今月の特集

2019年02月ブレグジットの最新情勢

英国のEU(欧州連合)からの離脱、いわゆるブレグジットは、いつ、どのような形で実現するのでしょうか。それともブレグジットは撤回されるのでしょうか。本稿執筆時点で情勢は引き続き流動的と言わざるを得ません。そのため、【ブレグジットの最新情報】は、都度アップデートします。また、【ブレグジットの基本情報】では、これまでの経緯や経済的影響について解説しています。
 

【ブレグジットの最新情報】(タイトルクリックで各記事へ遷移します)

2019/03/22 「新たな離脱期日は4月12日」

2019/03/20 「最新のスケジュール」

2019/03/19 「メイ首相は長期延期を申請へ!?」

2019/03/15 「ブレグジット、次は3月20日!」

2019/03/14 「英議会は『合意なき離脱』を否定。英ポンドの乱高下は続く!?」

 
 
【ブレグジットの基本情報】
 
●ブレグジットとは
 英国がEU(欧州連合)から離脱すること。2016年6月23日の国民投票において、投票者の過半数がEUからの離脱に賛成。2017年3月29日、英国のメイ首相が、EUの基本条約であるリスボン条約第50条の規定に基づき、EUに対して離脱を通告。2019年3月29日をもって、英国がEUを離脱することが決定した。
 英国がEUを離脱すれば、関税同盟単一市場からも脱退する。それまで原則自由だった国境を越えるヒト、モノ、カネの流れは制約を受けることになる。
 
●なぜブレグジットか
 直接の引き金は、他のEU加盟国からの移民・難民の受け入れを拒否することができないことが、社会保障負担の増加などを通じて英国民の不満を高めたこと。EU加盟国は、EU内における人の移動の自由を保障するシェンゲン協定を結んでいるため、独自に移民制限などの政策を採用することはできない。
 もっとも、ユーロ圏を創ったEMU(経済通貨同盟)への参加を見送ったように、英国にはもともと大陸欧州とは一定の距離を保ちたいとの思いがある。加盟負担金の大きさ(GDPの0.5%)やEUの規制などによって、EU加盟は経済的にマイナスだとの見方もあった。
 
●ブレグジットの協定
 英国とEUは、離脱のやり方や離脱後の両者の関係について協定を結ぼうとしている。離脱のやり方については、英国が負担する一時金、離脱以前に英国に居住する英国以外のEU市民や英国以外のEU加盟国に居住する英国民の地位保全などで合意はできた。しかし、アイルランド国境問題(後掲)がネックとなって協定は成立していない(19年1月30日現在)。協定が成立するためには、英国およびEU全加盟国の議会承認が必要である。
 
 協定が成立すれば、移行期間が設けられて2020年末まで英国とEUの従来の関係は継続する。一方、協定が成立しなければ、「合意なき離脱」となり、離脱直後に従来の関係は失われる。
 
 離脱後の通商関係について、英国とEUが新たな協定を結ばなければ、WTO(世界貿易機関)のルールに従うことになり、お互いに特権的待遇を失うため、経済的な悪影響が懸念される。
 
●アイルランド国境問題
 ブレグジット協定の成立を困難にしているものに、アイルランド国境問題がある。英国がEUを離脱すれば、EUに加盟するアイルランド共和国と英国領の北アイルランドとの国境監視が必要になる。いずれもアイルランド島にあり、国境を巡って激しい紛争が繰り返された歴史があるため、厳格な国境を設けたくないというのが、英国とEUの基本姿勢だ。
 
 そこで、バックストップ(次善策あるいは安全策)*として、移行期間後も、英国とEUが新たな協定を締結するまで、英国が関税同盟に留まり(=国境監視が不必要)、かつ北アイルランドは英国よりもEUのルールに従うとの提案がなされた。
 (*)バックストップ(次善策あるいは安全策)とは、EUと英国が離脱後の新たな枠組みで合意できなくても、アイルランドと北アイルランドに厳格な国境を設けないというもの。その代りに英国は関税同盟に留まり続けることになります。英保守党の離脱強硬派は、バックストップが英国を無期限でEUに繋ぎ止めるとして、その廃止や期限を設けることを要求していました。
 
 英国のメイ首相とEUとの間で、バックストップが合意されたものの、英議会の離脱強硬派は、無期限のバックストップは英国をEUに縛り続けるものとして強く反対。また、北アイルランドは、英国の他の地域と別の扱いを受けるとして反対している。
 
