市場調査部レポート

2018/02/02 13:13米長期金利の行方

【相場環境】米長期金利の行方
【米ドル】米ドル/円、反発のタイミングを図る時間帯か
【ユーロ】ユーロ/円、強気トレンドが継続しそう
【豪ドル】RBAは豪ドル高に対してどのような見解を示すのか
【NZドル】RBNZが8日に政策金利を発表。政策金利見通しなどに注目!!
【南アフリカランド】 大統領の早期退陣観測などが支援材料


【相場環境】 米長期金利の行方   

1日の米国市場で、長期金利(10年物国債利回り)は一時、3年10か月ぶりとなる2.793%をつけました。直接の背景は、ISM製造業景況指数などの経済指標がインフレ圧力の高まりを示したことです。

最近の長期金利上昇には、中国の米国債投資見直しの報道(後に当局が否定)や財政赤字拡大(=国債発行額増加)など国債需給の悪化を背景とした「悪い金利上昇」の面もあり、そうであれば米ドル高要因となりにくく、株安要因となりやすい局面といえそうです。

目先的には、2日の雇用統計(とくに賃金、本稿執筆時点では未発表)や、6-8日の国債入札を受けて長期金利が一段と上昇するか注意する必要があるでしょう。

◆米金融政策と財政政策
1月30-31日の米FOMCでは、全会一致で金融政策の「据え置き」が決定されました。FOMC声明文は、景気・物価について強めの判断が示され、「更なる利上げが正当化される」とのタカ派的内容でした。次回3月以降のFOMCで、2月4日に就任するパウエル新議長が複数回の利上げを主導するための「地ならし」が行われたとみることができそうです。

市場では18年中に3回(3月、6月、12月)の利上げが実施されるとの見方が有力です。今後の経済・物価情勢によって、そうした見方が一段と強まれば、そして3回を超える利上げの可能性が意識されれば、米ドルのサポート要因となりそうです。

米国の17年10-12月期の実質GDPは前期比年率+2.6%と、市場予想の+3.0%を下回る弱めの伸びとなりました。ただし、GDPが弱めになったのは、減税による増益効果を狙った企業の在庫投資などによって輸入が前期比年率+13.9%と急増したからです。輸入や在庫投資、政府支出を除いた国内の民間最終需要は+3.8%と約3年半ぶりの高い伸びでした。

アトランタ連銀のGDPNow(短期予測モデル)によれば、18年1-3月期の実質GDPは前期比年率+5.4%と予想されています。今後のデータ次第で予想は大きく変わる可能性もありますが、18年の景気は好調に滑り出したと言えそうです。

1月30日の一般教書演説で、トランプ大統領は1.5兆ドル規模のインフラ投資を議会に要請しました。詳細は後に予算教書等で公表されるようですが(後述)、共和党と民主党の党派的対立が強まっている状況下で、インフラ投資が実現するかどうかは不透明です。

17年12月に成立した税制改革は財政赤字を拡大させると見込まれます。そして、仮にインフラ投資が18年10月に始まる2019年度の予算に組み込まれ、かつ財源がなければ、財政赤字の一段の拡大が懸念されそうです。トランプ大統領は2月上旬にも2019年度予算教書を発表するものとみられます。

もっとも、議会はまず、2月8日に失効する2018年度継続予算に対処する必要があります。また、財政赤字の拡大(=国債発行額の増大)が懸念されるなかで、2月6-8日の国債入札(6日3年物、7日10年物、8日30年物)がスムーズに行われるかにも注意する必要がありそうです。入札が不調に終われば長期金利が上昇する可能性があります。なお、ムニューシン財務長官は1月30日に、デットシーリング(債務上限)の引き上げは2月末まで必要ないとの見通しを示しました。

◆BOE(英中銀)の利上げは18年後半?
2月8日のMPC(金融政策委員会)では金融政策の「据え置き」が決定されそうです。17年春以降、消費者物価が総合、コア(食料やエネルギーを除く)ともに目標の2%を上回っていますが、ブレグジット(19年3月予定)を控えてカーニー総裁らは利上げに慎重です。1月31日のOIS(翌日物金利スワップ)に基づく利上げ確率は5%程度にすぎません。同確率が5割を超えるのは18年6月以降です。

◆日銀は金融緩和姿勢を堅持
日銀は1月22-23日の決定会合で、金融緩和の継続を決定しました。黒田総裁は会見で「出口を検討する段階には至っていない」と明言しました。日銀の国債購入額が減少している点についても、「日々のオペは実務的に決定されるので、先行きの政策スタンスを示すことはない」と一蹴しました。1月31日には国債購入額を半年ぶりに増額して市場金利の上昇を抑制する姿勢を鮮明にしました。

