市場調査部レポート

2017/12/22 12:05米ドル/円、本格的な上昇トレンドとなり得る条件は?

【相場環境】問題を先送りした米議会
【米ドル】米ドル/円、本格的な上昇トレンドとなり得る条件は?
【ユーロ】ユーロ/米ドル、レンジワーク主体の展開となりそう
【英ポンド】英ポンド/円、注目すべきメルクマールは?
【豪ドル】RBA議事録は豪ドルにプラス。対米ドルで200日移動平均線超え
【南アフリカランド】ラマポーザ副大統領がANC新党首に


【相場環境】 問題を先送りした米議会   

米国の2018年度予算は越年へ
米税制改革法案は、20日に議会の上下両院が可決し、トランプ大統領に送付されました。本稿執筆時点で大統領はまだ署名していませんが、税制改革は事実上成立しました。

税制改革法案の可決を受けて、長期金利は短期金利より大幅に上昇しました。そのため、税制改革の景気刺激効果や利上げペースの速まりなどを織り込んだ「良い金利上昇」である以上に、財政赤字の拡大を懸念した「悪い金利上昇」の面が強いとの見方も可能です。

今後は、税制改革によって経済成長率が高まるのか、より具体的には企業による投資や海外利益の還流が増えるのか、また個人消費が促されるか(*)、それとも財政赤字の拡大が強く意識されるのか、などをチェックする必要がありそうです。
(*)所得減税は18年1月1日に発効しますが、個人が減税を実感するのは19年春に前年分の納税申告を行うタイミングだとの指摘があります。

一方、2018年度予算については、18年1月19日までの短い継続予算が上下両院で可決され、23日午前0時のシャットダウン(政府機関の一部閉鎖)は回避された模様です。ただし、18年1月20日までに更なる予算措置が取られなければ、再びシャットダウンの危機が訪れることになります。

また、23日にはデットシーリング(債務上限)が復活します。当面、財務省が「奥の手」を使って資金をやり繰りするので、すぐに問題にはなりません。しかし、18年3月ごろには限界が来るとみられており、その時点までにデットシーリングが引き上げられなければ、デフォルト(債務不履行)の可能性が高まります。

つまり、議会は問題を先送りしており、新年早々にも対応が必要になるということです。

ドイツの連立政権交渉は越年
メルケル首相のCDU/CSU(キリスト教民主・社会同盟)とSPD(社会民主党)の連立交渉が18年1月7日に開始され、12日までの暫定合意を目指すようです。合意に至らなければ、改めて総選挙が実施される可能性があります。

また、CDU/CSUとSPDが「大連立」で合意した場合、極右のAfD(ドイツのための選択肢)が野党第一党になるため、その反ユーロ・反グローバリズムの主張に一般市民が触れる機会が増えそうです。

いずれの場合でも、ドイツ政治は一段と不安定になるかもしれません。

イタリア総選挙では「五つ星運動」が台風の目に
イタリアでは25日の週にも議会が解散する可能性があり、その場合は18年3月4日または11日が総選挙の投票日になる見込みです。

最近の世論調査では、反ユーロを主張するポピュリスト政党の「五つ星運動」が僅差でリードしています。第1党に議席が多く割り当てられる選挙制度が改正されたため、「五つ星運動」が一段と支持を伸ばしたとしても単独で過半数を獲得する、つまり政権を担うことはなさそうです。ただし、「五つ星運動」が最大野党となる可能性はあり、総選挙での台風の目になりそうです。

カタルーニャ州議会選挙は独立派が勝利
21日の州議会選挙では独立派3党が過半数の議席を獲得した模様です。10月の一方的な独立宣言のような過激な動きにはならないとみられます。それでも、独立機運の再燃は、スペイン政治の不安定要因になるだけでなく、同じスペインのバスク地方や英国のスコットランドの独立運動に刺激を与えるかもしれません。

<チーフエコノミスト 西田明弘>


【米ドル】 米ドル/円、本格的な上昇トレンドとなり得る条件は?

