市場調査部レポート

2018/04/13 10:50トルコリラ、金融政策とシリア情勢に注目

【相場環境】利上げ継続に自信を深めた米FOMC
【米ドル】米ドル/円、喫緊の重要メルクマールは?
【ユーロ】ユーロ/米ドル、レンジワーク継続か
【英ポンド】英ポンド/円、上昇モメンタムが強まりそう
【加ドル】BOCは近い将来の利上げを示唆するか!?
【トルコリラ】TCMBは利上げに踏み切れるか
【南アフリカランド】ランド/円は方向感なし!? レンジ内で上下


【相場環境】 利上げ継続に自信を深めた米FOMC

米FOMCの議事録(3/20-21開催分)によれば、多くの中銀メンバーが経済や物価見通しに自信を深めており、今後数年の政策金利の適正水準は以前の想定より上に位置する(=利上げペースが速まる)と考えていたことが明らかになりました。

4月12日時点のFFレート(政策金利)先物を基にすれば、市場は6月のFOMCでの利上げ確率を80%以上とみています。次いで、9月の利上げを約50%とみています。さらに、12月での追加利上げ(18年中の4回目)の確率は約20%です。

FOMCの見方が正しければ、市場が織り込む今後の利上げ確率はさらに上昇する可能性があります。そして、それが「物価要因」より(雇用の堅調などの)「景気要因」に基づくほど、米ドルのサポート材料になりそうです。

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議事録で興味深かったのは以下の点です。

(1)景気や物価の見通しに自信
1-3月に弱めの経済指標が増えたのは一時的と判断されました。季節的に弱めになる傾向があること、海外経済が良好であること、消費者や企業のセンチメントが良好であること、トランプ減税など財政が景気刺激的であることがその理由でした。
物価についても、目標の2%に向かうとして、昨春の携帯通話料金大幅引き下げの影響が今後はく落することが指摘されました。

(2)貿易摩擦の影響に関する見解
鉄鋼・アルミ関税については、それだけを見れば経済見通しに大きな影響を与えるわけではないものの、それが報復合戦に発展するならば、不透明感を高め、経済見通しの下方リスクになるというものでした。

(3)「悪い金利上昇」への懸念
トランプ減税は目先的には景気にプラスであるものの、財政赤字の拡大やそれを受けた市場金利の上昇は、経済見通しの下方リスクになりうると判断されました。

(4)声明文の文言変更の可能性
数人の参加者が、いずれ政策金利を中立的水準以上に引き上げることが適切になると述べました。その場合、声明文でも、金融政策が「緩和」から「中立」へ、そして「引き締め」へと緩やかにシフトするとの認識を示す必要があるとの意見がありました。

来週(4/16-)の注目材料
来週は、米景気の現状を確認するための経済指標が多く発表されます。16日の小売売上高17日の鉱工業生産18日のベージュブック(地区連銀経済報告)などです。
とりわけ、小売売上高は2月まで3か月連続で軟調だったため、反発が期待されます。また、ベージュブックでは、春以降の景気再加速を示唆する材料はあるか、賃金上昇圧力の高まりや物価への波及が報告されるか、などが注目されます。

17-18日、日米首脳会談がフロリダ州パームビーチの「マーラーゴ」で開催されます。27日の韓国と北朝鮮の首脳会談や、5-6月に予定される米朝首脳会談を前に、安倍首相は朝鮮半島の「非核化」を中心に安全保障問題や拉致問題を話し合いたいことでしょう。一方、トランプ大統領は、安全保障問題はもちろんのことながら、それに加えて、あるいはそれを条件として通商問題で日本に厳しい要求を突き付けてくるかもしれません。

15日前後には、米財務省の半期為替報告書が発表される予定です(本稿執筆時点で未発表)。日本は、3つの基準のうち2つを満たして「監視リスト」入りしていますが、2011年以降は為替介入を行っていないので、「為替操作国」に認定されることはなさそうです。
ただし、昨年10月の前回報告では、「金融緩和と柔軟な財政政策による経済成長を利用して、日本は貿易不均衡の是正を助ける経済構造改革を進めるべき」と評価されました。今回、日本はどう評価されるのか。それはトランプ政権の対日通商政策を反映するものとなるかもしれません。

20日、ワシントンでG20財務相・中央銀行総裁会議。IMF世銀総会と並行して開催されます。3月G20(ブエノスアイレス)では、米国の保護主義を強くけん制できませんでした。今回はどうでしょうか。

イタリアの政権交渉は長期化も
マッタレッラ大統領が12-13日に各政党党首と第2回目の連立協議を行っています。単独第一党に躍進したポピュリストの「五つ星運動」と中道右派連合の極右「同盟」が接近しているとの見方があります。「五つ星」と「同盟」は、いずれも反EU、反ユーロであり、注意が必要です。

一方で、両党は4月に実施される2つの地方選を前に妥協には消極的なようです。大統領が調停役を指名するものの、連立協議は長引く可能性もあるようです。再選挙の可能性も排除できません。

<チーフエコノミスト 西田明弘>


【米ドル】 米ドル/円、喫緊の重要メルクマールは?

