市場調査部レポート

2017/02/24 13:152・28 トランプ大統領演説がトリガーに?

お知らせ:マンスリー・アウトルックは都合により3月3日に配信いたします。

【相場環境】トランプ政権の税制改革は先送り?
【全体観・米ドル】2・28 トランプ大統領演説がトリガーに?
【ユーロ】ユーロ/円、下降トレンド加速の可能性も
【豪ドル】堅調な鉄鉱石価格が豪ドルの支援材料に
【NZドル】米国の材料に影響を受けやすい地合いか
【トルコリラ】市場金利の高め誘導がトルコリラを下支えしそう


【相場環境】 トランプ政権の税制改革は先送り?

2月22日、米FOMC議事録(1/31-2/1開催分)の発表直後に米ドルは下落、長期金利も低下しました。3月14-15日のFOMCでの利上げの可能性が高まったわけではないと判断されたのでしょう。

確かに、トランプノミクスが不透明要因として指摘され、また足元のドル高への懸念も散見されるなど、3月利上げの観測を高めたかという点では力不足でしょう。しかし、議事録の内容はかなりタカ派(利上げに積極的)だったように思います。今後の状況次第で、利上げの頻度や最終的な利上げ幅に関する市場の観測が上方修正されるのを助ける可能性はありそうです。

今後の方針が議論された箇所では、タカ派的な意見が多く出されました。要点は以下の通り。

・多くの参加者が、「かなり早期」の利上げが適切になる可能性に言及(タカ)
・数人が、3月の利上げの可能性も含め、タイムリーな利上げにより政策の柔軟性が高まると指摘(タカ)
・数人が、自然失業率を大きく下回る可能性が高く、その場合は想定以上の早い利上げが必要になるかもしれないと判断(タカ)
・他の数人は、物価が目標に届いていない中で、依然として物価下振れリスクがあると考えた(ハト)
・2人は、「緩やかな」との表現がわずか年1-2回の利上げを意味すると誤解されていると指摘(タカ)

その他にも、次回以降の会合で、債券再投資(=量的緩和の維持)の見直しを始めることが合意されました。これも引締め方向へのシフトという意味で、タカ派的と解釈することができそうです。

今後の金融政策は、経済情勢やトランプノミクス、株価や米ドル相場などに影響を受けるでしょう。それでも、現時点で、FRBは市場が想定するよりもアグレッシブな利上げを視野に入れているかもしれません。

**********
来週は、28日に予定されるトランプ大統領の議会演説が最大の注目材料です。これは就任2年目以降の大統領が通常1月下旬に行う一般教書演説(State of Union Address)に代わるものです。上下両院議員を前に施政方針を示すという意味で両者に大きな差はありませんが、公式には区別されているようです。

そこで減税やインフラ投資などの具体的内容が説明されるとの期待もありますが、型破りなトランプ大統領がどこまで市場の期待に応えるかは不透明です。

また、閣僚候補の議会承認が遅れており、予算を管轄するOMB(行政管理予算局)のマルバニー長官が上院で51対49の僅差で承認されたのは2月16日になってからです。短い準備期間に、税制改革を含む包括的な予算案を作成するのは相当に困難でしょう。このため、2018年度予算教書は3月13日ごろに発表されるようです。

さらに、トランプ大統領は医療保険制度の改革(=オバマケアの廃止)を優先する意向のため、税制改革の議論が遅れる可能性もありそうです。それでも、トランプ大統領が2月9日に宣言した「すごい減税」の一端が明かされるだけで、金融市場は反応するかもしれません(例えば、株高となり、市場金利が上昇し、米ドルにプラス、など)。

大統領の演説に対する議会の反応、とりわけ共和党議員が支持の姿勢を明確にするかも、興味深いところでしょう。

<今月の特集2-3月号「米国の予算制度、トランプノミクスの減税やインフラ投資はいかにして実現するか」をご参照ください>

来週は、トランプ大統領の演説以外には相場材料に乏しそうです。米国の経済指標では、1月のPCEコアデフレータ(3月1日発表)2月のISM製造業景況指数(1日)同非製造業指数(3日)などに注目です。

