市場調査部レポート

2017/02/03 12:53米ドル/円、下抜け重要ラインの攻防戦が続きそう

【相場環境】 10日の日米首脳会談で何が出るか
【全体観・米ドル】 米ドル/円、下抜け重要ラインの攻防戦が続きそう
【ユーロ】 ユーロ/米ドル、上抜けブレークの可能性も
【英ポンド】 英ポンド/円、上値の重い展開が継続しそう


【相場環境】 10日の日米首脳会談で何が出るか

1月30-31日の金融政策決定会合で、日銀は金融政策の現状維持を決定しました。「長期金利を0%程度で維持する」とし、そのための国債買入れメドも「年間80兆円」を据え置きました。展望レポートでは2%の物価目標達成時期を黒田総裁の任期が切れる「2018年度ころ」としています(任期は18年4月8日まで)。急激な円高等によって見通しが著しく変わらない限り、早期の目標達成に向けて近く追加緩和に踏み切るという状況ではなさそうです。

他方、1月31日-2月1日の米FOMCでは、FRBも現状維持を決定しました。声明文では、今後について、「FOMCが予想する経済情勢の下では、利上げはゆっくりとしたものだけが正当化されるだろう」と従来の見解が繰り返され、満期を迎える保有債券についても、再投資する方針が維持されました。
ただし、「消費者や企業のセンチメントは最近改善している。ここ数四半期はインフレ率が上昇している」として、景気や物価の判断はやや上方修正されました。

FFレート(政策金利)先物によれば、FOMC終了後の市場のメインシナリオ(=織り込む確率が50%超)は、次回利上げが6月、その次が11月です。年内(12月まで)に利上げ3回の確率は36.4%にとどまっています。

労働市場がほぼ完全雇用となるなかで、FRBが利上げのペースを速めるか、年内3回以上の利上げを視野に入れるか。3日発表の1月雇用統計を含め、今後の経済指標が重要な鍵を握りそうです。

2日、BOE(英中銀)はMPC(金融政策委員会)を開催し、金融政策の現状維持を決定しました。
カーニー総裁は会見で、「ブレグジットの旅は始まったばかりであり、方向は明確ながら途中には紆余曲折があるだろう」とした上で、「(金融政策にとって、利上げと利下げの)どちらのシナリオもありうる」と語りました。

英国下院は、2月6-8日にメイ首相がブレグジットを宣言するための法案を審議します。先に、デービスEU離脱相は関税同盟からの脱退を明言しており、やはり英国はハード・ブレグジットの道を進む意向のようです。そうであれば、英経済に大きな負の影響が出る可能性があるため、BOEが進展を見守ろうとするのも当然かもしれません。


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さて、来週は、10日にワシントンで開催される日米首脳会談が最大の注目点となりそうです。
1月28日の電話会談では、通商関係の話題は出ず、日米同盟の重要性が確認されたと報道されています。10日の首脳会談では、安倍首相が、安全保障や経済における日本の貢献を説明し、円安誘導との批判に効果的に反論することができるでしょうか(後述、「不公正貿易国の3つの条件」ご参照)。あるいは、トランプ大統領からどんな要求が出されて、それに安倍首相がどう対応するか、非常に不透明です。
また、首脳会談に先駆けて、トランプ大統領がいつ、どんな形で対日けん制メッセージを発するかもわからず、油断はできません。

その他、7日にRBA(豪中銀)、9日にRBNZ(NZ中銀)の会合があり、金融政策が発表されます。いずれも、現状維持とみられますが、声明等などで今後の方針について何らかのヒントが出てくるかもしれません。
OIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、RBAは年内据え置きとの見方が有力ですが、次の一手はどちらかといえば利上げより利下げの確率がやや上回っています。同様に、OISに基づけば、RBNZは今年終盤に利上げに転じるとの見方が有力です。

不公正貿易国の3つの条件
米財務省は、昨年4月の半期為替報告書から厳格な評価基準を導入しました。そして、以下の3つの条件を満たした場合、これを不公正貿易国と認定して、米国は交渉を開始。さらに1年後に成果がなければ、一方的な制裁に踏み切ることになります。

