市場調査部レポート

2018/05/11 14:56米ドル/円、喫緊の重要ポイント

【相場環境】米ドル堅調の背景は主要国の金融政策見通しか
【米ドル】米ドル/円、喫緊の重要ポイントは?
【ユーロ】ユーロ/米ドル、昨年4月以来となる200日MA割れ
【英ポンド】英ポンド/円、反発フローの準備段階か
【NZドル】RBNZは利上げ予想時期を後ズレ
【加ドル】原油高に支えられて堅調に推移
【トルコリラ】TCMBの利上げは実現するか


【相場環境】 米ドル堅調の背景は主要国の金融政策見通しか

足もとで米ドルが堅調です。5月10日までの1か月間に、米ドルは他の主要通貨に対して全面高でした。南北首脳会談やイラン核合意問題などイベントもありましたが、底流には金融政策見通しの差があったと思われます。

5月10日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、主要中央銀行のなかで年内の利上げが有力視されているのは、FRB、BOC(カナダ中銀)、BOE(英中銀)です(下表参照)。ただし、FRBは年内に6月、9月(+12月?)と着実なペースでの利上げが想定されているのに対して、BOCやBOEの利上げは後ズレしているとの印象です。
とりわけ、次回6月13日の(FRBの)FOMCでの利上げが確実視される一方で、数週間前まで確実視されていた5月30日のBOCの会合での利上げや、6月21日のBOEの会合での利上げの確率は大きく低下してきました(下図)。

OISに基づいた18年末時点での政策金利予想は、FRBが2-2.25%です。これは、ECBや日銀だけでなく、BOCやBOE、さらにはかつて「高金利」とされていたRBA(豪中銀)やRBNZ(NZ中銀)をも上回ります

今後、経済情勢の変化等によって、上述の金融政策見通しがどう変化するかに注意は必要ですが、現時点では金融政策面から米ドルの優位は続くと判断できそうです。



来週(5/14-18)の相場材料
週明け14日はイスラエルの建国70周年にあたり、米国の駐イスラエル大使館がエルサレムへ移転します。イラン核合意からの米国の離脱もあって、中東情勢は不安定化しつつあるため、地政学リスクの高まりには要注意でしょう。
同じく14日、イタリアでポピュリスト政党「五つ星」と反ユーロ・反移民の「同盟」との連立政権が誕生する可能性があります。両党による連立政権は、3月の総選挙前に最も懸念されたシナリオでした。イタリアの政治情勢への市場の関心は高くないかもしれません。しかし、ユーロ圏で第3位の経済規模を持つイタリアで反ユーロ政権が誕生すれば、市場の潜在的なかく乱要因とみるべきでしょう。
14日の週には、中国の劉鶴副首相が訪米して米政府と協議する予定です。米中通商問題に関して何らかの進展がみられるかもしれません。

<チーフエコノミスト 西田明弘>


【米ドル】 米ドル/円、喫緊の重要ポイントは?

以下、米ドル/円・日足チャート+200日MA(移動平均線)+DMI(方向性指数)についてご覧ください。


 
5月に入って以来、米ドル/円は110円台手前で押し戻される相場展開が継続しており、いわば【110円の壁】で行く手を阻害されているような形となっています。(上図黄色矢印)

米ドル/円の喫緊の注目テクニカルラインは・・・200日MA(移動平均線)。

11日時点における同線の基準レートは110.16円となっており、同線の上抜けブレーク成否が今後の米ドル/円相場の趨勢を左右する重要ポイントとなりそうです。

そんな中、相場の方向性やトレンドの勢いを見る上で有用なメルクマールであるDMI(方向性指数)を見てみると、11日時点では「+DI>-DI」となっており、プラスの方向性優位の状態となりつつあることが視認できます。その一方で、ADXが右肩下がり形状となっていることから、3月後半を起点とする米ドル/円の上昇トレンドの勢いがやや一服する時間帯に入っていると捉えて良さそうです。(いずれも上図赤色点線丸印)

DMIが示唆するトレンドシグナルを基に勘案すると、足もとでは200日MA(≒110.16円※)が上値抵抗ラインとなる可能性が高そうです。(※5/11時点Bid値)

以上を総合すると、足もとの米ドル/円は、200日MAを意識するレンジワーク主体の相場展開となりそうです。

<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/米ドル、昨年4月以来となる200日MA割れ

以下、ユーロ/米ドル・日足チャート+200日MA(移動平均線)+DMI(方向性指数)についてご覧ください。


 
4月後半のレンジ下抜けブレーク以来、下押しフローが続くユーロ/米ドルですが、足もとでは重要メルクマールである200日MA(≒1.2016ドル※) を割り込む動きとなっています。(上図赤色点線丸印、※5/11時点Bid値)

このことは、昨年4月23日に実施された仏大統領選挙(第1回投票)においてマクロン候補(当時)が得票多数となった翌24日に、ローソク足が同線を上抜きブレークする、いわゆる“マクロン・ラリー”がスタート(上図黄色矢印)して以来継続した上昇トレンド期が、足もとでは一旦終息していると捉えるべきでしょう。

その一方で、相場のトレンド強弱を示唆するADXが、11日時点で80.70となっており(上図青色点線丸印)、ADXにおける傾向・パターンを考察すると、同数値が80近辺まで上昇し、その後右肩下がりとなったケースでは「トレンド一服(or一旦の逆転)」となっていることが見て取れます。(上図青色矢印)

以上を総合すると、現在のユーロ/米ドル相場は、ローソク足が重要メルクマールである200日MAを割り込んだことでトレンド転換を探る時間帯であること、その一方で、足もとではトレンドの「行き過ぎ」(※ここでは「下がり過ぎ」)が修正される可能性を考慮すべきでしょう。

