市場調査部レポート

2018/10/12 13:24決算発表が本格化、米株価の動きに要注意

各通貨ペアの投資戦略については「Weekly投資戦略ガイド」をご参照ください。次回は10月15日更新です。

◆ファンダメンタルズ◆
<<相場環境>>  
 10-11日、米株が急落しました。10日のNYダウの下げ幅(831ドル安)は過去3番目の大きさです。米株急落の背景は、長期金利の上昇や米中貿易摩擦の激化などが指摘されています。

 9月以降に長期金利が目立って上昇するなかで、米株は堅調が続き、NYダウは10月3日に最高値を付けていました。したがって、10-11日の株安は、金利上昇によるバリュエーション(株価評価)の調整、すなわち「健全な調整」とみることは可能です。
 もっとも、既に十分な調整となっているか疑問です。今年2月上旬に、やはり長期金利の上昇を背景にNYダウが調整した局面では、約2週間で当時の最高値から12.2%下落しました。今回は10月3日の高値から約1週間で7.0%の下落にとどまっています。

 また、足もとの株安が「(景気好調や株高、米ドル高の)終わりの始まり」となる可能性も無視できません。株価は景気の先行指標であり、一般に景気の動きに6か月程度先行すると言われています。利上げの累積効果、関税や貿易摩擦の影響などから、来春にかけて米景気が減速しないとも限りません。株安が続けば、企業や消費者のセンチメントの悪化などを通じて自己実現的に景気が悪化する可能性もあります。

 15日の週は、米企業の7-9月期の決算発表が本格化します。一段の株安には要注意でしょう。なお、株式の「弱気相場入り」は高値から15-20%の下落と定義されています。<西田>

【米ドル(/円)】
 米長期金利は、足もとの株安を受けていったん反落しているものの、引き続き上昇圧力を受けやすいと考えられます。景気は良好でインフレ圧力が強く、FRBが緩やかな利上げを続けるとみられるからです。そうした「良い金利上昇」は米ドル高要因と考えられます。

 ただ、財政赤字の拡大(=国債発行の増加)、トランプ大統領によるFRB批判(=中銀の独立性軽視)、中国による米国債投資の減少の可能性(米中摩擦が背景)など、「悪い金利上昇」をもたらしかねない材料も散見されます。その場合は、米ドル安要因と考えられます。とりわけ、長期金利上昇を背景に米株が下落するケースでは、リスクオフの米ドル安円高につながりかねないため、要注意でしょう。<西田>

【ユーロ】
 イタリアの「五つ星運動」と「同盟」の連立政権は、引き続き「フラットタックス」や「最低所得保障」などの選挙公約を2019年予算案に盛り込む構えです。政府の財政計画に対して、中立の議会予算局はEUルール(財政赤字がGDP比3%以内)に抵触する可能性があるとして承認しませんでしたが、11日議会は上下院ともにこれを承認しました。

 イタリアを含むユーロ加盟国は10月15日までに予算案を欧州委員会に提出します。欧州委員会はこれを判定し、必要とあれば2週間以内に予算修正を要請します。あくまでも選挙公約を実現したいイタリア連立政権と、現行の予算案を拒否する可能性が高い欧州委員会の対立は激化しそうです。

 ドイツとイタリアの長期金利差は3%を超え、欧州債務危機が終息しつつあった2013年3月以来の最大となっています。イタリアの予算に対する懸念から長期金利差が一段と拡大するようなら、ユーロにとってマイナスの影響がありそうです。<西田>

【英ポンド】
 ここもと英ポンドが堅調です。ブレグジット交渉で合意に達するとの期待感が背景にあります。ただし、EUのバルニエ主席交渉官は10日、「(ブレグジット交渉の合意は)手の届くところにあるが、障害は残る」と述べ、楽観論をけん制しました。

 問題となっているのは、アイルランドの国境と関税同盟です。EUは、英領北アイルランドのみ関税同盟に残り、北アイルランドと英本島の間で物流をチェックすることを提案。一方、英国のメイ政権は、新たな貿易協定が決まるまで、英国が関税同盟に残留することを提案しています。EUは当初これを拒絶していましたが、歩み寄りの姿勢をみせています。ただし、英保守党内に多いブレグジット推進派はこれに反対しており、強引に進めればメイ政権が崩壊するリスクもあります。

