市場調査部レポート

2017/07/28 11:58【マンスリー・アウトルック(2017/8)】“曰(いわ)く付き”の8月相場? 『2弱通貨』の流れが継続しそう

― 2017年8月の為替相場展望 ― 

《相場環境》

8月は注目イベントがあまりなく、BOE(英中銀)の会合やジャクソンホールのシンポジウム程度か。為替取引は低調となりそうだが、それは必ずしも相場が動かないことを意味しない。過去には、チャイナ・ショック、米財政危機、パリバ・ショックなどが8月に発生しており、注意は怠れない。

<主要通貨の動向>
・【全体観・米ドル】“曰(いわ)く付き”の8月相場? 『2弱通貨』の流れが継続しそう
・【ユーロ】ユーロ/米ドル、力強い上昇トレンドが継続しそう
・【英ポンド】英ポンド/円、上昇トレンドのモメンタムが強まる可能性も

<資源国・新興国通貨の動向>
・【豪ドル】RBAは政策金利据え置きか。声明に注目!!
・【NZドル】8月10日のRBNZ政策金利発表が最大の材料になりそう
・【加ドル】BOCの利上げ時期をめぐる観測に左右されやすい地合いか
・【トルコリラ】主要国の金融政策をめぐる観測に影響を受けやすい!?
・【南アフリカランド】SARBが5年ぶりに利下げ。大統領不信任投票が8月8日に実施予定

◆主要経済指標・イベント
◆OIS(翌日物金利スワップ)に基づく金融政策見通し


≪相場環境≫

8月と言えば、「夏枯れ」で為替相場が動かないというイメージがあるかもしれませんが、過去の経験では必ずしもそうではありません。

昨年は、6月の英国民投票でのブレグジット決定を受けて英ポンドが大きく下落した後、8月は全般に小動きでした(*)。しかし、15年8月は、中国による事実上の人民元切り下げ(チャイナ・ショック)を受けてリスクオフが強まり、日米株価や米ドル円が下落しました。11年には米財政危機が発生し、デットシーリング(債務上限)が8月2日に引き上げられて、国債のデフォルト(債務不履行)は土壇場で回避されました。ただ、その後もS&Pによる格下げ(8月5日)などの余震がありました。

もっと遡れば、リーマン・ブラザースの破たん(リーマン・ショック)は2008年9月でしたが、直前の8月下旬には米政府系の住宅金融機関の株価が損失懸念から大きく下げていました。さらに、その1年前(2007年)の8月にはサブプライム・ローンの焦げ付きからフランス系のファンドが凍結されました(パリバ・ショック)。

あまり大きなイベントが予定されていないからといって、為替相場が動かないとは限らないでしょう。

(*)ただし、7月の最終営業日にあたる29日には、米GDP4-6月期が市場予想を下回ったことで、米ドル円が比較的大きく下落しました。

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8月は、主要中央銀行が概ね「夏休み」です。政策会合があるのは3日のBOE(英中銀)ぐらいです。BOEは前回6月15日のMPC(金融政策委員会)で現状維持を決定しましたが、票決は5対3の僅差で、反対票を投じた3人はいずれも即時利上げを主張しました。その後に発表された6月CPIの伸びがやや鈍化したこともあり、8月のMPCでも現状維持が決定されそうです。

中央銀行関連の注目イベントは、24-27日に米ワイオミング州ジャクソンホールで開催される年次シンポジウム(カンザスシティ連銀主催、テーマは「グローバル経済の力強さを促進する」)です。FRBのみならず、世界の中央銀行関係者が参集します。金融政策の正常化(利上げやQE縮小など)を進めている、あるいは模索している中央銀行が増えているだけに、関係者からどのようなメッセージが発せられるか、大変に興味深いところです。

8月はワシントンも夏休みの予定でしたが、議会の上院は夏休み入りを2週間先送りしてオバマケア改革法案の審議を継続するようです。頓挫すれば、オバマケア改革を公約としてきたトランプ政権にとっても打撃であり、税制改革(減税)やインフラ投資の実現が一段と遠のくかもしれません。ロシアゲート絡みのニュースも気になるところです。

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来週は、上述した通り8月3日にBOE(英中銀)のMPC(金融政策委員会)があり、インフレレポートが公表されます。カーニー総裁の会見では利上げに慎重な姿勢が示されそうです。

3日には、安倍首相が内閣改造と自民党役員人事に踏み切るようです。ただ、それによって支持率が劇的に回復するかは大いに疑問です。為替相場への影響も限定的となりそうです。

