市場調査部レポート

2017/11/24 11:25中銀のトルコリラ防衛策は不十分? 大幅な利上げが必要か

【トルコリラ】中銀のトルコリラ防衛策は不十分? 大幅な利上げが必要か
【米ドル】米ドル/円、本格的な下押しフローの可能性も
【英ポンド】英ポンド/円、下値は限定的か
【加ドル】12月1日のGDPと雇用統計に注目
【相場環境】11/27の週はFEDウィーク!


【トルコリラ】 中銀のトルコリラ防衛策は不十分? 大幅な利上げが必要か   

トルコリラは今週(11月20日の週)、対円や対米ドルで過去最安値を記録しました。トルコと米国の二国間関係をめぐる懸念がトルコリラの下押し圧力となるなか、トルコのエルドアン大統領の以下の発言を受けてTCMB(トルコ中銀)の独立性をめぐる懸念が再燃し、下押し圧力が一段と強まりました。

エルドアン大統領は17日、TCMBはインフレを加速させる間違った軌道にあると批判。「中銀は独立しており、政府は干渉してはならないと言うが、干渉しなかったので、この結果だ」と語りました。トルコの10月のCPI(消費者物価指数)上昇率は前年比+11.90%と、9月の+11.20%から加速し、2008年7月以来の強い伸びを記録しました。エルドアン大統領はまた、「高い金利で融資しようとすれば、当然ながら投資は阻害されてストップする。われわれは(かつて)利下げをしてインフレ率を一桁に引き下げたことがある」と指摘。TCMBに利下げするように改めて求めました

トルコリラが下落するなか、TCMBは通貨防衛策を相次いで打ち出しました。TCMBは、11月6日に金融機関が中銀に預ける準備預金の外貨比率を引き下げ、18日に外貨売却入札を開始すると発表(年末までに最大総額30億米ドルの外貨を売却する計画。2018年については後日発表)。さらに21日には、“後期流動性貸出金利”以外での資金供給を停止すると発表しました。

21日の措置は、市中銀行に対して“翌日物貸出金利(9.25%)”での資金供給をゼロとする一方、より金利水準の高い“後期流動性貸出金利(12.25%)”での資金供給枠を2倍にするものです。TCMB当局者によれば、資金供給を後期流動性貸出金利のみとすることで、市中銀行の平均資金調達コストが12.25%になるとのこと。20日の資金調達コストは平均11.99%だったため、事実上0.25%の利上げと言えそうです。

ただ、TCMBの措置にもかかわらず、トルコリラは下落に歯止めがかかりませんでした。市場は、TCMBのトルコリラ防衛策は不十分とみなしたと考えられます。

エルドアン大統領のエルテム上級顧問(経済担当)が23日、「TCMBはいつでも利上げ可能だ」「TCMBは、必要な場合には会合(次回は12月14日の予定)前に利上げすることを躊躇しないだろう」と発言。TCMBの利上げを容認するような発言をしたことを受けて、トルコリラの下落は23日に一服しました。

市場は今後、TCMBが実際に利上げをできるのかどうかを試す動き(=トルコリラ売り)となることも考えられます。トルコリラの下落に歯止めがかかり、さらに反発に転じるには、TCMBがエルドアン大統領の利下げ圧力をはねのけて、市場が納得するような利上げ(=後期流動性貸出金利の引き上げ)を行い、中銀が政府から独立していることを示す必要があるかもしれません。

<シニアアナリスト 八代和也>


【米ドル】 米ドル/円、本格的な下押しフローの可能性も

以下、米ドル/円・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

ここもと、下落基調が強まっている米ドル/円ですが、日足チャートにおいて重要メルクマールが出現しています。

上図チャートより、1) 21日MA(21日移動平均線)が右肩下がりとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足を下抜けブレーク(=逆転)していること、3) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方で点灯していること、4) ローソク足が先行2スパンを下抜けしていること、そして、DMI(方向性指数)で-DI>+DIとなっていること(上図青点線丸印)から、下降モメンタムの強まりを示唆するチャート形状となっています。

上図チャートにおいて括目すべきポイントは2点。

まず1点目は、上記2)で示した通り、遅行スパンの先端部分が直近ローソク足を下放れ(=逆転)していること。(上図赤三角印) 当該シグナルが出現した場合は、本格的な下押しフローへのトリガーになり得ると言えるでしょう。

そして2点目は、同じく上記4)で示した通り、ローソク足が青色の雲の下辺である先行2スパン(≒112.13円)を明確に下抜けしていること。(上図青三角印) 9月以降、青色の雲はいわゆる“サポート帯”としてローソク足の下値を文字通りサポートしてきましたが、22日のローソク足(陰線)で明確に下抜けしており、遅行スパンの下抜け同様、本格的な下押しフローへのトリガーと捉えてよさそうです。

また同時に、ボリンジャーバンド・±2σラインが21日MAに対して拡張(エクスパンション)していることもあり、日足レベルでの米ドル/円は下値を試す展開が継続することになりそうです。

では、どのあたりまで下押しを警戒すべきなのでしょうか。そのメドを推し量る上で、タイムフレームを週足チャートに拡大して見ていきたいと思います。以下、米ドル/円・週足・スパンモデル®+21週ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上図チャートより、1) 21週MA(21週移動平均線)が横向きとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっていること、3) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の下方で点灯していること、4) ボリンジャーバンド・±2σラインが21週MAに対してパラレルで推移していること、そして、DMI(方向性指数)で+DIと-DIがクロスしつつある(上図青点線丸印)ことから、上方硬直性を伴う典型的なレンジ相場のチャート形状であることが見て取れます。

