市場調査部レポート

2019/01/11 13:02ブレグジット協定案は否決か

◆ファンダメンタルズ◆
<<相場環境>> 
 VIX指数(恐怖指数)が約1カ月ぶりに20を下回るなど、年末年始の相場急変から落ち着きを取り戻しつつあるようにみえます。ただ、油断は禁物です。米国のシャットダウン(政府機関の一部閉鎖)の継続、英国議会のブレグジット協定案の採決、米中通商交渉の行方(中国副首相の訪米)など、目先にも相場変動の要因となりうる政治イベントが続きます。それぞれの相場材料に注意して、慎重な姿勢で取引に臨む必要がありそうです。<西田>

【米ドル(/円)】
 最近のパウエル議長の発言やFOMC議事録(12/18-19開催分)は利上げに慎重なハト派的色合いが濃く、FRBはしばらく様子見を続ける可能性が高まっているようです。
 10日時点のFFレート(政策金利)先物によれば、2019年を通してFRBが政策金利を据え置く確率が68%織り込まれており、それが市場のメインシナリオになっています。そして、同じく利上げの確率が18%、利下げの確率が14%です。つまり、市場は「次の一手」が利下げになる可能性も意識し始めています。

 FRBがこのまま利上げを打ち止め、利下げの検討を始めるとすれば、米ドルにとって相当なマイナス材料となるでしょう。これまでは利上げ(継続の)観測が米ドルのサポート要因となってきたからです。
 ただ、利下げのシナリオが一段と現実味を帯びるかどうかは今後の状況次第です。上述の議事録で指摘されているように、労働市場の一段のひっ迫や、インフレ圧力の高まりが観測されるようであれば、一定期間の後に利上げ再開となる可能性もあるでしょう。

 メキシコ国境の壁の予算を巡って、トランプ大統領と議会の民主党幹部との対立が先鋭化しており、シャットダウンが解決する見込みが立ちません。今のところ経済活動への直接的な影響は軽微だとみられますが、長期化すれば企業や消費者のマインドが悪化するかもしれません。また、一部の経済指標の発表が延期されており、FRBの政策判断を難しくする可能性も否定できません。
 3月2日にはデットシーリング(政府債務上限)が復活します。大統領と議会の対立が続いて、デットシーリングの引き上げが遅れれば、米国債の利払いができないデフォルト(債務不履行)が市場で意識されるかもしれません。その場合、シャットダウン以上の影響が出そうです。<西田>

【ユーロ】
 ユーロはここのところ、対米ドルで比較的堅調に推移しています。ただし、それは米ドル安の裏返しの面が強く、目立ったユーロ高の材料はないようです。

 10日に公表された政策委員会の議事要旨(12/12-13開催分)によれば、ECBは経済のリスクは概ね均衡しているものの、「下方向に向かいつつある」と判断しました。また、経済成長率の見通しは下方修正されました。

 次回24日の政策委員会では、現状維持が決定され、QE(量的緩和)を昨年末で終了したことを確認しそうです。注目は、「19年夏の終わりごろ」としていた利上げ開始時期に変更があるかどうか。時期が後ズレしたり、利上げ開始への言及がなくなったりすれば、ユーロの弱気材料と判断されそうです。<西田>

【英ポンド】
 英国議会は、15日にブレグジット協定案を採決する予定です。(1)可決、(2)修正のうえ可決、(3)否決、の3つのシナリオがあります。明確な結果が出るのは、(1)可決の場合のみで、英国は合意した協定をもってEUを離脱することになり、英ポンド高の材料となりそうです。しかし、協定案がそのまま可決される可能性は極めて低いようです。
 (2)修正のうえ可決や(3)否決の場合は、さらに、「EUと再交渉」、「メイ首相の不信任投票」、「解散総選挙」、「第2の国民投票」などのシナリオ*を経て、結局は「合意ありの離脱」か、「合意なき離脱」かのいずれになるかは不透明です。(2)や(3)のケースでは、英ポンドはいったん下落しそうですが、先行きが不透明なため、大きく売り込まれることはないかもしれません。
 *それぞれのシナリオは独立しているわけでなく、たとえば、「不信任」⇒「解散総選挙」⇒「再交渉」⇒「合意あり or 合意なし離脱」と展開するかもしれません。

 また、市場では3月29日の離脱が延期されるとの見方も取り沙汰され始めており、事態は引き続き流動的と言わざるをえません。<西田>
 
【豪ドル、NZドル】
 豪ドルは今週(1/7の週)、対米ドルで約4週間ぶり、対円で約2週間ぶりの高値を記録。NZドルも今週、対米ドルで約3週間ぶり、対円で約1週間ぶりの高値をつけました。

