市場調査部レポート

2017/05/05 11:38米ドル/円、一旦の底打ちを確認か

【相場環境】仏大統領選挙、BREXIT、米税制改革、FOMC・・
【全体観・米ドル】米ドル/円、一旦の底打ちを確認か
【ユーロ】フランス大統領選挙は無風で終わるのか
【豪ドル】鉄鉱石価格の影響を受けやすい地合い
【NZドル】11日のRBNZ政策金利の注目点は!?
【トルコリラ】エルドアン政権から再び利下げ圧力


【相場環境】 仏大統領選挙、BREXIT、米税制改革、FOMC・・

7日実施のフランス大統領選挙の第2回投票(決選投票)は、日本時間8日の午前にも大勢が判明します。直近の世論調査では、中道・改革派「前進!」のマクロン氏が極右・国民戦線(FN)のルペン氏を大きくリードしています。マクロン氏はEU残留を、ルペン氏はEU離脱を主張しているため、世論調査の結果通りにマクロン氏が勝利すれば、EU・ユーロ圏の将来に対する懸念は大きく後退することになりそうです。ただし、市場はその結果を相当に織り込んでおり、反応は限定的かもしれません。

4月29日の臨時EUサミット(英国を除く)では、BREXITに関する交渉ルールのガイドラインが決定されました。英国は、離脱交渉と通商など新たな協定を同時並行で進めたい意向ですが、EUは離脱の詳細で合意し、英国が負担金(額は不明)を支払った後に、新たな協定の交渉を始める方針です。
英国とEUの離脱交渉は6月8日の英総選挙後に本格的に開始されますが、交渉のやり方から交渉しなければならないようです。やはり、前途は多難でしょう。

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5月5日の期限前に、米議会が今年9月末までをカバーする2017年度包括予算を可決し、政府機関の閉鎖は回避されました。

5月4日、下院はオバマケア改廃法案を僅差で可決しました。上院が下院案を可決すれば、大統領に送付され、署名を得て成立します。しかし、上院が下院案を可決する可能性は非常に低いとみられます。上院は独自案を審議する意向のようですが、その場合は可決後に下院案との一本化作業が必要になり、その調整は相当に難航しそうです。

議会がオバマケア改廃法案の審議に時間を取られれば、2018年度予算の審議に影響する可能性がありそうです。トランプ政権は2-3週間以内にインフラ投資計画を発表するとしており、やや遅れて税制改革を含む詳細な2018年度予算案も発表されるかもしれません。

その後、議会で予算の大枠を決める予算決議が採択され(あくまでも計画に過ぎないため大統領の署名は不要)、予算審議が本格化します。ただし、政府と議会の交渉がヤマ場を迎えるのは2018年度が始まる今年10月1日の前後になりそうです。その頃にはデットシーリング(債務上限)の引き上げが不可欠になるため、予算交渉が激しいバトルとなり、金融市場が固唾の飲んで見守るという事態もありえそうです。

市場のメインシナリオは再び「6月と12月の利上げ」に
5月2-3日のFOMCで、金融政策の現状維持が決定されました。声明文ではゆっくりと利上げを続けることが再確認されました。次回6月13-14日のFOMCで追加利上げが決定される可能性が高そうです。

声明文では、弱めの経済指標が増えていることに関連して、「景気は減速しているものの、労働市場は強まり続けている」「第1四半期の景気減速は一時的である可能性が高い」との見解が示されました。

5月4日時点のFFレート(政策金利)先物によると、次回6月のFOMCでの利上げを市場は93.7%の確率で織り込んでいます(2日時点では67.1%)。そして、12月のFOMCでは、更なる利上げが54.3%(追加1回42.7%+追加2回11.6%)の確率で織り込まれています。また、9月と11月のFOMCでの追加利上げの確率も40%近くまで上がってきました。

すなわち、現在の市場のメインシナリオは、「今年6月と12月に利上げ」であり、「今年6月と9月の利上げ」あるいは「今年6月と11月の利上げ」もメインシナリオではないものの、それなり確率で織り込まれているということです。
今年12月には保有債券の縮小を始めるため、2回目の利上げを前倒しするとの見方が出てきたためです。今後、経済指標の堅調によって「年内2回の利上げ、それも前倒しされる」との確率が上昇すれば、米ドルのサポート要因となりそうです。

