市場調査部レポート

2018/11/30 13:52【マンスリー・アウトルック(2018/12)】重要局面を迎える米金融政策!?

― 2018年12月の為替相場展望 ―

ファンダメンタルズ
<相場環境>
 米FRBの利上げ打ち止め観測が強まれば、為替相場の前提が大きく変わり、米ドルが中長期の下落基調に転じる可能性がある。12月のFOMCなどでどのようなメッセージが発信されるか、要注目。米中貿易問題、イタリア予算案、ブレグジット協定案、OPEC総会など、政治・外交面からも相場材料は出てきそう。

・【米ドル(/円)】FOMCで利上げ打ち止め観測は強まるか
・【ユーロ】イタリア財政問題はユーロの不安材料
・【ポンド】ブレグジット交渉の最大の難関は英国議会
・【豪ドル】投資家のリスク意識の変化に反応しやすい地合いか
・【NZドル】NZのGDPが材料になる可能性あり
・【カナダドル】来年1月の利上げ観測が高まるか。原油価格の動向に要注意
・【トルコリラ】米国とトルコの関係改善期待や原油安が支援材料
・【南アフリカランド】SARBが利上げ決定。12月4日のGDPに注目

〇主要経済指標・イベント

テクニカル
〇月間想定レンジ
〇“Pick Up”通貨:米ドル/円、ユーロ/米ドル
・【米ドル/円】 112.20-114.50円
・【ユーロ/米ドル】 1.1120-1.1470米ドル


≪相場環境≫ 重要局面を迎える米金融政策!?

 米国の金融政策が重要局面を迎えつつあるのかもしれません。2015年12月に利上げが開始され、とくに17年12月からは3カ月ごとの利上げが続いてきました。12月18-19日のFOMCでの利上げは引き続き高い確率で予想されていますが、その後の早い段階で利上げが打ち止めになるとの観測が強まっています。
 利上げの打ち止め、そして利下げへ転換となれば、為替相場の前提が大きく変わることになります。基本的には米ドルが(とくに対円で)中長期の下落基調に転じる可能性が出てきます。そう結論付けるのは時期尚早だと考えていますが、今後の展開に要注意でしょう。

 政治・外交面では、米国の通商政策が相場材料となりそうです。トランプ大統領は中国の譲歩がなければ19年初に対中関税を強化する意向です。追加関税が課されるのか、あるいは回避されるのか。それは、金融市場全般のリスクオン/オフに、とりわけオセアニア通貨に大きく影響する可能性があります。これと別に、輸入車への関税賦課の動きもあり、ユーロなどへの影響が懸念されます。
 欧州では、後述するようにイタリアの予算案やブレグジット協定案の議会採決が予定されており、それらの結果次第ではユーロや英ポンドに影響が出そうです。<西田>

【米ドル(/円)】 FOMCで利上げ打ち止め観測は強まるか

 米景気減速の兆候や株安などに加えて、11月28日の講演でパウエルFRB議長が「政策金利は中立水準をわずかに下回る」との旨の発言をしたこともあり、利上げ打ち止め観測が強まっています。
 パウエル議長は現在の政策金利(2.00-2.25%)が中立金利の推計レンジ(FOMC参加者によれば2.5-3.5%)をやや下回っているとの事実を指摘しただけかもしれません。一方で、議長は比較的早い段階で様子見モードに入る可能性を意識し始めたのかもしれません。
 パウエル議長は、先の講演で「金融政策は予め決められたものでなく、今後の経済や金融のデータを注意深く観察する」とも語っています。今後の経済情勢が一段と重要性を増しそうです。12月5日のパウエル議長の議会証言同18-19日のFOMCでどのようなメッセージが発信されるのか、要注目です。<西田>

【ユーロ】 イタリア財政問題はユーロの不安材料

 報道によれば、イタリア議会は政府の2019年度予算案を12月3日か4日に採決する可能性があるようです。仮に予算案が議会で可決されれば、欧州委員会はEU財務相会合に対して、「過剰赤字手続き」を開始するよう勧告する可能性が高そうです。
 財務相会合が正式に手続きを開始すれば、イタリア政府は改めて3-6カ月以内に予算案の修正を求められます。イタリア政府が十分な対応をしなかった場合、欧州委員会は最大でイタリアのGDP比0.2%に相当する罰金を推奨する可能性があります。EU各国政府がこれを承認すれば、イタリア政府に罰金が科されます。一定期間内にイタリアが対応しなければ、罰金が引き上げられる可能性もあります。
 イタリアとEUとの対立が続けば、通貨ユーロにとってマイナス材料となりそうです。<西田>

【英ポンド】 ブレグジット交渉の最大の難関は英国議会

 英国議会はメイ政権がEUと合意したブレグジット協定案を12月11日に採決する予定です。協定案の可決には、保守党の賛成派だけでは不十分なため、野党労働党などからも賛成票を集める必要がありますが、現時点で過半数に達する見通しは立っていません。また、離脱強硬派が協定案の修正動議を発動する可能性もあります。
 メイ首相は、協定案が可決されなければ「合意なき離脱」となり、英国経済に大きな打撃になると警告していますが、先行きの不透明感は一段と強まっています
 英国議会が協定案を修正、あるいは否決した場合、12月13-14日の定例EUサミットで善後策が協議されることになりそうです。<西田>

