市場調査部レポート

2019/03/08 12:00ブレグジットの道筋は見えてくるか

◆ファンダメンタルズ◆
<<相場環境>> 
 来週(3/11- )、ブレグジット(EU離脱)に関して英国で動きがみられそうです。後述する議会採決の結果、(1)協定案、(2)合意なき離脱案、(3)離脱日の延期案のいずれかが可決されそうです。生起確率は(3)>(1)>(2)であり、為替相場への影響は、(1)持続的英ポンド高、(2)英ポンド急落&リスクオフ、(3)英ポンドいったん堅調、と筆者は判断します。(2)の場合は金融市場が大きく動揺する可能性もあり、注意は怠れません。

 米国では8日に2月分の雇用統計、パウエルFRB議長の講演があり、来週の米ドル相場の基調がある程度決まるかもしれません。経済指標では、11日の小売売上高(1月分)に注目。12月分は前月比-1.2%の大幅なマイナスでした。その反動で増加するか、それとも1月25日まで続いたシャットダウン(政府機関の一部閉鎖)の影響で軟調となるか。後者の場合は、景気減速懸念が強まりかねません。

 また、11日には2020年度予算教書が公表されそうです。2020年の大統領選挙を視野に入れて、トランプ政権と議会民主党のバトルの口火が切られるかもしれません。その他、米中通商協議に進展はみられるか(首脳会談の日程公表など?)にも注目です。 <西田>

【米ドル(/円)】
 今年に入って、米ドルの対円での上昇が目立ちました。これは1月3日のフラッシュクラッシュに代表されるように、昨年12月後半から今年1月初めにかけて株価が大きく下落して、市場のリスクオフが強まって円高となったことの反動ととらえられます。
 もっとも、順調に回復してきた株価は3月に入ってピークアウトの兆候も出てきました。今後、市場が再びリスクオフに傾かないか、注意が必要かもしれません。リスクオフの要因として、米景気の大幅な減速(失速?)、合意期待が高まっていた米中通商交渉の決裂合意なきブレグジット、(理由はどうあれ)株価の大幅な下落などが挙げられます。

 15日、日銀の金融政策決定会合が開催されます。現状維持が想定されます。米FRBをはじめとして主要中銀が金融政策をハト派方向にシフトさせつつある中で、日銀に追加的な金融緩和の余地は乏しいとの見方が有力です。黒田総裁は「打つ手はある」との姿勢を堅持していますが、相場環境次第では仕掛け的な円買いが起こる可能性は否定できません。<西田>

【ユーロ】
 ECBは7日の理事会で、金融緩和を強化する姿勢を打ち出しました。

 ECBは、2019年の経済成長率(GDP)見通しを前回の1.7%から1.1%へ下方修正。インフレ率見通しも1.6%から1.2%へ下方修正しました。報道によれば、ECB内部では下方修正後も経済見通しはなお楽観的過ぎるとの意見もあるようです。
 ECBは、政策金利の据え置き期間をこれまでは「少なくとも夏の終わりまで」としていましたが、今回は「少なくとも2019年を通して」とし、金融緩和の時間軸を延長しました。さらに、ECBはTLTRO(条件付き長期資金供給オペ)を再開しました。

 ドラギ総裁は会見で、「利下げの議論はなかった」、「景気後退の可能性は極めて低い」などと語りました。ただし、経済のリスクは依然として下振れ方向に傾いているとしたうえで、経済見通しの下方修正を「大幅だった」と認めました。今後、昨年末に終了した量的緩和再開の議論が出てくるような状況となれば、ユーロにさらなる下落圧力が加わるかもしれません。<西田>

【英ポンド】
 2月27日、英議会はブレグジット協定案に関するメイ首相の方針を支持しました。今後のスケジュールは以下の通り。

 EUが協定案を再交渉しない姿勢を貫いていることで、英国の離脱強硬派は態度を軟化させつつあります。 また、英議会が「離脱なき合意」を否決することがほぼ確実なため、混迷が続けば第2の国民投票が現実味を帯びかねないこと(=英国がEUに残留する可能性)を警戒しているようです。

 もっとも、仮に離脱日延期となっても、メイ首相は最長で6月末までとしており、その間に英国とEUが協定案で確実に合意できるとは言えないでしょう。まだまだ紆余曲折はあるかもしれません。<西田>

【豪ドル】
 豪州の2018年10-12月期GDP(3/1発表)は前年比+2.3%と、7-9月期(+2.8%)から成長率が鈍化。2017年4-6月期以来の低い伸びを記録しました。個人消費の低迷や住宅建設の落ち込みが重石となりました。