3つの条件とは、
(1)   対米貿易黒字が200億ドル以上であること(米国のGDPの約0.1%)
(2)   その国の経常収支の黒字がGDPの3%以上あること
(3)   外貨買い(自国通貨売り)介入を繰り返し、1年間総額がGDP2%以上であること

昨年10月の報告書では、2つの条件を満たしているとして、日本、中国、韓国、台湾、ドイツ、スイスが監視リストに入りました。日本、中国、韓国、ドイツは、(1)と(2)を、台湾とスイスは(2)と(3)を満たしました。
同報告書では、日本について、「日本は過去5年間に市場介入を行っていないが、2016年に円に上昇圧力が加わった時に、当局者から円押し下げのための口先介入が繰り返された」と記述されていました。

日本が本格的な円売り介入を実施して、上記の(3)の条件を満たす可能性は限りなくゼロに近いと思われます。しかし、現在のトランプ政権では、ルールを無視した性急な制裁に踏み切ったり、あるいは日銀による量的金融緩和ですら、「実弾介入」と同等の円安誘導と判断して、日本を不公正貿易国に認定したりするかもしれない怖さがあります。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 米ドル/円、下抜け重要ラインの攻防戦が続きそう

1月20日の就任式から2週間が経過しましたが、相も変わらず“トランプ節”が止まりません。(3日時点)

自身の大統領選挙キャンペーン中に公表した39に上る公約を次々に「大統領令」として発令し、その矢継ぎ早の実務展開は恐怖心を覚えるほどのスピードとなっています。

中でも、世界中の人々を驚愕させた大統領令こそ・・・「入国禁止令」。1月27日、トランプ大統領はイスラム圏7ヵ国からの移民や難民の米国への入国を禁止する大統領令を発令し、各地の空港ではそれに反対するデモ隊も交え大混乱の様相に。

入国制限に反対したイェーツ米司法長官代行を早速更迭し、また、難民引き受けに関する豪州との合意についてターンブル豪首相と電話会談したトランプ大統領が、当初1時間の会談予定がわずか25分で打ち切るという、前代未聞の事態を引き起こしているのもメディアで報道されている通りです。(ただし、本人は自身のtwitterで「フェイク(偽)ニュース」と否定しています。)

そんな中、スイスの著名投資家であるマーク・ファーバー氏は、米CNBCの番組内でトランプ大統領による入国禁止令について、「保護主義への傾斜は外国投資家の対米投資への信頼感を損ね、入国禁止は米ドル・米資産に対して長期的に極めて悪い影響を及ぼすだろう」とのコメントをしています。

もとより慢性的な貿易赤字を抱える米国経済は、海外投資家による米国内への投資でファイナンスされており、こういった入国禁止措置はヒトのみならず、カネ、つまり投資マネーの流入をも阻害しかねないことは火を見るよりも明らかであり、ひいてはさらなる貿易収支や資本収支の悪化につながります。

ここへ来て、有名どころでは“数少ない”トランプ大統領支持派と見られていた、世界最大のヘッジファンドであるBridgewater associates創業者であるレイ・ダリオ氏が、トランプ大統領による一連のポピュリズム(大衆迎合主義)的政策の先鋭化に懸念を示し、「1930年代のデジャビュ(既視感)」となり得ることに関して警鐘を鳴らしているのが大いに気になるところ。

同氏曰く、「現在の投資環境は異常なまでに不透明」と述べ、自身の顧客に対し「いつでも逃げられるように、売りやすい資産に分散投資するよう」勧めているとのこと。

トランプ大統領は、ロシアによるサイバー攻撃等の疑惑は残るものの、正式な選挙で民主的に選ばれた大統領であるという事実は否定しようがありませんが、一方で、かつてのヒトラーやムッソリーニも“民主的な選挙”で選ばれたことも歴史的事実です。

レイ・ダリオ氏の言う「1930年代のデジャビュ(既視感)」とは、ポピュリズムの激化や世界大恐慌であり、またその後の世界経済ブロック化や世界大戦を意識していることは明らかです。果たして、歴史は繰り返されることになるのでしょうか。

