市場調査部レポート

2018/08/10 16:04トランプの戦争2

各通貨ペアの投資戦略については「Weekly投資戦略ガイド」をご参照ください。原則、毎月曜更新(次回は8月13日)です。

◆ファンダメンタルズ◆
<<相場環境>> 
 トランプ政権が全方位で対外強硬姿勢をみせています。11月の中間選挙を前に、国内へのアピールの面もありそうです。今後もそれぞれに関連した通貨の相場材料になる可能性があります。
 全般的には、貿易摩擦の激化は世界貿易の縮小要因であり、貿易依存度の高い資源新興国通貨にとってマイナス(米ドルにプラス)とみられます。長い目でみて世界経済にブレーキがかかると判断されれば、リスクオフによる円高、そして日銀の緩和余地が小さいことによる円高が想定されます。その場合の通貨の序列は、「円>米ドル>ユーロやポンド>資源新興国通貨」が基本となりそうです。

主なスケジュールは以下の通りです。

<西田>

【米ドル(/円)】
 8月に入って米ドル実効レートが堅調に推移する一方で、米ドル/円は軟調な展開となっています。貿易摩擦の激化により米ドルが主に資源新興国通貨に対して上昇(欧州通貨は独自の政治問題も抱えています)、そしてリスクオフにより円が買われていると解釈できます。
 目先、市場の関心が貿易問題に集まれば、同様の傾向が続く可能性はあります。さらには、貿易摩擦の悪影響が各国の経済ファンダメンタルズに表れないか注意する必要もあります。

 ただし、中期的には金融政策の方向性の差が改めて意識される局面(=米ドル高円安要因)はありそうです。
 米FOMCは8月1日に金融政策の据え置きを決定しましたが、景気や物価の判断は「タカ派的」でした。8月9日時点のFFレート(政策金利)先物によれば、次回9月のFOMCで今年3回目の利上げが行われる確率は92%、12月に4回目の利上げが行われる確率は61%です。さらには来年6月の利上げが59%の確率で織り込まれています。今後の経済指標等によって、市場の見方がどう変化するかに注目です。
 一方、日銀は7月31日の会合で、金融政策方針の微修正を行いました。従来に比べて長期金利(10年物国債利回り)の上昇が容認されるようになりましたが、あくまでも「金融緩和の持続性を高めるため」との日銀の説明は市場に受け入れられたようです。<西田>

【ユーロ】
 「イタリア国債>ドイツ国債」の利回り格差が再び拡大し始めています。イタリアで6月に誕生した「五つ星」と「同盟」のポピュリスト政権が、財政赤字拡大につながる予算を打ち出すとの懸念が背景です。8月末-9月上旬には大手格付け会社によるイタリアの格付け見直しが予定されており、格下げの可能性も意識されているようです。
 もともと反ユーロ的公約を掲げていた「五つ星」と「同盟」による政権の動向次第では、「ユーロ圏の結束の乱れ⇒ユーロ通貨の下落要因」との連想が働き易くなりそうです。<西田>

【英ポンド】
 8月2日、BOE(英中銀)は0.25%の利上げを実施し、政策金利を0.75%としました。「次の一手」も利上げとみられますが、そのタイミングは19年半ば以降と予想されており、当面は金融政策が相場材料にはなりにくいかもしれません。

 英国とEUの離脱交渉は引き続き難航しています。メイ英首相は、「合意なき離脱」に備えた閣僚協議を9月上旬にも行うとされています。8月16日から英国とEUとの担当者による交渉が再開されます。17日には記者会見が開催される可能性があり、両者の隔たりが明らかになれば、さらにポンド安要因となるかもしれません。<西田>

【豪ドル】
 豪ドルは、8月7日のRBA(豪中銀)政策金利発表に反応薄でした。政策金利は市場の予想通りに1.50%に据え置かれ、またRBAの声明で金融政策の現状維持を当面続けることが改めて示唆されたためと考えられます。

 豪ドルは、国内要因(豪州の経済指標など)以上に外部要因に影響を受けやすい地合いが続いており、その状況は今後も続きそうです。米国など各国の通商政策のほか、中国・人民元や上海総合指数の動向に目を向ける必要がありそうです。<八代>

