市場調査部レポート

2017/04/07 14:1316日の国民投票を前に、トルコリラ売り圧力が強まる

【相場環境】米金融政策は「次のステージ」へ
【全体観・米ドル】米ドル/円、110円台をキープできるか
【ユーロ】ユーロ/円、乱気流相場の可能性も
【豪ドル】13日の豪雇用統計に注目!!
【NZドル】次の注目材料は20日のCPI
【トルコリラ】16日の国民投票を前に、トルコリラ売り圧力が強まる
【南アフリカランド】政局不安や格下げ懸念が重石


【相場環境】 米金融政策は「次のステージ」へ

今週、円がほぼ全面高でした。トランプ大統領の政権運営能力が引き続き疑問視され、また米FOMC議事録を受けて株価が下落するなど、市場でリスクオフが強まったためです。7日には、米国がシリアへのミサイル攻撃に踏み切ったことがリスクオフに拍車をかけました。

FOMC議事録の読み方
FOMC議事録(3/14-15開催分)では、一部の参加者から株高への懸念が示されました。ただし、株価が大きく調整すれば景気の下振れ要因になりうると指摘された一方で、株高が継続すれば景気の上振れ要因になりうるとの見方もあり、議事録は必ずしも米ドル安要因ではなかったように思われます。

議事録は、どちらかと言えば、利上げに積極的な「タカ派」色が強めでした。「経済見通しは、過去2回のFOMCと基本的に同じ」としつつ、「ほぼ全ての参加者が、最大雇用をほぼ達成していると判断した」からです。また、物価については「見通しが分かれた」ものの、「数人の参加者は物価目標をほぼ達成したと判断」しました。さらに、そうした参加者は「政策金利見通し(いわゆる「FOMCのドット」)が示唆する以上のペースで利上げを進めることが正当化されるかもしれない」と考えたようです。

6日時点のFFレート(政策金利)先物によれば、市場のメインシナリオは「今年6月と12月に追加利上げ」というものです。今後の経済情勢等を踏まえて、そうした見方がどう変わるかが注目されます。

今回の議事録は、冒頭に「(保有債券の)再投資政策」に関する議論を紹介しています。FRBが保有する債券を減らして、いかにバランスシートを縮小するかという問題です。それによれば、「ほとんどの参加者は、緩やかな利上げを続け、また今年終盤に再投資政策を見直すのが適切になると予想した」とのことです。また、多くの参加者が「バランスシートの縮小は、市場が予想できる方法で行うべき」と強調しました。

FOMCは、6月ごろに再投資政策の変更(=バランスシートの縮小)をアナウンスし、12月ごろから開始して段階的に進めるものとみられます。金融政策の正常化は、「利上げを先行させるステージ」から「利上げを継続しつつ、バランスシートを縮小させるステージ」へと進みそうです。

米議会は課題山積のまま春休み!?
米議会は4月8日から23日まで休会となり、24日に再開されます。議会は多くの課題を抱えていますが、その間は進展が望めません。

・オバマケア改廃:
3月24日にいったん棚上げされたオバマケア改廃法案ですが、トランプ大統領の強いプッシュもあって共和党は修正条項を加えて再び成立を目指すようです。ただし、民主党は引き続き反対の構えです。前回反対した共和党の強硬な保守派グループや穏健派が賛成に回るかどうかは、依然として不透明です。

・2017年度予算:
2017年度の継続予算が4月28日で期限切れとなるため、残り9月末までの予算を成立させなければ、政府機関が一部閉鎖されることになります。トランプ大統領は300億ドルの国防費増額と180億ドルのその他支出の削減を要請していますが、そのことが新たな継続予算の成立を難しくしているのかもしれません。
28日までに新たな継続予算が成立する可能性は高そうですが、休会明け後に議会には数日しか残されておらず、政府機関の一部閉鎖の危機は土壇場まで回避されないかもしれません。

・減税やインフラ投資:
トランプノミクスの柱である減税やインフラ投資は、2018年度(2017年10月-18年9月)の予算審議に盛り込まれる予定です。トランプ政権は5月に詳細な提案をし、夏場には成立させたい意向でしたが、上述のような課題が山積するなかで予定通り進展するのは難しそうです。

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来週は、まず、10-11日のG7外相会合と日米外相会談に注目です。北朝鮮や南シナ海など東アジアの安全保障が議題の一つになりそうです。

