市場調査部レポート

2018/04/20 11:55日米通商交渉が相場材料に

【相場環境】日米通商交渉が相場材料に?
【米ドル】米ドル/円、週足レベルでは依然上値が重そう
【ユーロ】ユーロ/米ドル、引き続きボックス圏相場が継続しそう
【英ポンド】英ポンド/円、下値固めの時間帯か
【豪ドル】豪ドル/米ドルは200日移動平均線を超えられず
【NZドル】NZドル/米ドルは0.72-74米ドルの動き
【トルコリラ】大統領選を6月に前倒し。来週は25日のTCMB会合に注目!!


【相場環境】 日米通商交渉が相場材料に

17-18日の日米首脳会談で、トランプ大統領は朝鮮半島の非核化に向けて最大限の圧力を維持する意向を示し、米朝会談で「拉致問題」を取り上げることを約束しました。ただし、日米の思惑が一致したのはここまででした。
両国間の通商問題について、安倍首相が、米国のTPP(環太平洋連携協定)復帰や、鉄鋼・アルミ関税の対象から日本を外すことを求めたのに対し、トランプ大統領はいずれも難色を示し、二国間で新たな貿易協定の協議を開始することを優先する意向を表明しました。

日米通商交渉と言えば、80年代半ばからの約10年間に両国間の貿易摩擦が激化し、米ドル安円高圧力が強まったことが想起されます。当時とは、貿易構造は大きく変わっています。例えば、米貿易赤字に占める対日分は91年には66.3%ありましたが、2017年に8.6%に低下しました。

それでも、トランプ大統領は個別分野での市場開放だけでなく、日米貿易不均衡の「均衡化」を強く求める可能性があります。通商交渉が難航し、あるいは短期間での成果が期待できない場合に、市場が「為替レートによる調整(=米ドル安円高)」を意識しても不思議ではありません。日米の通商交渉の行方を注視する必要がありそうです。

その点に関して、トランプ大統領は4月16日に、中国やロシアを批判して「通貨切り下げゲームをしている。許容できない」とツイートしました。指摘が正しいかどうかは別として、トランプ大統領が為替レートに言及したことは気になるところです。

27日、南北首脳会談が軍事境界線にある板門店(パンムンジョム)で行われます。6月上旬までに開催予定の米朝首脳会談を前に、「非核化」の定義やそのための条件がどの程度明らかになるか、大いに注目されます。トランプ大統領は、「成果が期待できなければ、米朝首脳会談で席を立つ、あるいは席につかない」との意向を表明しており、南北首脳会談が一つの判断材料になるかもしれません。

日欧金融政策
26日、ECB理事会が開催されます。現状維持が決定されそうです。インフレ率が2%目標に向けて上昇すると、ある程度の自信を示す一方で、最近の経済指標の軟化や「貿易戦争」への懸念が表明されそうです。少なくとも今年9月まで続けるとするQE(量的緩和)の縮小・停止に向けて地ならしがなされるかも注目です。

27日、日銀の金融政策決定会合があり、「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」が公表されます。黒田総裁の再任後の初の会合です。消費者物価は、食料とエネルギーを除く「コアコア」が引き続きゼロ近辺で推移しており、引き続き金融緩和継続の必要性が強調されそうです。ただし、黒田総裁の記者会見では、2期目の5年間に「出口戦略」をどれだけ想定するかを問われるかもしれません。

来週(23日-)の米経済指標
27日、米国の1-3月期GDPが発表されます。前期比年率で2%程度が予想され、前期の2.9%から減速しそうです。FOMC議事録(3/20-21開催分)によれば、景気減速は一時的との見解が共有されており、春以降の景気再加速に対する自信がうかがえました。ただし、最近の経済指標(多くが3月分)でも軟調なものが散見されています。24日の消費者信頼感(4月分)が2001年以来の高値圏を維持できるかも注目です。

イタリア政権交渉
「五つ星運動」と「同盟」による政権交渉に大きな進展はみられません。「同盟」と同じく中道右派に属する「フォルツァ」に対する「五つ星」の拒否反応が強いためです。マッタレッラ大統領はカセラティ上院議長に交渉の仲介を依頼したようですが、いまのところ先行きは不透明なままです(本稿執筆時点)。

<チーフエコノミスト 西田明弘>


【米ドル】 米ドル/円、週足レベルでは依然上値が重そう

以下、米ドル/円・日足・スパンモデル®+21日BB(ボリンジャーバンド)+パラボリック+DMIについてご覧ください。


 
上図チャートより、以下のようなメルクマールが視認できます。

1) 21日MA(21日移動平均線)が右肩上がりである。
2) 遅行スパンの対ローソク足上放れが確認できる。(上図緑色矢印)
3) ローソク足が先行2スパンを上抜けブレークしている。(上図黄色矢印)
4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の下方にある。
5) DMI(方向性指数)で+DI>-DIとなっている。(上図赤色点線丸印)

