今月の特集

2014年12月「アベノミクス選挙」後に為替と株はどう動く!?

「アベノミクス選挙」か「大義なき選挙」か!?

第47回衆議院選挙が2日に公示され、選挙戦がスタートしました。

衆議院解散・総選挙が決まった11月21日の会見で、安倍首相は今回の衆院解散を「アベノミクス解散」と位置づけました。安倍首相と自民党は「アベノミクスの是非」を今回の衆院選の争点とする一方、野党からは「大義なき解散」「何となく解散」など、争点が見えず、解散・総選挙を行う意義そのものが無いとの批判が相次ぎました。

アベノミクスの重要な柱のひとつである「財政健全化」に大きく関わる「消費税再増税」の是非を問う選挙ならまだ分かるが、再増税先送りを決定したうえでの解散・総選挙では、順番が逆ではないか、との批判です。また、2016年12月には衆議院議員総選挙が予定されていたこともあり、「解散・総選挙よりもアベノミクスの推進に力を注ぐべきでは」との意見も聞かれ、道半ばでの解散・総選挙には「唐突感が強い」との印象を受けます。

ただ来年9月に自民党総裁の任期満了(第1期)を迎える安倍首相としては、消費税再増税で民間消費が冷え込み、景気が一層悪化する懸念から、今のうちに「総理・総裁のイス」を確保しておきたいとの意図があったと推測されます。今回の選挙で(途中解散がなければ)衆議院議員の任期は2018年12月となり、(自民党内での信任が保てれば)安倍総裁の第2期の任期満了である2018年9月まで、衆院での与党の勢力、ならびに安倍首相・自民党総裁の職を保てる計算となるからです。

2018年9月まで安倍首相ならびに「アベノミクス」に、日本の行く末を託すか否かを問う、というのなら、それはそれで「大義」といえるかもしません。ただ、2期連続GDPマイナス成長や消費税増税先送りなどのインパクトが強いために、そうした意図が伝わりにくいことに加え、集団的自衛権、秘密保護法制、原子力発電所の再稼働など懸案が山積みで、争点がぼやけてしまう可能性も考えられるでしょう。野党は与党の「政治とカネ」の問題に言及する構えで、選挙結果にも少なからず影響を与えそうです。

キーワードは「絶対安定多数」

衆議院解散・総選挙の方針が決まった11月18日の会見で、安倍首相は衆院選の勝敗ラインを「与党で過半数」と明言し、自民党内に波紋が広がりました。与党の衆議院での現議席数は326議席(11月18日時点)ですから、もし公明党が現議席(31議席)を減らさないとすれば、自民党は119議席失っても衆議院の過半数(475÷2=237.5で238議席以上)を与党で獲得できる計算となり、首相の目標は「最大119議席減」ということになります。

自民党内からも「そこまで自信がないのか」と不満の声が噴出したため、自民党・谷垣、公明党・井上の両幹事長など与党幹部らは19日、目標を「270議席以上」と上方修正し、事態の収束を図りました。

その際にキーワードとして浮上したのが「絶対安定多数」です。
「絶対安定多数」とは、「全ての常任委員会で委員の過半数を確保し、かつ各委員会で委員長を独占するのに必要な議席数」であり、「委員長決裁に頼ることなく法案の委員会通過を可能にする」議席数です。ちなみに今年12月以降の衆院選以降の「絶対安定多数」は266議席ですから、先日の与党幹部による獲得議席目標「270議席以上」は「絶対安定多数」をやや超える議席数、といえます。上記の仮定と同様に、公明党が現議席を減らさないとすれば、自民党は「最大87議席」まで失っても与党で「270議席以上」の目標を達成できる計算となります。

それでは、自民党は「議席減」をどの程度に抑えられそうなのでしょうか?
一部の永田町ウォッチャーは「30―40議席減」と予想、大手新聞紙の識者へのアンケートでは「54―95議席減」と、バラつきが大きく、予断を許さない状況です。