米経済指標もいくつか発表されます。7日の雇用統計に続き、14日の3月CPI(消費者物価)や小売売上高が金融政策見通しに影響しそうです。
食料とエネルギーを除くCPIコアは今年2月まで15か月連続で前年比+2%を上回っており、一段と伸びが加速するようなら利上げ観測が高まりそうです。

他方、小売売上高は軟調が予想されます。既報の自動車販売台数は前月比-5.4%と大幅減となっており、全体を押し下げた公算が大きそうです。ただ、上述のFOMC議事録によれば、年初来の個人消費の軟調は、暖冬(=暖房費減)や税還付の遅れまで一時的要因が大きいとのことです。

その他、16日のトルコ国民投票や23日のフランス大統領選挙(第1回投票)に向けた政治情勢の変化なども、相場材料となりそうです。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 米ドル/円、110円台をキープできるか

足もとのマーケット材料ということでは、本日7日の米3月雇用統計結果や、米中首脳会談の中身次第となりそうですが、より大きな俯瞰図で見てみると、【相場環境】にもある通り5日に公表された米FOMC議事録要旨における言及がポイントとなりそうです。

その議事録要旨のポイントは2点。まず1点目は、FOMC参加メンバーの多くがここもとの米株式市場における上昇スピードやその過熱感に懸念を示し始めたこと。そして2点目が、リーマンショック後3度にわたるQE(量的金融緩和)で膨張したFRBのバランスシート(以下、B/S)の縮小に着手することが示唆されたこと。

特に後者(B/S縮小)については、FRBにとっては「利上げ回数」や「利上げペース」よりも重点課題となり得ており、非伝統的金融政策(=量的金融緩和のこと)からの“出口戦略”として極めて重要なミッションと言えそうです。

FRBの本音を探ってみると、「年内2回の利上げを行う」という市場へのメッセージは、言うなれば“観測気球”と捉えることも可能です。というのも、米国の市中銀行がFRBに現金を預ける際に金利が付くターム物預金ファシリティ(TDF)[日銀当座預金に相当]の金利とFF金利はシンクロしており、言うなれば「年内2回のFF金利の利上げがある」=「年内2回のTDFの利上げがある」というメッセージを市中銀行に送ることで、足もとの景気が予想以上に良くなった際、TDFからの預金一斉引き出しに対して予防線を張ることができ、それによりB/Sの安定を図ることが可能になります。

FRBによる金融政策の視線の先にはトランプ政権による大型財政政策(いわゆるトランプノミクス)が厳然とあり、仮に予想より早く、しかも大規模な財政出動が実施された場合、当初想定以上のペースで長期金利が上昇(国債価格は下落)してしまうリスクも。

B/S縮小という出口戦略を出来るだけ早く、また安定的に実施したいFRBにとって、大型財政政策によって引き起こされる長期金利の上昇(※)は、その出口戦略にとって大いなる阻害要因となり得ます。(※「マンデル・フレミングの法則」下、大型財政政策の実施は「株安」「債券安(長期金利高)」「ドル高」フローとなるとされています。)

トランプ政権による経済政策は引き続き不確定要素が高くなっており、本日のシリア攻撃も含め、今後も予測不可能と捉えた方がいいのかもしれません。

FRBとしては、過去3回にわたるQE(量的金融緩和)によって膨らんだ4兆5000億ドル(約500兆円)ものB/Sを、出来るだけ段階的に縮小していくことこそが喫緊のミッション。今後の予想フローは、「年内2回の利上げ(6・9月?)」「利上げの一旦停止」「B/S縮小(再投資終了)に着手(12月?)」「その後の米経済に対する悪影響点検」「2018年以降に利上げ再開」と捉えてよさそうです。

これらを総合すると、今後の米ドル/円の動きは、横軸(=時間的経過)をベースとした相場展開になることが予想され、一方的に安くはなりにくく、かといって一方的に高くもなりにくい、いわゆるレンジワーク中心の動きとなることが予想されます。