1)-5)を総合的に勘案すると、米ドル/円は日足レベルにおいて初期上昇トレンド形成中であることが見て取れます。

先週の当欄(『米ドル/円、喫緊の重要メルクマールは?』)で示した注目モメンタム(=先行2スパンとローソク足の関係)については、前述3)の通り、メルクマール変化が確認できます。よって、日足レベルにおける米ドル/円は、先行2スパン(≒107.10円)とBB・+2σライン(≒108.10円)の間のゾーンを中心に徐々に下値を切り上げる展開となりそうです。

その一方で、タイムフレーム(時間軸)を週足チャートに引き上げて確認してみると、やや違った光景が見えてきます。以下、米ドル/円・週足・スパンモデル®+26週BB+パラボリック+DMIをご覧ください。



上図チャートより、以下のようなメルクマールが視認できます。

1) 26週MA(26週移動平均線)が右肩下がりである。
2) 遅行スパンがローソク足の下方に位置している。
3) ローソク足の上方に赤色の雲(=抵抗帯)がある。
4) ローソク足の下方にパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がある。
5) DMI(方向性指数)で-DI>+DIとなっている。(上図青色点線丸印)

上記1)-5)を総合すると、週足レベルでの米ドル/円下降トレンド主体の“デッド・キャット・バウンス”※の時間帯であることが視認できます。(※デッド・キャット・バウンス:相場が下げた後に一時的に起きる反発フローのこと。)

喫緊のポイントは、ローソク足が先行1スパン(≒108.00円、上図黄色矢印)を終値レベルで上抜けするか否か。仮に、当該スパンで上値が抑えられるような状態となった場合は、「戻り一杯」→「下押しフローの強まり」の可能性も考慮すべきでしょう。

<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/米ドル、引き続きボックス圏相場が継続しそう

以下、ユーロ/米ドル・日足・スパンモデル®+21日BB(ボリンジャーバンド)+パラボリック+DMIについてご覧ください。
 


上図チャートより、以下のようなメルクマールが視認できます。

1) 21日MA(21日移動平均線)が横向きである。
2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっている。
3) ローソク足が21日MAライン付近で推移している。
4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の下方にある。
5) DMI(方向性指数)で+DI>-DIとなり、同時にADXが右肩上がりとなっている。(上図赤色点線丸印)

1)-5)を総合的に勘案すると、ユーロ/米ドル・日足チャートは、引き続き典型的なレンジ相場形状であることが見て取れます。

足もとのユーロ/米ドルにとって“居心地のいい”ゾーンとなり得る場所は、BB・±2σライン内である1.2240-1.2430ドル (=上図青色括弧枠内のゾーン) と想定できます。

当面のユーロ/米ドルは、当該ゾーン(=1.2240-1.2430ドル)をベースとするボックス圏相場が継続しそうです。

<津田>


【英ポンド】 英ポンド/円、下値固めの時間帯か

以下、英ポンド/円・日足・スパンモデル®+21日BB(ボリンジャーバンド)+パラボリック+DMIについてご覧ください。



上図チャートより、以下のようなメルクマールが視認できます。

1) 21日MA(21日移動平均線)が右肩上がりである。
2) 遅行スパンがローソク足の上方に位置している。
3) ローソク足が先行1スパン付近で推移している。
4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方にある。
5) DMI(方向性指数)で+DI>-DIとなっているものの、その乖離が縮小している。(上図赤色点線丸印)

1)-5)を総合的に勘案すると、英ポンド/円・日足チャートは、「上昇トレンド一服」→「下値固め」の時間帯であることが見て取れます。

足もとのテクニカルポイントは、21日MAライン(≒150.80円)でローソク足がサポートされるか否か。ローソク足が21日MAラインの上方でサポートされた場合は、再度BB・+2σライン(≒153.80円)付近までの反発(上昇)フローが発生する可能性も。一方で、ローソク足が同ラインを下抜けブレークした場合は、先行2スパン(≒149.50円)付近までの修正(下落)フローが発生する可能性がありそうです。

<津田>


【豪ドル】 豪ドル/米ドルは200日移動平均線を超えられず

RBA(豪中銀)は4月17日、政策金利の据え置きを決めた4月3日の会合の議事録を公表。議事録では、RBAの次の一手は利上げになる可能性が高いとしつつ、短期的には利上げを行う強い理由はないと強調。政策金利を当面据え置くことが改めて示唆されました。

議事録は、豪経済について「2018年のGDP成長率は潜在成長率を上回る」との見通しを示し、先行きを楽観視する一方、インフレ率は「労働コストの鈍い伸びや小売部門における激しい競争を踏まえると、当面低水準にとどまる」と指摘。CPI(消費者物価指数)上昇率は2018年に緩やかに上昇し、(目標下限の)2%を若干上回るとの見方を示しました。

