市場調査部レポート

2017/07/07 15:56「中銀トレード」=「円キャリー・トレード」が継続か

【相場環境】世界的な長期金利上昇の始まり!?
【全体観・米ドル】「中銀トレード」=「円キャリー・トレード」が継続か
【ユーロ】ユーロ/円、強い買いサインが示現中
【英ポンド】英ポンド/円、上昇モメンタムが加速しそう
【豪ドル】豪ドル/米ドルは90日&200日MAでサポートされるか
【加ドル】12日のBOC政策金利発表に注目!! 加ドルが動きそう
【トルコリラ】トルコリラに下押し圧力。対円は90日MAが下値メド!? 


【相場環境】 世界的な長期金利上昇の始まり!?

主要国の長期金利(10年物国債利回り)が足元で上昇しています。
過去1か月間に最も上昇幅が大きかったのが、カナダ、次いで英国です(下表)。いずれも、6月に入って中央銀行総裁が利上げに前向きの発言をしました。それら2か国に次いで上昇幅の大きかったのがドイツ。こちらについても、ECB関係者の発言など(*)を受けて、現在も続けられているQE(量的緩和)の縮小に向けた動きが出てくるとの観測が浮上してきました。

(*)6日の講演で、バイトマン独連銀総裁(=ECBメンバー)は、「景気回復の持続が金融政策正常化の展望を開く」と述べました。

米国の長期金利も過去1か月間に相応に上昇してきました。ただ、米長期金利は昨年12月と今年3月に2.6%近辺でいったんピークをつけて低下しており、現在もそのピーク水準を大きく下回っています。昨年12月と今年3月のピークは、いずれもFRBの利上げのタイミングとほぼ一致します。

しかし、今回は6月のFRBの利上げ後に米長期金利が上昇しており、上述した英国やカナダの中央銀行総裁の発言を受けた両国の長期金利上昇に引っ張られているとの印象です。

ドイツの長期金利はすでに3月のピークを越えて上昇しており、またカナダの長期金利も3月のピークにほぼ並んでいます。英国も含めて、それらの中央銀行は利上げやQE停止といった金融政策の正常化をこれから始めるところです。

換言すれば、「米国だけが金融政策の正常化を進めるのであれば、(世界的に金融政策が緩和されたなかで)長期金利の上昇にも自ずと限度があるが、多くの主要国の中央銀行が正常化を進めるのであれば、長期金利にはまだまだ上昇余地がある」ということかもしれません。

そうした中で、日本の長期金利はほとんど変化していません。日銀が金融緩和を続ける姿勢を堅持しているからでしょう。現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みのもとで、日銀は長期金利を「ゼロ%程度」で維持することを目指しています。7日も、長期金利が0.10%を超える局面で日銀は指値オペ(利回りを決めた上での国債買入れ)を行いました。

世界的に長期金利が上昇する一方で、日本の長期金利がさほど上昇しないのであれば、米ドル円だけでなく、クロス円にとってもサポート要因となりそうです。

各国長期金利の推移は、当社HPの「FX投資判断インディケーター<金利関係>」よりご確認いただけます。

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来週は、11日のブレイナードFRB理事の講演「中銀バランスシートの正常化」イエレン米FRB議長の議会証言(12日に下院、13日に上院)12日の米ベージュブック(地区連銀経済報告)14日の米CPIや小売売上高(6月分)など、米金融政策を考えるうえでの重要な材料があります。

金融政策の正常化を進める「本丸」であるFRBの動向は、上述した世界の長期金利にも影響するものとみられます。

その他にも、10日の日銀支店長会議での黒田総裁の開会あいさつ12日のBOC(カナダ中銀)の政策会合(利上げの可能性大)など、中銀関連イベントにも注目です。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 「中銀トレード」=「円キャリー・トレード」が継続か

7月分「マンスリー・アウトルック」(6/30)の<主要通貨の動向>冒頭部分にも記載した通り、マーケットのメインテーマが各国中央銀行の金融政策へとシフトする中、各々の金融政策スタンスに基づく『中銀トレード』が、7月以降の相場においても繰り広げられそうです。

その流れを確認する上で、6月1ヶ月間における主要7通貨ペア(米ドル、ユーロ、英ポンド、豪ドル、NZドル、加ドル、日本円)の実効レートの騰落率推移について、以下ご確認ください。

6月1日のレートを「100」とし、各通貨の実効レートを指数化した上で、その騰落推移を見てみると、上昇率1位は『加ドル』で、月末(6月30日)時点での指数は「103.80」となっており、5月末時点からの騰落率は「+4.04%」となっています。

同2位は『豪ドル』(月末指数「103.27」、5月末からの騰落率「+2.71%」。以下数値のみ記載。)、3位:『NZドル』(「102.71」「+2.63%」)、4位:『ユーロ』(「100.96」「+0.95%」)、5位:『英ポンド』(「99.79」「-0.18%」)、6位:『米ドル』(「98.74」「-1.07%」)、7位:『日本円』(「98.19」「-2.30%」)となっています。

