市場調査部レポート

2018/07/06 13:25貿易戦争はエスカレートするか

各通貨ペアの投資戦略については「Weekly投資戦略ガイド」をご参照ください。原則、毎月曜更新(次回は7月9日)です。

◆ファンダメンタルズ◆
<<相場環境>>
 6日、米国が知的所有権侵害に対する制裁措置として、340億ドルの中国製品に25%の関税を賦課しました。中国は即座の報復を表明しています(本稿執筆時点では未発動)。一方、トランプ政権は追加的措置の準備を進めており、中国も同等の報復も辞さない構えを崩していません。
 貿易戦争の影響はすでに、中国の貿易統計や米企業の仕入れコストなどに見え始めており、貿易戦争がエスカレートしないか懸念されるところです。

 11-12日、NATO(北大西洋条約機構)首脳会議が予定されています。トランプ大統領が欧州の加盟国に安全保障の負担増を求めるかもしれません。また、米国が検討中の自動車関税に関して、何らかの発言や協議内容が伝えられる可能性もあり、そちらにも注意が必要でしょう。<西田>

【米ドル(/円)】
 FOMC議事録(6/12-13開催分)では、緩やかな利上げを継続する意向が示されました。FFレート(政策金利)先物に基づけば、市場のメインシナリオは「2019年末までに3回の利上げを行う」というものです。今年9月と12月に利上げが実施されると仮定すれば、19年中に1回の利上げしか織り込まれていないことになります。今後の経済情勢次第で、利上げ観測が高まるようであれば、金融政策見通しの変化が米ドルのサポート材料となりそうです。

 FOMCでは、財政政策(トランプ減税)が景気の上振れ要因となりうる一方で、通商政策(貿易戦争)や外部要因(欧州・新興国情勢)が同下振れ要因になりうるとの指摘がありました。

 米2年金利が高止まりする一方で、10年金利が弱含んでいるため、イールドカーブ(利回り曲線、2-10年金利差)はフラットニング(平たん化、金利差縮小)しています。経験的にはフラットニングは景気鈍化に先行してみられる現象です。FOMC議事録によれば、イールドカーブはFOMCが注視すべき多くの要因の一つとの位置付けですが、フラットニングがさらに進んで逆転(2年金利>10年金利)しないか、米ドル安要因として注意しておく必要はありそうです。<西田>

【ユーロ】
 6月28-29日のEUサミット(首脳会議)は、難民問題でEU内の共通ルールを作ることで合意しました。これを受けて、ドイツのゼーホーファー内相は辞任を撤回、ドイツの連立政権崩壊の危機は回避されました。また、イタリアのコンテ首相も共通ルール作成に合意しており、反移民(難民)の姿勢を強める「五つ星運動」と「同盟」の連立政権もいったんはドイツやフランスと足並みを揃える方向です。

 もっとも、共通ルールの詳細まで合意ができているわけではありません。難民が大量に押し寄せる地中海沿岸諸国と、最終目的地になる裕福な内陸国という、古くて新しい「南北問題」の根は深く、欧州政治不安の火種として残りそうです。

 4日、ECBメンバーの一部が、(市場が想定する)19年末の利上げは遅すぎるとの見解を表明したとの報道が伝わり、利上げ観測が強まりました。足もとで改善をみせる経済指標がやや増えたとの印象もあります。ただ、欧州政治が引き続き不安定であることに加え、米国との貿易摩擦に対する懸念も強いため、ユーロ高が持続するのは難しいかもしれません<西田>

【英ポンド】
 今年10月ごろの決着を目指している英国とEUの離脱交渉が進展していません。北アイルランド(英国)とアイルランドとの国境問題、それにも関連した離脱後の税関の問題などがネックになっているようです。英国内、それも与党保守党内でも、完全離脱派と親EU派の対立が鮮明であり、メイ首相の求心力は大きく低下しているようです。英国とEUとの合意のない離脱、いわゆる「ハード・ブレグジット」も次第に現実味を帯びつつあるようです。

 6月21日のBOE(英中銀)の会合では、政策金利の据え置きが決定されました。ただし、決定は6対3で、即時利上げを主張した委員が従来の2人から3人に増えました。そのため、次回8月2日の会合では利上げが実施されるとの見方が有力です。そのため、ポンドが上昇するためには、年内の追加利上げが示唆される、あるいはブレグジット交渉に進展がみられるなどが重要な要素となりそうです。<西田>

【豪ドル】
 豪ドルは、国内要因以上に外部要因(米国と中国の通商政策など)に反応しやすい地合いです。7月3日のRBA(豪中銀)の政策会合にサプライズはなく、市場ではほとんど材料になりませんでした。来週(7月9日の週)は、豪州の6月NAB企業景況感(10日)7月ウエストパック消費者信頼感指数(11日)が発表されるものの、材料としては力不足の感があります。豪ドルは引き続き外部要因に左右される展開になりそうです。主な外部要因として、米中の通商政策中国・上海総合指数と人民元、原油など資源価格が挙げられます。<八代>