米経済指標では、1日の米PCEコアデフレーターと4日の雇用統計に注目。物価上昇率の鈍化や賃金の伸び悩みが利上げ観測の後退につながっているだけに、変化がみられるかどうか。1日にISM製造業景況指数3日に非製造業景況指数なども発表される。他には、7月31日のユーロ圏CPI。デフレ圧力がリフレ圧力に変わったとするドラギ総裁の発言が裏付けられるかどうか。ECBのQE(量的緩和)縮小の方針に影響を与えそう。<チーフエコノミスト 西田明弘>


<主要通貨の動向>

【全体観・米ドル】 “曰(いわ)く付き”の8月相場? 『2弱通貨』の流れが継続しそう

≪相場環境≫にもある通り、【8月】と言えば何かと“曰く付き”で語られることが多く、事実、【8月】には歴史的な出来事、事件が多く発生し、その後大きな問題(政治・軍事・経済面)に発展していることが見て取れます。以下、【8月】に発生した主な歴史的事象(抜粋)につき、ご覧ください。

1973年 ウォーターゲート事件でニクソン大統領が辞任→NYダウ、翌年までの下落の引き金に
1980年 メキシコ債務危機→新興国株式・通貨、暴落の引き金に
1990年 イラク軍、クウェートに突如侵攻→翌年、湾岸戦争に発展
1998年 ロシア財政危機→翌月9月、LTCM(米大手ヘッジファンド)が破綻
2007年 パリバ・ショック→翌年のリーマン・ショックの引き金に
2015年 チャイナ・ショック→同年の8.24フラッシュ・クラッシュの引き金に

上記事象を見てみると、【8月】に発生した事件や出来事は、その後に発展する大事件の“引き金”になっていることが分かります。【8月】は、休暇に伴う政治的空白期間ということもその因果となり得ている可能性もありますが、あくまで季節的な“アノマリー”※として、頭の片隅に置いておいた方がいいのかもしれません。(※アノマリー:明確な理論や根拠はある訳ではないものの、当たっているかもしれないとされる相場の経験則や事象のこと。)

その“アノマリー”について、【8月】は、株安、債券高(金利安)になりやすい』といったアノマリーも存在します。以下、過去20年(1997/1-2016/12)における、NYダウと日経平均株価の月別騰落表についてご確認ください。



上記グラフから分かることは、日米ともに株価は年末(10-12月)にかけて上昇しやすく、年初(1月)に一旦下押しし、その後春先(3-4月)にかけて上昇しやすい傾向・パターンがあることが分かります。

そして、夏場(8-9月)にかけては日米ともに株価は下落主体の動きとなりやすく、特に【8月】は日米ともに年間を通じて一番下落率が高い(=下げ幅が大きい)月となっています。

つまり、過去の傾向・パターンをもとに仮説を立てると、『8月は日米ともに株価は安くなりやすい月』と定義してもよさそうです。

また、【8月】の傾向・パターンとして、米10年債利回りにも特徴的な動きが見て取れます。以下、過去20年(1997/1-2017/6)における米10年債利回り※の月別平均騰落表についてご確認ください。(※単位:bp、終値-始値)



上記グラフより、米10年債利回りは、【8月】および【9月】に低下しやすい傾向・パターンがあることが分かります。特に【8月】については、年間を通じて一番その利回りが低下しやすく、いわば8月】には債券のサマーラリーが発生しやすく、「債券高・金利安」になりやすい傾向・パターンとなっています。

よって、為替相場への影響を見ると、「米10年債利回り低下→米ドル安」となりやすく、また、日米長期金利差の縮小も相まって、「米ドル安フロー」になりやすいという仮説が成り立ちます。

今年の8月も必ずこの傾向・パターン(=【8月】:株安、債券高[金利安]、米ドル安)になるとは限りませんが、あくまでもそういった傾向・パターンが【8月】には発生しやすいという“アノマリー”が存在すると念頭に置いた方がいいのかもしれません。

そんな中、6月1日=100とした主要通貨実効レートの騰落率推移(6/1-7/24)について、以下ご覧ください。



上図グラフから分かることは、金融政策スタンスの相違から、弱気基調で推移していた円ですが、7月に入ってからその円をも下回る弱さとなっているのが米ドル(米ドルインデックス)であることが分かります。

以上を総合すると、【8月】における為替市場の動向について、以下のような仮説を立てることができます。

(1) 歴史的に【8月】は後の大事件の“引き金”となるような事案が多く発生しており、今年の【8月】にもその可能性を考慮した方がよさそう。→“トランプ・リスク”には要注意?

