市場調査部レポート

2018/03/09 11:17トランプ関税、欧州政治、金融政策

【相場環境】トランプ関税、欧州政治、金融政策
【米ドル】米朝関係雪解けムードも、依然冷ややかなチャート形状?
【ユーロ】ユーロ/米ドル、ボックス圏相場推移となりそう
【英ポンド】英ポンド/円、上昇フローの起点となる可能性も
【豪ドル】米ドルなどの動向に影響を受けやすい地合いが続きそう
【加ドル】カナダは当面、米国の輸入関税の適用対象外か
【トルコリラ】TCMBは追加利上げに含み。ムーディーズがトルコ国債を格下げ


【相場環境】 トランプ関税、欧州政治、金融政策

「トランプ関税」
8日、トランプ大統領が鉄鋼とアルミ二ウムへの輸入関税発動に署名しました。

一体、誰が得をするのか。米経済はサービス化が進んでおり、雇用者数でみると、製造業は全体の8%。鉄鋼やアルミを含む金属・金属加工は製造業の15%、全体の1%強に過ぎません。仮に、輸入関税によって競争力を取り戻すとしても、米国内の鉄鋼業等が先行きの分からない関税に頼って、稼働やコスト回収までの期間が長い設備投資を積極的に行う(=事業拡大→雇用増)とは限りません。むしろ、鉄鋼やアルミニウム、それらを使用した製品のユーザーに負担がかかるのは想像に難くありません。

トランプ政権は関税の対象拡大を検討しているとのこと。その場合は、貿易相手国からの報復措置の可能性が一層高まり、世界貿易・世界経済にとって大きな打撃となりかねません。そして、実体経済より先に株式市場に影響が出てくるでしょう。いずれにせよ、事態の進展を注意深く見守る必要がありそうです。

*8日、北朝鮮がトランプ大統領と金正恩委員長との会談を要請、トランプ大統領は「5月までに会談する」と応じたとの報道がありました。朝鮮半島情勢に明るい進展がみられるかもしれませんが、現時点で過度な期待は禁物でしょう。

欧州の政治イベント:ドイツとイタリア
ドイツSPD(社会民主党)が「大連立」に合意し、議会の承認を得てメルケル政権の第4期が正式にスタートることになりました。CDU(キリスト教民主同盟)のメルケル首相はCSU(キリスト教社会同盟)やSPDに重要な閣僚ポストを明け渡しており、求心力の低下は否めないものの、とりあえずドイツの政治が落ち着くことはユーロにプラスでしょう。

イタリア総選挙では、どの政党も過半数の議席をもたない、いわゆる「ハング・パーラメント」となりました。
選挙では、ポピュリストの「五つ星運動」が第一党になりました。また、最大勢力となった右派連合の中でも、反ユーロ・反移民の「同盟(旧北部同盟)」が議席数で「フォルツァ」を上回り、主導権を握ったようです。

今後、右派連合を軸に政権交渉が進められるでしょう。それに「五つ星運動」がどう絡んでくるか、目が離せません。万が一、「同盟」と「五つ星運動」が手を組めば、反ユーロを前面に出した政権が誕生する可能性があり、注意は怠れません。

3月23日に新議会が召集され、上下両院の議長が選出されます。そして、4月に入ると、マッタレッラ大統領が各党党首と協議して、首相候補を指名する予定です。どの候補も上下両院で信任されなければ、一定期間(1年?)後に再選挙の可能性が出てきます。

各国・地域の金融政策
8日のECB理事会では、金融政策の現状維持を決定しました。ただ、従来の声明にあった「必要に応じて、QE(量的緩和)を拡大する用意がある」とのバイアスを削除。QE停止を視野に入れていることを示唆しました。一部報道では、関係者によると、今年末でのQE停止は理事会の総意であり、10-12月期に短期のテーパリング(購入額を段階的に縮小すること)を想定しているとのことです。

