市場調査部レポート

2017/06/09 13:37総選挙後に英国政治は流動化?

【相場環境】FOMC、日銀会合、仏議会選挙・・・
【米ドル】コミー証言、トランプ政権の「暗雲」晴れず
【ユーロ】金融緩和解除へにじり寄るECB
【ポンド】総選挙後に英国政治は流動化?
【豪ドル】15日発表の5月雇用統計に注目!!
【トルコリラ】TCMBは利上げするのか!?
【南アフリカランド】南アフリカ経済の低迷が一段と鮮明に   


【相場環境】 FOMC、日銀会合、仏議会選挙・・・

来週の最大の注目は、13-14日開催の米FOMCでしょう。15年12月、昨年12月、今年3月に続き、リーマンショック以降では4回目の利上げが決定されるのはほぼ確実とみられます。今年後半あるいは来年に関して、どのような金融正常化(利上げとバランスシートの縮小)のペースが想定されているかが、ある程度明らかになりそうです。

14日にはFOMCの声明文が発表され、同時に参加者の政策金利見通し(いわゆる「ドット」)や経済見通しが公表されます。直後にはイエレン議長の記者会見もあります。

少し前に有力だった市場の見方の一つは、「今年6月と9月に利上げ、9月に保有国債の再投資の縮小方法を公表して12月から実施」というものでした。ただ、最近は弱めの経済指標が増えており、さらにトランプ大統領の減税やインフラ投資への期待がやや低下していることもあり、利上げ観測が後ろズレする可能性も相応にありそうです。FOMCからどのようなヒントが出てくるか、大いに注目されます。

15日には、BOE(英中銀)のMPC(金融政策委員会)が開催されます。金融政策の現状維持が決定されそうです。前回(5/11)も現状維持が決定されましたが、票決は7対1で、1人の委員が即時利上げを主張しました。また、声明では、ブレグジット(英国のEU離脱)がスムーズであれば、市場の想定より速いペースでの利上げが必要になる可能性があると指摘されました。

もっとも、来週の段階でブレグジットの交渉はスタートしておらず、それどころか総選挙後の政権が決まっていない可能性もあるため、BOEが利上げに向けた準備を始めるのはまだまだ先のようです。

15-16日の日銀の金融政策決定会合も、にわかに注目されるところです。これまで「時期尚早」としていた出口戦略について、日銀が「説明重視」との姿勢にシフトしつつあるとの一部報道があったためです。仮に報道が正しければ、日銀が現在の金融緩和政策を縮小する方向で検討しつつあるサインと受け止められ、円高要因になると考えられます。逆に、16日の黒田総裁の会見でそうした報道が強く否定されるようであれば、円安要因になるかもしれません。

11日、フランス議会選挙の第1回投票があります(18日に第2回投票)。世論調査によれば、マクロン大統領の新しい政党「前進する共和国」が過半数の議席を獲得する見込みです。ユーロ圏第2の経済規模を誇り、外交でも重要な役割を担うフランスの内政の安定化は、ユーロにとってプラスの材料とみることができそうです。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【米ドル】 コミー証言、トランプ政権の「暗雲」晴れず

トランプ陣営・政権とロシアとの共謀、いわゆる「ロシアゲート」に関するコミー前FBI長官の議会証言(上院特別委員会)が8日に行われました。これまで報道されてきた以上の新たな事実は判明しませんでした。また、トランプ大統領が弾劾に値するような「反逆罪、収賄罪、その他の重罪や軽罪」を犯した証拠が出てきたわけではありません。しかし、トランプ政権にかかる「暗雲」が晴れたとは言えないでしょう。

トランプ大統領が、地位と引き換えにコミー長官に「忠誠」を求めた、あるいはフリン前大統領補佐官に関する捜査の終了を求めたとするコミー証言が事実であれば、(今後の証拠次第で)権力の濫用や司法妨害に問われる可能性は残りそうです。また、そうならないとしても、トランプ氏の大統領としての資質が、今更ながら大いに問われることになるでしょう。