●ブレグジットの経済的影響
 英国がEUから離脱すれば、経済的なデメリットは大きいとみられる。EUから離脱すれば、輸出の約半分をEU向けが占める英国は、新たな協定を結ばない限りEUへの特権的アクセスを失う。また、当然のことながら、EUの様々なルール作りに関して、英国は発言権を喪失することになる。外国企業の英国脱出も始まっているようだ。
 
 より深刻な影響が出そうなのが金融業界だ。ロンドン金融市場はニューヨークと並んで、グローバルな金融市場のなかでも際立った存在だ。それも、国内経済の規模に比べて格段に大きな役割を果たしているのは、外国の参加者が多いためだ。
 
 英国がEUから離脱した場合に、これまで同様に外国からの市場参加が望めるのか。ローカル市場に成り下がらないまでも、ある程度の存在感の低下は避けられない。すでに、いくつかの外国金融機関は拠点の中心をロンドンから大陸欧州へと移しつつある。そうした動きが加速するようなら、英国の金融資産や不動産、通貨ポンドに対する需要も減退する可能性がありそうだ。
 
 2018年11月にメイ政権が公表した報告書によれば、「合意なき離脱」の場合、15年後の経済規模(GDP)は、EUに残留した場合に比べて9.3%小さくなるという。協定を締結したうえで離脱した場合でも、同じく3.9%小さくなるという。
 同時期にBOE(英中銀)が公表した報告書は、経済に対する悪影響はもっと深刻だとしている。それによれば、「合意なき離脱」の場合、2019年のGDP成長率はマイナス8%となる可能性があり、それはリーマンショックの衝撃を上回るとされる。住宅価格は30%下落し、失業率(18年11月時点で4.0%)は7.5%まで上昇するとしている。
 
●ブレグジットの今後
 今後、起こりうるシナリオは大きく3つに分かれる。
 第1が、英国とEUが何らかの協定を締結したうえで、英国がEUを離脱する。2020年末までの移行期間があり、その間は従来の関係が継続するため、金融市場に安心感を与えるだろう。
 第2が、「合意なき離脱」だ。離脱日(2019年3月29日予定、延期の可能性あり)を境に従来の関係が失われるため、英国だけでなく、EUにも相当のショックが及ぶことになる。「合意なき離脱」が現実味を帯びるほど、金融市場は大いに動揺することになろう。
 第3が、ブレグジットを破棄して英国がEUに残留する。2018年12月にEU司法裁判所は、英国が一方的にEU離脱を撤回することが可能だとの判断を示した。EU残留への動きが出てくれば、英ポンドや円ポンド建て資産は買い戻される可能性がある。
 
 上記シナリオに至る過程で、英国のメイ首相の辞任や不信任決議解散総選挙第2の国民投票などのイベントが起こる可能性もあり、事態は流動的である(19年1月30日現在)。
 

●これまでの経緯(下線部クリックで関連記事へ遷移します)

2015/05/07  英総選挙で保守党が勝利。キャメロン首相が国民投票を約束

2016/06/23    国民投票でブレグジットが決定(51.9%対48.1%)

2016/07         与党保守党の党首交代(キャメロン⇒メイ)

2017/03/29      リスボン条約第50条に基づき、メイ首相が離脱を表明

2017/06/08  ブレグジットの方針を問う総選挙で、保守党が第一党に

2017/06/19  英国とEUの離脱交渉開始

2017/12/08    交渉第一段階(離脱条件)終了

2018/01           交渉第二段階(離脱後の関係)開始

2018/06/26    英国でEU離脱法が成立

2018/11/13    メイ政権とEUが協定案で合意

2018/12/11    協定案の議会採決予定(前日にメイ首相が延期を決定)

2019/01/15  英議会が協定案を否決(202対432)

2019/01/29    英議会が協定代替案を可決

2019/02/14    英議会がメイ首相の交渉方針を支持する動議を否決

2019/02/27    英議会がメイ首相の交渉方針を支持する動議を可決

2019/03/12  英議会が協定案を否決(2回目 242対391)

2019/03/13  英議会が「合意なき離脱」を否決

2019/03/14  英議会が離脱期日延期を可決

2019/03/21-22 EUサミット(離脱期日延期を決定)

 
<予定>
2019/03/25      メイ首相が英議会と離脱に関して協議
2019/03/29      英国がEUを離脱する期日(⇒延期)
2019/04/12    (議会が協定案を否決した場合)新たな離脱期日
          英国が欧州議会選挙に参加するかどうかを最終判断
2019/04/18    欧州議会が解散
2019/05/22    (議会が協定案を可決した場合)新たな離脱期日
2019/05/23-26   欧州議会選挙
2019/07/02    欧州議会の閉会
2020末       移行期間終了(協定締結の場合)
 
(チーフエコノミスト 西田明弘)

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