PCE(個人消費支出)コアはFRBが重要視する物価指標で、目標の2%を下回る推移が続いています。ただし、別の物価指標であるCPI(消費者物価)コアが14か月連続で2%を上回っていることもあり、PCEコが一段と目標に接近するようであれば、利上げ観測が高まりそうです。

また、ISM製造業景況指数は昨年9月以降の上昇が顕著であり、製造業の回復を裏付けていますが、最近の米ドル高の影響が出てくるのか気になるところです。

なお、米雇用統計(2月分)の発表は3月10日です。雇用統計は第1金曜日に発表されるケースがほとんどですが、日付のルールは調査週(12日を含む1週間)の金曜日の3週間後であり、3月は10日が該当日です。2017年で第2金曜日に雇用統計が発表されるのは、3月以外では12月のみです(それ以外は第1金曜日発表)。

3月15日実施のオランダ総選挙4-5月のフランス大統領選挙のすう勢(世論調査結果など)も、ユーロを中心に為替相場に影響する可能性はありそうです。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 2・28 トランプ大統領演説がトリガーに?

FOMC議事録要旨については、上記【相場環境】にある通りですが、その内容を総括してみると、「総論:タカ派、各論:ハト派」といったところでしょうか。

FRB(米連邦準備制度)とFOMC(連邦公開委員会)が連銀法により課されている2つの法的使命、いわゆる【デュアル・マンデート】は、「物価の安定」「完全雇用(雇用の最大化)」となっており、現時点における達成度を測ってみると、総合的な客観的数字の上では及第点を取得していると捉えてよさそうです。

よって、イエレンFRB議長としては、出来るだけ早期に金融政策の正常化を図りたいと考えるのは当然で、FF金利の水準を経済状態に適した“巡航高度”に持って行きたいということは、金融政策の総責任者としてまさにその使命に則った仕事と言えます。

しかしながら、2月14日に実施されたイエレンFRB議長による議会証言内容や、22日に公表されたFOMC議事録に共通するのは、「トランプ政権による経済政策の不透明感や不確実性」

つまり、イエレンFRB議長やFRB高官の本音を意訳してみると、「我々(FRB)は、先のリーマンショック時に大きく落ち込んだ米経済を、あらゆる処方箋を使ってここまで立ち直らせた。特に雇用と物価に関しては、ほぼ仕事を完遂している。この期に及んで政府が余計な薬(劇薬?) を打たないでもらいたい。」という事なのかもしれません。

一方で、トランプ大統領としては、激しい選挙戦を通じて、現場において肌で感じた米経済の閉塞感・停滞感を出来るだけ早期に打破するため、また選挙戦を通じて自身を応援してくれた“忘れられた人々”、つまり白人中間層や製造業に携わる人々に対して返礼をする必要が。

そのための手段として、「減税」「大型インフラ投資」等のカードがある訳ですが、マンデル・フレミングの法則に従うと、「減税」や「大型インフラ投資」を実施すると、結果的には『株安』『ドル高』に帰結するという側面も見なければなりません。

つまり、トランプ大統領が行おうとする積極的な財政政策、いわゆる“トランプノミクス”は、理論上は彼の支持基盤である“忘れられた人々”にとって不利益となってしまう可能性もあり、また、FRBが行おうとしている金融政策の引き締めと同時タイミングで行った場合は、米経済にとってオフセット(相殺)となり得る可能性も。