 楽観的なシナリオは、10月17日のEUサミットで暫定合意し、11月中旬に臨時サミットを開催して最終合意。それをEU加盟各国が承認して、19年3月に英国がEUを離脱するというものです。しかし、大きな「障害」が残るのも事実であり、結局のところ、英国とEUが近く合意に達する可能性は五分五分といったところのようです。<西田>

【豪ドル、NZドル】
 豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルは、米国の長期金利(10年債利回り)に目を向ける必要がありそうです。米長期金利が上昇すれば、米ドルが全般的に強含む可能性があります。その場合、豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルには下落圧力が加わりそうです。一方、米長期金利が低下すれば、豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルは底堅い展開になりそうです。

 豪ドル/円(NZドル/円)は、豪ドル/米ドル(NZドル/米ドル)と米ドル/円の両方の値動きの影響を受けます。米長期金利の上昇によって米国株が下がれば、リスク回避の動きが強まり、米ドル/円が下落する可能性があります。豪ドル/米ドルと米ドル/円がいずれも下落すれば、豪ドル/円の下げは大きくなる可能性があります。NZドル/円も同様です。豪ドル/円やNZドル/円の目先の下値メドとして、豪ドル/円は78.69円(9月7日安値)、NZドル/円は72.27円(9月10日安値)が挙げられます。

 来週は16日にNZの7-9月期CPIとRBA(豪中銀)議事録18日に豪州の9月雇用統計の発表があり、それらの結果に豪ドルやNZドルが反応する可能性もあります。ただ、市場の関心が米長期金利などに向いているなかでは、豪州やNZの経済指標への反応は一時的に終わる可能性があります。<八代>

【カナダドル】
 カナダドル/円は今週(10月8日の週)、約3週間ぶりの安値を記録しました。カナダドル/円が値を下げた背景として、米国の株安によってリスク回避の動き(円高要因)が強まったことや、原油価格の下落(カナダドル安要因)が挙げられます。

 米国とカナダが9月30日にNAFTA(北米自由貿易協定)見直し交渉で合意したことや、BOC(カナダ中銀)が10月利上げ観測(次回会合は10月24日)は、カナダドルにとってプラス材料と考えられます。ただ、市場の関心は現在、カナダドルの独自材料以上に、国外の材料(米長期金利、主要国の株価、原油価格)に向いている状況です。来週はカナダの9月CPI(消費者物価指数)と8月小売売上高が発表される(いずれも19日)ものの、カナダドル/円は主要国株価や原油価格の変動に影響を受けやすい地合いが続きそうです。<八代>

【トルコリラ】
 10月12日、トルコで米国人のブランソン牧師の審理が行われます。本稿執筆時点では、審理の結果は判明していませんが、来週(10月15日の週)のトルコリラは裁判所が下した判断によって相場状況が異なる可能性があります。

「米国とトルコが米国人牧師を解放することで合意した」との報道があります(ただし、これは正式発表ではなく、注意が必要)。実際に、裁判所がブランソン牧師を解放するとの判断を下せば、トルコと米国の関係が改善に向かう可能性があり、トルコリラは上昇するとみられます。一方、裁判所が解放を認めなければ、前述の報道で解放への期待が高まっているだけに、失望も大きくなりそうです。トルコリラは下落圧力にさらされる可能性があります。<八代>

【南アフリカランド】
 10月9日、南アフリカのネネ財務相が辞任し、後任としてムボウェニ氏が指名されました。ネネ氏は10月3日、政治介入の疑いがあるグプタ兄弟の自宅を数回にわたり訪問したことがあると認め、それまでの主張を一転。それを受けて、ネネ氏に対して辞任を求める圧力が強まっていました。ムボウェニ新財務相は、SARB(南アフリカ中銀)総裁を10年間(1999-2009年)務めた経験があります。

 ネネ氏が財務相を辞任したことで政治の不透明感が和らいだことや、後任に元SARB総裁が就任したことは、南アフリカランドにとってプラス材料と考えられます。

 一方で、南アフリカランドの上値を抑える要因は残存しています。南アフリカ経済はリセッション(景気後退)に陥っているうえ、南アフリカの格付けをめぐる懸念も根強くあります。南アフリカ国債の格付けは、S&Pとフィッチが投機的等級(ジャンク)、ムーディーズは投資適格級最低(Baa3)です。ムーディーズは10月12日に南アフリカの格付けを発表する予定です(本稿執筆時点で未発表)。南アフリカランド/円については、米国の株安(円高要因)もマイナス材料です。