そのことは、今後の政権運営や議会との交渉において、障害となりそうです。とりわけ、これから議会で本格化する税制改革や予算の審議に関して、トランプ政権が影響力を行使するのが難しくなるかもしれません。減税やインフラ投資の実現が遠のくとすれば、米株や米ドルにとって弱気材料になりそうです。<西田>


【ユーロ】 金融緩和解除へにじり寄るECB

6月8日、ECB理事会は金融政策の現状維持を決定しました。ただし、先行きの政策方針を示すフォワードガイダンスから、状況に応じて一段の利下げが必要と示唆する部分が削除されたことで、ECBが金融緩和を徐々に解除する方向へ進む準備を始めたと解釈できそうです。

ドラギ総裁は会見で、フォワードガイダンスの修正に関して、デフレリスクが消滅したことを反映したものだと説明しました。また、経済成長のリスクについても「概ねバランスしている」と表明しました。

ただ一方で、総裁は、「景気拡大が力強いインフレにつながっていない。非常に強い金融緩和がなお必要」との従来の見解を改めて表明しました。そして、「忍耐が必要だ。金融政策によって景気回復を支えていかなければならない」と述べました。また、今回の決定に対して、反対する者はなく、QE(量的緩和)の縮小が協議されなかったことを明らかにしました。

今後もドラギ総裁は現状維持を望みそうですが、経済・物価情勢次第で、ECB内部から「金融緩和解除」を求める声が大きくなれば、ECBは金融緩和の解除に向けて舵を切り始めるかもしれません。そうなればユーロが上昇する局面がみられそうです<西田>


【ポンド】 総選挙後に英国政治は流動化?

8日に投開票があった英総選挙では、現与党の保守党が過半数割れとなった可能性があります(本稿執筆時点では未確定)。4月に電撃的に解散・総選挙を決断したメイ首相の狙いは、(1)過半数をわずかに上回る保守党の議席に上積みして、政権基盤を強化する、(2)そのうえでEU離脱交渉を進める、(3)そして政権を長期化する、だったはずです。しかし、メイ首相の思惑は外れたと言わざるをえません。

今後(過半数の議席を獲得する政党がなかった場合)、第1党が見込まれる保守党が連立政権を目指すことになりそうです。ただし、過去に保守党と連立した自由民主党や、政策が近いスコットランド国民党は今回、連立に消極的なようです。保守党が他の政党から(個々の政策などで)閣外協力を取り付ける形で政権を担うminority government(少数党政権/連合政権)を作る可能性もあります。

保守党が政権樹立に失敗すれば、代わって第2党の労働党が連立工作を行います。その場合、自由民主党やスコットランド国民党などと中道左派の政権が誕生する可能性があります。そして、新政権は、メイ首相が目指した「(単一市場からも離脱して自由に移民規制をする)ハード・ブレグジット」よりも「(移民問題で譲歩して単一市場にとどまる)ソフト・ブレグジット」を目指すかもしれません。

「ハード・ブレグジット」よりも「ソフト・ブレグジット」の方が、将来的には英経済への打撃が小さく、英ポンドにとってプラスになる可能性があります。もっとも、英国政治が不安定となれば、EUとの離脱交渉は一段と難航するかもしれません。6月19日から英国とEUの離脱交渉が開始される予定ですが、延期される可能性も出てきました。いずれにせよ、今後しばらくは英ポンドにとって弱気材料となりそうです。<西田>


【豪ドル】 15日発表の5月雇用統計に注目!!

豪ドル/米ドルが今週、一時0.75米ドル台半ばへと上昇し、約1か月ぶりの高値をつけました。豪州の主力輸出品である鉄鉱石の価格下落に歯止めがかかってないものの、米政局の先行き不透明感などから米ドルが弱含んだことや、豪州の1-3月期GDPが原動力になりました。GDPは前期比+0.3%、前年比+1.7%と、ほぼ市場の予想通りでした。ただ、マイナス成長になるとの見方も一部にあったため、そうならなかったことで豪ドルが上昇しました。

ただし、豪州のGDP成長率(前年比)は、昨年4-6月期の+3.1%をピークに鈍化傾向。今年1-3月期は、2009年7-9月期以来の低い伸びでした。1-3月期のGDPは決して強くはなかったこともあり、GDPを材料視した豪ドルの上昇は一時的でした。

