市場調査部レポート

2017/08/25 12:55ジャクソンホール会議で、イエレン議長から利上げのヒントが出るのか否か

【全体観・米ドル】注目のジャクソンホール会議!イエレン議長から利上げのヒントが出るのか否か
【ユーロ】ユーロ/米ドル、相場の力を溜め込む【スクイーズ】が示現中
【豪ドル】RBAの豪ドル高けん制が上値を抑えそう
【加ドル】31日発表のカナダGDPに注目!!
【南アフリカランド】南アフリカのCPI上昇率が一段と鈍化


【全体観・米ドル】注目のジャクソンホール会議!イエレン議長から利上げのヒントが出るのか否か

マーケット参加者の耳目は、現地(米ワイオミング州)時間24日午後6時(日本時間25日午前9時)から始まるジャクソンホール会議(カンザスシティ連銀主催 年次経済政策シンポジウム)一点に集中しているといっても過言ではないでしょう。(-26日午後2時[現地時間、日本時間27日午前5時])

このジャクソンホール会議には、世界各国から中央銀行総裁や政治家、学者、エコノミスト等約150人が参加し、その参加者(特に中央銀行総裁)の発言や合意内容が世界的に注目される代表的な会議の一つとなっています。

中でも注目なのは、イエレンFRB議長の講演内容(日本時間25日午後11時-。講演テーマ:『金融の安定性』)。 その講演の中で、FRBによるB/S(バランスシート)縮小のタイミングや、今後の利上げペース、ないしはその時期についてのヒントや示唆があった場合は、マーケットの大きな動意となり得ます。

ちょうど一年前となる昨年の同会合において、イエレンFRB議長が早期利上げに関して示唆する発言があった日(2016/8/26)の米ドル/円は、デイリーベースで2円近くの米ドル高・円安フロー(100.07円→101.91円)となったことは記憶に新しいところです。(※実際、その年の12月[2016/12/14]に約1年ぶりの利上げを実施。)

今回の会議におけるテーマは『ダイナミックなグローバル経済の促進』となっていますが、実際にパネルディスカッションや質疑応答で交わされる実質テーマは、【従来の理論では説明がつかないインフレ低迷の謎】についての議論がなされると予想されており、同会議において、特に各国中央銀行当局者がどのような認識や見方を持っているのかを確認することで、今後の各国中銀の金融政策の方向性や枠組みをある程度想定できるといってもよいでしょう。

一方で、もう一人のキーパーソンであるドラギECB総裁は、今回の会議において金融政策についての発言は行わないとの見方もありますが、その講演(日本時間26日午前4時-)において、仮にテーパリング(量的金融緩和の縮小)に関するヒントや示唆があった場合は、ユーロの動意(ユーロ高・米ドル安)となり得ます。

そのドラギECB総裁の同会議への参加は2014年以来、実に3年ぶり。当時、同会議においてQE(量的金融緩和)を示唆し、実際に2015年1月にQEを実施したことで、今回の会議でテーパリングを示唆した場合は“シンメトリー”(=均整)となり得ること、また、次回のECB理事会が9月7日に迫っていることもあり、そのヒントや示唆の有無に対して大いに耳目が集まっています。

今回のジャクソンホール会議に対して大いに耳目が集まるきっかけとなり得たのが、今年6月にポルトガルのシントラで開催されたECBフォーラム(6/26-28)と言えるでしょう。同フォーラムにおける当局者の発言や意向は以下の通りです。

■    イエレンFRB議長:金融政策の正常化をゆっくりと進める意向を表明
■    カーニーBOE総裁:金融緩和政策解除を示唆
■    ポロズBOC総裁:「(過去2度のBOCの利下げが)役割を果たした」
■    ドラギECB総裁:「デフレ圧力がリフレの力に置き換わった」→QE縮小を示唆
■    黒田日銀総裁:「(質的・量的金融緩和は)引き続き必要」

これら発言や意向が表明されたことで、各国中央銀行による政策スタンスの相違がより鮮明となり、その後の通貨強弱レースの起点となり得たことは、以前の当レポートでもお伝えした通りです。以下、主要通貨の実効レート(6-8月)の騰落率推移※をご覧ください。(※6/1を「100」とする実効レート指数)

本日(25日本稿執筆時)から始まるジャクソンホール会議における、各国中央銀行総裁による発言によって、先のECBフォーラムを起点とする通貨強弱の動きに対してさらに拍車をかけることになるのでしょうか。はたまた、通貨強弱の鮮明化の動きに対するアンワインド(巻き戻し)の起点となり得るのでしょうか。