◆ECBは緩和縮小観測が燻(くすぶ)る
1月25日のECB理事会では、金融緩和の維持が決定され、直後の記者会見でドラギ総裁は金融緩和継続の必要性を訴えました。しかし、その直後にも、QEは早期に終了すべき、その時期を明示すべきとのECB幹部のコメントがメディアを賑わせています。市場では、利上げは19年半ばまでないとの見方が支配的ですが、QE終了の方針が明らかになれば、「次の一手」としての利上げが嫌でも意識されるでしょう。

<チーフエコノミスト 西田明弘>


【米ドル】 米ドル/円、反発のタイミングを図る時間帯か

以下、米ドル/円・週足・スパンモデル®+26週ボリンジャーバンド(以下、BB)+パラボリック+ストキャスティクス(スロー)につきご覧ください。


 
1/19の市場調査部レポート(『【米ドル】 米ドル/円、早晩108円台を試す可能性も』)において記載した後、米ドル/円は1/24に昨年9/11以来となる108円台を示現する展開となりました。以下、同レポートにおいてフォーカスした2つのメルクマールである「ストキャスティクス(スロー)」「BB・-2σライン」について、改めて確認してみたいと思います。

まずは「ストキャスティクス(スロー)」から。上図チャートより、ストキャスティクス(スロー)の2本の線が「売られ過ぎ」水準を示唆する20%付近でクロスしつつあることが分かります(上図下部赤色点線丸印)。 仮に、これからの時間帯において、2本の線がクロスした後に右肩上がりとなった場合は【ゴールデンクロス】となり、上昇モメンタムが徐々に強まる可能性を視野に入れるべきでしょう。

そして「BB・-2σライン」。同ラインとローソク足の状態を確認してみると、ローソク足が陰線から陽線になった状態で、「売られ過ぎ」水準を示唆するBB・-2σラインでサポートされつつあることが分かります(上図上部赤点線丸印)。各BBの動きや過去のパターン分析から勘案すると、当面はBB・-2σライン(≒108.00円、上図黄色矢印)がサポートラインとして機能しそうです。

上記で示した2つのメルクマールが同時に確認できるのは、昨年9月以来(上図赤色丸印)。そのケースでは、BB・+2σラインまでの反発フローの起点となっていることを勘案してみると、これからの米ドル/円相場は、BB・-2σライン(≒108.00円)と同・-1σライン(≒109.82円)付近で足場固めをこなしつつ、反発のタイミングを図る時間帯となりそうです。

<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/円、強気トレンドが継続しそう

以下、ユーロ/円・週足・スパンモデル®+26週ボリンジャーバンド(以下、BB)+パラボリック+DMIにつきご覧ください。


 
上図チャートでは、1) 26週MA(26週移動平均線)が右肩上がりであること、2) 遅行スパンがローソク足の上方にあること、3) ローソク足の下方にパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)および青色の雲(=サポート帯)があること、そして、4) DMI(方向性指数)で+DI>-DIとなっている(上図赤色丸印)ことから、緩やかな上昇(=強気)トレンドを示すチャート形状となっています。

強気トレンドの根拠とするメルクマールは2点。

まず1点目は、各BB(主にBB・±2σライン)が26週MAに対してパラレルに推移していること。BBの方向性はトレンド航路を示していることから、当面のユーロ/円相場は、ローソク足がBB・+1σラインと同・+2σラインの間を推移する【上昇バンドウォーク】の状態が継続しそうです。

そして2点目は、青色の雲の上下辺である先行1スパンと同2スパンに比較的大きな乖離が生じていること。この状態は、「分厚いサポート帯」を示しており、下方硬直性相場が継続するメルクマールと捉えることができます。

その一方で、2日時点のローソク足が、「買われ過ぎ」水準を示すBB・+2σライン(≒137.00円)付近まで上昇していることから、足もとでは短期的な修正フロー(=下押しフロー)が発生する可能性も。ただし、その場合でも、総体的なメルクマール判断では上昇トレンド継続に変化はないため、刹那的なものとなりそうです。

<津田>


【豪ドル】 RBAは豪ドル高に対してどのような見解を示すのか

来週(2月5日の週)の豪ドルは、6日のRBA(豪中銀)の政策金利発表が最大の相場材料になりそうです。政策金利は現行の1.50%に据え置かれるとみられます。市場は据え置きをほぼ確実視しており、関心は声明の内容へと移りつつあります。声明では、特に豪ドルや金融政策に関する文言が焦点になりそうです。