 南アフリカランド/円は約2カ月にわたって、おおむね7-8円のレンジで上下動を繰り返してきました。ランド/円にとってプラスとマイナス双方の材料があることから、ランド/円がレンジの上下どちらかを抜けるのは当面難しいかもしれません。<八代>

◆テクニカル◆(“Pick Up”通貨:米ドル/円、カナダドル/円)
【米ドル/円】 (10/15-19 戦略アイデア) コアレンジ:111.00-113.00円買い・トラップ


 米ドル/円は、上図チャートからも分かる通り、9月半ばより継続していた「上昇バンドウォーク」(上図黄色四角枠)が10/8の段階で一旦終了し(上図黄色矢印)、現状は「バンドウォーク崩れ」(上図青色四角枠)の下押し主体の相場展開となっています。

 足もとの米ドル/円は、前述した「バンドウォーク崩れ」とともに、DMI(方向性指数)において-DI>+DIとなる「下方優位性」となっている(上図青色点線丸印)ことから、当面は下値を試す相場展開となりそうです。

 直近高安レート(H=114.51円[10/3]、L=109.78円[8/21])を基点とするフィボナッチ・リトレースメントを見てみると、足もとの米ドル/円における2つの重要ポイントについて取り上げることができます。まずは、フィボナッチ・50.0%ライン、つまり、半値押し水準である「112.15円」でサポートされるか否か。(上図青色点線、終値レベルを想定)

 仮に、同ラインを下抜けブレークした場合は、フィボナッチ・61.8%ラインである「111.59円」、ないしはBB(ボリンジャーバンド)・-2σラインを基準とする「111.50円」まで下押しする可能性を見るべきでしょう。

 以上を概括すると、次週の上値メドは21日MAを基準とする「113.00円」、同下値メドはフィボナッチ・61.8%ラインおよびBB・-2σラインを多少アンダーシュートした水準である「111.00円」と想定します。引き続き下降モメンタムの強まりも考慮しつつ、下押し主体の相場展開を想定すべきでしょう。<津田>

【カナダドル/円】 (10/15-19 戦略アイデア) コアレンジ:85.30-87.00円買い・トラップ

 カナダドル/円については、米ドル/円同様、9月半ばから「上昇バンドウォーク」(上図黄色四角枠)を形成していましたが、米ドル/円よりも少し早い段階となる10/5時点で上昇バンドウォークが終了し(上図黄色矢印)、現状は「バンドウォーク崩れ」(上図青色四角枠)の下押し主体の相場展開となっています。

 足もとのカナダドル/円は、前述した「バンドウォーク崩れ」とともに、DMI(方向性指数)において-DI>+DIとなる「下方優位性」となっている(上図青色点線丸印)ことから、当面は下値を試す相場展開となりそうです。

 直近高安レート(H=89.21円[10/3]、L=83.80円[9/6])を基点とするフィボナッチ・リトレースメントを見てみると、足もとのカナダドル/円は、フィボナッチ・61.8%ラインである「85.87円」(上図赤色点線)でサポートされるか否かが喫緊のポイントと言えるでしょう。

 仮に、同ラインを下抜けブレークした場合は、BB・-2σラインを基準とする「85.30円」(上図赤色三角印)付近まで下押しする可能性を見るべきでしょう。

 以上を概括すると、次週の上値メドは21日MAを基準とする「87.00円」、同下値メドはBB・-2σラインを基準とする「85.30円」と想定します。次週は引き続き、株式相場の不安定な動きに伴うリスク回避の円買いフロー主体の下降モメンタムの強まりに注意しつつ、下押し主体の相場展開を想定すべきでしょう。

 トレード戦略アイデアとしては、打診買い※を目論む「買い・トラップトレード」も一案でしょう。(※打診買い:相場の下落局面において、反発の可能性に期待しつつ、小口の買い注文を入れること。) <津田>

(注) 「戦略アイデア」については、観測におけるタイムラグやそれに伴うメルクマール変化により、必ずしも『Weekly投資戦略ガイド』と一致するものではありません。



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【マーケットView】
マーケットViewは、毎日16時ごろアップの予定です。

※動画のアップ時間は前後する可能性があります。

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※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。

※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。

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