市場調査部レポート

2017/05/12 14:41米ドル/円はレンジワークの時間帯に?

【相場環境】主要中銀の金融政策スタンスを再確認
【全体観・米ドル】米ドル/円はレンジワークの時間帯に?
【ポンド】英ポンド/円、“ゴールデン・クロス”が示現中
【豪ドル】鉄鉱石価格に影響を受けやすい地合い続く
【NZドル】上値が重い展開か!?
【トルコリラ】200日移動平均線が重要ライン!?


【相場環境】 主要中銀の金融政策スタンスを再確認

仏大統領選挙、韓国大統領選挙、米2017年度包括予算の成立などのイベントを通過して、当面は大きな相場材料はないかもしれません(*)。そうしたなかで、各国・地域の経済ファンダメンタルズ、とりわけ金融政策の方向性を再確認しておく意味はあるかもしれません。

(*)ただし、5月23日にトランプ政権が2018年度予算の詳細を公表します。財政赤字拡大懸念から金利上昇要因となりうるので、注目したいところです。

米国では、1-3月期GDPなど足元の経済指標の軟調は一時的とみられており、それらを裏付ける材料が出てくるかどうか。とりわけ、暖冬によるエネルギー消費量の減少や税還付の遅れが個人消費軟調の一因とされており、個人消費が盛り返すかどうかが注目されるところです。

米金融政策については、「6月と12月に追加利上げ」が市場のメインシナリオとなっており、そうした見方が一段と強まるかどうか。「6月と9月に追加利上げ、債券保有残高の縮小を年内に開始」あるいは「年内にあと3回の利上げが適切(ボストン連銀ローズグレン総裁の5/10の講演)」などの見方が強まれば、米ドルのサポート要因となりそうです。

10日、ECBのドラギ総裁はオランダ議会で証言して「出口戦略を考え始める時期がきたのか。(いいや)理事会の判断は時期尚早というものだ」と語り、現行の政策を継続する意向を表明しました。一方で、自国経済が好調なこともあって、オランダ議会からは早期の出口戦略実施の要求やバブルの警告も出ました。オランダやドイツ出身の中銀総裁(=ECB理事)は金融緩和縮小を主張しており、次回6月8日のECB理事会で量的緩和の縮小に向けた地ならしが行われるのか注目されます。

11日、BOE(英中銀)のMPC(金融政策委員会)は金融政策の現状維持を決定しました。決定は7対1で、1人が前回に続き、即時利上げを主張しました。四半期に一度のインフレ報告(経済予測)も発表されました。カーニー総裁は会見で、予測はスムーズなブレグジット(英国のEU離脱)を前提としているとし、それが実現した場合には市場の織り込みより速いペースでの利上げが必要になる可能性があるとしました。

11日時点のOIS(翌日物金利スワップ)によれば、市場が織り込む利上げ確率は、年内で16.9%(10日時点で25.6%)、2018年8月までで44.8%(同44.3%)です。年内利上げの確率はMPC前よりも低下しました。市場は今回の決定を「ハト派的」と判断し、またBOEが予測の前提としている「スムーズなブレグジット」に大いに懐疑的だということでしょう。

10日、黒田日銀総裁が衆院財務金融委員会で答弁し、2%の物価目標達成に向けて辛抱強く金融緩和を続けていく意向を改めて表明しました。ただ一方で、総裁は「年間80兆円をめど」としている国債購入が足元で年率60兆円程度にとどまっていることを認めました。また、これまで「時期尚早」と切り捨てていた(量的緩和など非伝統的政策からの)出口戦略についても、考えられるシナリオの公表を「今後検討する」と柔軟な姿勢を示しました。日銀の政策スタンスがすぐに変化することはなさそうですが、今後は日銀から発せられるメッセージにも注意が必要かもしれません。

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来週は、米国の一連の経済指標で、年初の「景気減速」が一時的だったかどうかを判断することになりそうです。NY連銀とフィラ連銀の5月製造業景況指数(15日&18日)4月住宅着工件数と鉱工業生産(16日)など。23日に公表予定の2018年度予算(詳細)が一部でも漏れてくれば、相場材料になる可能性もありそうです。

英国の4月の消費者物価指数(16日)は、原油高や英ポンド安の影響を受けて前年比で一段と加速しそうです。日本の1-3月期GDP速報値(18日)は、前期より加速しそうです。前期に横ばいだった個人消費の持ち直しが見込めるため。ただ、設備投資や住宅投資などは軟調が見込まれます。豪州の4月の雇用統計(18日)は、月々の変動が大きいため解釈は難しそうですが、豪ドル相場は反応するかもしれません。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 米ドル/円はレンジワーク主体の時間帯に?