ただ、平成元年以降に行われた衆院選では、民主党大勝・自民党大敗となった2009年8月の第45回衆院選での「177議席減(前回選挙比)」を除けば、1993年7月の第40回衆院選における「52議席減(同)」が最大でした。「新党ブーム」で自民党から大勢の議員が離党したうえ、候補者擁立が間に合わないという悪環境が重なった下での「52議席減」を今回超える可能性は、比較的低いかもしれません。しかし、野党が選挙協力で結集すれば野党の票が伸びるとの見方もあり、予想外の「自民大敗」シナリオも残ります。野党が協力体制を構築できるか否かが、ポイントのひとつとなりそうです。

衆院選後のロードマップ(影響を与えそうな要因)

(2014年)

12月14日 第47回衆議院選挙 投開票
12月後半 特別国会召集、首班指名の後、組閣

(2015年)

4月12日 統一地方選(都道府県と政令指定都市の首長、議員選挙)
4月26日 統一地方選(政令市以外の市、特別区、町村の首長、議員選挙)
9月 安倍首相の自民党総裁の任期満了(第1期)
10月? 消費税10%へ増税?(2017年4月に先送り)

(2016年)

7月? 参議院議員通常選挙?

(2017年)

4月 消費税10%へ増税

(2018年)

9月? 安倍首相の自民党総裁の任期満了(第2期)?
12月? 衆議院議員総選挙?

与党が勝ったら?負けたら?株・為替はどうなる?

最後に、今回の衆院選で勝つ場合(目標の「与党で270議席」を確保)と、負ける場合(目標未達)の株(日経平均)と為替の推移について考えてみたいと思います。

与党が「絶対安定多数」を確保し、勝利を収めた場合には、「アベノミクス」が信認され、安倍政権の安定度が増すと解釈されそうです。日経平均は与党勝利を好感して、一時上昇するかも知れませんが、選挙前までに期待感が織り込まれてしまっている場合には、その後むしろ利益確定売りが増加するかもしれません。また、為替は安倍政権安定を評価してリスクオンへと振れることも考えられますが、「消費税増税先送り」による財政健全化の遅れが再びクローズアップされると、円高へと向かう可能性も否定できません。

一方、与党が「絶対安定多数」を確保できない場合には、政局不安からリスクオフが台頭し、日経平均は下落、円相場は円高へと振れ易いとみられます。

また、過去の衆議院の解散・総選挙の際に、株・為替がどのように動いたかについても、分析してみましょう。

1989年(平成元年)以降、衆議院の解散・総選挙は今回を除いて、8回行われました。


その8回の「選挙結果と日経平均の動き」は以下のとおりです。

解散から投票翌日までは、日経平均は「6勝2敗」で「勝ち越し」となりましたが、投票翌日から1か月後では「3勝5敗」で負け越しました。株式相場には「解散・総選挙は買い」というジンクスもあるようですが、買いが有効なのは、選挙が実際に行われる前まで、という結果となりました。また、与党の勝敗と、日経平均の騰落には、余り直接的な関連は見られないようです。

同様に「選挙結果とドル円の動き」をみると、以下のとおりです。

解散から投票翌日までは、ドル円は「2勝6敗」(ドル安・円高が多い)、投票翌日から1か月後では「5勝3敗」(ドル高・円安が多い)という結果となりました。一見、選挙後に円安が進むようにも見えますが、解散から投票までの間に円高へと振れた「反動」とみられ、与党の勝敗とは明確な因果関係がみられませんでした。

つまり、日経平均については「投票まで期待買い先行、開票後は利食い売り先行」という展開、ドル円については「投票まで円買い先行、開票後は円売り戻し優勢」という展開でした。

今回、衆院が解散した11月21日の日経平均は1万7,357円、ドル円は117.75円でした。日経平均は過去例同様に「投票まで期待買い先行、開票後は利食い売り先行」となる可能性があるとみられますが、ドル円は直近12月5日現在120円前後と円安へと振れているため、過去例と同様に「投票翌日以降は、反動が出る」という流れになると、円高へと振れ直す可能性も考えられそうです。

 

(市場調査部)

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