【NZドル】
 RBNZ(NZ中銀)は8月9日、政策金利を過去最低の1.75%に据え置きました。声明では、「政策金利を“2019年から2020年にかけて”現行水準に維持すると予想している」と表明。金融政策報告では、想定される利上げ時期を2020年7-9月期とし、前回5月時点の2019年7-9月期から1年後ズレさせました。

 RBNZが利上げ予想時期を1年後ズレさせたことは、NZドルにとってマイナス材料です。FRB(米連邦準備制度理事会)は利上げを今後も続けることを示唆しており、とりわけNZドル/米ドルには下押し圧力が加わりやすいとみられます。<八代>

【カナダドル】
 カナダドルは今週(8月6日の週)、軟調に推移しました。原油価格(米WTI先物)が弱含んだほか、対円では米中の貿易摩擦が激化するとの懸念(リスクオフ要因)も重石となりました。

 市場では、BOC(カナダ中銀)が10月に追加利上げを行うとの観測が有力です。そのことはカナダドルにとってプラス材料です。カナダの7月CPI(消費者物価指数)が8月17日に発表されます。CPIでインフレ圧力の高まりが示唆されれば、BOCの利上げ観測は一段と高まる可能性があります。
 また、NAFTA(北米自由貿易協定)再交渉の先行きについて楽観的な見方があることも、カナダドルを下支えしそうです。米国とメキシコは7月26日、NAFTA再交渉の協議を再開しました。両国は再交渉で合意に至っていないものの、合意に向けて協議は進展しているようです。米国とメキシコの協議が一段と進展し、さらに合意が近いとの観測が浮上すれば、カナダとの妥結期待も高まる可能性があります。<八代>

【トルコリラ】
 トルコリラは8月10日、対米ドルや対円で過去最安値を更新しました。TCMB(トルコ中銀)の独立性に対する懸念や、ブランソン牧師の拘束をめぐるトルコと米国の関係悪化を背景に、トルコリラの下落圧力が強まっています。トルコ在住の米国人であるブランソン牧師は、2016年7月のクーデター未遂事件に関与したとしてトルコ当局に逮捕され、同年10月に収監。今年7月25日からトルコ国内の自宅に軟禁されています。
 トルコ政府の代表団が8日、トルコと米国の対立について協議するため、サリバン米国務副長官と会談したものの、両国の関係改善に向けて進展はありませんでした。会談ではサリバン副長官がブランソン牧師を釈放する約束をトルコに求めたものの、トルコ側は拒否したようです。

 TCMBは8月6日、市中銀行が中銀に預け入れる外貨準備率の上限を45%から40%に引き下げました。それにより、市場に米ドルが供給される一方で、市場からトルコリラが吸収されるため、米ドル売り・トルコリラ買い介入と同様の作用があると考えられます。ただ、TCMBの今回の措置はほとんど効果がありませんでした。

 トルコリラが持続的に上昇するには、(1)米国とトルコの関係が改善する、(2)TCMBが緊急会合などで、市場を驚かせるほど思い切った幅の利上げを行う、(3)エルドアン政権が緊縮的政策を打ち出し、経常赤字の縮小が期待される、などの条件のいくつか(あるいは全部)が整う必要がありそうです。<八代>

【南アフリカランド】
 ランドは今週(8月6日の週)、対米ドルや対円で軟調に推移しました。米国と中国の貿易摩擦が激化するとの懸念(リスクオフ要因)が、ランドへの下落圧力となりました。
 南アフリカの6月鉱業生産が14日に発表されます。南アフリカ経済をめぐる懸念があるなか、鉱業生産で景気の低迷が改めて示されれば、ランドの重石になりそうです。鉱業生産にサプライズがなければ、ランドは引き続き、米中の通商政策をめぐる報道に反応しやすい地合いになりそうです。<八代>

◆テクニカル◆(“Pick Up”通貨:米ドル/円、トルコリラ/円)
【米ドル/円】 (8/13-17 戦略アイデア) コアレンジ:109.60-112.00円売り・トラリピ


 上図チャートにおける本稿執筆(8/10)時点の各メルクマールをそれぞれ確認すると、1) 26週MA(移動平均線)が右肩上がりであること、2) BB(ボリンジャーバンド)・±2σラインがその26週MAに対して概ねパラレルで推移していること、3) ローソク足がBB・+1σライン付近にあること、そして、4) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっていることから、足もとにおける米ドル/円の基本トレンドはレンジ相場を示すチャート形状となっていることが視認できます。

