市場調査部レポート

2017/11/03 13:50一時的な円高フローには要注意

【相場環境】相場材料の最新情勢
【全体観・米ドル】米ドル/円、一時的な円高フローには要注意
【ユーロ】ユーロ/米ドル、「窓埋め」に向けての加速となるか
【英ポンド】英ポンド/円、強気トレンドが継続しそう
【豪ドル】RBAは政策金利を据え置きか。焦点は豪ドル高に関する文言
【NZドル】9日のRBNZ政策金利発表に注目!!


【相場環境】 相場材料の最新情勢   

◆次期FRB議長はパウエル氏
11月2日、トランプ政権は、次期FRB議長にパウエル理事を昇格させる人事を発表しました。 パウエル理事は利上げに慎重な「ハト派」とみなされています。ただし、最近の講演では「経済情勢が予想通りに展開するなら、金融政策の正常化を継続すべき」とも発言しています。基本的に現行路線が継承されるとみられます。パウエル氏は2012年からFRB理事を務めており、FOMCで反対票を投じたことは一度もありません。バトンタッチは比較的スムーズに進みそうです。

もっとも、パウエル理事の専門は財政や金融制度です。金融政策運営の手腕は未知数であり、それが疑問視されるようであれば、米ドル安要因となるかもしれません。議会承認のための公聴会での発言などを、市場は精査しそうです。

FRB理事は現在、7人のうち3つが空席です(イエレン議長が理事も辞すれば、空席は4つに)。トランプ大統領が順次新しい理事を指名するとみられ、議長と同様に誰が理事に指名されるかも重要でしょう。来年のFOMCで投票権を持つ地区連銀総裁はタカ派色が強まるとみられ、そちらも政策決定に影響を与えるかもしれません。

◆米税制改革は難航しそう
11月2日、議会共和党は1日遅れで税制改革法案を発表しました。法案は400ページに及び、レーガン政権以来31年ぶりに抜本的に税制を改革する野心的な内容です。ただし、先に採択された予算決議(≒設計図)に則って財政赤字の拡大を10年間1.5兆ドルに収めるため、様々な調整が施されています。また、今後も多くの修正が予想されるので、経済、ひいては市場への影響を総合的に判断するのは難しそうです。税制改革によって、得する人(企業)と損する人(企業)の区別は、共和党と民主党の区別とは別次元なので、議会における法案審議も非常に複雑になりそうです。

トランプ政権や議会共和党は年内(クリスマス前)の成立を目指すようですが、内容が大きく修正される、年明け以降に先送りされる、改革が頓挫するなど様々なシナリオが考えられ、今後も紆余曲折はありそうです。

◆BOEは10年ぶりの利上げ、それでも英ポンドは下落
2日、BOE(英中銀)はMPC(金融政策委員会)で0.25%の利上げを7対2で決定しました。10年ぶり、つまりリーマン・ショック後初の利上げで政策金利は0.5%になりました。BOEは先行するFRBを追いかける形で金融政策の正常化を進めることになりそうです。

もっとも、英ポンドが上昇したのは発表直後の一瞬だけで、その後は大幅に反落。声明文から、これまでにあった「市場が想定するより大幅な利上げが必要になるかもしれない」との部分が削除されました。また、カーニー総裁が、会見で次の利上げが相当先になると協調したことや、BBCとのインタビューでBOEの経済見通しが「3年間で2回程度の利上げを想定している」と語ったことが、英ポンド安の背景となりました。

英国のCPIは足元で、BOEの目標である2%を上回り、3%程度で推移しています。しかし、BOEはそれ以上に、将来的にブレグジット(英国のEU離脱)によって景気や物価に下押し圧力が加わる可能性を懸念しているようです。