以下、米ドル/円・日足・スパンモデル®+21日BB(ボリンジャーバンド)+パラボリック+DMIについてご覧ください。
 


上図チャートより、以下のようなメルクマールが視認できます。(4/12時点)

1) 21日MA(21日移動平均線)が概ね横向きである。
2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっている。
3) ローソク足が赤色の雲(=抵抗帯)の中にある。
4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の下方にある。
5) DMI(方向性指数)で+DI>-DIとなっている(上図赤色点線丸印)。

1)-5)を総合的に勘案すると、現在の米ドル/円・日足チャートは、上方硬直性を伴うレンジ相場であることが見て取れます。

喫緊の重要メルクマールは、BB・+2σラインあるいは先行2スパンである107.50円。(上図黄色矢印)

これからの時間帯において、ローソク足が当該ライン(≒107.50円)を上抜けブレークした場合は、米ドル/円の上昇フローの起点になり得る可能性がある一方で、当該ラインで上値が抑えられる形状となった場合は、再度BB・-2σライン(≒105.00円)付近までの下押しフローとなる可能性も。足もとでは、シリア情勢を中心とする地政学リスクの有無が米ドル/円の動意となり得そうです。

<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/米ドル、レンジワーク継続か

以下、ユーロ/米ドル・日足・スパンモデル®+21日BB(ボリンジャーバンド)+パラボリック+DMIについてご覧ください。
 


上図チャートより、以下のようなメルクマールが視認できます。(4/12時点)

1) 21日MA(21日移動平均線)が横向きである。
2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっている。
3) ローソク足が赤色の雲(=抵抗帯)のやや上方にある。
4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方にある。
5) DMI(方向性指数)で+DI>-DIとなっている(上図赤色点線丸印)。

1)-5)を総合的に勘案すると、12日時点のユーロ/米ドル・日足チャートは、典型的なレンジ相場形状であることが見て取れます。

足もとのユーロ/米ドルにとって“居心地のいい”ゾーンとなり得る場所は、BB・±2σライン内である1.2220-1.2420ドルと想定できます。

当面のユーロ/米ドルは、当該ゾーン(=1.2220-1.2420ドル)をベースとするレンジワークが継続しそうです。

<津田>


【英ポンド】 英ポンド/円、上昇モメンタムが強まりそう

以下、英ポンド/円・日足・スパンモデル®+21日BB(ボリンジャーバンド)+パラボリック+DMIについてご覧ください。



上図チャートより、以下のようなメルクマールが視認できます。(4/12時点)

1) 21日MA(21日移動平均線)が右肩上がりである。
2) 遅行スパンがローソク足を上抜け(上放れ)している。
3) ローソク足が先行2スパンを上抜け(上放れ)している(上図黄色矢印)。
4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の下方にある。
5) DMI(方向性指数)で+DI>-DIとなり、ADXが右肩上がりとなっている(上図赤色点線丸印)。

1)-5)を総合的に勘案すると、12日時点の英ポンド/円・日足チャートは、初期上昇トレンド形状であることが見て取れます。

上図チャートでは、遅行スパンの対ローソク足および対先行2スパン上抜け(上放れ)が確認できること、また、BB・±2σラインが21日MAに対して拡張(エクスパンション)する動きとなっていることから、今後、英ポンド/円の上昇モメンタムが強まる可能性が高そうです。

また、ローソク足がBB・+1σラインと同・+2σラインの間を推移する【上昇バンドウォーク】となった場合は、緩やかな上昇トレンドが継続することになりそうです。

<津田>


【加ドル】 BOCは近い将来の利上げを示唆するか!?