【NZドル】
 NZドルは、7月2日に対米ドルで約2年1カ月ぶり、3日に対円で約1年8カ月ぶりの安値を記録しました。NZドルが下落した主な要因として、米国と中国の貿易摩擦が激化するとの懸念(=リスク回避の動き)や、中国・上海総合指数と人民元の下落が挙げられます。
 対米ドルでの人民元の下落は足もとで一服したものの、上海総合指数は依然として下げ止まっていません。また、米中の両国は、今後さらなる制裁関税を打ち出す可能性もあります。
 来週(7月9日の週)は、NZの主要な経済指標の発表はありません。NZドルは引き続き、米中の通商政策、上海総合指数と人民元の動向に影響を受けやすい地合いになりそうです。<八代>

【カナダドル】
 BOC(カナダ中銀)が7月11日に政策金利を発表します。その結果がカナダドルの動向に影響を与えそうです。
 市場では、0.25%の利上げが決まるとの見方が大勢です。その通りの結果になれば、声明の内容に注目です。声明で、近い将来の追加利上げの可能性が示されれば、カナダドルは上昇するとみられます。一方で、政策金利の当面据え置きが示唆されれば、カナダドルの上昇は一時的に終わる可能性があります。政策金利が据え置かれた場合は、サプライズとなり、カナダドルは下落するとみられます。<八代>

【トルコリラ】
 エルドアン大統領の2期目の就任式が7月9日に行われます(任期は5年)。それにより、トルコは正式に「議院内閣制」から「大統領制」に移行します。9日は新内閣も発表される予定です。内閣人事では、シムシェキ副首相の処遇が焦点になりそうです。市場からの信任が厚いシムシェキ氏が閣内に残ればトルコリラのプラス材料になる一方、閣外に去ればトルコリラのマイナス材料になると考えられます。また、エルドアン大統領の金融政策に関するコメントに注意が必要です。<八代>

【南アフリカランド】
 今週(7月2日の週)のランドは、比較的落ち着いた展開でした。ただ、市場では南アフリカ経済に対する懸念が根強くあります。南アフリカ経済は1-3月期にマイナス成長(GDP成長率は前期比年率マイナス2.2%)を記録しました。来週(7月9日の週)は、南アフリカの6月企業信頼感指数(10日)5月鉱業生産(12日)が発表されます。それらで経済の低迷が改めて浮き彫りになった場合、ランドに下落圧力が加わる可能性があります。<八代>

◆テクニカル◆(“Pick Up”通貨:米ドル/円、カナダドル/円)
【米ドル/円】 (7/9-13 戦略アイデア) コアレンジ:109.60-111.00円T字型FMT


 上図チャートより、1) 21日MA(移動平均線)が右肩上がりであること、2) 遅行スパンがローソク足の上方にあること(上図黄色矢印)、3) ローソク足の下方に青色の雲(=サポート帯)およびパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして4) DMI(方向性指数)で+DI>-DIとなっていること(上図赤色点線丸印)から、足もとの米ドル/円は下方硬直性を伴う緩やかな上昇トレンドとなっていることが分かります。

 その一方で、21日MAが鈍角推移となっていること、また、各BB(ボリンジャーバンド)が21日MAに対してパラレルに推移していることから、依然としてBB・+2σライン(≒111.00円)付近では上値の重い相場展開となりそうです。(※本稿執筆[7/6午前]時点観測)

 想定するコアレンジの上値メドはBB・+2σラインを基準とする「111.00円」、同下値メドはBB・-2σラインを基準とする「109.60円」。当面は下方硬直性を伴うという前提の下、当該レンジ内に「買い・トラリピ」を仕掛けるのも一案です。

 一方で、先行1スパンからBB・+2σラインの間のゾーン(上図青色四角枠)である「110.00-111.00円」に「買い・トラリピ」を、そして先行1スパンからBB・-2σラインの間のゾーン(同黄色四角枠)である「109.60-110.00円」に「買い・トラップトレード」を仕掛ける【T字型フォーメーション】も一案でしょう。<津田>

【カナダドル/円】 (7/9-13 戦略アイデア) コアレンジ:83.00-85.00円買い・トラリピ


 上図チャートより、1) 21日MA(移動平均線)がやや右肩下がりであること、2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっていること、3) ローソク足が赤色の雲(=抵抗帯)の中に入り込んでいること、4) ローソク足の下方にパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして5) DMI(方向性指数)で+DI>-DIとなっていること(上図赤色点線丸印)から、足もとのカナダドル/円はレンジ相場(=ボックス圏相場)形成中であることが見て取れます。

 本稿執筆時点(7/6午前中)におけるカナダドル/円は、赤色の雲(=抵抗帯)の中である先行1・2スパン内(≒83.60-84.60円)が、言わば“居心地のいい”ゾーンとなっており、次週前半(7/11 BOC政策金利発表前まで)の間は当該レンジをベースとするレンジワーク主体の相場展開となりそうです。

 その一方で、当該レンジを上下ブレークした場合は、下値メドがBB・-1σライン基準である「83.00円」、上値メドがBB・+2σライン基準である「85.00円」が当面のコアレンジと捉えて良さそうです。(上図青色四角枠)

 総合すると、次週(7/9-13)のカナダドル/円は、当該レンジ(=83.00-85.00円)をベースとする「買い・トラリピ」がワークしそうです。<津田>


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※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

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