市場調査部レポート

2018/01/12 11:45米ドル/円、下押し主体の相場展開となりそう

昨年12月29日に配信したマンスリー・アウトルック「2018年の為替相場展望」で、新年の為替相場の考え方や注目ポイント、重要イベントを、とくに年初にフォーカスして取り上げましたので、是非ご覧ください。

【相場環境】米長期金利上昇の考え方
【米ドル】米ドル/円、下押し主体の相場展開となりそう
【ユーロ】ユーロ/米ドル、上昇モメンタムが強まる可能性も
【英ポンド】英ポンド/円、下値固めの時間帯か
【加ドル】NAFTA再交渉がBOCの金融政策に影響も!?
【トルコリラ】TCMBは18日の会合で「据え置き」か
【南アフリカランド】引き続きズマ大統領の進退が相場材料に!?


【相場環境】 米長期金利上昇の考え方

◆米長期金利は9か月ぶりの高水準
9日、米長期金利が9か月ぶりに2.5%を超えました。米金利は全般に上昇しましたが、短期金利よりも長期金利の上昇幅が大きかったことで長短金利差は拡大、イールドカーブ(利回り曲線)はスティープ化(右上がりの傾斜が急になる)しました。長期金利が上昇した背景は主に以下の通り。

・インフレ期待の高まり
実際の物価指標からはインフレの加速は確認できませんが、原油などの国際商品市況の上昇により「いずれ」インフレが高まるとの見方が強まっているのかもしれません。

・利上げ観測の高まり
FFレート(政策金利)先物によれば、11日時点で市場が織り込む利上げ確率は3月に今年1回目が82%、6月に2回目が51%、12月に3回目が43%となっており、いずれもジリジリと上がっています。

・国債の需給悪化
FRBは17年10月以降、保有国債を漸減しています。主要中央銀行が極端な金融緩和から正常化を進めるなかで、債券市場への資金フローにはブレーキがかかりつつあるのかもしれません。また、17年12月に成立した税制改革により、財政赤字の拡大(国債発行の増加)が予想されています。

10日には、中国当局が米国債投資を見直しつつあるとの報道を受けて米国債が売られる局面がありました。後に、その報道を中国当局が「フェイク・ニュース」として否定しましたが、市場が神経質に反応したこと自体が債券市場の地合いの悪化を示しているのかもしれません。

米長期金利の上昇は米ドル高要因と考えることができますが、それが外国による米国債の売却を背景としている場合は、「米ドルからの資金離れ」とみれば米ドル安要因となりえます。今後も米国債市場の地合いの変化には注意が必要でしょう。

◆ドイツ連立政権交渉の行方
<詳細は12日配信のシナリオレポート「ドイツ連立政権交渉の行方とユーロ相場」をご参照ください>
ドイツで、メルケル首相のCDU/CSU(キリスト教民主・社会同盟)とSPD(社会民主党)による「大連立」交渉が行われています。その行方は、ユーロ相場を動かす当面の相場材料になるかもしれません。
今後、3つのシナリオが考えられます。

「大連立」で合意=ユーロ高要因
「大連立」により4期目のメルケル政権は安定するでしょう。政治の不透明感が払しょくされ、ユーロ高要因となりそうです。ただし、「大連立」の条件としてSPDにどこまで譲歩するかも重要となりそうです。

CDU/CSUの少数派政権が誕生=ユーロ不安定or軟調
SPDとの連立交渉に失敗すれば、メルケル首相は少数派政権で4期目を船出する覚悟を固めるかもしれません。ユーロ圏の要となるドイツの政治が不安定になることは、ユーロ安要因と考えられます。

総選挙に踏み切る=ユーロ不安定and 下落
メルケル首相は、再び国民に信を問う形で総選挙に踏み切るかもしれません。その場合、政治が一気に流動化することでユーロ安要因となりそうです。

◆スケジュール◆
1月7-12日 予備交渉(11-12日に予備交渉を再開する予定)
1月21日 SPD党大会(予備交渉で合意した場合に党に承認を求める)
1月22日 本交渉開始?
3月? 「大連立」誕生??(メルケル首相の4期目が正式にスタート)

<チーフエコノミスト 西田明弘>


【米ドル】 米ドル/円、下押し主体の相場展開となりそう

以下、米ドル/円・日足チャート+DMIをご覧ください。


 
上図チャートにおいて、直近高値A(2017/11/6 114.69円)と同安値B(2017/11/27 110.80円)を基点とし、以降の上ヒゲ、下ヒゲを結んだ線(前者:上値抵抗線、後者:下値支持線)が三角形となり、いわゆる『三角保ち合い(さんかくもちあい)/コイル型』のチャート形状を形成していましたが、1/10時点でローソク足が下値支持線を下抜けブレークしています。(上図青色三角印)