 そんな中、その他で注目すべきメルクマールは・・・3つ。

 まず1つ目は、パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)。当該メルクマールは、先週(7/29の週)時点でローソク足の上方で点灯する「売りサイン」に転換していることから、足もとでは「上昇一服」→「下押しフローの起点」となり得る可能性も。

 2つ目は、BB・+1σライン。現状、ローソク足が同ライン(≒110.90円※)付近にあり、仮にローソク足が終値レベルで同ラインを割り込んだ場合は、「上昇バンドウォーク崩れ」→「下押しフロー主体の相場展開」となる可能性もありそうです。(※8/10時点Bid基準値)

 そして3つ目は、チャート下部にあるSSTC(スローストキャスティクス)。当該メルクマールを構成する2本の線が、「買われ過ぎ」を示唆する80%ライン付近で交差し、右肩下がり形状となる“デッド・クロス”が示現しています。(上図黄色丸印)

 よって、これらメルクマールを概括すると、これからの時間において、SSTCの2本の線がさらに下方へ推移するような動きとなった場合、そして、ローソク足が終値レベルでBB・+1σライン(≒110.90円)を割り込んだ場合は、先行2スパン(≒109.60円)付近までの下押しフローを想定すべきでしょう。

 次週(8/13-17)における米ドル/円の下値メドは、上述の通り先行2スパンをメドとする「109.60円」、同上値メドは8/1に付けた高値付近を基準とする「112.00円」との想定。当該レンジをベースとする「売り・トラリピ」を仕掛けてみるのも一案でしょう。<津田>


【トルコリラ/円】 (8/13-17 戦略アイデア) コアレンジ:17.00-20.40円売り・トラップ
 新安値更新をジリジリと続ける、いわゆる“逆ブブカ相場”の様相を呈しているトルコリラ/円ですが、足もとの重要ポイントを探る上で、テクニカル分析の「N波動」について見ていきたいと思います。以下、「N波動・下落型」のイメージ図につきご覧ください。
 
上図より、「n」値を求めるための計算式は、以下の通りです。

n=C-(A-B)

 当該計算式については、暫定カウント(A、B、C)があくまで直近チャートのメルクマールを基準としており、チャートの横軸範囲によっては“推測値”(or“暫定値”)に過ぎないことを前提条件とする必要がありますが、あくまで直近の目安を勘案する上での参考式としてご覧ください。この「N波動」を足もとのトルコリラ/円・日足チャートに当てはめて見ると、以下のようになります。

 上図は8/7の『注目のチャート』において記載したN波動分析となっており、そこではAの暫定カウントを4/30高値の「27.04円」と想定しています。そして、B=「22.22円」(5/23)、そしてC=「24.45円」(7/9)と仮定することで、将来予測値(n)を求める式を【n=24.45-(27.04-22.22)】とし、よって、この計算式から得られる暫定値を【n=19.63】としていました。

 そんな中、8/10の本稿執筆時点において当該想定レート(n=19.63円)を大きく下回ったこともあり、チャートの横軸を拡大し、暫定値Aを1/8高値の「30.24円」に変更すると、以下のようになります。

 以上を概括すると、当初想定n値である「19.63円」を下回った場合の次なる重要ポイントであるn’値は、上記N波動計算より「16.43円」と想定することが可能です。ただし、当該レート示現までには、相応の日柄経過も必要となるため、足もとでは大台基準値である「17.00円」を想定した方がよさそうです。

当該レートはあくまでチャート上の暫定カウントから導き出したものであること、そして繰り返しながらチャートの横軸範囲次第では暫定カウント(ポイント)が変わり得ること、そして、今回算出したn’値である「16.43円」を下回った場合は、さらなる下降フローが想定されることを念頭に置いた上での参考値としていただければ幸いです。

これらを踏まえた上で、次週(8/13-17)におけるトルコリラ/円の暫定的下値メドは、「17.00円」、同暫定上値メドは日足・先行1スパンを基準とする「20.40円」との想定。あくまで参考ながら、当該レンジをベースとする「売り・トラップトレード」を取り入れるのも一案でしょう。<津田>

(注) 「戦略アイデア」については、観測におけるタイムラグやそれに伴うメルクマール変化により、必ずしも『Weekly投資戦略ガイド』と一致するものではありません。


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※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

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