英国の金融政策が当面据え置かれるとみられるなかで、ブレグジットの交渉が今後の相場材料になりそうです。まずは、9-10日の英国とEUの交渉ラウンドに注目です。

◆カタルーニャ独立問題の焦点は州議会選挙に!?
10月27日、カタルーニャ州議会はスペインからの独立を宣言。これを違憲として中央政府はすぐに同州の統治機構を掌握、そのため月末にはプチデモン州首相ら幹部がベルギーに脱出しました。11月2日には、カタルーニャ州の独立を支持した前閣僚らが収監され、プチデモン氏には逮捕状が請求されました。

現時点で事態は鎮静化しています。ただし、12月21日には中央政府が命じた州議会選挙が予定されています。カタルーニャ独立派は、選挙運動を行うことで公然に、あるいは非公然に活動を行うものとみられ、今後の展開は予断を許しません。

カタルーニャ州はスペイン経済の20%を占めると言われており、同州からの企業の移転などの動きもみられるようです。スペイン経済が打撃を受けるようであれば、ユーロ圏経済、ひいてはユーロ通貨にも影響が出てくるかもしれません。

<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 米ドル/円、一時的な円高フローには要注意

今週末から来週にかけてのマーケットにおけるキーパーソンは、やはりトランプ大統領となるでしょうか。

就任後初となるハワイ州-アジア歴訪が3日(金)から予定されており、特に昨今の国際的リスクの発信源となり得ている北朝鮮問題を中心に、アジア各国首脳との会談を行う予定となっています。以下、トランプ大統領の外遊予定につき、ご確認ください。

【トランプ大統領の外遊予定】
 [3日]ハワイ・アリゾナ記念館→[5-7日]日本→[7-8日]韓国→[8-10日]中国→[10-11日]ベトナム・APEC(アジア太平洋経済協力)→[12日]フィリピン・ASEAN(東南アジア諸国連合)

特に、5-7日にかけての訪日時に行われる日米首脳会談では、前述した通り、メインテーマは北朝鮮問題となり得るものの、一方では年間700億ドルに上る対日貿易赤字の是正を米側が強く要求するとの見方も。

トランプ大統領にとっては、国内(特に議会)に向けてのメッセージとして、単なる物見遊山ではないことを証明し、また、自身“辣腕ビジネスマン”として何らかの成果を実際に持ち帰ることが、帰国後に待ち受けている【ロシアゲート疑惑】に対する厳しい追及を逸らすための一つの方法論なのかもしれません。

具体的には、(1)自動車の非関税障壁、(2)牛肉の高関税、(3)医薬品の価格制度の見直しを、日本側に強く促すとされており、今回の歴訪に同行するムニューシン財務長官やロス商務長官とともに、【貿易不均衡の是正】プッシュを仕掛けてくる可能性も。

日本側としても、対北朝鮮政策において、米国の協力なしに乗り切ることは困難であるため、互いの『Win-Win』の果実を得るために、少なからず譲歩を行うことは、ある意味合理的と言えそうです。

【貿易不均衡の是正】のための一番シンプルな解決手段は、<米ドル安・円高>フローが実現すること。

今回のトランプ大統領の訪日に際しては、こういった経済面と軍事面での駆け引き(or トレード)があり得ることを念頭に置きつつ、対日貿易赤字解消に向けてのインパクトが比較的強く意識された場合は、為替市場では一時的に<米ドル安・円高>フローが発生する可能性も視野に入れておいた方がよさそうです。

閑話休題。以下、米ドル/円・週足・スパンモデル®+21週ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。



上図チャートの各メルクマールを確認すると、1) 21週MA(21週移動平均線)がやや右肩上がりとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっていること、3) ローソク足が青色の雲(=“買い”の雲)の上方にあること、3) ローソク足の下方にパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして、5) DMI(方向性指数)において、+DI>-DIとなっている (上図赤丸印)ことから、上昇トレンドの本格化に向けた準備段階であることが分かります。

上図チャートにおける着目ポイントは、遅行スパンの今後の動き。(上図赤三角印)