ここもとの米ドル/円・週足チャートでは、ローソク足が52週移動平均線(以下、52週MA)にサポートされ、その後反発するような形状となっています。(下記チャート赤丸印)

昨年11月上旬(下記チャートA)に始まった“トランプ・ラリー”における米ドル/円のこれまでの最大高低差は、6週間の間(11月9日-12月15日)で17.47円となっており、昨年(2016年)1年間における米ドル/円の高低差である22.90円76.3%部分を、わずか約1カ月間の期間でこなした計算となります。

その後、12月に米FOMCで利上げが再開され(下記チャートB)、トランプ・ラリーで上昇した分の“反省相場”もあり、今年4月半ばまでの4カ月間で半値押し以上となる10.52円の下落となりました。(下記チャートC。高低差計算。) 以下、米ドル/円の週足チャート+52週MAをご覧ください。(期間:2016/10/23の週-2017/5/7の週)



上記チャートにおいて、ローソク足が52週MAでバウンドして上昇する起点(上図C)となり得たファンダメンタルズ材料は以下の通りです。

1. 4月23日のフランス大統領選挙(第1回投票)において、“最悪のシナリオ”である極右・ルペン氏vs 極左・メランション氏の一騎打ち(=決選投票に選出)が回避され、フランスのEUからの離脱がひとまず回避されたことによる【Frexitリスクの後退】

2. 4月25日の朝鮮人民軍(北朝鮮軍)創設85周年記念に合わせた、北朝鮮によるミサイルおよび核実験が為されなかったことによる、朝鮮半島有事を想定した【地政学リスクの後退】

これら1および2の材料がひとまず消化されたことによって、リスク(=相場の下落フロー)に備えていたポジションの反対売買フローが重なったことがここもとの米ドル/円相場の上昇要因と捉えることができ、つまり“リリーフ・ラリー”(※)がその背景と言えそうです。(※リリーフ・ラリー:何らかの危機要因から脱した後の反騰相場のこと)

そんな中、5月3日の米FOMCの声明文において、次回6月会合での利上げ観測の高まりも支援材料となり、今週の米ドル/円は、一時3月以来の高値となる114.33円まで上昇する動きに。

今後の米ドル/円のトレンドおよびコアレンジを予想する上で、以下、米ドル/円・週足チャート+52週移動平均線(以下、52週MA)+フィボナッチ+DMIをご覧ください。



上記チャートにおける注目テクニカルポイントは・・・ADXの位置。ADXはトレンドの強弱を表す指標で、その方向性が右肩上がりの時はトレンドが強くなりつつあることを示し、右肩下がりの時はその逆で、トレンドが弱くなりつつある(=トレンドレス相場、レンジ相場)ことを示します。

12日時点における、米ドル/円・週足チャートのADXの値は30.04となっており、これからの時間帯はトレンドが弱くなりつつある状態、つまりレンジワーク主体の動きとなることが示唆されています。(上図赤丸印)

これらを前提とした上で、足もとの米ドル/円を見てみると、2015年6月時高値(125.86円、上図H)と2016年6月時安値(98.76円、上図L)を結んだフィボナッチ・50.0%ラインと同・61.8%ラインの間のゾーン(上図A)である112.31-115.51円がコアレンジとなりそうです。

一方で、52週MAとフィボナッチ・50.0%ラインの間のゾーン(上図B)である108.58-112.31円サブレンジと想定することで、上記チャートAのゾーン(=112.31-115.51円)にトラリピ(らくトラ)を、同Bのゾーン(=108.58-112.31円)にトラップトレードを仕掛ける、【T字型フォーメーション】を仕掛けてみるのも、先週に引き続き一案と考えます。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ポンド】 英ポンド/円、“ゴールデン・クロス”が示現中

以下、英ポンド/円・週足チャート+52週移動平均線(以下、52週MA)+DMIをご覧ください。



上記チャートより、英ポンド/円は、昨年12月11日の週から19週にわたって継続した『52週MAの“壁”』(上図Aの青四角部分)を、4月23日の週に上抜けブレークし、グランビルの法則で言うところの【ゴールデン・クロス】(=重要な買いサイン)が示現していることが分かります。(上図黄色丸印)

また、相場の方向性とその強弱を示すDMI(方向性指数)において、+DI>-DIの乖離がさらに拡大し、同時にADXが右肩上がりに推移しつつあることも総合し、今後の英ポンド/円は上昇トレンドがさらに加速する可能性もありそうです。

足もとのポイントは、52週MAの方向性。現状ではやや右肩下がりの状態ですが、今後、横向き→右肩上がりへと変化した場合は、英ポンド/円の下方硬直性がさらに強化される可能性も。52週MAとローソク足との乖離にも留意しつつ、これからの時間帯の英ポンド/円は押し目買いがワークしそうです。<津田>


【豪ドル】 鉄鉱石価格に影響を受けやすい地合い続く

豪ドル/米ドルが5月9日、一時0.7330米ドルへと下落。約4か月ぶりの安値をつけました。豪ドル/米ドルは今年3月21日に0.7749米ドルへと上昇した後、下落傾向にあります。その背景として、豪州の主力輸出品である鉄鉱石の価格下落が挙げられます。中国の青島に荷揚げされる鉄鉱石(鉄分62%)価格 は、供給過剰懸念などを背景に、今年2月をピークに下落傾向にあり、ピークからの下落率は3割を超えました。豪ドルはとりわけ対米ドルで引き続き、鉄鉱石価格の影響を受けやすい地合いです。鉄鉱石価格が一段安となれば、豪ドル/米ドルにさらなる下落圧力が加わる可能性があります。

