市場調査部レポート

2018/11/09 12:50豪ドル/円、“ネックライン”突破!次なるターゲットは?

◆ファンダメンタルズ◆
<<相場環境>>
 6日に実施されたアメリカ中間選挙では、大方の予想通り民主党が下院で勝利する一方、共和党が上院で過半数を維持しました。大きなサプライズがなかった安心感からか、選挙結果を受けて米ドルや米株が上昇しました。トランプ大統領の暴走にある程度歯止めがかかり、また従来の「財政拡張+金融引締め」のポリシーミックスが「財政緊縮+金融緩和」の方向へややシフトするとみられることから、選挙結果からは「比較的安定した米ドル安」が想定されます。ただ、中間選挙という政治イベントを通過したことで、米ドルは経済ファンダメンタルズをより強く反映するかもしれません。
 もっとも、目先的には、中間選挙前の議員によるレームダックセッションが13日に召集されます。喫緊の課題は、12月7日に一部が期限切れとなる暫定予算への対応です。議会審議が難航するようならシャットダウン(政府機関の一部閉鎖)が意識されるかもしれません。また、セッションズ司法長官が更迭されたことで、モラー特別検察官によるロシア疑惑の捜査に横やりが入るようなら、トランプ政権と民主党との対立が先鋭化するかもしれません(政治不安は米ドル安要因か)。<西田>

【米ドル(/円)】
 8日の米FOMCは政策金利の据え置きを決定しました。声明文では、景気の堅調、失業率の低下や2%目標近辺での物価推移が指摘されました。FOMCは17年12月以降、3カ月ごと(FOMC2回に1回)に利上げを決定しており、声明文からはそのパターンに変化の兆候はみえませんでした。

 FFレート(政策金利)先物に基づけば、市場のメインシナリオ(確率50%超)は、12月および19年3月と9月に追加利上げというものです。仮にその通りであれば、FFレートは2.75-3.00%へ引き上げられ、「高金利」が米ドルのサポート要因となりそうです。

 来週(11/12- )は、10月のCPIコア(14日)同小売売上高11月のフィラ連銀指数やNY連銀指数(15日)10月の鉱工業生産(16日)など、米経済指標が多く発表されます。それらが景気堅調の持続を示すかどうか注目です。<西田>

【ユーロ
 欧州委員会はイタリアの2019年予算がEU財政ルールに抵触するとして、13日までに修正案の提出を求めています。これに対して、イタリアの連立政権は欧州委員会の予測が正しくないとして修正に応じない構えです。9日、イタリアのコンテ首相がユーロ圏財務相会合(ユーログループ)の議長と会談する予定です。何らかの進展があるかもしれません。

 イタリアの連立政権が修正に応じなければ、欧州委員会は21日にもイタリアへの制裁を財務相理事会に勧告する見込み。制裁として、最大でGDP比0.2%(2017年の実績に基づけば1.7兆ユーロ)の罰金が科される可能性があるようです。<西田>

【英ポンド】
 英国とEUの離脱交渉が合意に近いとの観測から、英ポンドが上昇する局面が散見されます。ただし、重要な問題が依然として解決していません。アイルランド国境の暫定措置(backstop=安全装置の意味)をどうするかという点です。
 英国とEUが新たな通商協定で合意するまで、英国全土が関税同盟に残留することでほぼ合意しています。しかし、その暫定措置に対して、英保守党内の強硬派は期限を設けるか、あるいは一方的に解除する権限を求めています。一方で、EUは安全装置である以上は無期限であるべきと主張しています。

 一部の報道によれば、英国のメイ首相が11日に閣僚と電話会議を行い、国境問題で同意を得られれば、12日か13日に正式な閣議を開いてEUへの正式提案を決定するようです。
 英国がEUと合意したうえで来年3月29日に離脱するためには、英国の離脱案に対して、EUが同意(11月に臨時サミット開催?)。その後に、英国を含めたEU全加盟国の議会がそれを承認する必要があります。「合意のある離脱」の見通しが固まるまで、紆余曲折がありそうです。<西田>

【豪ドル】
 RBA(豪中銀)は11月6日、政策金利を過去最低の1.50%に据え置きました。

 声明では、2018年と2019年のGDP成長率見通しがそれぞれ3.5%前後と、いずれも8月時点の3.25%から上方修正。また、失業率見通しは2020年に4.75%前後とし、8月時点の5%から引き下げました。

 これらの修正は、豪ドルにとってプラス材料と考えられます。ただ、豪ドルはそのことに対して反応薄でした。その要因として、政策金利が市場の予想通りに据え置かれたうえ、声明は“RBAは政策金利を当面据え置く”との市場の観測を変えるほどの内容ではなかったことが考えられます。声明における金融政策に関する文言は、前回10月会合時と全く同じでした。