仮に、今週末の終値レベル(3日NYクローズ時点)において、遅行スパンがローソク足を上放れ(=好転)した場合は、本格的な上昇トレンドに向けた起点となり得る可能性もありそうです。

一方で、ローソク足と青色の雲の上辺である先行1スパン(≒110.87円)に比較的大きな乖離が生じていることもあり、その埋め合わせ(=下押し修正フロー)が行われる可能性も視野に入れるべきでしょう。

いずれにしても、当面の米ドル/円は、下方硬直性相場が継続する見通しが強いため、押し目は積極的に買い拾う姿勢が得策なのかもしれません。

<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/米ドル、「窓埋め」に向けての加速となるか

以下、ユーロ/米ドル・日足・一目均衡表+DMIをご覧ください。

上図、一目均衡表を見ると、1) 遅行スパンがローソク足の下方にあること、2) 転換線が基準線の下方にあること、3) ローソク足が先行2スパン(いわゆる“雲”の下辺)を下抜けブレークしていることから、強い下降トレンドを示唆する【三役逆転】シグナルとなっていることが分かります。

また、DMI(方向性指数)においても、-DI>+DIとなっており、同時にADXが低位置から右肩上がり推移となっている(上図青丸印)ことから、徐々に下降モメンタムが強まる可能性も。

4月23日に行われた仏大統領選挙(第1回投票)でマクロン氏が優勢(のち、勝利確定)となったことで、翌24日のユーロ/米ドルが窓開け(ギャップアップ、上図赤三角印)スタートし、その後“マクロン・ラリー”と呼ばれるユーロ高フローが進展したことは上図チャートの通りです。

相場の世界における経験則・アノマリーでは、「“窓開け”は“窓埋め”を伴う」と言われており、仮にこの言葉が現実となった場合、額面通りに受け止めれば、早晩、4月時のレート水準である1.0700-1.0800ドル付近までの下落を想定した方がいいのかもしれません。

<津田>


【英ポンド】 英ポンド/円、強気トレンドが継続しそう

以下、英ポンド/円・週足・スパンモデル®+21週ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上図チャートの各メルクマールを確認すると、1) 21週MA(21週移動平均線)が右肩上がりとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足の上方に位置していること、3) ローソク足が青色の雲(=“買い”の雲)の上方にあること、3) ローソク足の下方にパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして、5) DMI(方向性指数)において、+DI>-DIとなっている (上図赤丸印)ことから、典型的な上昇トレンドのチャート形状となっています。

上図チャートにおける着目ポイントは、ボリンジャーバンド・±2σラインの動き。(上図黄色矢印)

  ここもと、両バンドは21週MAに対して拡張(エクスパンション)する動きとなっており、このメルクマールは「相場の力の拡散・放出」を示唆しており、この場合は上昇モメンタムがさらに強まる可能性があることを意味しています。

同時に、現状ではローソク足がボリンジャーバンド・+1σラインと同・+2σラインの間のゾーンを推移する【上昇バンドウォーク】となり得ており、今後も巡航速度での上昇トレンドが継続する可能性が高くなっています。

以上より、当面の英ポンド/円は、強気トレンドが継続しそうです。

<津田>


【豪ドル】 RBAは政策金利を据え置きか。焦点は豪ドル高に関する文言

来週(11月6日の週)の豪ドルは、7日のRBA(豪中銀)の政策金利発表が最大の相場材料になりそうです。政策金利は現行の1.50%に据え置かれるとみられます。市場は据え置きをほぼ確実視しており、声明の内容に注目が集まりそうです。

声明では、とりわけ豪ドルや金融政策に関する文言に注目です。

前回10月3日の声明は、以下のように豪ドル高に懸念が示されました。
・「豪ドル高は物価圧力を抑制する一因になると予想される」
・「豪ドル高は生産や雇用の見通しの重しにもなっている」
・「豪ドル高により、経済活動の好転とインフレ率の上昇が、現在の想定よりも鈍くなる可能性がある」