18日発表の豪州の4月雇用統計も材料になる可能性があります。RBA(豪中銀)の先行きの金融政策は、労働市場や住宅市場の動向が鍵を握ることが示唆されています。そのため、豪ドルは雇用統計の結果に敏感に反応する可能性があります。<アナリスト 八代和也>


*鉄鉱石価格=中国の青島に荷揚げされる鉄鉱石(鉄分62%)
出所:Bloombergより作成


【NZドル】 上値が重い展開か!?

RBNZは5月11日、政策金利を過去最低の1.75%に据え置くことを決定しました。

声明では、「1-3月期の総合インフレ率の加速は、ガソリンや食料品の価格上昇が主な要因であり、それらの影響は一時的なもの」と指摘。「総合インフレ率は、中期的に目標レンジの中央値になる」との見解が示されました。NZの1-3月期CPI(消費者物価指数)は前年比+2.2%と、昨年10-12月期の+1.3%から加速。RBNZの2月時点の見通しである+1.5%を上回り、インフレ目標(+1から3%)の中央値である+2%を5年半ぶりに超えました。

住宅市場については、「とりわけオークランドで住宅価格のインフレが一段と緩やかになっている」と指摘。住宅価格のインフレ鈍化は、住宅融資規制や貸出条件の厳格化がある程度影響しているとし、鈍化傾向は続くとの見方を示しました。一方で、需給の継続的な不均衡を考慮すると上昇が再び加速するリスクがあるともしました。

NZドルに関しては、「貿易加重ベースで2月以降に5%下落した」と指摘。「これは勇気づけられる動きであり、(NZドルの下落が)持続すれば貿易財部門の成長見通しのリバランスに役立つだろう」としました。

金融政策については、「かなりの期間、緩和的になる」と表明。「依然として多くの不確実性が残っており、それに応じて政策の調整が必要になる可能性がある」との見方を示しました。

RBNZは今回、金融政策報告を公表。CPI上昇率は2018年1-3月期に前年比+1.1%へと鈍化した後、2019年4-6月期に+2.0%へ加速すると予想しました。OCR(オフィシャル・キャッシュ・レート、政策金利)見通しは前回2月から変化なし。2019年4-6月期まで平均1.8%に維持された後、2019年7-9月期に平均1.9%へと上昇するとの見通しが示されました。RBNZの現在の政策金利は1.75%。OCR見通しをみると、RBNZは今後2年間の政策金利据え置きを想定しているようです。

RBNZのウィーラー総裁は会見で、「われわれの金融政策スタンスは“中立(利上げと利下げのいずれもあり得る)”だ」と強調。そのうえで、「政策金利は予見可能な将来において(現行の)1.75%にとどまると予想している」と述べました。

マクダーモット総裁補佐は、RBNZが金融政策報告や声明などでタカ派的な姿勢を示すと市場が予想していたことについて、「市場は(成長やインフレの)見通しに対する上振れリスクだけを話し、下振れリスクを無視している」と指摘。成長見通しの下振れリスクとして、住宅市場が落ち着くとともに消費者が支出を抑える可能性などを挙げました。1-3月期のCPI上昇率の強い伸びについては、燃料価格の上昇など一時的な要因が影響したとの見方を示し、「インフレ期待は(前回の金融政策報告を公表した)2月から変わっていない」と述べました。

市場では、RBNZが来年2月にも利上げに転じるとの見方が強まっていました。今回の金融政策報告で想定される利上げ時期が前回2月から変わらなかったことや、ウィーラー総裁が政策金利を長期間据え置く可能性を示したことで、早期利上げ観測は後退しました。NZドルは目先、上値が重い展開になる可能性があります。<八代>


【トルコリラ】 200日移動平均線が重要ライン!?

トルコリラ/円は5月11日、一時31.91円へと上昇。約4か月ぶりの高値をつけました。米ドル/トルコリラが足もと3.55リラ前後で推移し、“もみ合い”状態であることから、トルコリラ/円の上昇は、米ドル/円にけん引された面が大きいと考えることもできそうです。来週(5月15日の週)は、15日にトルコの2月失業率が発表されるものの、トルコリラの独自材料が乏しい状況です。突発的なニュースが出てこなければ、トルコリラ主導の相場展開にはなりにくいかもしれません。

ただし、トルコリラ/円は200日移動平均線という、テクニカル的に重要なラインに差し掛かっています。足もとの上昇局面では、200日移動平均線に上値を抑えられている格好です。200日移動平均線より上の水準で定着できれば、テクニカル面から上昇圧力が強まる可能性があります。200日MAは5月10日時点で32.25円に位置します。<八代>

トルコリラ/円(日足、2016/12/23-)


出所:M2JFXチャート




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