これからの時間において、仮にADXが右肩下がり推移となった場合は、200日MA(≒1.2016ドル)近辺までの一時的な「戻り」を想定した方が良いのかもしれません。

<津田>


【英ポンド】 英ポンド/円、反発フローの準備段階か

以下、英ポンド/円・日足チャート+200日MA(移動平均線)+DMI(方向性指数)についてご覧ください。



10日に開催されたBOE(英中銀)金融政策委員会とカーニーBOE総裁会見を材料に、足もとでの利上げ観測が後退したこともあり、英ポンドが主要通貨全般に対して下押しフローの動きとなりました。(※ファンダメンタルズ部分詳細は、11日『スポットコメント』をご覧ください。)

英ポンド/円・日足チャート+200日MA+DMIを見ると、以下のようなパターン分析をすることができます。

1) 200日MAが右肩上がりないしは横向きであるという条件の下、ローソク足が同線近辺での推移ないしはやや下押しオーバーシュートしたケースでは、早晩同線超えのフローとなっていること。(上図黄色丸印)
2) DMIにおいて、+DI>-DIとなり、同時にADXが右肩上がりとなっていること。
これら2つのメルクマールが確認できた場合は、早晩、200日MAを基点とする反発フロー(=上昇フロー)が示現していることが視認できます。

11日時点では、1’) ローソク足が200日MA(≒149.16円)を下回っている(上図赤色点線丸印)こと、そして2’) DMI-DI>+DIとなっている(上図青色点線丸印)ことから、足もとでは、DMIの動向に要注目でしょう。

<津田>


【NZドル】 RBNZは利上げ予想時期を後ズレ

RBNZ(NZ中銀)は5月10日の会合で、政策金利を過去最低の1.75%に据え置くことを決めました。

声明では、「かなりの期間、政策金利を現在の緩和的な水準に維持すると想定している」と表明。「次の措置の方向は上下に均衡している。時間の経過やイベント次第」との文言を今回追加し、次の一手は利上げと利下げのいずれもあり得ることを明言しました。

金融政策報告では、利上げ時期を来年7-9月期、CPI(消費者物価指数)上昇率がインフレ目標中央値(+2%)に到達する時期を2020年10-12月期とそれぞれ予想。前回2月時点の見通しからいずれも1四半期後ズレさせました。

RBNZは声明で利下げの可能性もあることを示し、また金融政策報告で利上げとCPI上昇率の2%到達時期の予想を後ズレさせました。そのことは、NZドルにとってマイナス材料と考えられます。来週(5月14日の週)はNZの主要経済指標発表がないため、NZドルのプラス材料は新たに提供されにくいとみられ、NZドルは上値が重い展開になりそうです。NZドルが上昇するには、対米ドルは米ドルの売り材料、対円は円の売り材料が提供される必要があるかもしれません。

<シニアアナリスト 八代和也>


【加ドル】 原油高に支えられて堅調に推移

加ドルは5月10日、対円で約3カ月ぶり、対米ドルで約3週間ぶりの高値をつけました。BOC(加中銀)の利上げ期待のほか、WTI原油先物が今週(5月7日の週)、一時約3年5カ月ぶりの高値を記録。原油高が資源国通貨である加ドルの支援材料となりました。

足もとの原油価格の上昇は、原油の供給が減少するとの懸念が背景にあります。トランプ米大統領は今週、イラン核合意から離脱して、イランへの経済制裁を再開すると表明。経済制裁によってイランからの原油輸出が減少するとみられます。

加ドルは来週(5月14日の週)も引き続き、原油価格の変動に影響を受けやすい地合いになりそうです。原油高が続けば、加ドルは一段と上昇する可能性があります。ただ、原油価格は約3年5カ月ぶりの高値圏ということもあって、目先は利益確定売りによって伸び悩むことも想定されます。その場合でも、供給減への懸念が根強く残るため、原油価格は底堅く推移するとみられます。

<八代>


【トルコリラ】 TCMBの利上げは実現するか

トルコリラは5月9日、対米ドルや対円で過去最安値を更新しました。トルコリラ安の背景として、主に3つが挙げられます。(1)米国の長期金利の上昇を背景に、新興国通貨が全般的に下落したこと(2)トルコのインフレ率の高さへの懸念(3)TCMB(トルコ中銀)はインフレやトルコリラ安に対応するための利上げが難しいとの観測。

市場は、トルコのインフレ抑制やトルコリラへの下落圧力を緩和するには、TCMBの利上げが必要とみています。しかし、エルドアン・トルコ大統領の利下げ圧力に加え、6月24日に大統領選と議会選が行われます。そのため、TCMBは6月7日の次回政策会合で利上げを躊躇するとの観測があり、それがトルコリラへの下落圧力となっていました。

トルコリラは5月9日に過去最安値を更新した後、急反発しました。政府やTCMBに関する報道を受けて、TCMBが緊急の政策会合の開催を含め、利上げをするのでは?との期待が浮上したためです。エルドアン大統領は5月9日、為替相場(=トルコリラ)や経済情勢について協議するために経済会合を開催。翌10日にはTCMBのチェティンカヤ総裁と経済担当当局者らが会議を行い、為替相場や金利について議論されたようです。

TCMBへの利上げ期待はトルコリラをしばらく下支えするかもしれません。ただ、これまでエルドアン大統領から利下げ圧力を受け続けてきたTCMBが実際に利上げをしなければ、トルコリラはいずれ再び下落圧力に直面する可能性があります。

<八代>


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