(2) 過去20年のスパンで見る【8月】相場の傾向・パターンでは、日米ともに株価は下げやすく、また米10年債利回りが低下しやすい月である。→株安に伴うリスク回避の円高フローとともに、金利安に伴う米ドル(米ドルインデックス)の下落に注意した方がよさそう。

(3)6月1日を起点とする主要通貨の実効レート水準を見ると、『米ドル』および『円』は【2弱通貨】となっており、その流れ(=米ドル安、円安)は当面継続すると見た方がよさそう。→対円通貨(クロス円通貨)および対米ドル通貨(ストレート通貨)の“買い”方針※がワークしそう。一方で、米ドル/円は双方の力学的関係から“横ばい基調”(レンジ相場)が継続しそう。(※円キャリー・トレード、米ドルキャリー・トレード)

以上、皆さまの【8月】におけるトレード方針におけるご参考となれば幸いです。

さて、8月の米ドル/円の戦略について、具体的にチャートを使いながら見ていきたいと思います。以下、米ドル/円・週足・スパンモデル®+21週ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上記チャートより、1) 21週MA(21週移動平均線)が横向きとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっていること、3) ローソク足が青い雲(=“買い”の雲)の中に入り込んでいること、4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の下方で点灯していること、そして、5) DMI(方向性指数)において、+DIと-DIが収斂する形となっており、また、ADXが右肩下がりの状態となっていること(上図青丸印)から、8月における米ドル/円の基本トレンドは、【横ばい基調】(レンジ相場)主体の展開が続きそうです。

米ドル/円の8月における戦略コアレンジは、先行2スパン(=青い雲の下辺)とボリンジャーバンド・+1σと+2σラインの間付近のゾーンである、109.00-114.00円と想定します。

米ドル/円は、上記チャートにおいて、特に“雲”の色と形状から勘案すると【下方硬直性】相場が継続しそうです。

総括すると、【8月】期間中の109円台前後までの下押しフローに対しては、“押し目買い”(ex.トラップトレード)をしてみるのも一案です。<チーフアナリスト 津田隆光>

【ユーロ】 ユーロ/米ドル、力強い上昇トレンドが継続しそう

以下、ユーロ/米ドル・週足・スパンモデル®+21週ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上記チャートより、1) 21週MA(21週移動平均線)が右肩上がりとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足の上方に位置していること、3) ローソク足が+1σと+2σラインの間を推移する【上昇バンドウォーク】となっていること、4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の下方で点灯していること、そして、5) DMI(方向性指数)において、+DI>-DIとなり、その乖離がさらに拡大している(上図赤丸印)ことから、引き続き力強い上昇トレンドが継続しそうです。

また、ボリンジャーバンド・±2σラインが21週MAに対して拡張(エクスパンション)する動きとなっており、この動きを以てしても、強い上昇トレンドが継続しそうです。

8月のユーロ/米ドルは、+1σライン(≒1.1412ドル)付近までの下押しフローも想定しつつ、基本は7月同様、押し目買いをベースとするトレード戦略がワークしそうです。<津田>

【英ポンド】 英ポンド/円、上昇トレンドのモメンタムが強まる可能性も

以下、英ポンド/円・週足・スパンモデル®+21週ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上記チャートより、1) 21週MA(21週移動平均線)がやや右肩上がりとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足を上抜けしつつあること、3) ローソク足が+1σライン近辺にあること、4) ローソク足の下方に青い雲(=“買い”の雲)およびパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして、5) DMI(方向性指数)において、+DIと-DIが接近し、クロスしつつある(上図青丸印)ことから、緩やかな上昇トレンドを形成しつつあることが分かります。

上記チャートのポイントは、遅行スパンが明確にローソク足を上抜けブレークするか否か。(上図青三角印)

当該サイン(=遅行スパンの上抜けブレーク)とともに、ローソク足が+1σライン(≒145.79円)と+2σライン(≒149.10円)の間を推移する【上昇バンドウォーク】が確認できた場合は、上昇トレンドのモメンタムが強まる可能性もありそうです。

8月の英ポンド/円は、21週MAライン(≒142.50円)付近までの下押しフローも想定しつつ、基本は押し目買いをベースとするトレード戦略がワークしそうです<津田>


<資源・新興国通貨の動向>

【豪ドル】 RBAは政策金利据え置きか。声明に注目!!