 豪ドルやNZドルが反発した背景として、米国株の上昇や米中通商協議の進展期待から、リスク回避の動きが和らいだことが挙げられます。

 豪ドルやNZドルは、豪州やNZの経済指標以上に、投資家のリスク意識の変化に反応しやすい地合いです。こうした状況は当面続くとみられ、特に米国の株価動向や米中貿易摩擦に関する報道に注意が必要です。ムニューシン米財務長官は10日、劉鶴・中国副首相が通商協議のため今月中に訪米する可能性が高いとの見方を示しました。<八代>

【カナダドル】
 BOC(カナダ中銀)は1月9日、政策金利を1.75%に据え置くことを決定しました。据え置きは、2会合連続です。

 声明では、「インフレ目標を達成するため、政策金利を時間をかけて中立レンジまで引き上げる必要がある」との見方を示し、追加利上げを示唆。“時間をかけて”の文言が今回追加されましたが、ポロズBOC総裁はその理由を「時間軸が曖昧であることを示すため」と説明しました。利上げのペースについては、「原油市場やカナダの住宅市場、世界の貿易政策の動向次第」としました。

 BOCは政策金利の中立水準を2.50-3.50%と推計しています。仮に0.25%ずつ利上げが行われると想定した場合、現在1.75%の政策金利が2.50%に到達するには、利上げはあと3回と考えることができます。

 市場では、米FRB(連邦準備理事会)の利上げ休止観測が強まっています。その状況のなか、BOCが利上げ継続の方針を示したことは、カナダドルにとってプラス材料と考えられます。原油価格が下落を続けなければ、カナダドルは目先、底堅く推移しそうです。<八代>

【トルコリラ】
 TCMB(トルコ中銀)が1月16日、政策金利を発表します。政策金利は現行の24.00%に据え置かれそうです。トルコの2018年12月CPI(消費者物価指数)は前年比+20.30%と、2カ月連続で上昇率が鈍化したものの、依然として高水準であるためです。

 市場では政策金利が据え置かれるとの見方が有力。その通りの結果になれば、市場の関心は声明の内容へと移りそうです。TCMBが早期に利下げを行うとの観測も市場にあるなか、TCMBの声明が先行きの利下げを示唆する内容に変化した場合、トルコリラには下落圧力が加わるとみられます。一方で、インフレの抑制を重視する姿勢が示された場合にはトルコリラが上昇する可能性があります。前回2018年12月13日の会合時の声明では、「インフレ見通しが大幅に改善するまで、金融政策の引き締めスタンスを維持する」、「必要に応じて、さらなる金融引き締めを行う」との方針が示されました。

 トルコリラについては、米国とトルコの関係に関する報道にも注意が必要です。市場では米国とトルコの関係が悪化するとの懸念が再燃しています。ボルトン米大統領補佐官は1月6日、米軍のシリアからの撤退について、トルコがクルド人勢力を攻撃しないと確約することが条件との見解を表明。それに対してエルドアン大統領は8日、ボルトン補佐官を非難したうえで、「テロリストに対して必要な措置を講じる」と語り、新たに軍事行動を起こすことを示唆しました。

トルコはシリア国内のクルド人勢力をテロリストと見なす一方、米国はクルド人勢力を支援。同勢力への対応が米国とトルコの関係悪化の一因となっていました。両国の関係悪化を示す報道がさらに出てきた場合、トルコリラが下落する可能性があります。<八代>

【南アフリカランド】
 南アフリカランドは今週(1/7の週)、底堅く推移しました。米国株の上昇や米中通商協議への期待からリスク回避の動きが和らいだことが、南アフリカランドを下支えしました。米FRB(連邦準備理事会)の利上げ休止観測を背景に米ドルが全般的に弱含んだことも、南アフリカランドにとってプラス要因でした。

 南アフリカランドは当面、投資家のリスク意識の変化や米ドル全般の動向に影響を受けやすい展開になりそうです。リスク回避の動きが強まる、あるいは米ドルが弱含めば、南アフリカランドは底堅く推移する可能性があります。

 SARB(南アフリカ中銀)が1月17日に政策金利を発表しますが、現行の6.75%に据え置かれそうです。市場は据え置きを予想しており、その通りの結果になれば、南アフリカランドに大きな反応はみられないかもしれません。<八代>



◆テクニカル◆

※上記想定レンジおよび投資戦略アイデアは、各種テクニカル指標を基に週間ベースの想定をしています。
※最終的な投資判断はご自身で行っていただくようお願いいたします。

〇“Pick Up”通貨:米ドル/円、トルコリラ/円

【米ドル/円】 (1/14-18 戦略アイデア) コアレンジ:106.00-109.50円、売り・トラリピ

 上図チャートでは、1) 21日MA(移動平均線)が右肩下がりであること、2) 遅行スパンがローソク足の下方に位置していること、3) ローソク足が赤色の雲(=抵抗帯)の下辺付近にあること、4) ローソク足の下方にパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして、5) DMI(方向性指数)で-DI>+DIとなっていること(上図青色点線丸印)から、米ドル/円下降トレンドを示すチャート形状となっていることが視認できます。