 来週(11月12日の週)は、豪州の7-9月期賃金統計(14日)や10月雇用統計(15日)が発表されます。RBAは“インフレ率を押し上げるには、賃金の伸びが加速する必要がある”との見解を示しているため、特に賃金統計が重要と考えられます。その結果次第では、RBAの金融政策の先行きに関する市場の見方が変化して、豪ドル相場にも影響を与える可能性があります。

 賃金統計や雇用統計にサプライズがなければ、豪ドルは米国の長期金利(10年債利回り)の変動などによる米ドル全般の動き、そして投資家のリスク意識の変化の影響を受けやすい地合いになりそうです。豪ドルにとってリスクオフはマイナス材料、リスクオンはプラス材料と考えられます。<八代>

【NZドル】
 RBNZ(NZ中銀)は11月8日、政策金利を過去最低の1.75%に据え置くことを決定。金融政策報告では、RBNZが想定する利上げ時期は前回8月時点の“2020年7-9月期”から変わりませんでした。一方で、声明では、これまでの「(政策金利の)次の動きは、上下(=利上げと利下げ)のいずれも可能性がある」との文言が削除されました。

 RBNZが利下げの可能性に直接言及した文言を削除したことについて、市場の一部には金融政策スタンスが“中立”から“利上げ方向”に傾きつつあることを示唆したとの見方も浮上しました。

 ただし、RBNZは利下げの選択肢を排除していないようです。オア総裁は会合後の会見で、「GDP成長率が見通しを下回れば、利下げを検討するだろう」と語り、経済情勢が悪化した場合、利下げを行う可能性を示しました。

 NZドルは、RBNZの政策金利発表に反応薄でした。その要因として政策金利を長期間据え置くことが改めて示唆されたうえ、RBNZは利下げの選択肢を排除していないことが挙げられます。

 来週(11月12日の週)はNZの主要経済指標の発表がないため、NZドルは独自材料で動きにくいとみられます。NZドルは米国の長期金利(10年債利回り)の変動などによる米ドル全般の動き、そして投資家のリスク意識の変化の影響を受けやすい地合いになりそうです。豪ドルと同様、NZドルにとってリスクオフはマイナス材料、リスクオンはプラス材料と考えられます。<八代>

カナダドル】
 カナダドルは、原油価格の動向に注意が必要かもしれません。供給過剰の懸念を背景に、原油価格は下落を続けており、11月8日には米WTI先物が約8カ月ぶり、北海ブレント先物は約3カ月ぶりの安値をつけました。

 原油はカナダの主力輸出品であるため、原油価格の下落はカナダドルの下押し材料となります。市場では、BOC(カナダ中銀)の追加利上げ観測があり、そのことはカナダドルにとってプラス材料と考えられるものの、足もとの市場はBOCの追加利上げの可能性以上に、原油安に目が向いているようです。原油価格が一段と下落した場合、カナダドルは上値が重い展開になりそうです。<八代>


(出所:トムソン・ロイターより作成)

【トルコリラ】
 トルコの10月CPI(消費者物価指数)が11月5日に発表されました。結果は前年比+25.24%と、9月の+24.52%から上昇率が加速。TCMB(トルコ中銀)のインフレ目標である+5%を大きく上回り、約15年ぶりの高水準を記録しました。

 トルコが抱える問題のひとつに高インフレがあるため、CPI上昇率の加速はトルコリラにとってマイナス材料と考えられます。ただ、足もとの市場は、トルコの高インフレ以上に、米国とトルコの関係が改善しつつあることに目を向けているようです。CPI上昇率が加速したにもかかわらず、トルコリラが底堅く推移しているのはそのためと考えられます。ただ今後、高インフレにも市場の関心が向けば、トルコリラには下押し圧力が加わる可能性があり、注意は必要です。

 トルコの9月経常収支が12日に発表されます。経常赤字もトルコが抱える問題のひとつです。<八代>

 
(出所:トムソン・ロイターより作成)
 
【南アフリカランド】
 南アフリカランド(以下、ランド)は今週(11月5日の週)、対米ドルでは14ランド前後での“もみ合い”になる一方、対円は堅調に推移し、約3カ月ぶりの高値を記録しました。こうした値動きをみると、ランド/円の上昇は、ランド高というよりも円安によるものと考えることができます。足もとの円安の主な要因として、NYダウなど主要国株価が持ち直していることで、リスク回避の動きが後退したことが挙げられます。