理事会後の記者会見で、ドラギ総裁は金融緩和継続の必要性を強調、さらに保護貿易主義など下方リスクにも言及しました。また、ECBは2019年のインフレ見通しを下方修正しました。

金融市場では、ECBが2018年中にQEを終了、19年半ばに利上げを開始するとの見方が有力です。この想定は、今回の理事会前後でとくに変わらなかったようです。想定通りに金融政策の正常化が進められるのであれば、ユーロ高要因とはなりにくいかもしれません。

金融市場が織り込む今年前半の主要国・地域の金融政策見通しは下表の通りです(8日時点のOIS=翌日物金利スワップに基づく)。単純に、利上げ確率の高い順に並べると、【米>英>カナダ>豪>NZ>日本>ユーロ】。これがそのまま通貨の序列を表わすわけではなく、今後どう変化するかがより重要でしょう。ただし、主要国・地域の金融政策をみるうえで、頭の片隅に置いておいても良いかもしれません。

 <チーフエコノミスト 西田明弘>


【米ドル】 米朝関係雪解けムードも、依然冷ややかなチャート形状?

早速ですが、以下、米ドル/円・日足・スパンモデル®+21日BB(ボリンジャーバンド)+パラボリック+DMIについてご覧ください。
 


上図チャートより、1) 21日MA(21日移動平均線)が右肩下がりであること、2) 遅行スパンがローソク足の下方にあること、3) ローソク足の上方に赤色の雲(=抵抗帯)およびパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして、4) DMI(方向性指数)で-DI>+DIとなっている(上図青色点線丸印)ことから、米ドル/円は緩やかな下降トレンドが継続していることが分かります。

一方で、BB・±2σラインが21日MAに向かって収縮(スクイーズ)していること、また、ADXが右肩下がり推移となっていることから、現在は「相場の力を溜め込む時間帯」ないしは、「下降トレンドが一服する時間帯」であるとの見方もできます。

ただし、ローソク足の上方に比較的分厚い“抵抗帯”として、赤色の雲が覆い被さっていることから、上値(=戻り)は限定的との見方が自然なのかもしれません。

ファンダメンタルズ部分では、米朝関係の改善(雪解け?)ムード等もあり、「地政学的リスクの後退」→「リスク選好フローに伴う米ドル買い、円売り(+株買い)」が足もとでは見られるものの、テクニカル部分では“冷静かつ冷ややかな眼差し”を向けている証左と言えなくもありません。

「(政治の世界は)一寸先は闇」という事を念頭に置きつつ、今後の政治的力学関係とは別に、客観的なテクニカルサインに準じた投資判断を心掛けるべきものと考えます。

<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/米ドル、ボックス圏相場推移となりそう

以下、ユーロ/米ドル・日足・スパンモデル®+21日BB(ボリンジャーバンド)+パラボリック+DMIにつきご覧ください。
 


上図チャートより、1) 21日MA(21日移動平均線)が横向きであること、2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっていること、3) ローソク足が青色の雲(=サポート帯)に入り込んでいること、4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の下方で点灯していること、そして、5) DMI(方向性指数)で+DI、-DI、ADXが一ヵ所に収斂するような形状となっていること(上図青色点線丸印)から、ユーロ/米ドルは横ばい基調主体の相場展開であることが分かります。

各BBが21日MAに対してパラレルで推移していることから、当面のユーロ/米ドルは、BB・±2σライン(≒1.2200-1.2480ドル)をベースとするボックス圏相場推移となる可能性も。