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来週は、9日に韓国大統領選挙があります。事実上、左派系最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン) 氏と中道左派「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス) 氏の一騎打ちとなっており、世論調査では前者が大きくリードしています。文氏は北朝鮮に対する宥和政策を主張しており、主要国による北朝鮮政策にも影響する可能性がありそうです。

経済指標では、米国の4月の消費者物価(12日)、同小売売上高(同)に注目です。小売売上高が大きく反発すれば、年初からの低迷が一時的要因によるものとのFOMCの見方を裏付けそうです。

11日のBOE(英中銀)のMPC(金融政策委員会)では現状維持が決定されそうです。強めの経済指標も散見されますが、BREXITの着地の仕方が判明するまで、BOEは動きづらいでしょう。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 米ドル/円、一旦の底打ちを確認か

5月7日(日)に予定されているフランス大統領選挙・第2回決選投票

4月23日に行われた第1回投票直前における市場の警戒感・緊張感に比べると、何やら「既定路線」の安心ムードが広がっている感もありますが、果たしてノー・マークということでよいのでしょうか。

先般(4月23日)行われた第1回投票において、『最悪のシナリオ』と目された極右・ルペン氏vs極左・メランション氏の『反EU』候補者同士の一騎討ちが実現しなかったこと、さらには、昨年の英国民投票や米大統領選挙で見られたような、事前の世論調査から大きく乖離するような結果(=“隠れルペン”支持層の拡大)とならなかったこともあり、マーケット全般に安心感が醸成されたこともあり、第1回投票後はリスク選好ムードが広がる動きとなっています。

先の第1回投票結果では、それまでの世界的な潮流と見られていた【ポピュリズム(大衆迎合主義)】【反グローバリズム】のさらなる進展に一定の楔(くさび)を打ち込んだ形と捉えられており、5月1日に仏調査会社Ifopが発表した世論調査の支持率では、マクロン氏:59%ルペン氏:41%と、マクロン氏(中道・前進!)優位の状況となっています。以下、5月からのフランス大統領選挙と記念日スケジュールをご確認ください。

5月7日(日) フランス大統領選挙・第2回投票(決選投票)
5月8日(月) ヨーロッパ戦勝記念日(VEデー)[祝日]
5月11日(木) フランス大統領選挙・最終結果発表

ここでのポイントは、第2回投票(5/7)の投票率。フランスでは、土曜日から3連休となり、その“中日(なかび)”となる7日(日)の投票率の低下や投票棄権の増加は、ルペン氏(極右・国民戦線)に有利に働くとの見方も一部あります。

古今東西「選挙は水物」と言われ、事前予想や慣例を覆す例も多く見られることから、やはり7日(日)の結果と、それを受けた8日(月)のマーケット動向には、少なからず注意を向けておいた方が無難と言えるでしょう。

それ以外の注目は、9日(火)に予定されている韓国大統領選挙。事実上は、最大野党・共に民主党の文在寅(ムン・ジェイン)候補とその共に民主党から離脱した勢力で結成された安哲秀(アン・チョルス)候補の一騎討ちと見られていますが、歴代選挙において前例がないほどの「揺動性」があるという見方が主流となりつつあります。

以前と比べたら、ややその緊張感が薄れつつある北朝鮮問題の緊迫度を再び高める可能性もあるだけに、その結果には耳目が集まりそうです。足もとでは、フランスと韓国の大統領選挙の成り行きから目が離せそうにありません。

閑話休題。以下、米ドル/円・週足チャート+52週移動平均線(以下、52週MA)+フィボナッチ+パラボリックをご覧ください。



上記チャートにおいて、ここもとの米ドル/円では52週MAにサポートされ、反発する動きとなっているのが分かります。(上図赤丸印)

また、相場の転換ポイントを示唆するパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)が、今年1月22日の週に「売りサイン」に転換してから15週ぶりに「買いサイン」に転換しており、52週MAと合わせて、ある程度の下値サポートが出来上がったと捉えてよいでしょう。

ただし、米ドル/円の週足トレンドが「下降トレンド」主体から「上昇トレンド」主体へと転換したと判断するのはやや性急で、概ね下方硬直性を伴う横ばい基調(レンジ相場)の形成途中と捉えた方がいいのかもしれません。

今後、2015年6月時高値(125.86円、上図A)と2016年6月時安値(98.76円、上図B)を結んだフィボナッチ・50.0%(=半値戻し≒112.31円)ラインを明確に上抜けブレークした場合のコアレンジは、フィボナッチ・50.0%-同・61.8%ラインの間(上図黄色矢印)のゾーンである112.30-115.50円と想定します。