RBA(豪中銀)が8月1日、政策金利を発表します。政策金利は現行の1.50%に据え置かれるとみられます。7月26日に発表された豪州の4-6月期CPI(消費者物価指数)や基調インフレ率は、ほぼ5月の金融政策報告でRBAが示した見通し通りでした。労働市場が改善傾向にあるものの、賃金の伸びが依然として鈍いことや、高水準の家計債務をRBAが警戒していることを踏まえると、RBAは引き続き状況を見極めると考えられるためです。

政策金利が据え置かれた場合、市場の関心は同時に発表される声明に移るとみられます。声明では、特に労働市場や住宅市場、金融政策に関する文言に注目です。

前回は、以下の通りでした。
*******************************
<労働市場について>
・「雇用の伸びはここ数か月間で強まっている」
・「先行きに関する指標は引き続き雇用の継続的な伸びを示している」
・「賃金の伸びは依然として鈍く、当面はこうした状況が続く可能性がある」

<住宅市場について>
・「状況は地域によってかなりの差異がみられる」
・「価格が一部の地域で大幅に上昇しているものの、こうした状況が緩和し始めている兆候が幾分見られる」
・「家計の債務の増加ペースは収入の鈍い伸びを上回っている」

<金融政策について>
・「入手可能な情報を考慮すると、理事会は今回の会合で政策スタンスを維持することが、持続可能な経済成長およびインフレ目標の達成と一致していると判断した」
*******************************

米FRBが2015年12月以降4回の利上げを行い、BOC(加中銀)は今年7月に6年10か月ぶりの利上げを実施。ECB(欧州中央銀行)は秋に量的緩和の縮小を議論する予定です。主要国が金融政策の正常化に動きつつあるなかで、RBAもタカ派色を強めるとの観測が市場に根強くあります。

RBAのロウ総裁やデベル副総裁は、それぞれ7月26日と21日に、主要国中銀にRBAが追随する必要はないと強調。市場の利上げ観測をけん制しました。

声明が7月から大きな変化がなければ、RBAの利上げ観測が後退し、豪ドルが下落する可能性があります。一方、声明の内容が利上げ観測を強めるものであれば、豪ドルが一段と上昇する可能性があります。<シニアアナリスト 八代和也>

【NZドル】 8月10日のRBNZ政策金利発表が最大の材料になりそう

RBNZ(NZ中銀)が8月10日に政策金利を発表します。その結果がNZドルの動向に影響を与える可能性があります。

RBNZは前回6月22日の会合で、政策金利を過去最低の1.75%に据え置くことを決定。その時の声明で、「かなりの期間、緩和的になる」と改めて表明。「とりわけ国際的な見通しに多くの不確実性が残っており、それに応じて政策の調整が必要になる可能性がある」とし、引き続き、追加利下げに含みを持たせました。

8月の会合では、政策金利の据え置きが決定されそうです。NZの4-6月期のCPI(消費者物価指数)は前年比+1.7%と、1-3月期の+2.2%から上昇率が鈍化し、RBNZの5月時点の見通しである+2.1%を下回りました。ただし、RBNZは5月の金融政策報告で、CPI上昇率は4-6月期から鈍化し、2018年1-3月期に+1.1%に達した後、上昇率を再び高め、2019年4-6月期に+2.0%へ加速するとの見通しを示しました。4-6月期のCPIは、その見通しから大きく外れていないと考えられるためです。

政策金利が据え置かれた場合、市場の関心は金融政策報告やウイーラー総裁の会見に移りそうです。金融政策報告では、CPI上昇率やOCR(オフィシャル・キャッシュ・レート、政策金利)の見通しに注目です。RBNZは5月の金融政策報告で、CPI上昇率が2%に達するのは2019年4-6月期と予想。その見通しをもとに、2019年7-9月期の利上げを示唆しました(それまでは「据え置き」)。

市場では、RBNZが来年前半にも利上げに転じるとの観測があります。OIS(翌日物金利スワップ)が7月27日時点で織り込む、RBNZが年内に利上げを行う確率は8.0%。利上げの確率は来年2月までで25.1%、3月までで33.0%、5月までで52.0%、6月までで65.1%、8月までで86.4%へと上昇します。OISを参考にすると、市場のメインシナリオは来年5月のようです。

金融政策報告で示される想定利上げの時期が、市場の見方に近づくほど、早期利上げ観測が高まるとみられます。その場合、NZドルにとってプラス材料と考えられます。一方、CPI上昇率やOCRの見通しが5月から大きな変化がなければ、NZドルに下落圧力が加わる可能性があります。<八代>

【加ドル】 BOCの利上げ時期をめぐる観測に左右されやすい地合いか

BOC(カナダ中銀)は7月12日の会合で、2010年9月以来、6年10か月ぶりの利上げを決定。政策金利を0.25%引き上げました(0.50%→0.75%へ)。

BOCは声明の冒頭で、「最近のデータによって、潜在成長力を上回る成長や経済における余剰能力の吸収に関する見通しへの自信が強まった」と、利上げの理由を説明しました。