一方、金融政策については、「低水準の金利が豪経済を引き続き支援している」との見方を示し、「入手可能な情報を考慮すると、理事会は今回の会合で政策スタンスを維持することが、持続可能な経済成長およびインフレ目標の達成と一致していると判断した」と説明しました。

豪ドル/米ドルは前回会合以降、下落しました。そのため、11月7日の声明では豪ドル高への懸念が弱まる可能性もあります。その場合、豪ドルの支援材料となりそうです。

労働市場や住宅市場、金融政策についての文言も含め、声明が前回と比べて大きく変化しなければ、豪ドルに大きな反応はみられないかもしれません。その場合、来週はRBAの政策金利発表以外に豪ドルの独自材料が乏しいこともあり、対米ドルは米ドルの動向、対円は円の動向に影響を受けやすい地合いになりそうです。

<シニアアナリスト 八代和也>


【NZドル】 9日のRBNZ政策金利発表に注目!!

RBNZ(NZ中銀)が11月9日に政策金利を発表します。今回は、政策金利と声明に加えて、金融政策報告の公表とスペンサー総裁代行の会見が行われます。それらの内容がNZドルの動向に影響を与える可能性があります。

RBNZは前回9月28日の会合で、政策金利を過去最低の1.75%に据え置くことを決定。その時の声明で、「金融政策はかなりの期間、緩和的であり続ける」と表明。「多くの不確実性が残っており、それに応じて政策の調整が必要になる可能性がある」との見方を示しました。

一方で、NZドルについては、「NZドルの下落は、貿易財インフレの上昇や、よりバランスの取れた成長を実現するのを支援する」とし、8月の「貿易財インフレの上昇や、よりバランスの取れた成長を実現するために、NZドルの下落が必要」から、NZドル高をけん制するトーンを若干弱めました。

11月9日の会合では、政策金利の据え置きが決定されそうです。RBNZは8月の金融政策報告で、政策金利を今後2年間据え置くことを示唆したことに加え、政権交代(国民党主導から労働党主導へ)によって政策の先行き不透明感があるため、RBNZは引き続き状況を見極めるとみられます。

政策金利が据え置かれた場合、市場の関心は声明や金融政策報告、総裁代行の会見に移りそうです。

声明では、NZドルに関する文言が最大の焦点になりそうです。NZドルは8月以降に下落しました。NZドルのTWI(貿易加重指数)は8月の会合時には77前後、9月の会合時は76前後、足もとは73前後で推移しており、そのため、前回9月から文言に変化があるとすれば、NZドルをけん制するトーンが弱まる可能性が高そうです。NZドルをけん制するトーンが弱まれば、NZドルにとってプラス材料となる可能性があります。

金融政策報告では、OCR(オフィシャル・キャッシュ・レート、政策金利)の見通しに注目です。RBNZは前回8月の金融政策報告で、2019年7-9月期の利上げを示唆しました(それまでは「据え置き」)。金融政策報告で示される想定される利上げの時期が、8月時点から変化すればNZドルが反応する可能性があります。

一方で、市場はNZの新政権の政策やRBNZ改革の行方にも注目しています。それらに関するニュースにも注意が必要です。NZのロバートソン財務相は10月31日、RBNZ改革に向けた工程表を数週間以内に公表する考えを示しました。RBNZ改革については、新政権は現在の“物価安定”に加えて、“雇用の最大化”もRBNZの責務にすることを検討。市場では、RBNZの責務に雇用の最大化が加われば、利上げのハードルが上がるとの見方があります。

RBNZの政策金利発表にサプライズがなく、新政権の政策などに関して新たに材料が提供されなければ、NZドルはポジション調整の動きが出やすいかもしれません。NZドル/円やNZドル/米ドルは10月19日以降、戻りらしい戻りがないまま下落したこともあり、戻りを試す展開になる可能性があります。

<八代>


※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

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