以下、FRBによるQE(量的金融緩和)フローとB/S問題想定フロー図についてご確認ください。



以上、ご参考になれば幸いです。

閑話休題。以下、米ドル/円・週足・一目均衡表+フィボナッチ+DMIをご覧ください。



上記チャートより、1) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)の中に入り込んでいること、2) 遅行スパンとローソク足が絡み合う形状となりつつあること、そして3) –DI>+DIとなり、ADXが右肩下がりとなっていることから、上方硬直性を伴うレンジ相場となることが予想されます。

テクニカル指標から判断する下値メドは以下2つです。

1. 基準線レベルである109.92円
2. 2015年6月時高値(125.86円、上図A)と2016年6月時安値(98.76円、上図B)を結んだフィボナッチ・38.2%ラインである109.11円

足もとの米ドル/円のコアレンジとなり得るのは、フィボナッチ・38.2%ライン-同・50.0%ラインである109.11-112.31円と想定してもよさそうです。

いずれにしても、材料目白押しとなるこれからの時間帯からは、米ドル/円が110円台をキープできるか否かが喫緊のポイントとなりそうです。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/円、乱気流相場の可能性も

以下、ユーロ/円・週足・一目均衡表+フィボナッチ+DMIをご覧ください。



上記チャートより、1) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)の中に入り込んでいること、2) 遅行スパンとローソク足が絡み合う形状となりつつあること、そして3) –DI>+DIとなり、その乖離がさらに拡大する動きとなりつつあることから、下降トレンド主体の相場展開となることが想定できます。

7日東京時間の時点におけるユーロ/円は、2016年6月時安値(109.32円、上図A)と同年12月時高値(124.08円、上図B)を結んだフィボナッチ・38.2%ライン(≒118.44円)および基準線レベル(≒118.33円)を割り込んでおり、テクニカル上勘案する次なる下値メドは、フィボナッチ・50.0%ライン(=半値押し≒116.70円)と想定できます。

上記チャート形状から勘案する今後のユーロ/円相場の動向は、先行スパン(いわゆる“雲”)の中を往き来する乱気流相場となる可能性も想定できるため、少なからず注意が必要です。

フィボナッチ・50.0%ライン(≒116.70円)を明確に割り込んだ場合は、“雲”の下辺である先行1スパン(≒116.05円)付近までの下落を想定した方がいいのかもしれません。<津田>


【豪ドル】 13日の豪雇用統計に注目!!

RBA(豪中銀)は4月4日、政策金利を過去最低の1.50%に据え置くことを決定しました。

声明では、豪労働市場への見方が前回3月からやや弱くなりました。声明では、「労働市場の状況を示す一部指標が最近軟化した」と指摘。「特に、失業率が若干上昇し、雇用の伸びは控えめだ」としました。前回は「労働市場の指標は引き続きマチマチで、国内の雇用状況には依然かなりのバラツキがみられる」でした。

住宅市場については、前回と同様に、「状況は地域によってかなりの差異がみられる」「一部の市場は強い状況で、価格が大幅に上昇している」との見方が示されました。家計の収入を上回るペースで家計の借り入れが増加していると指摘する一方、「国内市場においてインタレスト・オンリー・ローン(利息のみの返済が可能な融資)への依存度が低下していることは前向きな進展だ」としました。

RBAは声明の最後を、「入手可能な情報を考慮すると、理事会は今回の会合で政策スタンスを維持することが、持続可能な経済成長およびインフレ目標の達成と一致していると判断した」と締めくくり、これまでと同様に先行きの金融政策について言及しませんでした

今回の声明では、労働市場の一部指標の軟化に言及されました。そのため、4月13日の豪州の3月雇用統計がこれまで以上に注目されそうです。堅調な豪経済や住宅価格の上昇を背景に、市場ではRBAが来年にも利上げに転じるとの見方があります。雇用統計が弱ければRBAの利上げ期待が後退する一方、利下げ観測が高まる可能性があります。その場合、豪ドルに下落圧力が加わりそうです。<アナリスト 八代和也>


【NZドル】 次の注目材料は20日のCPI

4月4日、乳製品電子オークション(GDT)が開催されました。乳製品国際価格の指標であるGDT価格指数は987と、前回3月21日の972から小幅に上昇しました。上昇は2回連続です。

GDT価格指数は、オセアニアの天候不順や欧州の生乳減産を背景に、昨年夏以降に上昇基調を強め、12月6日のオークションで2年半ぶりの高水準を記録。その後は下落傾向にありました。NZにおいて乳製品は最大の輸出品であり、その価格動向は経済に影響を与えます。GDT価格指数が下げ止まったことは、NZ経済はもちろん、NZドルにとってもプラスと考えられます。