その意味でも、来週28日(日本時間3月1日午前11時頃)に行われる、米上下両院合同本会議での演説内容とともに、その後の議会の動きからは目が離せそうにありません。

以下、ポリシーミックスについての想定されるマトリックス表です。ご参考まで。



閑話休題。以下、米ドル/円・日足・一目均衡表+フィボナッチ+DMIをご覧ください。



上記チャートより、1) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)の中で推移していること、2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっていることから、足もとでは横ばい基調、つまりレンジ相場を示唆しています。

喫緊の注目ポイントは、昨年11月9日時安値(101.18円、A)と同12月15日時高値(118.65円、B)を結んだフィボナッチ・38.2%ラインである111.98円サポートラインとしてワークするか否か。

来週にかけての米ドル/円の方向性については、以下3つのシナリオ(A、B、C)が考えられます。

[A] フィボナッチ・38.2%ライン(≒111.98円)がサポートラインとして機能し、先行スパン(いわゆる“雲”)を再び上抜けするケース。
[B] 同ライン近辺でしばらく推移するケース。
[C] 同ライン、および“雲”を下抜けするケース。

他方、DMI(方向性指数)を確認してみると、-DIと+DIがクロスし、24日時点で-DI>+DIとなっていることから、マイナスの方向性が優位となりつつあることも加味すると、上記3つのケースの内[C]が実現し、上図青丸印のゾーンへの下抜けを想定した方がいいのかもしれません。

そのケースでは、フィボナッチ・50.0%(=半値戻し)ラインである109.92円付近までの下押しを想定する必要があります。

日柄計算をしてみると、24日を起点に3-5日後、つまり2月28日近辺に当たっており、その意味でも同日(日本時間3月1日午前11時頃)に行われる予定のトランプ大統領の議会演説には要注目でしょう。

以下余談ながら、アストロロジー(金融占星学)分析で有名なレイモンド・メリマン氏が執筆した『フォーキャスト2017』(投資日報社)によると、2月27-28日が足もとの重要変化日となっており、これらも合わせて注目してみてもいいかもしれません。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/円、下降トレンド加速の可能性も

以下、ユーロ/円の日足・一目均衡表+DMIをご覧ください。



上記チャートより、1) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)の下辺である先行2スパン付近にあること、2) 遅行スパンがローソク足を下抜けしていること、そして3) 転換線が基準線の下方にあることから、下降トレンド加速準備を示唆しています。

仮に、ローソク足が先行2スパン(≒118.89円)を下抜けた場合(上図赤丸印ゾーン)、【三役逆転】となり、下降トレンドが加速される可能性も。

また、DMI(方向性指数)では、-DIと+DIの乖離が進んでおり(上図青丸印)、今後さらに乖離が広がって、いわゆる“ワニの口”のような形状となった場合は、下降トレンド加速の支援材料となることが考えられます。

現在のチャート形状を見る限り、ユーロ/円に関しては、安易な値頃感からの買いエントリーは避けた方が無難なのかもしれません。<津田>


【豪ドル】 堅調な鉄鉱石価格が豪ドルの支援材料に

RBA(豪中銀)は2月21日、政策金利の据え置きを決めた2月7日の政策会合の議事録を公表。

議事録では、政策メンバーが豪経済について楽観的な見方を示していることが明らかになりました。豪経済は昨年7-9月期にマイナス成長を記録したものの、それは悪天候など一時的な要因によるものと指摘。GDP成長率は年内に3%前後に加速し、予測期間の残りの期間にわたって潜在成長率を上回るとの見通しを示しました。

インフレ率については、中期的なインフレ期待は引き続きしっかりと安定しており、緩やかに上昇すると予想。インフレ圧力の重石となっている要因が想定していたよりも持続する可能性があるとする一方で、「最近の世界的なインフレ圧力の高まりが予想以上に国内のインフレに波及する可能性がある」としました。

金融政策に関しては、「更新された予想やそれらの予想に影響を及ぼすリスク評価、および政策金利の水準など、入手可能なすべての情報を考慮すると、理事会は政策スタンスを維持することが、持続可能な経済成長およびインフレ目標の達成と一致している」と表明。7日の会合時の声明と同様に先行きの金融政策ついて言及しませんでした