米ドル/円の戦略の一つとしては、当該ゾーン(112.30-115.50円)に“トラリピ”(らくトラ)を仕掛け、52週MA-フィボナッチ・50.0%ライン(上図青色矢印)ゾーンである108.50-112.30円“トラップトレード”を仕掛ける、いわゆる【T字型フォーメーション】を設定してみるのも一案です。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 フランス大統領選挙は無風で終わるのか

以下、ユーロ/円・週足チャート+52週移動平均線(以下、52週MA)+フィボナッチ+パラボリックをご覧ください。



上記チャートから、フランス大統領選挙・第1回投票が開催された4/23からの週足チャートが、52週MAを明確に上抜けブレークしていることが分かります。

また、相場の転換ポイントを示唆するパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)が、先週時点で今年2月5日の週に「売りサイン」に転換してから12週ぶりに「買いサイン」に転換しており、52週MAと合わせて、米ドル/円同様、ある程度の下値サポートが出来上がっていると捉えてよいでしょう。

ただし、米ドル/円同様、ユーロ/円・週足チャートにおいて「上昇トレンド」主体へと転換したと判断するのはやや性急で、概ね下方硬直性を伴う横ばい基調(レンジ相場)の形成途中と見た方がよさそうです。

現状では、2014年12月時高値(149.69円、上図A)と2016年6月時安値(109.32円、上図B)を結んだフィボナッチ・38.2%(≒124.74円)ラインに対して上値トライする形となっており、当該ラインを上抜けブレークした場合の次なる上値メドは、フィボナッチ・50.0%(=半値戻し)ラインである129.50円となり得ます。

7日(日)のフランス大統領選挙・第2回決選投票におけるサプライズ(=ルペン氏の逆転勝利)があった場合は、再度52週MAラインである118.17円付近までの下落も想定に入れるべきでしょう。いずれにしても、足もとのユーロ/円の動意は、7日(日)の決戦投票結果となりそうです。<津田>


【豪ドル】 鉄鉱石価格の影響を受けやすい地合い

RBAは5月2日の会合で、政策金利を過去最低の1.50%に据え置くことを決定しました。

声明では、国内労働市場の評価が前回4月からやや強めなりました。「労働市場の指標はマチマチ」と指摘。「失業率が過去数か月間で若干上昇しているが、雇用の伸びはやや強まっている」としたうえで、「失業率は時間とともに徐々に低下するだろう」との見方を示しました。前回は「労働市場の状況を示す一部指標が最近軟化した。特に、失業率が若干上昇し、雇用の伸びは控えめだ」でした。

RBAは声明の最後を、「入手可能な情報を考慮すると、理事会は今回の会合で政策スタンスを維持することが、持続可能な経済成長およびインフレ目標の達成と一致していると判断した」と締めくくり、これまでと同様に先行きの金融政策について言及しませんでした。

今回の声明を見る限り、RBAがただちに政策変更を行う必要性は低いと考えられます。市場のRBAの先行きの金融政策に対する見方も会合前から大きな変化がなく、今回のRBAの政策会合は、市場ではそれほど材料視されませんでした。

一方で、豪ドルは、とりわけ対米ドルで鉄鉱石価格の影響を受けやすい地合いです。中国の青島に荷揚げされる鉄鉱石(鉄分62%)価格 は、供給過剰懸念などを背景に、今年2月をピークに下落傾向にあります。鉄鉱石価格は足もと1トン=65ドル前後で推移。2月のピークからの下落率は、3割を超えました。豪州は鉄鉱石を主力輸出品とするため、鉄鉱石価格の下落は豪ドルのマイナス材料と考えられます。鉄鉱石価格が一段安になれば、豪ドルに下押し圧力がさらに加わる可能性があります。<アナリスト 八代和也>

 
*鉄鉱石価格=中国の青島に荷揚げされる鉄鉱石(鉄分62%)
出所:Bloombergより作成


【NZドル】 11日のRBNZ政策金利の注目点は!?