早速ですが、以下、米ドル/円・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。



上図チャートを見ると、1) 21日MA(21日移動平均線)がやや上向きであること、2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっていること、3) 赤色の雲(=“売り”の雲)が薄い形状となっていること、4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の下方で点灯していること、そして、5) DMI(方向性指数)で、僅かながら-DI>+DIとなり、またADXが右肩下がりとなっている(上図青色丸印)ことから、米ドル/円は、レンジ相場から短期的な上昇トレンドへの端境期(はざいかいき)の時間帯であると仮定することが可能です。

これからの時間において特に注目すべきメルクマールは・・・遅行スパンの動向

仮に、これからの時間帯において、遅行スパンがローソク足を上抜けブレークし、その後上放れとなるような相場展開となった場合は、米ドル/円の日足チャートでは、上昇トレンドの起点となり得る可能性も。

一方で、トレンドの強弱を示唆するDMIでは、21日時点では依然-DI>+DIとなっており、マイナスの方向性が優位であることが見て取れます。

今後、米ドル/円が日足レベルで本格的な上昇トレンドとなり得る条件は、a) 遅行スパンがローソク足を明確に上放れすることb) DMIで+DI>-DIとなり、その乖離が拡大し、ADXが右肩上がりに推移すること、そして、c) ローソク足がボリンジャーバンド・+1σラインと同・+2σラインの間を推移する【上昇バンドウォーク】となることといった、3つのメルクマール確認が同時にできた場合と言えるでしょう。

<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/米ドル、レンジワーク主体の展開となりそう

以下、ユーロ/米ドル・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。



上図チャートを見ると、1) 21日MA(21日移動平均線)が横向きであること、2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっていること、3) ローソク足が青色の雲(=“買い”の雲)の上方にあること、4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の下方で点灯していること、そして、5) DMI(方向性指数)で、+DI>-DIとなっている (上図赤色丸印)ことから、ユーロ/米ドルは、レンジ相場における戻り(=短期的な上昇)局面であると仮定できます。

パラボリック・SARが「買いサイン」となっていること、また、青色の雲が「サポート帯」となり得ていること、そして、DMIで+DI>-DIとなっており、「プラスの方向性優位」となっていることから、当面のユーロ/米ドルは下方硬直性を伴うレンジ相場が継続しそうです。

当面の想定されるコアレンジは、ボリンジャーバンド・±2σライン内のゾーンである、1.1720-1.1940ドルとなりそうです。足もとのユーロ/米ドルは、当該レンジをベースとするレンジワーク主体の相場展開となりそうです。

<津田>


【英ポンド】 英ポンド/円、注目すべきメルクマールは?

以下、英ポンド/円・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。



上図チャートを見ると、1) 21日MA(21日移動平均線)が右肩上がりとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足の上方に位置していること、3) ローソク足が青色の雲(=“買い”の雲)の上方にあること、4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方で点灯していること、そして、5) DMI(方向性指数)で、僅かながら-DI>+DIとなり、またADXが右肩下がりとなっている(上図青色丸印)ことを総合すると、足もとの英ポンド/円は、本格的な上昇トレンドを窺う準備段階の時間帯であると仮定することが可能です。

これからの時間において特に注目すべきメルクマールは・・・ローソク足とパラボリック・SARの動向

仮に、これからの時間帯において、ローソク足がパラボリック・SAR(≒152.67円※)にワンタッチするような相場展開となった場合は、より足もとのしっかりした相場展開となる可能性も。(※ Bid基準、12/21時点)

今後、英ポンド/円が日足レベルで本格的な上昇トレンドとなり得る条件は、まずは前述の通り、a) ローソク足がパラボリック・SAR(≒152.67円)にワンタッチすること、そして、b) DMIで+DI>-DIとなり、その乖離が拡大し、ADXが右肩上がりに推移することといった、2つのメルクマールが「買いサイン」に変化することと言えるでしょう。

いずれにしても、当面の英ポンド/円は、下値のしっかりした相場展開が継続しそうです。

<津田>


【豪ドル】 RBA議事録は豪ドルにプラス。対米ドルで200日移動平均線超え

RBAは12月19日、政策金利の据え置きを決めた12月5日の会合の議事録を公表しました。

議事録では、政策メンバーが豪経済や労働市場の先行きを一段と楽観視していることが判明しました。失業率がさらに低下し、インフレが一段と上昇する可能性に言及されたことも含め、豪ドルにとってプラス材料になりそうです。