【豪ドル】 投資家のリスク意識の変化に反応しやすい地合いか

 12月の豪ドルは、主要国株価や資源(特に原油)価格の動向に影響を受けやすい地合いが続きそうです。

 また、トランプ米大統領と習近平国家主席が12月1日に首脳会談を行う予定であり、豪ドルはその結果に影響を受ける可能性もあります。首脳会談で米中首脳が貿易摩擦の解消に向けて歩みよれば、リスク回避の動きが緩和するとみられます。その場合、投資家のリスク意識を反映しやすい豪ドルにとってプラス材料と考えられます。一方で、首脳会談で両国の対立が改めて浮き彫りになれば、米中貿易摩擦に対する懸念が一段と高まりそうです。トランプ大統領は首脳会談が不調に終わった場合、新たに2670億米ドル相当に対する追加関税(対中追加関税第4弾)を発動する考えを示しているためです。外為市場では、リスク回避の動きが強まり、豪ドルには下落圧力が加わる可能性があります。

 RBA(豪中銀)が12月4日に政策金利を発表します。RBAは金融政策の現状維持を当面続ける方針を示しているため、政策金利は現行の1.50%に据え置かれそうです。声明の内容にサプライズがなければ、RBAの政策金利発表は市場でほとんど材料視されないとみられます。<八代>

【NZドル】 NZのGDPが材料になる可能性あり

 NZドルは豪ドルと同様、主要国株価や原油価格の動向、そして12月1日の米中首脳会談の結果に影響を受けやすい地合いになりそうです。それらを受けて、リスク回避の動きが緩和すれば、NZドルにとってプラス材料と考えられる一方、リスク回避の動きが強まれば、NZドルには下落圧力が加わる可能性があります。

 NZの7-9月期GDP(12/20発表)もNZドルの材料になる可能性があります。RBNZ(NZ中銀)はNZ経済の減速を懸念しており、景気が悪化した場合には利下げを検討するとしているためです。RBNZは11月8日の金融政策報告で7-9月期のGDPを前期比+0.7%と予想しました。GDPがその予想を上回れば、NZドルの上昇要因になる可能性があります。<八代>

【カナダドル】 来年1月の利上げ観測が高まるか。原油価格の動向に要注意

 BOC(カナダ中銀)が12月5日に政策金利を発表します。その結果がカナダドルに影響を与える可能性があります。

 政策金利は現行の1.75%に据え置かれそうです。10月に利上げを行ったばかりのうえ、主力輸出品である原油の価格が下落したためです。原油価格の代表的な指標である米WTI先物は先週(11/19の週)、2017年10月以来の安値を記録しました。市場では、政策金利は今回据え置かれて、来年1月9日の会合で0.25%の利上げが行われるとの観測があります。今回の声明が来年1月の利上げ観測を高める内容になれば、カナダドルの上昇要因になる可能性があります。

 ただ、カナダドルについては、原油(米WTI先物)価格の動向にも目を向ける必要があります。BOCの1月利上げ観測が高まったとしても、原油価格の下落が続けば、カナダドルは上値が重くなる可能性もあります。<八代>

【トルコリラ】 米国とトルコの関係改善期待や原油安が支援材料

 トルコリラは今週(11/26の週)、対米ドルや対円で4カ月半ぶりの高値を記録しました。

 米国とトルコの関係が改善しつつあることが引き続きトルコリラの支援材料となったほか、原油価格の下落もトルコリラの追い風となりました。

 前者については、トルコ裁判所は10月、米国とトルコの関係悪化の一因となっていた米国人牧師を釈放。11月2日には、米国とトルコが双方の閣僚に課していた制裁を解除しました。
 後者については、原油価格の代表的な指標である米WTI先物や北海ブレント先物は先週(11/19の週)、いずれも2017年10月以来の安値をつけました。トルコは必要な燃料の大半を輸入に依存しています。そのため、原油価格の下落によって輸入コストが低下し、さらにはインフレ圧力を緩和する可能性があります。

 トルコの11月CPI(消費者物価指数)が12月3日に発表されます。トルコが抱える問題のひとつに高インフレがあるため、CPIの結果にトルコリラが反応する可能性があります。
 CPI上昇率は10月に前年比+25.24%と、約15年ぶりの高水準を記録しました。今回については、足もとの原油安やトルコリラの反発、そしてトルコ政府によるインフレ対策(企業が年末まで最低10%値下げを実施するなど)の効果もあり、10月から鈍化しそうです。CPI上昇率が大きく鈍化した場合、トルコリラは上値を試す展開になる可能性があります。一方で、CPI上昇率が10月からほとんど改善しない(あるいは、上昇率が加速する)場合、トルコの高インフレが意識されて、トルコリラには下落圧力が加わる可能性があります。