RBAは前回昨年12月の声明で、豪ドル高の悪影響に言及した文言を一部削除。豪ドル高に対する懸念を11月から若干弱めました。
<12月の豪ドルに関する文言>
・「豪ドルは過去2年間のレンジ内にとどまっている」
・「豪ドルが上昇すれば、経済活動の好転とインフレ率の上昇が、現在の想定よりも鈍くなる可能性がある」

※次の文言を削除。「豪ドル高は物価圧力を抑制する一因になると予想される」、「(豪ドル高は)生産や雇用の見通しの重しにもなっている」

一方、金融政策については、「低水準の金利が豪経済を引き続き支援している」との見方を示し、「入手可能な情報を考慮すると、理事会は今回の会合で政策スタンスを維持することが、持続可能な経済成長およびインフレ目標の達成と一致していると判断した」と説明しました。

豪ドル/米ドルは前回会合以降に上昇し、今年1月に約2年8か月ぶりの高値を更新しました。そのため、RBAは2月6日の声明では、12月に削除した文言を復活させるなど、豪ドル高への懸念を再び強める可能性もあります。その場合、豪ドルの重しになりそうです。一方で、豪ドルに関する文言が前回からほとんど変わらなければ、豪ドルにとってプラス材料と考えられます。

<シニアアナリスト 八代和也>


【NZドル】 RBNZが8日に政策金利を発表。政策金利見通しなどに注目!!

RBNZ(NZ中銀)が2月8日に政策金利を発表します。今回は、政策金利と声明に加えて、金融政策報告の公表とスペンサー総裁代行の会見が行われます。それらの内容がNZドルの動向に影響を与える可能性があります。

NZの昨年10-12月期のCPI(消費者物価指数)は前年比+1.6%と、7-9月期の+1.9%から上昇率が鈍化したものの、RBNZのインフレ目標(+1から3%)の範囲内に5四半期連続で収まりました。そのため、RBNZは政策金利を現行の1.75%に据え置くとみられます。

今回の焦点は、金融政策報告における政策金利見通しや、声明やスペンサー総裁代行が会見でNZドルについてどのような見解を示すのか?になりそうです。前回(昨年11月)は、政策金利見通しについて、2019年1-3月期まで据え置き、同4-6月期の利上げを想定していることを示唆しました。また、NZドルについては、声明で「NZドルの下落が持続すれば、貿易財インフレを押し上げ、より均衡の取れた成長を促すだろう」と指摘。スペンサー総裁代行は「最近のNZドルの下落は喜ばしい」と語り、「NZドルは持続可能な水準に近づいている」との見解を示しました。

10-12月期のCPI上昇率(+1.6%)は、RBNZの昨年11月時点の見通し(+1.8%)を下振れました。また、NZドルが昨年11月の前回会合以降に上昇しました。それらを踏まえると、RBNZは想定する利上げ時期を前回から後ずれさせる、あるいはNZドル高けん制のトーンを強める可能性もあります。その場合、NZドルには下押し圧力が加わりそうです。一方、10-12月期CPI上昇率が見通しを下振れし、NZドルが上昇したにもかかわらず、前回から利上げの予想時期やNZドル高へのけん制のトーンが変わらなければ、NZドルは上昇する可能性があります。

<八代>


【南アフリカランド】 大統領の早期退陣観測などが支援材料   

南アフリカランドは、対米ドルで1月25日に2年8か月ぶりの高値を更新。対円は、軟調な米ドル/円によって伸び悩んでいるものの、依然として2年半ぶりの高値圏を維持しています。

ランド上昇の背景には、ラマポーザ副大統領への期待があります。ラマポーザ副大統領は昨年12月、与党ANC(アフリカ民族会議)党首に就任。汚職撲滅や経済改革に取り組むことを掲げています。ズマ大統領(任期は2019年の総選挙まで)の早期退陣観測も、ランドの支援材料となっています。ANC幹部はズマ大統領に早期退陣を求める圧力を強めており、1月31日に「ANC幹部がズマ大統領に会って、弾劾や不信任投票を回避する選択肢(早期退陣?)を協議する」との報道がありました。ANC内では、ズマ大統領は一般教書演説が予定されている2月8日までに退陣すべきとの意見もあるようです。

ズマ大統領の退陣をめぐる報道に引き続き注目する必要があります。ズマ大統領の退陣時期が決まる、あるいは実際に退陣すれば、ランドにとってプラス材料と考えられます。

<八代>


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