金融政策については、「現在の状況を踏まえると、政策メンバーは、次の動きは利下げよりも利上げの可能性が高いとの見解で一致した」との文言を追加。その一方で、「失業率のさらなる低下やインフレ率の目標中央値への回帰は、緩やかなプロセスになると予想される」とし、「短期的に金融政策を調整する強い理由はない」と強調。政策金利の据え置きを当面続けることを示唆しました。

RBAは政策金利を据え置く理由に、高水準の家計債務によって消費見通しに不透明感があることや、インフレ率の低さを挙げています。そして、低インフレは賃金の伸びの低さが一因との見方を示しています。そのため、RBAが利上げを検討し始める条件のひとつとして、賃金上昇圧力の高まりが確認される必要がありそうです。豪州の1-3月期の賃金データは、5月16日に発表されます。

*******
豪ドル/米ドルの日足チャートをみると、今年3月半ばに200日移動平均線を割り込みました(下図、緑丸の箇所)。その後は200日移動平均線より上の水準を回復できない状態が続いており、先週(4月9日の週)の反発局面でも200日移動平均線を超えられませんでした。したがって、豪ドル/米ドルは200日移動平均線が上値メドとして意識されそうです(4月19日時点で0.7814米ドルに位置)。一方、下値メドとしては、0.7644米ドル(今年3月29日安値)が挙げられます。

豪ドル/米ドル(日足、2017/12/1-)

出所:M2JFXチャート

<シニアアナリスト 八代和也>


【NZドル】 NZドル/米ドルは0.72-74米ドルの動き

NZの1-3月期CPI(消費者物価指数)が4月19日に発表されました。結果は前年比+1.1%と、昨年10-12月期の+1.6%から上昇率が鈍化。RBNZ(NZ中銀)のインフレ目標の下限である+1.0%に接近しました。

ただ、RBNZは今年2月の金融政策報告で1-3月期のCPI上昇率を+1.1%と予想しており、その通りの結果になりました。それを踏まえると、RBNZが今回のCPIの結果を受けて、金融政策スタンスを変化させる可能性は低いと考えられます。

NZドル/米ドルは約3か月にわたり、おおむね0.72-0.74米ドルのレンジで上下を繰り返してきました。4月13日には一時0.7390米ドルへと上昇し、レンジ上限に接近したものの、結局レンジを上抜けることができずに反落しました。0.74米ドルに近づく場面では、利益確定売り圧力が強まりそうです。一方、レンジ下限である0.72米ドル近辺には200日移動平均線(4月19日時点で0.7184米ドル)が位置しており、テクニカル面から下支えされやすいと考えられます。NZドル/米ドルは当面、0.72-74米ドルのレンジでの動きが続く可能性があります。

NZドル/米ドル(日足、2017/12/1-)

出所:M2JFXチャート

<八代>


【トルコリラ】 大統領選を6月に前倒し。来週は25日のTCMB会合に注目!!

トルコのエルドアン大統領は4月18日、大統領選と議会選を今年6月24日に実施すると発表しました。大統領選・議会選は当初、来年11月3日に予定されていました。

昨年4月のトルコの国民投票では、大統領権限の強化(議院内閣制から大統領制への変更など)を柱とする憲法改正案が僅差で承認されました。ただし、大統領制に完全に移行するのは、次回大統領選後です。大統領選が前倒しされることにより、大統領制への移行も早まります。エルドアン大統領は選挙を前倒しする理由として、「シリア情勢などを踏まえ、早急に新制度へ移行する必要があるため」と語りました。

大統領選と議会選を前倒しするとの発表を受けて、トルコリラは4月18日に対米ドルや対円で上昇しました。大統領選が終われば、“人気取りのための無理な景気刺激策を続ける必要性が低下し、TCMB(トルコ中銀)への利下げ圧力も緩和する”との観測が背景です。

ただ、市場ではトルコリラが反発基調に転じるには、TCMBの利上げが必要との見方があります。来週水曜日(25日)のTCMB(トルコ中銀)政策会合が、トルコリラの動向に影響を与えそうです。

市場では、TCMBが今回の会合で利上げを決めるとの観測があります。トルコのインフレ率は10%を超えており、TCMBのインフレ目標の+5%を大きく上回っていることや、3月7日の前回会合以降にトルコリラ安が加速したためです。

利上げ観測があるだけに、4月25日の会合で4つの政策金利(後期流動性貸出金利、1週間物レポ金利、翌日物借入金利、翌日物貸出金利)がすべて据え置かれた場合、失望感が広がり、トルコリラ売りが加速する可能性があります。一方、利上げが決定されれば、トルコリラにとってプラス材料と考えられます。ただし、市場の一部に、後期流動性貸出金利を1.00%以上引き上げるとの観測もあるようです。そのため、利上げが決定されたとしても、0.25%など小幅にとどまれば、トルコリラは下落する可能性もあります。

<八代>


※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

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