いずれにしても、日本時間25日午後11時からのイエレンFRB議長による講演内容とともに、同26日午前4時からのドラギECB総裁による3年ぶりの講演内容には要注目でしょう。

閑話休題。以下、米ドル/円・週足・一目均衡表+21週ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上記、米ドル/円・週足・一目均衡表+21週ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIを見ると、1) 21週MA(21週移動平均線)がやや右肩下がりとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足のやや下方に位置していること、3) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)の中にあること、4) ローソク足の上方にパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして、5) DMI(方向性指数)で-DI>+DIとなっている(上図青丸印)ことから、緩やかな下降トレンドを形成中であることが分かります。

米ドル/円の週足チャートにおける喫緊の重要ポイントは2つ。まず一つ目のポイントは、ローソク足が“雲”の下辺である先行2スパン(108.70円※)でサポートされるか否か

ここもと3週間のローソク足は、同スパン(108.70円)をワンタッチするものの、その後はサポートされる形となっています。足もとでの重要ラインと捉えるべきでしょう。

そして二つ目のポイントは、ボリンジャーバンド・-2σライン(108.20円※)。同ラインについては、4月中旬以来のサポートメルクマールとなり得ており、米ドル/円における【最終サポートライン】と捉えていいかもしれません。(※いずれも終値レベル、Bid値基準。上図赤三角印。)

仮に、ローソク足が終値レベルで同ライン(108.20円)を明確に下抜けブレークした場合は、米ドル/円の本格的な下降トレンドの起点となり得る可能性もありそうです。

いずれにしても、この2つのメルクマールが、<一旦のサポート> or <下抜けの起点>の分水嶺となり得そうです。これらを確認する上でも、本日(25日本稿執筆時)午後11時からのイエレンFRB議長による講演内容には要注目です。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/米ドル、相場の力を溜め込む【スクイーズ】が示現中

以下、ユーロ/米ドル・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上記、ユーロ/米ドル・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIを見ると、1) 21日MA(21日移動平均線)が緩やかな右肩上がりとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足の上方に位置していること、3) ローソク足が先行1スパン(=青い雲[“買い”の雲]の上辺)の上方にあること、4) ローソク足の下方にパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして、5) DMI(方向性指数)で-DI>+DIとなっている(上図青丸印)ことから、下方硬直性を伴うレンジ相場が継続していることが分かります。

上図チャートでの注目メルクマールは2つ。まず一つ目のメルクマールは、先行1スパン(=青い雲の上辺)と先行2スパン(=青い雲の下辺)に乖離があり、分厚い雲の形状となっていること。こういった形状の場合は、【サポート帯がしっかりと機能している】と捉えることができ、余程の突発的なカタリスト※が生じない限りは<下値しっかり>の相場展開となる確率が高いと言えそうです。(※相場の変動を誘発する材料・きっかけのこと)

そして、二つ目のメルクマールは、ボリンジャーバンド・±2σライン。現状では、この2つのラインが21日MAに向かって収縮(スクイーズ)する形となっており、すなわちこの状態は、【相場の力を溜め込んでいる状態】と言えそうです。

『相場の力』とは、まさしく上下ブレークの力ということになりますが、これからの時間帯において、ユーロ/米ドルが仮に+2σライン(1.1860ドル)を明確に上抜けした場合は、上抜けブレークのトリガーになり得ます。

一方で、同じくユーロ/米ドルが仮にパラボリック・SAR(1.1670ドル)にワンタッチするようなフローが発生した場合は、先行2スパン(1.1510ドル)付近までの下押しフローを想定した方がよさそうです。

いずれにしても、ユーロ/米ドルの動意となり得るのは、先述したイエレンFRB議長の講演(日本時間25日午後11時-)内容とともに、ドラギECB総裁の講演(同26日午前4時-)内容となるでしょう。仮に、イエレンFRB議長の口から、早期利上げ観測に関するヒント、示唆が出た場合の初動フローは「米ドル買い・ユーロ売り」となりそうです。<津田>


【豪ドル】 RBAの豪ドル高けん制が上値を抑えそう

豪ドル/米ドルは7月27日に一時0.8065米ドルへと上昇。2015年5月以来、約2年2か月ぶりの高値をつけました。その後、8月15日に0.7809米ドルへと値を下げたものの反発し、足もとは0.79米ドル前後で推移しています。

