ユーロ開始直後の99-2003年を除けば初めてのことになります。

ただし、米FRBの利上げ観測が高まる局面では、少なくとも短期的にリスクオフの動きが強まって、株式を含めた金融市場のボラティリティ(変動率)が高まるかもしれません。その場合、ドルは概ね強含みそうですが、対円では軟調な展開となりそうです。その他にも、ロシアやベネズエラなど産油国のデフォルト(債務不履行)ギリシャ政治の混乱英国総選挙でのEU離脱派の躍進米政府と議会の財政バトル再発中国の不動産バブル崩壊など、現実となれば市場をかく乱する潜在的なリスク要因は散見されます。

【2015年の注目点】

●米国の利上げのペースが相場材料に

米国の利上げ開始は「2015年半ばごろ」というのが概ね市場のコンセンサスになっていますが、その後の利上げのペースについてハッキリとした見方はないようです(もちろん、利上げ開始時期の予想も今後の状況次第で大きく変わるかもしれません)。「FOMCのドット(参加者17人それぞれの各年末の政策金利予想)」をみれば、金融政策の当事者たちですら、見解はバラバラです。

仮に「中央値(上からも下からも9番目の予想)」の通りだとすると、政策金利は2015年末に1.125%、2016年末に2.5%です。1回の利上げが0.25%幅だとすると、2015年後半の4回のFOMCのほぼ全てで、また2016年の8回のFOMCのうち5―6回で利上げが実施される計算です。現在のほぼゼロの金利(0-0.25%)からすれば、かなり「アグレッシブ」な利上げと言えそうです。そうした利上げに株価が耐えられなければ、リスクオフが強まるかもしれません。逆に、それほどの利上げが出来なければ、金利先高感の後退からドルのサポートは弱まるかもしれません。

FOMCのドット

●ギリシャ政治の混迷で、欧州債務危機再び?

ギリシャ

1月25日の総選挙で、ユーロ体制下での財政緊縮に強く反対する急進左派連合(SYRIZA)が躍進しそうです。SYRIZAが過半数の議席を獲得、あるいは連立工作に成功して与党となれば、「ユーロ離脱」観測が強まってユーロ安要因となりそうです。また、どの政党も与党になれずに再選挙となるならば、政治的空白が長引いて、やはりユーロ安要因でしょう。

後者のケースは、2012年5月の総選挙から6月の再選挙に至る約1か月半を想起させます。欧州債務危機のただ中にあった当時と異なり、支援体制が整備されているので、危機が他の国に伝播する、いわゆる「コンテ-ジョン」は回避されるかもしれませんが、政治の不安定はユーロを買う材料になりそうもありません

また、今年早々にも国債等の購入というQE(量的緩和)に踏み切ろうとするECBの判断にも影響が出るかもしれません。

●消費税の物価押し上げ効果は消滅、日銀の「展望レポート」で追加緩和観測も

昨年10月の追加緩和後に、安倍首相が消費税再増税の先送りを決断したことで、ハシゴを外された形となった黒田日銀は、もともとの「戦力の逐次投入はしない」方針もあって、2015年の早い段階で追加緩和に踏み切る可能性は低そうです。ただ、今年4月の消費税増税の効果がはく落することで、消費者物価(前年比)は4月以降、1%程度か、それを下回りそうです。原油安が物価にさらなる下押し圧力を加える可能性もあります。

年前半の鍵は、日銀の4月の「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」かもしれません。昨年10月に「2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高い」とした展望レポートの見通しが後ズレするようなら、追加緩和の観測が強まるかもしれません。

FOMCのドット

●原油など資源価格下落の影響は?

原油

昨年夏まで1バレル100ドル前後で推移していた原油価格(WTI先物価格)はその後大幅に下落し、足もとでは50ドルを割り込んでいます。原油だけでなく、鉄鉱石などの資源価格も下落が顕著です。

資源価格の下落は、産出国にとって経常収支の悪化要因であり、基幹産業が打撃を受けることで、経済にマイナスに作用します。カナダであれば原油、豪州なら鉄鉱石、ニュージーランドなら乳製品、南アフリカなら金などの価格動向が重要でしょう。

一方で、原油などの資源を輸入に依存する先進国や新興国にとって、それらの価格の下落は経常収支の改善や生産コストの低下、ガソリン安などを通じた消費者の購買力の上昇などを通じて、経済にプラスに作用します。ただし、資源価格の下落は物価の下押しを通じて金融政策に緩和方向の圧力を加えるので、金融政策見通しの変化が大きい国の通貨は売られやすくなるかもしれません。例えば、日本やユーロ圏では追加緩和期待が高まりそうです。トルコも資源価格下落の恩恵を大きく受ける国ですが、利下げ観測が出てくればトルコリラの頭を押さえるかもしれません。

なお、2005年以降の原油価格とドル実効レートの間には、強い逆相関がみられます。つまり、中期的な経験則は「原油安=ドル高」です。

ただし、生産コストの低下など資源価格下落のプラス効果は発現に時間がかかるうえ、なかなか見えにくい一方で、資源企業の収益悪化やファンドの損失、資源国の債務不履行(デフォルト)懸念などマイナス面は見えやすいため、とくに価格の下落が急ピッチであるほど、短期的に市場のリスクオフを促しやすい点には注意が必要でしょう。

<原油安の影響については、1月7日付スポットコメント「原油安の為替相場への影響をどう考えるべきか」をご参照ください>

FOMCのドット


(市場調査部)

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