この結果から分かることは、「非伝統的金融政策」、つまり金融緩和策からの出口に最も遠い(と想定される)日本円が相対的に【最弱通貨】となっており、また、今後の利上げペースにおいてインフレ率の低下が懸念される米ドルも相対的に【弱い】通貨となっていることが分かります。

米ドルに関しては、今晩(7/7)の雇用統計での賃金動向や、次週14日に予定されている米6月CPI(消費者物価指数)および同小売売上高の結果が良好の場合は、「インフレ率上昇予測」→「年内追加利上げ観測の高まり」→「米ドル高」となる可能性があるため、その結果を見極める必要がありますが、今のところその金融政策スタンスに変更予定のない(見えない)日銀、つまり日本円は、【一弱通貨】として、各国先進国中央銀行による“金融正常化レース“から周回遅れで取り残されている状況と言えます。

これら金融政策スタンスの二極化(「金融引き締め志向」「金融緩和志向」)が鮮明になる中、大きな政策変更がない限りは、6月同様、しばらくは【円キャリー・トレード】※がワークすると考えますが、どうなのでしょうか。(※【円キャリー・トレード】:低金利通貨の円で借入をして、高金利国の金融資産(外貨等)などで運用して利ザヤ獲得を目論む取引のこと)

そんな中、米ドル/円の今後の動きについて、チャートを中心に見ていきたいと思います。以下、米ドル/円・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。


 
上記チャートのメルクマール(指標)を確認していくと、1) 21日MA(21日移動平均線)が右肩上がりであること、2) 遅行スパンがローソク足の上方に位置していること、3) ローソク足の下方に青い雲(=“買い”の雲)およびパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして4) DMI(方向性指数)において、+DI>-DIとなっている(上図赤丸印)ことから、米ドル/円は上昇トレンド継続のチャートシグナルとなっていることが分かります。

また、上記チャートでは、ローソク足が+1σ~+2σラインの間で推移する【上昇バンドウォーク】が示現しており、当稿執筆時点(7日午前11時)では緩やかな上昇トレンドが継続することが想定されます。

一方で、この【上昇バンドウォーク】の出口、つまり終了サインは、一般的にローソク足が終値レベルで+1σラインを割り込んだケースと言われており、上記チャートに置き換えてみると、ローソク足が終値レベルで+1σライン(≒112.90円)を割り込むと、一旦の下押しフローのトリガー(引き金)となる可能性も。

今年4月後半から5月中旬にかけて、同様のケース(上昇バンドウォーク→ローソク足の+1σライン割れ[上図黄色矢印部分]→下押しフロー)が見られることもあり、これからの時間帯は、一時的な下押しフローのトリガーとなり得るローソク足の+1σライン割れには若干注意をした方がよさそうです。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/円、強い買いサインが示現中

米ドル/円に続き、以下、ユーロ/円・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。



上記チャートのメルクマール(指標)を確認していくと、1) 21日MA(21日移動平均線)が右肩上がりであること、2) 遅行スパンがローソク足の上方に位置していること、3) ローソク足の下方に青い雲(=“買い”の雲)およびパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして4) DMI(方向性指数)において、+DI>-DIとなっている(上図赤丸印)ことから、ユーロ/円は上昇トレンド継続のチャートシグナルとなっていることが分かります。

また、上記チャートでは、ローソク足が+1σから+2σラインの間で推移する【上昇バンドウォーク】が示現しており、米ドル/円同様、強い上昇トレンドが継続するシグナルとなっているのが分かります。

同時に、21日ボリンジャーバンド・±2σラインが、21日MAに対して拡張(エクスパンション)する動きとなっていることから、今後、上昇トレンドがさらに加速する可能性もありそうです。<津田>


【英ポンド】 英ポンド/円、上昇モメンタムが加速しそう

引き続き、以下、英ポンド/円・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上記チャートのメルクマール(指標)を確認していくと、1) 21日MA(21日移動平均線)が右肩上がりであること、2) 遅行スパンがローソク足の上方に位置していること、3) ローソク足の下方に青い雲(=“買い”の雲)およびパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして4) DMI(方向性指数)において、+DI>-DIとなっている(上図赤丸印)ことから、英ポンド/円は上昇トレンド継続のチャートシグナルとなっていることが分かります。

また、上記チャートでは、米ドル/円、ユーロ/円同様、ローソク足が+1σから+2σラインの間で推移する【上昇バンドウォーク】が示現しており、強い上昇トレンドが継続するシグナルとなっているのが分かります。

同時に、21日ボリンジャーバンド・±2σラインが、21日MAに対して拡張(エクスパンション)する動きとなっていることから、今後、上昇トレンドがさらに加速する可能性もありそうです。

これからの時間帯における英ポンド/円のポイントは、5月10日に付けた高値である148.05円(上図青三角印)を上抜けブレークするか否か。上抜けブレークした場合は、上昇トレンドのモメンタムが加速する可能性もありそうです。<津田>