8月初めに豪ドル/米ドルが下落した一因として、RBA(豪中銀)が豪ドル高をけん制したことが挙げられます。RBAは、8月1日の政策会合時の声明で、「豪ドル高は物価圧力を抑制する一因になると予想される」とするとともに、「(豪ドル高は)生産や雇用の見通しの重しにもなっている」と指摘。「豪ドル高により、経済活動の好転とインフレ率の上昇が、現在の想定よりも鈍くなる可能性がある」との見方を示しました。

一方、8月半ば以降の豪ドル/米ドルの反発は、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げペース鈍化観測や米政局の不透明感などを背景に、米ドルが弱含んだことが挙げられます。

米政局の不透明感などが引き続き、豪ドル/米ドルを下支えする可能性があります。その一方で、上値ではRBAの豪ドル高けん制が意識されそうです。7月27日高値である0.8065米ドルに近づく場面では利益確定売り圧力が強まる可能性があります。<シニアアナリスト 八代和也>


【加ドル】 31日発表のカナダGDPに注目!!

BOC(カナダ中銀)は7月12日の政策会合で、潜在成長力を上回る成長や経済における余剰能力の吸収に関する見通しへの自信が強まったとして、0.25%の利上げを決定。政策金利を0.50%から0.75%へ引き上げました。利上げは2010年9月以来、6年10か月ぶりです。

BOCはその時の声明で、「政策金利の将来の調整は、今後発表されるインフレ見通しに関する指標次第」と強調。先行きの不透明感や金融システムの脆弱性も引き続き考慮するとし、追加利上げを示唆しませんでした。


市場では少なくともあと1回利上げが行われるとの見方が有力です。ポロズ総裁が今年6月に「2015年の利下げは役割を終えた」と語ったためです。BOCは2015年に計0.50%の利下げ(0.25%×2回)を実施しました。

市場の関心は追加利上げの“有無”よりも、“時期”へと移っています。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)が8月24日時点で織り込む、BOCが次回9月6日の会合で0.25%の利上げが行われる確率は26.6%。利上げの確率は10月までで66.9%、12月までで72.1%へと上昇します。OISを参考にすると、市場のメインシナリオは10月に利上げのようです。

カナダの4-6月期GDPが8月31日に発表されます。BOCが7月に利上げを決定した背景には、堅調なカナダ経済がありました。そのため、4-6月期のGDPが堅調な結果になれば、市場ではBOCの早期利上げ観測が高まる可能性があります。その場合、加ドルにとってプラス材料になりそうです。<八代>


【南アフリカランド】 南アフリカのCPI上昇率が一段と鈍化

南アフリカの7月CPI(消費者物価指数)が8月23日に発表されました。結果は前年比+4.6%と、6月の+5.1%から上昇率が鈍化。2015年10月以来、1年9か月ぶりの低い伸びとなりました。

SARB(南アフリカ中銀)は今年7月の政策会合で、南アフリカのインフレ見通しが改善するなかで、経済成長見通しが悪化したとして、0.25%の利下げを決定しました。

南アフリカ経済は、昨年10-12月期と今年1-3月期の2四半期連続でマイナス成長を記録。2009年以来のリセッション(景気後退)に陥りました。一方、CPIは昨年12月の+6.7%をピークに鈍化傾向。SARBのインフレ目標(+3から6%)の範囲内に4か月連続で収まり、さらに目標中央値である+4.5%に接近しました。

SARBのクガニャゴ総裁は7月の会合時の会見で、「将来の金融政策はデータ次第」と語り、追加利下げの可能性に言及しませんでした。ただ、CPI上昇率が一段と鈍化したことで、SARBは景気対応のための利下げを行いやすくなったと考えられます再来週(9月5日)発表される南アフリカの4-6月期のGDPで、同国経済の低迷が改めて示されれば、SARBは次回9月21日の会合で追加利下げに踏み切る可能性があります。

足もとの南アフリカランド/円は、南アフリカや日本の独自材料よりも、北朝鮮情勢や主要国株価の動向などを背景としたリスク意識の変化により影響を受けやすい地合いです。来週(8月28日の週)発表される主な経済指標は、南アフリカが7月南アフリカの生産者物価指数や貿易収支(いずれも31日)日本は7月鉱工業生産(31日)があります。ただ、相場材料として力不足の感があります。南アフリカランド/円は引き続き、リスク意識の変化に敏感に反応しやすい状況になりそうです。<八代>


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