ただし、NZドルについては、4月20日に発表されるNZの1-3月期CPI(消費者物価指数)が重要と考えられます。RBNZ(NZ中銀)が2015年以降に実施した7回の利下げは、低インフレが背景だったためです。

来週(4月10日の週)は、NZの主な経済指標発表がありません。NZの独自材料が乏しいことから、NZドルは米ドルなど、他通貨の動向に左右される展開になりそうです。<八代>


【トルコリラ】 16日の国民投票を前に、トルコリラ売り圧力が強まる

トルコリラは今週(4月3日の週)、対円で約2か月ぶり、対米ドルで約3週間ぶりの安値をつけました。

トルコリラ下落の背景として、国民投票をめぐる不透明感のほか、インフレの加速が挙げられます。

トルコでは、憲法改正の是非を問う国民投票が4月16日に行われます。各種世論調査では、賛成と反対がそれぞれ4割程度で拮抗しており、予断を許さない状況です。

トルコの3月CPI(消費者物価指数)は前年比+11.29%と、2月の+10.13%から加速。2008年10月以来、8年5か月ぶりの強い伸びとなりました。

インフレ加速への対応策として、利上げが考えられます。TCMB(トルコ中央銀行)はインフレ見通しの悪化を抑えることを理由に、前回3月の会合で後期流動性貸出金利を引き上げました。3つの政策金利(1週間物レポ金利、翌日物貸出金利、翌日物借入金利)は据え置いたものの、TCMBは1月半ば以降、短期市場金利を後期流動性貸出金利近辺へと誘導しているため、事実上の利上げと言えます。

一方で、市場ではTCMBが積極的に利上げを行うのは難しいとの見方があります。エルドアン大統領や政府高官が繰り返し利下げ(あるいは金利据え置き)を要求していることや、利上げは景気の下押し圧力となるためです。こうした見方があるなか、インフレが3月に加速したことで、トルコリラに下落圧力が加わりました。

4月16日の国民投票の不透明感や、TCMBの金融政策をめぐる観測を背景に、トルコリラは上値が重い展開になりそうです。<八代>


【南アフリカランド】 政局不安や格下げ懸念が重石

南アフリカのズマ大統領は3月30日、同国の財政再建に取り組み市場からの信任が厚いゴーダン財務相を解任し、後任に金融経験が乏しいギガバ内相を任命しました。この内閣改造では、ゴーダン財務相ら9人の閣僚が解任されました。与党ANC(アフリカ民族会議)内で反対意見が強いなか、内閣改造が強行されたことで、ANC内で亀裂が発生。野党はズマ大統領の不信任案を提出しました。ズマ大統領はANC内の支持を取り付けたとされており、4月18日に採決される予定の不信任案は否決される可能性が高いとみられます。ただ、南アフリカの政局に関するニュースには、引き続き注意が必要です。

3大格付け会社のうち、S&Pは4月3日、南アフリカ国債(外貨建て)の格付けを「BBBマイナス」から「BBプラス」へと1段階引き下げました。それにより、南アフリカ国債は「投資適格級」から「投機的等級(いわゆるジャンク)」へと転落しました。見通しは引き続き、ネガティブ(引き下げ方向)です。S&Pは声明で、「ゴーダン財務相の解任を含めた内閣改造がANC内の分裂を浮き彫りにした」と指摘。「それにより、景気や財政に悪影響を与える可能性が高まった」と、格下げの理由を説明しました。

市場では、ムーディーズやフィッチも格付けを引き下げるとの懸念があります。ムーディーズとフィッチにおける南アフリカ国債の格付けは、それぞれジャンクから2つ上、1つ上で、見通しはいずれも「ネガティブ」です。ムーディーズは4月4日、内閣改造の影響を見極めるために、7日に予定していた見直し結果の発表を見送ると表明しました。目先の格下げは回避された格好です。一方、フィッチは3月31日、南アフリカ国債の格付けを見直す可能性を示しました。南アフリカの格付けをめぐる懸念が、南アフリカランドの上値を抑えそうです。<八代>


*オレンジが南アフリカ国債の格付け(外貨建て)
出所:Bloombergより作成




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