閑話休題。以下、米ドル/円・日足・一目均衡表+フィボナッチ+DMIをご覧ください。

上記日足・一目均衡表では、1) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)の中に入り込んでいること、2) 遅行スパンの先端部分がローソク足の下方にブレークしていること、そして3) 転換線が基準線の下方に位置していることから、下降トレンド相場を示唆しています。

また、DMI(方向性指数)において、-DIが+DIの上方に位置しているため、マイナスの方向性優位、つまり下降トレンド相場の継続を示唆しています。(上図青丸印)

喫緊のポイントは、11/9安値(101.18円、上図A)と12/15高値(118.65円、上図B)を結んだフィボナッチ38.2%押し水準である111.98円キープできるのか、それとも下抜けブレークするのかということ。

当該ラインをキープした場合は、足もとでは凡そ112.00-115.30円(≒フィボナッチ38.2%ライン-基準線)をコアレンジとするレンジプレイがワークする展開となりそうです。

一方で、当該ライン(=フィボナッチ38.2%ライン:111.98円)を下抜けブレークした場合は、次の重要数値であるフィボナッチ50.0%ライン(=半値押し:109.92円)までの下押しを考慮した方がよさそうです。

足もとの米ドル/円の動意は、日本時間3日22時30分発表の米1月雇用統計はもとより、トランプ大統領の発言(多くはtwitter)となり得るため、大いに要注目です。
<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/米ドル、上抜けブレークの可能性も
以下、ユーロ/米ドルの日足・一目均衡表+フィボナッチ+DMIをご覧ください。

上記日足・一目均衡表では、1) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)の中に入り込んでいること、2) 遅行スパンの先端部分がローソク足の上方にブレークしていること、そして3) 転換線が基準線の上方に位置していることから、上昇トレンド相場を示唆しています。

一方で、DMI(方向性指数)において、-DIが+DIが交差するような形となっていること、さらにはADXが低い位置にあること(上図青丸印)から、トレンド形成の準備段階と捉えることが可能です。

喫緊のポイントは、11/9高値(1.1297ドル、上図A)と1/3安値(1.0338ドル、上図B)を結んだフィボナッチ50.0%戻し水準である1.0817ドルキープできるのか、それとも上抜けブレークするのかということ。

当該ラインをキープした場合は、足もとでは凡そ1.0704-1.0817ドル(≒フィボナッチ38.2%ライン-フィボナッチ50.0%ライン)をコアレンジとするレンジプレイがワークする展開となりそうです。

一方で、当該ライン(=フィボナッチ50.0%ライン:1.0817ドル)を上抜けブレークした場合は、次の重要数値であるフィボナッチ61.8%ラインである1.0931ドルまでの上昇を考慮した方がよさそうです。

足もとのユーロ/米ドルは、米ドル/円同様、日本時間3日22時30分発表の米1月雇用統計結果がその動意となりそうです。<津田>


【英ポンド】 英ポンド/円、上値の重い展開が継続しそう
以下、英ポンド/円の週足・一目均衡表+パラボリック+DMIをご覧ください。

上記週足チャートでは、1) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)の下方に位置していること、2) 遅行スパンの先端部分がローソク足と絡み合う状態となっていること、3) 転換線が基準線の上方に位置していること、そして4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方で点灯していることから、上方硬直性相場の継続を示唆しています。

また、DMI(方向性指数)において-DIと+DIがクロスし、その後-DI>+DIとなっていることから、マイナスの方向性優位、つまり下降トレンド相場の初期段階を示唆しています。(上図青丸印)

ADXが高い位置から低い位置へと推移しつつあること、また上述の通り遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっていることなどを総合すると、英ポンド/円・週足レベルでは、上方硬直性を伴うレンジ相場が継続する展開となりそうです。

足もとでは、21日ボリンジャーバンド・-2σラインである138.24円を割り込んだ場合は、下抜けトリガーとなる可能性もありそうです。<津田>




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