 RBA(豪中銀)は2019年のGDP成長率を+3%前後との見通しを示していますが、景気減速が浮き彫りとなったことで、RBAの見通しには届かない可能性が高まりました。

 市場は“RBAの次の一手は利下げ“と見ていますが、GDPの結果を受けて利下げ観測が高まっただけでなく、複数回の利下げ観測も浮上しました。豪ドルには下押し圧力が加わりやすいとみられます。

 来週(3/11の週)は、12日に豪NAB企業景況感指数(2月)13日に豪ウエストパック消費者信頼感指数(3月)が発表されます。それらが悪化した場合、RBAの利下げ観測は一段と高まり、豪ドルへの下押し圧力は一段と強まる可能性があります。

 豪ドルについては、米中通商協議に関する報道にも引き続き注意が必要です。<八代>

【NZドル】
 NZドルは今週(3/4の週)、軟調に推移し、対米ドルで約3週間ぶり、対円で約2週間ぶりの安値を記録しました。乳製品国際価格の指標であるGDT価格指数は5日のオークションで上昇したものの、そのことは市場で材料視されることなく、同じオセアニア通貨である豪ドルの下落に引きずられました。

 来週(3/11)は、NZの主要経済指標発表が予定されていません。そのため、NZドルは引き続き、外部材料に影響を受けやすい地合いになりそうです。豪ドルが下落を続ける場合、NZドルは連れ安する可能性もあります。<八代>

【カナダドル】
 BOC(カナダ中銀)は3月6日、政策金利を1.75%に据え置くことを決定。据え置きは、3会合連続です。

 声明では、2018年第4四半期のカナダ経済の減速は予想以上だったとしたうえで、「2019年上半期の経済は1月時点の予想よりも弱くなる」との見方を示しました。

 BOCは今回、フォワードガイダンス(金融政策の方向性をあらかじめ示したもの)を修正。これまでの「インフレ目標を達成するため、政策金利を時間をかけて中立レンジまで引き上げる必要がある」との文言を削除し、「見通しは引き続き中立レンジを下回る政策金利を正当化する」へと変更しました。そのうえで、「将来の利上げ時期についての不確実性が高まった」と指摘し、家計支出や原油市場、世界貿易の動向を注視していくとしました。

***

 BOCが利上げバイアスを弱めたことで、市場ではBOCの利上げ観測が後退しました。そのことはカナダドルにとってマイナス材料であり、カナダドルは目先、上値が重い展開になりそうです。

 ただ、BOCは現時点で利下げは選択肢にはなく、次の政策変更は依然として利上げとみているようです。声明は「将来の“利上げ”時期についての不確実性が高まった」と利上げに言及する一方、利下げへの言及はありませんでした。

 米FRBが利上げ休止を示唆し、ECB(欧州中銀)は金融緩和を強化する姿勢を示しました。一方で、BOCは利上げの可能性を残しています。こうした金融政策の方向性の違いが市場で意識されれば、カナダドルは上昇基調に転じる可能性があります。<八代>

【トルコリラ】
 TCMB(トルコ中銀)は3月6日、政策金利を24.00%に据え置くことを決定しました。

 声明では、前回1月と同様に「インフレ見通しが大幅に改善するまで、引き締め的な金融政策スタンスを維持する」、「必要に応じてさらなる金融引き締めを行う」と表明しました。TCMBがインフレ抑制を重視する姿勢を改めて示したことは、トルコリラの支援材料と考えられます。

ただし、市場では米国とトルコの関係をめぐる懸念が再燃しました。米国はトルコに対してS-400(ロシア製の地対空ミサイル)を購入しないように求めていますが、エルドアン・トルコ大統領が6日に「S-400を購入する方針は絶対に撤回しない」と語ったためです。両国の関係悪化は、トルコリラにとってマイナス材料です。<八代>

【南アフリカランド】
 南アフリカの2018年10-12月期GDP(3/5発表)は前期比年率+1.4%でした。成長率は7-9月期の+2.6%から鈍化したものの、2四半期連続でプラス成長を記録。南アフリカ経済が持ち直しつつあることが示唆されました。GDP統計の結果は、南アフリカランドにとってプラス材料と考えられます。

 一方で、ラマポーザ大統領が7日、SARB(南アフリカ中銀)の国有化を推進すると発表しました。これを受けて、市場では“国有化されればSARBの独立性が脅かされるとの懸念“が浮上し、南アフリカランドは7日に下落しました。SARBの独立性をめぐる市場の懸念を一段と強めるニュースが新たに出てくれば、南アフリカランドに対してさらなる下落圧力が加わる可能性もあります。<八代>



◆テクニカル◆

※上記想定レンジおよび投資戦略アイデアは、各種テクニカル指標を基に週間ベースの想定をしています。
※最終的な投資判断はご自身で行っていただくようお願いいたします。