21日MAより下方に青色の雲(=サポート帯)があることからも、当面は下方硬直性相場が継続しそうです。

今後のトレンド発生については、ADXが右肩上がりに推移するか、もしくは、ローソク足がBB・±2σラインを上下ブレークすることが必要条件となりそうです。

<津田>


【英ポンド】 英ポンド/円、上昇フローの起点となる可能性も

以下、英ポンド/円・週足チャート+26週BB(ボリンジャーバンド)+ストキャスティクス(スロー)につきご覧ください。
 


英ポンド/円・週足チャートにおいて、トレンドの転換を示唆するメルクマールが出始めています。

英ポンド/円・週足チャート+26週BB(ボリンジャーバンド)+ストキャスティクス(スロー)を見ると、「一旦の下げ止まり」→「上昇フロー」への転換となり得るメルクマールの組み合わせパターンがあることが見て取れます。その組み合わせとは以下の通りです。

1) ローソク足がBB・-1σラインないしはBB・-2σライン付近にあること。
2) ストキャスティクス(スロー)の2本の線が20%ライン付近でクロスし、その後右肩上がり形状となる【ゴールデンクロス】となっていること。

上記1)、2)が同タイミングで示現したケースでは、早晩BB・+2σライン付近までの上昇フローとなっていることが分かります。(上図赤色丸印および黒色矢印)

本稿執筆(9日)時点では、1’) ローソク足がBB・-2σライン付近にあり、同時に2’) ストキャスティクス(スロー)の2本の線が20%ライン付近でクロスしつつある(上図赤色点線丸印)ことが確認できます。また、BB・±2σラインが26週MAに向かって収縮(スクイーズ)していることから、相場の力を溜め込む時間帯であるということを付加した上で総合すると、これからの時間帯において、ストキャスティクス(スロー)で【ゴールデンクロス】が示現した場合は、上昇フローの起点となる可能性がありそうです。

<津田>


【豪ドル】 米ドルなどの動向に影響を受けやすい地合いが続きそう

RBA(豪中銀)は6日、政策金利を過去最低の1.50%に据え置くことを決定しました。据え置きは17回連続です。

声明におけるインフレや豪ドル、金融政策に関する文言は前回2月6日の会合時と同じ。労働市場に関して「賃金の伸びは底を打ったようだ」との文言が追加されたのを除けば、声明の内容は前回から大きな変化はありませんでした。RBAの“政策金利を当面据え置く”方針に変わりがないことが改めて示されたと言えそうです。

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声明のインフレ、豪ドル、金融政策に関する文言は以下のとおりです。
<インフレ>
・「依然として低く、CPI(消費者物価指数)と基調インフレ率はいずれも2%をやや下回っている」
・「賃金の低い伸びや小売業の激しい競争を反映し、インフレは当面、低水準にとどまる」
・「インフレ率は景気の加速に伴って徐々に上昇する」
・「CPI上昇率は2018年に2%を若干上回るというのが、中心的な予想」
<豪ドル>
・「貿易加重ベースで、過去2年間のレンジ内にとどまっている」
・「豪ドルが上昇すれば、経済活動の好転とインフレ率の上昇が、現在の想定よりも鈍くなる可能性がある」
<金融政策>
・「低水準の金利が、豪経済を引き続き支援している」
・「失業率の一段の低下やインフレ率の目標水準への回帰が予想されているものの、そのペースは緩やかになる可能性が高い」
・「入手可能な情報を考慮すると、理事会は今回の会合で政策スタンスを維持することが、持続可能な経済成長およびインフレ目標の達成と一致していると判断した」
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今週(3月5日の週)は、RBAの政策金利のほか、GDPや小売売上高、貿易収支など、豪州の経済指標が多く発表されたものの、それらの結果に対する豪ドルの反応は限定的でした。その要因として、市場の関心が米国の鉄鋼やアルミニウムの輸入関税の行方に向いたことが挙げられます。輸入関税については8日に結論が出たことで、市場の関心からいったん外れる可能性もあります。ただ、その場合でも、豪ドルは、米ドルなど他通貨の動向に影響を受けやすい地合いになりそうです。来週(3月12日の週)は豪州の経済指標発表が少ない一方、米国のCPI(消費者物価指数)や小売売上高が発表されるためです。