一般的には、三角保ち合いを形成し、その鋭角部分に向かって収斂する動きとなっていたローソク足が、その後「上値抵抗線」ないしは「下値支持線」をブレークする展開、いわゆる『保ち合い放れ(もちあいばなれ)』となったケースでは、そのブレークした方向にモメンタムが強まることが多いと言われています。

上図チャートでは、前述の通りローソク足が下値支持線を下抜けブレーク(=下放れ)していることから、足もとの米ドル/円の方向性は下押し主体と捉えた方がよさそうです。

一方で、相場の方向性を示唆するDMI(方向性指数)を見ると、-DI>+DIとなっており、また、ADXが右肩上がり推移となっていることから、マイナスの方向性優位、つまり下降モメンタムが強まる展開となる可能性も。(上図青色丸印)

当面の米ドル/円における下値メドは、昨年11月に付けた安値である110.80円(上図B)。仮に、当該レートを終値レベルで下抜けした場合は、さらに下降モメンタムが強まる可能性もありそうです。

<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/米ドル、上昇モメンタムが強まる可能性も

以下、ユーロ/米ドル・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+ストキャスティクス(スロー)をご覧ください。


 
上図チャートでは、1) 21日MA(21日移動平均線)が右肩上がりであること、2) 遅行スパンがローソク足の上方に位置していること、3) ローソク足が青色の雲(=サポート帯)の上方にあること、4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方で点灯していること、そして、5) ストキャスティクス(スロー)の2本の線がクロスした後、右肩上がり形状となりつつある (上図下部赤色点線丸印)ことから、一旦下値固めをした後、再び上昇フローとなりつつあることが分かります。

特に、逆張り系オシレーター指標であるストキャスティクス(スロー)にフォーカスしてみると、2本の線がクロスし、その後右肩上がり形状となったケースでは、上昇フローの起点となっていることが見て取れます。(上図赤色丸印)

足もとでは、この2本の線が20%ラインと80%ラインの間のゾーンでクロスし、その後右肩上がり形状となりつつあることから、以前のパターンと同様に、上昇フローの起点となる可能性も。

喫緊のポイントは、ローソク足がパラボリック・SAR(≒1.2079ドル)※にタッチするか否か。仮に、同SARにタッチし、ローソク足の下方へと転換した場合は、ユーロ/米ドルの上昇モメンタムが強まる可能性もありそうです。(※1/12時点のBid値)

<津田>


【英ポンド】 英ポンド/円、下値固めの時間帯か

以下、英ポンド/円・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+ストキャスティクス(スロー)をご覧ください。


 
上図チャートでは、1) 21日MA(21日移動平均線)が横向きであること、2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状であること、3) ローソク足が青色の雲(=サポート帯)の中に入り込んでいること、4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方で点灯していること、そして、5) ストキャスティクス(スロー)の2本の線が20%ライン付近にある(上図下部赤色点線丸印)ことから、横ばい基調(=レンジ相場)主体の相場展開における下値固めの時間帯であることが分かります。

上図チャートにおける喫緊の重要ポイントは・・・ローソク足が青色の雲の下辺である先行2スパン(≒150.29円)でサポートされるか否か

仮に、ローソク足が当該スパンを下回った場合は、次なる重要メルクマールであるボリンジャーバンド(以下、BB)・-2σライン(≒149.80円)でサポートされるか否かに注目する必要があります。(上図赤色三角印)

12日時点における英ポンド/円・日足チャートの21日MAやBB・±2σラインの方向性、または遅行スパンの位置関係、そしてストキャスティクス(スロー)の形状から勘案すると、下方硬直性相場を伴うレンジ相場が継続すると想定できます。よって、これからの時間帯において下押しがあった場合は、打診買い方針も一案と考えます。

<津田>


【加ドル】 NAFTA再交渉がBOCの金融政策に影響も!?