BOC(加中銀)が4月18日に政策金利を発表します。その結果が加ドルの動向に影響を与える可能性があります。

政策金利は現行の1.25%に据え置かれる可能性が高そうです。カナダの総合CPI(消費者物価指数)やコアインフレ率は、BOCの追加利上げをサポートする内容でした。2月総合CPIは前年比+2.2%と、1月の+1.7%から上昇率が加速し、2014年10月以来の強い伸びを記録。BOCのインフレ目標中央値の+2%を3か月ぶりに上回りました。また、BOCが総合CPI以上に重視するコアインフレ率は3つのうち、2つが+2%を超えました(CPI共通値:前年比+1.9%、CPIトリム値:同+2.1%、CPI中央値:同+2.1%)。

ただ、米中の貿易摩擦への懸念は残り、NAFTA(北米自由貿易協定)再交渉も合意に至っていません。カナダ経済の先行き不透明感につながる要因が残存していることから、BOCは今回、政策金利を据え置くとみられます。

利上げが決定されれば、加ドルは上昇しそうです。一方、政策金利が据え置かれた場合は、声明で近い将来の利上げが示唆されるか?が焦点になりそうです。市場では5月会合での利上げ観測があり、声明がその見方を強める内容になれば、加ドルは上昇すると考えられます。声明では特に金融政策に関する文言に注目です。前回3月の会合時は、「経済見通しは、今後の利上げを正当化するとみられる」、「経済成長率を潜在水準近辺にとどめつつ、インフレ目標を達成するためには、一定の金融緩和の継続が必要になるだろう」、「将来の政策金利調整を検討するにあたり、慎重であり続ける」でした。

<シニアアナリスト 八代和也>


【トルコリラ】 TCMBは利上げに踏み切れるか

トルコリラ/円は4月11日、一時25.44円へと下落し、過去最安値を記録。対米ドルや対ユーロでも同日、過去最安値を更新しました。

足もとのトルコリラ安は、以下のことが背景にあると考えられます。
(1)トルコの経常赤字拡大やインフレ率の高さへの懸念
→経常赤字は2018年1月が70.96億米ドル、2月が41.52億米ドルと、それぞれ前年同月の27.00億米ドル、25.66億米ドルから増加。インフレ率は10%を超え(3月のCPI上昇率は前年比+10.23%)、TCMB(トルコ中央銀行)のインフレ目標の+5%を大きく上回る。
(2)エルドアン大統領の利下げ圧力
→利下げ圧力によって、TCMBはインフレ抑制のための利上げが困難との見方。
(3)トルコ経済の過熱への懸念
→2017年のGDPは前年比+7.4%と、2016年の+3.2%から成長が加速。経常赤字の拡大や高インフレと経済過熱の兆候がみられるなか、エルドアン大統領が4月9日にさらなる景気刺激策を発表(国内企業向けに総額340億米ドル規模の投資促進策)。
(4)シリア情勢をめぐる懸念
→米トランプ大統領がシリアのアサド政権への軍事攻撃に言及

トルコリラは11日の過去最安値更新以降、若干持ち直しました。トルコのユルドゥルム首相が金融政策はTCMBが自らの判断で決定すべきとの見解を示したことや、米国がシリアへの軍事攻撃の判断を先送り(シリア情勢をめぐる懸念が緩和)したことが背景です。ユルドゥルム首相は11日、トルコリラの下落について「中銀(TCMB)が必要に応じて措置を講じるだろう。中銀は金融政策の責任を負う」と語りました。

目先は、ユルドゥルム首相の11日の発言がトルコリラを下支えする可能性もあります。ただ、トルコリラの下落に歯止めがかかり、さらに反発基調に転じるには、実際にTCMBが利上げを行い、それによってインフレ抑制への姿勢を示すとともに、中銀が政府から独立していることを示す必要がありそうです(TCMBの次回定例会合は4月25日)。また、シリア情勢は予断を許さない状況です。トルコリラは一段安の可能性があり、注意が必要です。

<八代>


【南アフリカランド】 ランド/円は方向感なし!? レンジ内で上下

南アフリカランド/円は2017年12月半ば以降の約4か月にわたり、おおむね8.8-9.2円のレンジで上下を繰り返してきました。

ラマポーザ大統領(2018年2月に就任)の経済政策や財政再建への期待、そして格付け会社のムーディーズが南アフリカの格付けを据え置いたことが、ランドの支援材料となっています。一方で、今年に入り、円の支援材料が相次いだ(2月初めは世界的な株安、3月以降は米中貿易摩擦への懸念、足もとはシリア情勢への懸念)ことで、ランド/円は目先の方向感を失っています。

レンジ下限である8.8円より下の水準には200日移動平均線(4月12日時点で8.59円)が位置しており、下値はしっかりとした展開になりそうです。一方、レンジ上限である9.2円に近づく場面では、利益確定売り圧力が強まるとみられます。来週(4月16日の週)は、南アフリカの3月CPI(消費者物価指数)や2月小売売上高が発表されます(いずれも18日)。それらの結果がランド/円相場に影響を与える可能性もあります。

南アフリカランド/円(日足、2017/11/1-)

出所:M2JFXチャート

<八代>


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