 12月13日のTCMB(トルコ中銀)会合では、政策金利(現行24.00%)の据え置きが決まりそうです。<八代>

【南アフリカランド】 SARBが利上げ決定。12月4日のGDPに注目

 SARB(南アフリカ中銀)は11月22日、0.25%の利上げを決定。政策金利を6.50%から6.75%に引き上げました。利上げは2016年3月以来、2年8カ月ぶりです。

 今回の利上げは、微妙な判断だったようです。会合では、6人の政策メンバーのうち、3人が利上げ、3人が据え置きを主張。メンバーの意見が二つに割れて、最終的に利上げを行うとの決定が下されました。

 SARBが利上げを行ったことは、南アフリカランドの支援材料と考えられます。一方で、南アフリカ経済は低迷。GDP成長率は2四半期(2018年1-3月期、4-6月期)連続でマイナスを記録しました。利上げによって景気が今後一段と冷え込む可能性があります。

 南アフリカの7-9月期GDPが12月4日に発表されます。GDPが堅調な結果になれば、南アフリカランドのさらなる支援材料になるとみられる一方、GDPで経済の低迷が改めて浮き彫りになれば、利上げが景気に与える悪影響が市場で意識されて、南アフリカランドは上値が重い展開になる可能性があります。<八代>


<テクニカル>


※上記想定レンジおよび投資戦略アイデアは、各種テクニカル指標を基に月間ベースの想定をしています。
※最終的な投資判断はご自身で行っていただくようお願いいたします。

〇“Pick Up”通貨:米ドル/円、ユーロ/米ドル
【米ドル/円】 (12月戦略アイデア) コアレンジ:112.20-114.50円、買い・トラリピ


 上図チャートでは、1) 26週MA(移動平均線)が右肩上がりであること、2) 遅行スパンがローソク足の上方にあること、そして、3) ローソク足の下方に分厚い青色の雲(=サポート帯、先行スパン)およびパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があることから、米ドル/円緩やかな上昇トレンドを示すチャート形状となっていることが分かります。

 一方で、相場の方向性を示唆するDMI(方向性指数)では、+DIと-DIが収斂し、且つADXが右肩下がりとなっている(上図青色点線丸印)ことから、トレンドモメンタムが比較的弱い状態となっています。

 以上を概括すると、12月の米ドル/円の上値メドはBB・+2σラインを基準とする「114.50円」、同下値メドはパラボリック・SARを基準とする「112.20円」と想定します。

 よって、12月月間ベースにおける米ドル/円については、上記レンジ(=112.20-114.50円、上図黄色四角枠)をベースとする、買い・トラリピを仕掛けるのも一案でしょう。

 一方で、注意すべきポイントとしては、BB・+2σラインが緩やかな右肩上がり形状となっていることから、想定上値メドである「114.50円」を超えるところでは、「高値掴み」となる可能性も視野に入れるべきでしょう。

 また、青色の雲(=サポート帯、先行スパン)の上下辺に比較的大きな乖離があることから、「下値サポートが比較的強い状態」と捉え、想定下値メドである「112.20円」を仮に割り込んだ場合であっても、26週MAを基準とする「111.80円」付近までの買い下がり(=買い・トラップトレード)を仕掛けてみるのも一案でしょう。<津田>

【ユーロ/米ドル】 (12月戦略アイデア) コアレンジ:1.1120-1.1470ドル、売り・トラップ

 上図チャートでは、1) 26週MA(移動平均線)が右肩下がりであること、2) 遅行スパンがローソク足の下方にあること、3) ローソク足の上方に分厚い赤色の雲(=抵抗帯、先行スパン)およびパラボリック・SARがあること、そして、4) DMIで-DI>+DIとなり、同時にADXが右肩上がりとなっている(上図青色点線丸印)ことから、ユーロ/米ドル典型的な下降トレンドを示すチャート形状となっていることが分かります。

 また、BB・±2σラインが26週MAに対して拡張する、“エクスパンション”が示現していること、さらに、ローソク足がBB・-1σラインと同・-2σラインの間を推移する、“下降バンドウォーク”となっていることから、これからの時間にかけてユーロ/米ドルの下降モメンタムがさらに強まる可能性も。

 以上を概括すると、12月のユーロ/米ドルの上値メドは先行1スパンを基準とする「1.1470ドル」、同下値メドは2017年6月時安値(=1.1118ドル、上図青色三角印)を基準とする「1.1120ドル」と想定します。

 よって、12月月間ベースにおけるユーロ/米ドルについては、上記レンジ(=1.1120-1.1470ドル、上図黄色四角枠)をベースとする、売り・トラップを仕掛けるのも一案でしょう。

 また、チャートのアナロジー(類比、類推)分析では、想定下値メドとしている「1.1120ドル」を割り込んだ場合は、「底抜け」フローとなり、ユーロ/米ドルの下降モメンタムがさらに強まる可能性もあるため、注意が必要でしょう。<津田>


【マーケットView】
マーケットViewは、毎日16時ごろアップの予定です。

※動画のアップ時間は前後する可能性があります。

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