金融政策については、「現時点での見通しは、金融刺激策の一部解除を正当化する」としつつも、「政策金利の将来の調整は、今後発表される、インフレ見通しに関する指標次第」と強調。先行きの不透明感や金融システムの脆弱性も引き続き考慮するとしました。

声明では、追加利上げの可能性は明確に示されませんでした。ただし、BOCのポロズ総裁の発言(*)などを踏まえると、BOCは政策金利をまずは2015年の利下げ前の水準に戻すとみられます。BOCは2015年に2回(0.25%×2)の利下げを行ったことから、少なくともあと1回は利上げを行うと考えることができます。(*)ポロズ総裁は6月27日に「2015年の利下げはその役割を終えた」と発言。

市場の関心は、追加利上げの有無よりも、利上げがいつになるのか?へ移っています。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、BOCが次回9月6日の会合で利上げを行う確率が30.0%織り込まれています(7月27日時点)。利上げの確率は10月までで67.8%、12月までで74.4%へと上昇。OISを参考にすると、市場のメインシナリオは「10月に利上げ」であることが確認できます。

8月の加ドルは、カナダの7月CPI(8月18日発表)などの経済指標やBOC当局者の発言に敏感に反応する展開が予想されます。それらが9月や10月の会合での利上げ観測を一段と高める内容になれば、加ドルが上昇する可能性があります。

一方、加ドルは原油など資源価格の影響を受けやすいという特徴もあります。資源価格の動向にも目を向ける必要があります。加ドルにとって、資源価格の上昇はプラス材料、資源価格の下落はマイナス材料です。<八代>

【トルコリラ】 主要国の金融政策をめぐる観測に影響を受けやすい!?

TCMB(トルコ中銀)は7月27日、2会合連続で金融政策の現状維持を決定。3つの政策金利(1週間物レポ金利、翌日物貸出金利、翌日物借入金利)と、1月半ばから事実上の政策金利となっている後期流動性貸出金利をすべて据え置きました。

声明の内容は前回6月とほぼ同じでした。声明では、政策金利を据え置いた理由を「最近のコスト要因の改善や食品価格の一部調整見通しがディスインフレに寄与するとはいえ、現在の高いインフレ率は価格設定行動にリスクをもたらすため」と説明。フレ見通しが著しく改善するまで金融政策の引き締めスタンスを維持するとしたうえで、「インフレ期待や企業の価格設定行動、そしてインフレに影響を及ぼすその他の要因を注視し、必要に応じて一段の金融引き締めを行う」と強調。追加利上げに含みを残しました。

今回のTCMBの金融政策決定や声明に対してトルコリラに大きな反応はみられませんでした。ただ、TCMBの次の一手は利下げ(=後期流動性貸出金利の引き下げ)との見方が市場にあるなかで、TCMBが追加利上げの可能性を残したことは、プラス材料と考えられます。今後、トルコリラを下支えする可能性があります。

8月はTCMBの政策会合が予定されていません(次回は9月14日)。トルコの政局や中東情勢に注意する必要があるものの、それらに関して新たな材料が提供されなければ、トルコリラは主要国中銀の金融政策をめぐる観測に影響を受けやすい地合いになりそうです。主要国の利上げや量的緩和縮小観測の高まりはトルコリラにとってマイナス材料、利上げや量的緩和縮小観測の後退はトルコリラにとってプラス材料と考えられます。<八代>

【南アフリカランド】 SARBが5年ぶりに利下げ。大統領不信任投票が8月8日に実施予定

SARB(南アフリカ中銀)は7月20日の会合で、0.25%の利下げを決定。政策金利を7.00%から6.75%へ引き下げました。利下げは2012年7月以来、5年ぶりです。

インフレ見通しが改善するなか、経済成長見通しが悪化したことで、SARBは利下げに踏み切りました。0.25%の利下げは、4対2の賛成多数で決定されました。

SARBのクガニャゴ総裁は会合後の会見で、「将来の金融政策はデータ次第」と述べ、追加利下げの可能性には言及しませんでした。ただ、経済指標で景気の悪化やインフレ率の一段の鈍化が確認されれば、SARBは追加利下げに踏み切ると考えられます。

市場では、SARBが年内にも追加利下げに踏み切るとの観測があります。そのことは、南アフリカランドにとってマイナス材料と考えられます。また、下院でズマ大統領の不信任投票が8月8日に行われる予定です。与党ANC(アフリカ民族会議)は過半数を占めているため、不信任案は否決されるとの見方が有力な一方で、ANCから造反者が出て可決される可能性も指摘されており、予断を許さない状況です。不信任案の可否にランドが反応する可能性があるため、注意が必要です。<八代>




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