 また、BB(ボリンジャーバンド)・±2σラインが21日MAに対して拡張する“エクスパンション”となっていること、そして、ローソク足がBB・-1σラインと同・-2σラインの間で推移する“下降バンドウォーク”となっていることから、当面は下降トレンド基調が続くことを想定した方が良さそうです。

 喫緊のポイントは、ローソク足がBB・-2σライン(≒106.90円、11日時点Bid値、上図黄色矢印)でサポートされるか否か

 仮に、これからの時間においてローソク足が当該ラインを終値ベースで下回った場合は、米ドル/円の下降モメンタムがさらに強まる可能性も。

 先週3日の東京時間早朝に発生した“フラッシュクラッシュ”(瞬間崩落)で、米ドル/円は一時105円台割れ(104.58円)を示現したことは記憶に新しいところ。投資家心理が戦々恐々となる中で、仮にローソク足がBB・-2σライン(≒106.90円)を割り込む動きとなった場合は、心理的側面からも【フラッシュクラッシュ第2弾】が助長されることを想定し、先週3日時の安値である104.58円をターゲットに動いてくる可能性も視野に入れるべきでしょう。

 次週14日(月)は成人の日で東京株式市場も休場となり、取引参加者が少なることが予想されること、また、アストロロジー(金融占星学)分析で言うところの「メリマン・サイクル」では1/11-14が【重要変化日】となっていることもあり、今週末から次週前半にかけては用心するに越したことはないと言えるでしょう。

 それらを踏まえた上で概括すると、次週における米ドル/円の上値メドは、先行2スパンを基準とする「109.50円」、同下値メドはBB・-2σライン(≒106.90円)をややアンダーシュートした基準である「106.00円」と想定します。次週(1/14-18)の戦略アイデアとしては、当該レンジ(=106.00-109.50円)をベースとする「売り・トラリピ」を仕掛けるのも一案でしょう。<津田>

【トルコリラ/円】 (1/14-18戦略アイデア) コアレンジ:18.00-20.50円、売り・トラリピ

 上図チャートでは、1) 21日MA(移動平均線)が右肩下がりであること、2) 遅行スパンがローソク足の下方に位置していること、3) ローソク足が赤色の雲(=抵抗帯)の中にあること、4) ローソク足の上方にパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして、5) DMI(方向性指数)で-DI>+DIとなっていること(上図青色点線丸印)から、トルコリラ/円下降トレンドを示すチャート形状となっていることが視認できます。

 また、米ドル/円同様、BB(ボリンジャーバンド)・±2σラインが21日MAに対して拡張する“エクスパンション”となっていること、そして、ローソク足がBB・-1σラインと同・-2σラインの間で推移する“下降バンドウォーク”となっていることから、当面は下降トレンド基調が続きそうです。

 喫緊のポイントは、ローソク足が先行1スパン(≒19.50円、11日時点Bid値、上図黄色矢印)でサポートされるか否か

 仮に、これからの時間においてローソク足が当該スパンを終値ベースで下回った場合は、トルコリラ/円の下降モメンタムがさらに強まる可能性も。

 トルコリラ/円においても、先週3日の東京時間早朝に発生した“フラッシュクラッシュ”(瞬間崩落)で、一時18円台割れ(17.92円)を示現したこともあり、ローソク足の先行1スパン(≒19.50円)割れは、トルコリラ/円の「下落第2波」への心理的トリガーとなる可能性を考慮すべきでしょう。

 その場合は、米ドル/円同様、先週3日時の安値である17.92円をターゲットに動いてくる可能性もありそうです。

 繰り返しながら、次週14日(月)は成人の日で東京株式市場も休場となり、取引参加者が少なることが予想されること、また、アストロロジー(金融占星学)分析で言うところの「メリマン・サイクル」では1/11-14が【重要変化日】となっていることもあり、今週末から次週前半にかけては、米ドル/円同様、トルコリラ/円に関しても下落警戒モードで臨むべきでしょう。

 それらを踏まえた上で概括すると、次週におけるトルコリラ/円の上値メドは、21日MAを基準とする「20.50円」、同下値メドは先週3日時安値(=17.92円)を基準とする「18.00円」と想定します。次週(1/14-18)の戦略アイデアとしては、当該レンジ(=18.00-20.50円)をベースとする「売り・トラリピ」を仕掛けるのも一案でしょう。

 少なくとも、主観的な割安感・値頃感を持つようなタイミングや環境ではないことだけは確かと言えるでしょう。<津田>


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【マーケットView】
マーケットViewは、毎日16時ごろアップの予定です。

※動画のアップ時間は前後する可能性があります。

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※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。

※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。

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