 来週(11月12日)は、南アフリカの9月小売売上高(14日)が発表されるものの、相場材料としては力不足の感があります。ランド/円は、主要国株価の変動などによる“円の強弱(円高、あるいは円安が進むか?)”に左右される展開になりそうです。<八代>


◆テクニカル◆

※上記想定レンジおよび投資戦略アイデアは、各種テクニカル指標を基に週間ベースの想定をしています。
※最終的な投資判断はご自身で行っていただくようお願いいたします。

〇“Pick Up”通貨:米ドル/円、豪ドル/円

【米ドル/円】 (11/12-16 戦略アイデア) コアレンジ:112.90-114.50円、買い・トラリピ
 
 上図チャートでは、1) 21日MA(移動平均線)が右肩上がりであること、2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっていること、3) ローソク足の下方に青色の雲(=サポート帯)およびパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして、4) DMI(方向性指数)で+DI>-DIとなっていることから、本稿執筆(11/9)時点における米ドル/円は、緩やかな上昇トレンドを示すチャート形状となっていることが視認できます。

 上図チャートの注目ポイントは3点。まず1点目は、ADXの動向。現在、+DI>-DIとなっている状態でADXが右肩上がり形状になりつつある(上図赤色点線丸印)ことから、これからの時間は、米ドル/円に対する上昇トレンドの“追い風支援”となることが想定されます。

 2点目は、BB(ボリンジャーバンド)の動向。足もとでは、BB・±2σラインが21日MAに対して拡張する、いわゆる“エクスパンション”が示現しており、これは相場の力の発散/拡散を意味していることから、ここでは上昇モメンタムが強まることを示唆しています。

 そして3点目は、遅行スパンの動向。本稿執筆(11/9)時点ではローソク足と絡み合う形状(上図黄色矢印)となっているものの、仮に、これからの時間において当該スパンがローソク足を上抜けブレークした場合は、【好転】が示現し、上昇モメンタムが強まる可能性も。

 以上を概括した上で、次週の米ドル/円のコアレンジを勘案すると、上値メドは10/3時高値を基準とする「114.50円」、下値メドは先行1スパンを基準とする「112.90円」と想定します。

 よって、次週の米ドル/円については、足もとでの高値警戒感の動きや、米国市場が三連休に入る前の利益確定フローに用心しつつ、当該レンジ(=112.90-114.50円、上図黄色四角枠)をベースとする、買い・トラリピを仕掛けるのも一案でしょう。<津田>

【豪ドル/円】 (11/12-16 戦略アイデア) コアレンジ:81.50-83.80円、買い・トラップトレード

 11/9の『注目のチャート』でも記載した通り、NZドル/円に引き続き、豪ドル/円においても『逆三尊底』(トリプルボトム、ヘッド・アンド・ショルダーズ・ボトム)の重要メルクマールである【ネックライン突破】と見られる動き(上図黄色矢印)が確認できます。

 上図チャートにおいて、ネックラインを「N」(=82.44円[9/26]、上図赤色点線)、ヘッドを「H」(=78.69円[9/7]、上図青色点線)、目標値(ターゲット)を「T」とすると、目標値「T」を求める式は以下の通りです。(いずれも暫定カウント)

T=N+(N-H)=82.44+(82.44-78.69)=86.19

 以上より、逆三尊底における目標値を求める計算式から導き出す豪ドル/円の足もとの目標値「T」は「86.19円」と仮定することができます。あくまでテクニカル分析に基づく、目標推論値としてご参考にしていただければ幸いです。

 そんな相場環境下、豪ドル/円の次週におけるコアレンジに目を向けてみたいと思います。

 上記チャートでは、1) 21日MA(移動平均線)が右肩上がりであること、2) BB・±2σラインが21日MAに対して拡張する、いわゆる“エクスパンション”が示現していること、そして、3) ローソク足がBB・+1σラインと同・+2σラインの間のゾーンを推移する“上昇バンドウォーク”となっていることから、足もとの豪ドル/円は上昇トレンドを示すチャート形状であることが視認できます。

 以上を概括した上で、次週の豪ドル/円のコアレンジを勘案すると、上値メドは7/19時高値(上図赤色三角印)を基準とする「83.80円」、下値メドはBB・+1σラインを基準とする「81.50円」と想定します。

よって、次週の豪ドル/円については、米ドル/円同様、足もとでの高値警戒感の動きや、米国市場が三連休に入る前の利益確定フローに用心しつつ、当該レンジ(=81.50-83.80円)をベースとする、買い・トラップトレードを仕掛けるのも一案でしょう。<津田>


【マーケットView】
マーケットViewは、毎日16時ごろアップの予定です。

※動画のアップ時間は前後する可能性があります。

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※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。

※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。

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