来週の豪ドルの材料としては、15日の豪5月雇用統計が挙げられます。RBA(豪中銀)は労働市場や住宅市場を注視する姿勢を示しているため、雇用統計はRBAの金融政策の先行きを予想するうえで重要です。雇用統計は変動が大きいものの、その結果が市場予想からかけ離れるものになれば、豪ドルが反応しそうです。

鉄鉱石価格の動向にも引き続き目を向ける必要があります。鉄鉱石価格の下落が続けば、豪ドルへの下押し圧力が強まる可能性があります。<シニアアナリスト 八代和也>


【トルコリラ】 TCMBは利上げするのか!?

TCMB(トルコ中銀)の政策金利が6月15日に発表されます。その結果がトルコリラの動向に影響を与える可能性があります。

TCMBはインフレ目標(+5%、その±2%が許容範囲)を採用しています。トルコの5月CPI(消費者物価指数)は前年比+11.72%でした。2008年10月以来の強い伸びを記録した4月の+11.87%から上昇率が若干鈍化したものの、高止まりしており、TCMBの目標を大きく上回っています。

TCMBはインフレ見通しの悪化を抑えることを理由に、前回3月の会合で後期流動性貸出金利を引き上げました。3つの政策金利(1週間物レポ金利、翌日物貸出金利、翌日物借入金利)は据え置いたものの、TCMBは1月半ば頃から、短期市場金利を後期流動性貸出金利近辺へと誘導。そのため、後期流動性貸出金利は事実上の政策金利として機能しています。

景気低迷やエルドアン大統領らから利下げ圧力が加わっていることや、後期流動性貸出金利を直近3会合で大幅に引き上げた(計2.25%)ことから、市場ではTCMBがインフレ対応で利上げを行うのは難しくなってきているとの見方もあります。そのため、6月15日の会合で利上げが決定されれば、サプライズであり、トルコリラの支援材料になりそうです。一方で、後期流動性貸出金利や主要政策金利をすべて据え置いた場合、トルコリラには下落圧力が加わる可能性があります。

中東情勢に注意が必要です。6月5日、サウジアラビアなど中東5か国がテロ組織を支援しているとしてカタールとの国交を断絶すると発表。その後、イエメンやモルジブなども追随しました。一方、トルコ議会は7日、トルコ軍のカタールへの派遣や同国の治安部隊への訓練などの軍事協定を承認。カタールを支援する姿勢を示しました。今後、カタールをめぐって動きがみられれば、トルコリラが反応する可能性があります。トルコリラにとって、今まで以上に中東情勢の安定化はプラス材料、緊迫化はマイナス材料と考えられます。<八代>


出所:Bloombergより作成


【南アフリカランド】 南アフリカ経済の低迷が一段と鮮明に

南アフリカの1-3月期GDPが6月6日に発表されました。前期比年率換算-0.7%と、昨年10-12月期(-0.3%)に続いてマイナス成長を記録。貿易や製造業が落ち込み、GDPを押し下げました。一般的に、2四半期連続のマイナス成長で景気後退とみなされるため、南アフリカ経済は2009年以来、8年ぶりに景気後退に陥りました。

市場では、景気低迷を背景にSARB(南アフリカ中銀)が来年にも利下げに転じるとの観測があります。1-3月期のGDPは利下げ観測を一段と強めるものと考えられます。

一方で、SARBのクガニャゴ総裁は5月25日の政策会合後の会見で、「政策金利は現時点で適切」との見解を示す一方、「CPI上昇率が持続的に目標範囲内に収まるならば利下げは可能だ」と発言しました。

SARBの金融政策の先行きは、CPIの動向が鍵を握るとみられます。南アフリカの5月CPI(消費者物価指数)が6月21日に発表されます。4月のCPIは前年比+5.3%と、SARBのインフレ目標である+3から6%の範囲内に、8か月ぶりに収まりました。CPIの鈍化がインフレ目標の範囲内で安定的に推移すれば、利下げが現実味を帯びそうです。利下げ観測の高まりは、ランドにとってマイナス材料と考えられます。<八代>


出所:Bloombergより作成


出所:Bloombergより作成




※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。

※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。

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