〇“Pick Up”通貨:米ドル/円、トルコリラ/円

【米ドル/円】 (3/11-15 戦略アイデア) コアレンジ:110.80-112.10円、買い・トラリピ

 
 上図チャートでは、1) 21日MA(移動平均線)が右肩上がりであること、2) 遅行スパンがローソク足の上方にあること、3) ローソク足の下方に青い雲(=サポート帯)およびパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして、4) DMI(方向性指数)で+DI>-DIとなっている(上図赤色点線丸印)ことから、米ドル/円は緩やかな上昇トレンドを示すチャート形状となっていることが視認できます。

 足もとのポイントは、ローソク足がBB(ボリンジャーバンド)・+1σライン(≒111.54円※、上図赤色矢印)でサポートされるか否か。(※本稿執筆[3/8]時点Bid基準、終値ベース)

 これからの時間において、ローソク足が同ラインでサポートされた場合は、「上昇バンドウォークの継続」→「緩やかな上昇トレンドの継続」となりそうです。

 一方で、ローソク足が同ラインを終値ベースで下回った場合は、「上昇バンドウォーク崩れ」→「一旦の下押しフロー」を想定すべきでしょう。この場合の下値メドは、青色の雲の上辺である先行1スパン(≒110.80円)付近までを想定すべきでしょう。

 一旦の下押しフローがあった場合でも、現状では青色の雲の上下辺である先行1・2スパンに比較的大きな乖離、つまり強いサポート帯があることから、当面の米ドル/円は下値しっかりの相場展開が継続しそうです。

 以上を概括すると、次週(3/11-15)における米ドル/円について、その下値メドは先行1スパンを基準とする「110.80円」、同上値メドはBB・+2σラインを基準とする「112.10円」と想定します。よって、当該ゾーン(=110.80-112.10円、上図黄色四角枠)をベースとする「買い・トラリピ」を仕掛けるのも一案でしょう。<津田>

【トルコリラ/円】 (3/11-15戦略アイデア) コアレンジ:19.80-20.70円、売り・トラリピ



 上図チャートでは、1) 21日MA(移動平均線)が右肩下がりであること、2) 遅行スパンがローソク足の下方にあること、3) ローソク足が青い雲(=サポート帯)の中に入り込んでいること、4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方で点灯していること、そして、5) DMI(方向性指数)で-DI>+DIとなっている(上図青色点線丸印)ことから、トルコリラ/円は下降トレンド序盤を示すチャート形状となっていることが視認できます。

 上図チャートの着目ポイントは3点。

 まず1点目は、前述の通り、遅行スパンがローソク足を下放れする、いわゆる“逆転”となっていること。(上図黄色矢印) 当該メルクマールは、「約1ヵ月前(26日前)にトルコリラ/円を売買した市場参加者の取得レートに比べて、現在レートが下回っている」ことを示しており、同時期に売買した市場参加者にとって、「買い方不利、売り方有利」→「買い方の投げ売り、売り方の売り増し」のモチベーションを誘発するシグナルと言われています。よって、当該シグナルは【下降トレンドの起点】と捉えるべきでしょう。

 2点目は、BB(ボリンジャーバンド)・±2σラインが21日MAに対して拡張する、いわゆる“エクスパンション”となっていること。当該メルクマールは、「現在のトレンドが強まるシグナル」と言われていることから、この場合は、これからの時間にかけての【下降モメンタムの強まり】を示唆していると捉えるべきでしょう。

 そして3点目は、ADXが右肩上がり形状となっていること。DMIでは、前述の通り「-DI>+DI」となっており、その乖離が拡大する中で、ADXが右肩上がり形状となることは、「方向性の強まり」を示唆していることから、この場合は【下向き方向性の追い風/支援】のシグナルと捉えるべきでしょう。

 その一方で、現状では米ドル/円同様、青色の雲の上下辺である先行1・2スパンに比較的大きな乖離、つまり強いサポート帯があることから、トルコリラ/円は一気呵成に下落するというよりは、青い雲の中をジリジリ下押しする相場展開が継続しそうです。

 以上を概括すると、次週(3/11-15)におけるトルコリラ/円について、その下値メドは先行2スパンやや上部を基準とする「19.80円」、同上値メドは21日MAを基準とする「20.70円」と想定します。よって、当該ゾーン(=19.80-20.70円、上図黄色四角枠)をベースとする「売り・トラリピ」を仕掛けるのも一案でしょう。<津田>


【マーケットView】
マーケットViewは、毎日16時ごろアップの予定です。

※動画のアップ時間は前後する可能性があります。

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