鉄鉱石価格が堅調
豪州の主力輸出品である鉄鉱石の価格が堅調に推移。中国の青島に荷揚げされる鉄鉱石(鉄分62%)価格は、約2年半ぶりの高値圏にあります。足もとの堅調さは引き続き豪ドルの支援材料となりそうです。

ただし、鉄鉱石価格上昇の背景には、中国の輸入増のほか、投機マネーが先物市場へと流入することで現物価格を押し上げているとの見方もあります。原材料である鉄鉱石の価格上昇は景気に悪影響を与えるおそれがあるため、中国政府が今後、投機の抑制に向けて先物市場への規制強化に動くことも考えられるため、注意しておく必要はあります。<アナリスト 八代和也>


出所;Bloombergより作成


【NZドル】 米国の材料に影響を受けやすい地合いか

2月21日、乳製品電子オークション(GDT)が開催されました。乳製品国際価格の指標であるGDT価格指数は1,020と、前回2月7日の1,054から下落しました。

GDT価格指数は、オセアニアの天候不順や欧州の生乳減産を背景に、昨年夏以降に上昇基調を強め、12月6日のオークションで1,082と、2年半ぶりの高水準を記録しました。その後は、今回まで5回連続で1,000台であり、今回もその範囲内でした。前回から下落したものの、今回の結果はほとんど材料視されませんでした。

GDTが終わり、NZサイドの次の大きな材料は、2月28日発表のNZの1月貿易収支になりそうです。ただし、同じ28日にトランプ大統領の施政方針演説が行われます。NZドルはNZ固有の材料よりも、米国の材料の影響を受けやすいかもしれません。<八代>


【トルコリラ】 市場金利の高め誘導がトルコリラを下支えしそう

今月に入り、トルコリラが反発傾向にあります。今週(2月20日の週)、対米ドルと対円で1か月半ぶりの高値をつけました。

その背景には、このところトルコリラにとって新たなネガティブ材料が出てきていないことのほか、TCMB(トルコ中銀)が市場金利を高めに誘導していることが挙げられます。

TCMBの金融政策はコリドー方式を採用。通常は、1週間物レポ金利(主要政策金利)を中心に、翌日物借入金利を下限、翌日物貸出金利を上限として、その範囲内に市場金利を誘導します。ただ、TCMBは今年1月半ば頃から、1週間物レポ金利や翌日物貸出金利での資金供給を絞り、短期市場金利を「後期流動性貸出金利」へと誘導。それにより、1月上旬に8.5%前後だった短期市場金利(翌日物銀行間金利)は、足もと11%前後で推移しています。後期流動性貸出金利は本来、金融機関が資金不足を回避するための最終手段として用意されている例外的な資金供給金利です。

トルコリラ安が進むなか、TCMBは1月の政策会合で、3つの政策金利のうち、翌日物貸出金利のみを0.75%引き上げて、1週間物レポ金利と翌日物借入金利は据え置きました。その裏で、短期市場金利を後期流動性貸出金利付近へと上昇させることで、翌日物貸出金利の利上げ幅以上の効果をもたらしたとみられます。

TCMBは状況次第で追加利上げに踏み切る姿勢を示しています。チェティンカヤ総裁は2月9日、「現在の政策スタンスは明確かつ安定的な引き締めを示唆している」と明言し、「インフレが著しく改善するまで引き締めスタンスを維持する」と表明。「必要ならば、一段の引き締めを行う」と述べました。TCMBによる市場金利の高め誘導や追加利上げの可能性がトルコリラを下支えしそうです。

国民投票は4月16日
憲法改正の是非を問う国民投票が4月16日に行われます。投票日に向けて、各種世論調査にトルコリラが敏感に反応する可能性があります。<八代>


出所:Bloombergより作成




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