仮に、これからの時間において、-DI>+DIの乖離が拡大した場合は、下押しモメンタムが強まる可能性もありますが、前述した通り、現状の米ドル/円・週足チャートでは典型的なレンジ相場形状となっていることもあり、下値はある程度限定的であると言えそうです。

足もとでの下落基調は、レンジ相場形成における下押しフローの一過程と捉えることができ、いわば【ヘルシー・コレクション】(健全な調整)と見た方が良いでしょう。

一方で、パラボリック・SAR(≒110.91円、Bid基準)が「売りサイン」へ転換した場合は、理論上ではボリンジャーバンド・-2σライン(≒108.10円)付近までの下押しフローを想定した方がよさそうです。

<チーフアナリスト 津田隆光>


【ポンド】 英ポンド/円、下値は限定的か

以下、英ポンド/円・週足・スパンモデル®+21週ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。



上図チャートより、1) 21週MA(21週移動平均線)が右肩上がりとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足の上方にあること、3) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の下方で点灯していること、4)ローソク足が青色の雲(=“買い”の雲)の上辺付近で推移していること、そして、5) ボリンジャーバンド・±2σラインが21週MAとほぼパラレルで推移していることから、下方硬直性を伴う緩やかな上昇トレンドのチャート形状であることが見て取れます。

その一方で、やや気になるシグナルが・・・DMI(方向性指数)

-DIと+DIがクロスし、その後-DI>+DIとなっており(上図青点線丸印)、英ポンド/円の方向性はやや下向きになりつつあることを示唆しています。

よって、英ポンド/円は、21週MA(≒146.60円)付近までの下押しがあることも想定する必要がありますが、総合的判断では緩やかな上昇基調が継続することを示唆していることもあり、一時的な下押しは積極的に買い拾うスタンスが良いでしょう。

当面の英ポンド/円は、下値のしっかりした相場展開となりそうです。

<津田>


【加ドル】 12月1日のGDPと雇用統計に注目

BOC(カナダ中銀)は今年7月、9月と2回連続で利上げを行いました。前回10月25日の会合では、利上げをいったん休止。政策金利を1.00%に据え置きました。10月の声明では、「時間とともに、必要となる金融刺激策が低下する可能性が高い」とし、追加利上げに言及する一方、「将来の政策金利の調整には慎重を期す」と表明。利上げのタイミングは、今後の経済指標次第としました。

10月会合以降に発表されたカナダの経済指標は弱めの結果が目立ちます。8月GDPは前月比-0.1%、前年比+3.5%と、市場予想(+0.1%、+3.5%)を下回りました。10月雇用統計は、雇用数が強かった(結果:+3.53万人、予想:+1.50万人)ものの、失業率は弱め(結果:6.3%、予想:6.2%)でした。9月小売売上高は+0.1%、自動車を除く小売売上高が+0.3%と、いずれも市場予想(+0.9%、+1.0%)を下回りました。

弱めの経済指標を受けて、市場ではBOCの早期利上げ観測が後退。そのことが加ドルの重しとなっています。来週(11月27日の週)は、カナダの7-9月期GDPや11月雇用統計が発表されます(いずれも12月1日)。それら経済指標がBOCの早期利上げ観測を高めるのか、それとも一段と後退させる内容になるのか、注目です。

<八代>


【相場環境】 11/27の週はFEDウィーク!

来週(11/27-)は米FRB関連の材料が多く、「FED(フェド)ウィーク*」と呼べそうです。主なイベントは以下の通り。
(*)米中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)のことを、FED(フェドまたはフェッド)と呼びます。FRBが金融政策を決定する会合がFOMC(連邦公開市場委員会)。

パウエル理事(次期議長候補)は従来からFOMCの決定に沿った発言をしており、基本的にはゆっくりしたペースでの利上げを続けるイエレン路線を継承するものとみられます。ただ、市場は少しでもイエレン議長との相違点を見つけようとパウエル理事の発言を精査するでしょう。一方、イエレン議長の証言は従来に比べて注目度が低下するかもしれません。それでも、市場は、12月利上げの意向やそれ以降の利上げペースに関するヒントを探るでしょう。
ベージュブックでは、足元の経済情勢、とりわけ労働需給のひっ迫や賃金上昇圧力、物価に関する報告が注目されます。

27日は、サイバーマンデーと呼ばれ、ネット通販が盛り上がります。24日のブラックフライデー前後の小売売上の状況と合わせて、クリスマス商戦の先行きを占うものとして注目されます。

税制改革は、上院案が早ければ30日に上院本会議で採決されます。共和党議員の中にも上院案に反対、ないし懐疑的な見方もあり、可決に必要な50票(共和党上院議員は52人)が集まるかは不透明です。仮に、上院案が本会議で可決されると、次は既に可決済みの下院案との一本化作業が始まります。税制改革が成立するまで、まだ紆余曲折がありそうです。

ドイツでは、SPD(社会民主党)がメルケル政権への閣外協力に向けての協議に前向きのようです。メルケル首相がFDP(自由民主党)と緑の党との連立交渉に失敗したことで、再選挙の可能性が意識されていましたが、SPDがメルケル首相のCDS/CDU(キリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟)の少数与党に協力するならば、ユーロの不安定要因の一つである再選挙の可能性はなくなります

来週(27日-)の主要なスケジュールは後掲の<来週の主要経済指標・イベント>をご参照。

<チーフエコノミスト 西田明弘>


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