1月10日、カナダ政府当局者の発言として、「カナダは、米国のトランプ大統領がまもなくNAFTA(北米自由貿易協定)の離脱を表明すると確信している」と伝わりました。トランプ大統領はNAFTA再交渉の次回会合で離脱を表明する可能性があるとのことです。米国・カナダ・メキシコの3か国は1月23日から28日までモントリオール(カナダ)で、NAFTA再交渉の第6回会合を行う予定です。

カナダ経済は米国経済への依存度が高いため、米国がNAFTAを離脱すれば、カナダ経済は大きな打撃を受ける可能性があります。カナダは輸出先の7割強、輸入元の約5割が米国です。そのため、米国のNAFTA離脱は、加ドルにとってマイナス材料と考えられます。NAFTAの再交渉に関するニュースに注意が必要です。

NAFTA再交渉のゆくえは、BOC(カナダ中銀)の金融政策に影響を与える可能性があります。BOCは景気見通しへの自信が増したとして、昨年(2017年)7月と9月にそれぞれ0.25%の利上げを実施しました。その後、9月と12月の会合では政策金利を据え置いたものの、声明で追加利上げを示唆しました。一方で、ポロズ総裁らBOC当局者は、NAFTA再交渉についてたびたび言及。カナダ経済のリスク要因として、NAFTAの将来をめぐる不透明感を挙げてきました。

BOCは1月17日に政策会合を行います。前回会合以降に発表されたカナダの経済指標が堅調なことで、市場ではBOCが17日の会合で0.25%の利上げを決定するとの観測が高まっています。雇用統計など最近の経済指標はBOCの利上げをサポートする内容ではあるものの、トランプ大統領が1月23日からの再交渉会合でNAFTAからの離脱を表明する可能性が浮上したことで、BOCが今回は利上げを見送る(政策金利を据え置く)ことも想定しておく必要がありそうです。

利上げ観測が高まっているだけに、政策金利が据え置かれればサプライズとなり、加ドルが下落するとみられます。一方、0.25%の利上げが決定された場合は、声明で追加利上げが示唆されるのか?が焦点になりそうです。追加利上げが示唆されば、加ドルが上昇する可能性があります。

<シニアアナリスト 八代和也>


【トルコリラ】 TCMBは18日の会合で「据え置き」か

来週(1月15日の週)のトルコリラは、18日のTCMB(トルコ中銀)政策金利発表が独自材料になりそうです。

TCMBは昨年(2017年)12月14日の前回会合で、4つの政策金利のうち、後期流動性貸出金利を0.50%引き上げました。その時の声明では、「インフレ見通しが大幅に改善し、目標と一致するまで、引き締め的な金融政策スタンスを断固として維持する」と強調。「インフレ期待や企業の価格設定行動、そしてインフレに影響を及ぼすその他の要因を注視し、必要に応じて一段の金融引き締めを行う」と改めて表明し、追加利上げに含みを持たせました。

1月18日の会合では、政策金利をすべて据え置く可能性が高いと考えられます。トルコの2017年12月のCPI(消費者物価指数)は前年比+11.92%と、TCMBのインフレ目標である+5%を大きく上回ったものの、11月の+12.98%から鈍化。加えて、トルコリラが対米ドルで前回会合以降に反発しました。TCMBは昨年12月の利上げ効果を見極める余地が生まれたと考えられます。

利上げが決定されれば、トルコリラが上昇しそうです。一方、政策金利が据え置かれた場合、声明の内容に注目です。声明の内容が前回から大きく変化すれば、トルコリラが反応する可能性があります。

<八代>


【南アフリカランド】 引き続きズマ大統領の進退が相場材料に!?

南アフリカの与党ANC(アフリカ民族会議)が1月10日から全国執行委員会を開催しています(12日まで)。全国執行委員会では、ズマ大統領(任期は2019年半ばまで)の早期退陣が協議されるとの事前報道もあったものの、10日と11日は協議されなかったようです。

ズマ大統領は、自身が多くの汚職疑惑を抱えるうえ、南アフリカ経済の低迷や政局の混乱を招いてきました。そのため、市場では、ズマ大統領が退陣すれば、経済が持ち直し、政局は安定するとの期待があります。ズマ大統領の早期退陣期待が高まれば南アフリカランドが上昇し、一方でズマ大統領の早期退陣期待が後退すればランドが下落する展開が続いています。ランドについては、今後も南アフリカの政局関連のニュースに注意する必要があります。

1月18日にSARB(南アフリカ中銀)が政策金利を発表します。その結果が相場材料になる可能性があります。

市場では、政策金利は現行の6.75%に据え置かれるとの見方が有力。その通りになれば、会合後に行われるSARBのクガニャゴ総裁の会見で、金融政策の先行きについて新たな材料が提供されるのか?に注目です。昨年(2017年)11月の前回会合では、6人の政策メンバー全員が政策金利の据え置きを支持。クガニャゴ総裁はその時の会見で、「国内の成長見通しは依然として弱い」と指摘する一方、「インフレ見通しに対するリスクは上向き」との見方を示しました。今回の会合で、「利下げ」あるいは「利上げ」を主張する政策メンバーがいた場合や、クガニャゴ総裁の経済成長やインフレに関する見解が前回から大きく変化すれば、ランドが反応する可能性があります。

<八代>


※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

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