<シニアアナリスト 八代和也>


【加ドル】 カナダは当面、米国の輸入関税の適用対象外

BOC(カナダ中銀)は7日、政策金利を1.25%に据え置くことを決めました。

声明では、米国では政府支出や現在に伴って2018年と2019年の成長率を押し上げるとの見方を示す一方、「貿易政策の動向が重要であり、世界やカナダの見通しに対する不透明感を高める要因となっている」と指摘しました。

金融政策に関する文言は、前回1月17日から変わらず。「経済見通しは、今後の利上げを正当化するとみられる」と、追加利上げに言及しました。その一方で、「経済成長率を潜在水準近辺にとどめつつ、インフレ目標を達成するためには、一定の金融緩和の継続が必要になるだろう」と指摘し、「将来の政策金利調整を検討するにあたり、慎重であり続ける」と表明。利上げのタイミングは経済指標次第と強調しました。

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今回の声明では、追加利上げの可能性が示されたものの、その時期に関する手掛かりは提供されませんでした。ただ、NAFTA(北米自由貿易協定)再交渉は進展がみられず、またトランプ政権の通商政策は依然として不透明感があります。こうした状況では、BOCは追加利上げに対して一段と慎重になりそうです。

米国のトランプ大統領は8日、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の輸入関税を課すと正式に決定し、文書に署名しました。ただ、NAFTA再交渉中のカナダとメキシコは当面、関税の適用対象外となりました。NAFTAの再交渉次第でカナダなどにも関税が適用される可能性があるものの、今回適用対象外となったことは、加ドルにとってプラス材料と考えられます。

<八代>


【トルコリラ】 TCMBは追加利上げに含み。ムーディーズがトルコ国債を格下げ

TCMB(トルコ中銀)は7日の会合で、金融政策の現状維持を決定。4つの政策金利(後期流動性貸出金利、1週間物レポ金利、翌日物貸出金利、翌日物借入金利)をすべて据え置きました。

声明は、前回1月18日とほぼ同じでした。政策金利を据え置いた理由を「現在の高いインフレやインフレ期待の水準が、引き続き価格設定行動にリスクをもたらすため」と説明。「インフレ見通しが、ベース効果や一時的な要因に頼らずに大幅に改善するまで、引き締めスタンスを断固維持する」と強調し、「インフレ期待や企業の価格設定行動、そしてインフレに影響を及ぼすその他の要因を注視し、必要に応じて一段の金融引き締めを行う」と改めて表明。追加利上げに含みを持たせました。

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トルコのCPI(消費者物価指数)上昇率は、TCMBのインフレ目標(+5%)を大きく上回っているものの、昨年11月の前年比+12.98%をピークに鈍化傾向。12月は+11.92%、今年1月は+10.35%、2月は+10.26%でした。また、前回会合以降、トルコリラの対米ドル相場は比較的安定しています。インフレの鈍化や為替相場の動向がTCMBに政策金利を据え置く余地をもたらしたと考えられます。TCMBが追加利上げを行うかどうかは、CPIやトルコリラ(対米ドル)の動向がカギを握りそうです。

一方、格付け会社のムーディーズが7日、トルコの長期国債(自国通貨建て&外貨建て)の格付けを「Ba1」から「Ba2」へ1段階引き下げました(格付け見通しは、「ネガティブ」から「安定的」に変更)。ムーディーズは格下げの理由に、制度上の強さが引き続き失われていることや、経常赤字の拡大に伴う外的ショックへのリスク増大などを挙げました。ムーディーズの格下げを受けて、市場ではS&Pやフィッチも今後、トルコの格付けを引き下げるとの見方もあるようです。格下げ観測は、トルコリラにとってマイナス材料と考えられます。ただし、3社ともすでにトルコの格付けを「投機的」に位置付けており、格下げの影響は「投資適格級」から「投機的」に変わるほど大きくないかもしれません。

<八代>


※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。

※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。

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