【豪ドル】 豪ドル/米ドルは90日&200日MAでサポートされるか

RBAは7月4日の会合で、政策金利を過去最低の1.50%に据え置くことを決定しました。据え置きは、10回連続です。

声明は、6月からあまり変化がありませんでした

労働市場については、「雇用の伸びはここ数か月間で強まっている」と評価するとともに、「先行きに関する指標は引き続き雇用の継続的な伸びを示している」と分析。一方で、「賃金の伸びは依然として鈍く、当面はこうした状況が続く可能性がある」との見方を示しました。

住宅市場に関しては、「状況は地域によってかなりの差異がみられる」としつつも、「価格が一部の地域で大幅に上昇しているものの、こうした状況が緩和し始めている兆候が幾分見られる」と指摘。一方で、「家計の債務の増加ペースは収入の鈍い伸びを上回っている」とし、家計債務の増加への懸念を示しました。

RBAは声明の最後を、「入手可能な情報を考慮すると、理事会は今回の会合で政策スタンスを維持することが、持続可能な経済成長およびインフレ目標の達成と一致していると判断した」と締めくくり、これまでと同様に金融政策の先行きについて言及しませんでした

BOE(英イングランド銀行)やBOC(カナダ銀行)の当局者が先週、早期の利上げを示唆したことで、市場では、RBAの今回の声明がタカ派的な内容になるとの見方がありました。そうならなかったことで、声明発表後に豪ドルが下落しました。

ただし、市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)を見ると、RBAの利上げ観測は会合前と後ではそれほど大きく変化しませんでした。OISでは、来年4月までに利上げが行われる確率が、会合前日の3日時点で41.3%織り込まれていました。利上げの確率は、会合当日の4日に29.5%へと低下したものの、翌5日に36.3%、6日には39.7%へと上昇しました。RBAの利上げ観測が残っていることは、豪ドルにとってプラス材料と考えられます。

日足チャートを見ると、豪ドル/米ドルは、90日移動平均線(MA)や200日MAに近づいてきました。豪ドル/米ドルは、テクニカル的にサポートされやすいと考えられます。7月6日時点で、90日MAは0.7538米ドル、200日MAは0.7530米ドルに位置します。<シニアアナリスト 八代和也>

豪ドル/米ドル(日足、2017/2/20-)

出所:M2JFXチャート


【加ドル】12日のBOC政策金利発表に注目!! 加ドルが動きそう

BOC(カナダ中銀)の政策金利が7月12日に発表されます。その結果が加ドルの動向に影響を与える可能性があります。

BOCのポロズ総裁は6月27日、「(2015年に実施した)利下げは役割を果たしたようだ」と語りました。ポロズ総裁の発言に加え、原油価格が足もとで比較的落ち着いていることを考えると、BOCは7月の会合で0.25%の利上げを決めそうです。

市場では、7月の利上げがほぼ織り込まれています。OIS(翌日物金利スワップ)が7月6日時点で織り込む、7月に0.25%の利上げが行われる確率は86.3%です。そのため、利上げが決定されたとしても、市場はそれ自体にはあまり反応しない可能性があります。焦点は、声明や金融政策報告で追加利上げが示唆されるのか?になりそうです。加ドルは、追加利上げが示唆されば上昇し、示唆されなければ下落する展開が予想されます。政策金利が据え置かれ場合はサプライズとなり、加ドルが大幅に下落する可能性があります。<八代>


【トルコリラ】 トルコリラに下押し圧力。対円は90日MAが下値メド!?

トルコリラは今週、対円で約3週間ぶり、対米ドルで約1か月半ぶりの安値をつけました。

トルコリラが下落した背景として、以下の2つが挙げられます。
(1)先週以降、ECB(欧州中銀)の早期のQE(量的緩和)縮小や、BOE(英中銀)とBOC(カナダ中銀)の利上げ観測が高まったこと。

トルコは慢性的に経常収支が赤字であり、その穴埋めを国外からの投資資金の流入に依存しています。ECBやBOEなどが金融引き締めに動けば、トルコに流れていた資金が逆流(流出)し、トルコは経常赤字を埋めるのが難しくなる可能性があります。また、欧州やカナダとトルコの間の金利差が縮小すれば、高金利通貨としてのトルコリラのメリットが薄れるとの考えもできます。

(2)トルコの地政学リスク
エルドアン大統領は7月5日のフランス24とのインタビューで、「トルコは、シリアのクルド人部隊を撃退するために北シリアに軍事介入する用意がある」と語りました。トルコは昨年8月、シリア国内のIS(イスラム国)勢力を掃討するためにシリアへの越境攻撃を開始(ユーフラテスの盾作戦)。越境攻撃は今年3月に終了したものの、エルドアン大統領は再度行うことを示唆しました。

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トルコリラに関しては、FRB(米連邦準備制度理事会)やECBなど先進国中銀の金融政策をめぐる観測や、中東情勢などのトルコの地政学リスクの強弱の影響を受けやすいと見られます。

日足チャートを見ると、トルコリラ/円は4月下旬以降、90日移動平均線(MA)近辺で反発する展開を繰り返してきました。90日MAが下値メドとなりそうです、一方、上値メドとして、200日MAが挙げられます。7月6日時点で、90日MAは30.97円、200日MAは31.68円に位置します。<八代>

トルコリラ/円(日足、2017/2/20-)

出所:M2JFXチャート




※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

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