議事録は、経済について「非鉱業投資の見通しが一段と改善し、インフラ投資の拡大も全体の成長を支援している」と指摘し、今後3年間のインフラ投資が予想を上回るシナリオを検討したと表明。労働市場については、「特にフルタイムの雇用者が増加し、失業率は4年ぶりの水準へと低下した」とし、「労働需要の先行指標は、平均を上回る雇用の伸びが続くことを示唆している」と分析。7-9月期の賃金の伸びは予想を下回ったものの、安定したように見えるとし、「労働市場の余剰能力が徐々に吸収されて、賃金の伸びはやがて上向くと見込まれる」としました。

一方で、家計における収入の伸び悩みや高水準の債務を背景に、政策メンバーは家計消費の見通しが大きなリスクと考えていることも議事録で明らかになりました。

議事録は、「失業率は過去約1年にわたって低下し、インフレは目標に近づいた」と指摘し、「最近のデータは、こうした状況がさらに進むという見方を強めた」と強調。見通しを形成するうえで考慮すべき重要な要素として、“経済状況と労働市場の改善がどの程度、そしていつ、賃金とインフレの伸びの加速につながるのか”を挙げ、そのうえで「入手可能な情報を考慮すると、理事会は今回の会合で政策スタンスを維持することが、持続可能な経済成長およびインフレ目標の達成と一致していると判断した」としました。

**********

RBAは賃金の伸びが鈍いことや高水準の家計債務を懸念しており、それらが政策金利を据え置く主な要因となってきました。RBAが利上げに転じる条件のひとつに、賃金の伸びが加速することがありそうです。

ただ、今回の議事録では、経済や労働市場の先行きに楽観的な見方が示されたうえ、失業率がさらに低下し、インフレが一段と上昇する可能性に言及されました。それらは豪ドルにとってプラス材料と考えられます。

豪ドル/米ドルは12月21日、約2か月にわたって頭を抑えられていた200日移動平均線(MA)を終値でわずかながらも上回りました。そのまま200日MAより上の水準を維持すれば、テクニカル面からも上昇圧力が加わりやすいとみられます。200日MAは12月22日時点で、0.7691米ドルに位置します。一方、豪ドル/円は、米ドル/円の影響も受けるものの、豪ドル/米ドルが上昇基調を強めれば、上値を試す展開になりそうです。

<シニアアナリスト 八代和也>

豪ドル/米ドル(日足、2017/8/7-)

*紫のラインが200日移動平均線
出所:M2JFXチャート


【南アフリカランド】 ラマポーザ副大統領がANC新党首に   

南アフリカの与党ANC(アフリカ民族会議)の党首選が18日に実施されました。結果は、ラマポーザ副大統領が2,446票、ドラミニ・ズマ(ズマ大統領の元妻)前AU(アフリカ連合)委員長が2,261票を獲得。ラマポーザ副大統領が新党首に選出されました。ラマポーザ副大統領は、2019年5月に任期満了となるズマ大統領の後任になる可能性が高いとみられます。

党首選の結果を受けて、南アフリカランドが上昇。対円で約2年2か月ぶりの高値を記録しました。ランドが上昇した背景に、改革への期待感が挙げられます。ズマ大統領には多くの汚職疑惑があるうえ、度重なる内閣改造により、政治の混乱を招いてきました。また、南アフリカは2014年以降、たびたびマイナス成長を記録し、経済も低迷。市場では、ドラミニ・ズマ氏が党首になれば、ズマ大統領が影響力を行使し、現状とそれほど変わらないのでは?との懸念がありました。一方、ラマポーザ副大統領は実業家であり、また選挙戦では汚職との戦いや経済成長の押し上げに取り組むことを訴えていました。

ただ、市場では南アフリカの政局への懸念が残っています。今回の党首選では、ANC党内が二分。今後、党内対立が深刻化し、ドラミニ・ズマ氏を支持した勢力が離党すれば、政局が流動化する可能性があります。

ズマ大統領の大統領としての任期は2019年5月まで残っていますが、ラマポーザ新党首が退陣を求めることも考えられます。南アフリカの政局には引き続き注意が必要です。

<八代>


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※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

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