RBNZ(NZ中銀)が5月11日に政策金利を発表します。今回は、政策金利に加えて、金融政策報告が公表されてウィーラー総裁が会見を行います。それらにNZドルが反応する可能性があり、注目です。

RBNZは前回3月23日の会合で、政策金利を過去最低の1.75%に据え置くことを決定。その時の声明で、「金融政策はかなりの期間、緩和的になる」と表明。「とりわけ国際的な見通しに多くの不確実性が残っており、それに応じて政策の調整が必要になる可能性がある」とし、追加利下げに含みを残しました。

5月11日の会合では、政策金利の据え置きが決定されそうです。NZの1-3月期のCPI(消費者物価指数)は前年比+2.2%と、RBNZのインフレ目標(+1から3%)の中央値である+2%を5年半ぶりに超えました。ただし、2%に達したといっても今のところ1四半期のみです。昨年初めの原油安の影響がはく落したほか、食料品の価格上昇などの一時的要因が大きく、RBNZは上昇率が今後も2%以上に定着するのか、それとも一時的なものなのかどうかを見極めると考えられるためです。

注目は、金融政策報告におけるCPI上昇率やOCR(オフィシャル・キャッシュ・レート、政策金利)の見通しです。RBNZは2月の金融政策報告で、CPI上昇率が2%に達するのは2019年4-6月期と予想。その見通しをもとに、2019年7-9月期の利上げを示唆しました(それまでは「据え置き」)。

CPI上昇率見通しは、おそらく2月時点から上方修正されるとみられます。その場合、想定される利上げ時期も前倒しされると考えられます。焦点は、利上げ時期がどの程度前倒しされるのか。市場では、来年2月にも利上げに転じるとの見方があります。OIS(翌日物金利スワップ)が5月4日時点で織り込む、RBNZが年内に利上げを行う確率は28.4%。利上げの確率は来年2月までで56.4%へと上昇します。OISに基づけば、市場のメインシナリオは「来年2月に利上げ」であることが確認できます。

金融政策報告におけるOCR見通しが、市場の見方に近づくほど、早期利上げ観測が高まるとみられます。その場合、NZドルにとってプラス材料と考えられます。一方、CPI上昇率やOCRの見通しが2月時点から大きな変化がなければ、早期利上げ観測が後退してNZドルには下落圧力が加わる可能性があります。<八代>


【トルコリラ】 エルドアン政権から再び利下げ圧力

トルコの4月CPI(消費者物価指数)が5月3日に発表されました。結果は前年比+11.87%と、3月の+11.29%から加速。2008年10月以来、8年6か月ぶりの強い伸びとなりました。食料品やアルコール飲料、タバコの価格上昇がCPIを押し上げました。

インフレ加速への対応策として、利上げが考えられます。TCMB(トルコ中央銀行)はインフレ見通しの悪化を抑えることを理由に、前回4月26日の会合で後期流動性貸出金利を0.50%引き上げました(11.75%から12.25%へ)。3つの主要政策金利(1週間物レポ金利、翌日物貸出金利、翌日物借入金利)は据え置いたものの、TCMBは1月半ば以降、短期市場金利を後期流動性貸出金利近辺へと誘導しているため、事実上の利上げと言えます。後期流動性貸出金利は本来、金融機関が資金不足を回避するための最終手段として用意されている例外的な資金供給金利です。

TCMBのチェティンカヤ総裁は4月28日、「インフレ見通しが改善するまで金融政策の引き締めスタンスを継続する」と表明。引き締め的な金融政策スタンスが寄与し、インフレ率は今後数か月以内に鈍化すると予想されるとしつつも、「インフレ見通しに影響する要因を注視し、必要ならば追加の引き締め(=利上げ)は可能だ」と述べました。

一方で、エルドアン政権はTCMBに対して利下げ(あるいは金利据え置き)を要求。利上げは景気への下押し圧力となることもあり、市場ではTCMBがインフレ対応で利上げを行うのは難しくなりつつあるとの見方もあります。エルドアン大統領の上級経済顧問であるエルテム氏は4月28日、「(4月26日の)後期流動性貸出金利の0.50%引き上げは不必要だった」と発言。ジャニクリ副首相は5月4日、「TCMBの後期流動性貸出金利への依存は一時的であり、正常な方法ではない」と語り、「正常とは、1週間物レポ金利や翌日物(貸出金利、借入金利)だ」と強調。「異常な状況が和らげば、TCMBの金融政策は正常な状態にただちに戻ることが可能だ」と語りました。

エルドアン政権からの利下げ圧力や景気が低迷する中でのインフレ圧力の高まり(CPI上昇率の加速)は、トルコリラにとってプラス材料と市場でみなされない可能性もあります。4月16日のトルコの国民投票以降、トルコリラは堅調に推移してきました。エルドアン政権から利下げ圧力が再び強まりつつあることを考えると、トルコリラの上昇は一服する可能性もあります。<八代>




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