市場調査部レポート

2017/01/06 13:382017年の相場展望

【相場環境】2017年の世界経済見通しとリスクシナリオ
【全体観】“曰く付き”の1月相場とシーズナリー・サイクルについて
【豪ドル】RBAの金融政策に注目。中国や資源価格に注意
【NZドル】RBNZに利上げ観測。上昇基調を強める可能性も
【加ドル】原油価格や米国経済が加ドルを下支えするか
【トルコリラ】憲法改正の行方に注目。トルコリラに大きな影響!?
【南アフリカランド】南アフリカの政局や格付けに注意


【相場環境】 2017年の世界経済見通しとリスクシナリオ

2017年の世界経済は拡大基調がやや強まるものとみられます(IMF世界経済見通し2016/10など)。中国の減速には歯止めがかかったようであり(少なくともモノの経済)、米国は2016年末にかけてペースアップした模様です。原油をはじめ資源価格の反発は、今後も新興国・資源国にとってプラスに働きそうです。他方、英国のEU離脱交渉開始や欧州主要国での政治不安が、それら国・地域の景気にブレーキをかける可能性があります。

米国では、1月20日にトランプ政権が始動します。トランプ大統領は、所得減税やインフラ投資など選挙公約の経済政策、いわゆるトランプノミクスを実現しようとするでしょう。ただし、同じ共和党が支配する議会であっても、公約通りに実現することは困難であり、穏健な内容となって日の目を見るのではないでしょうか。

トランプ政権と新しい議会の関係をみる上で注目されるのが、閣僚の議会(上院)承認であり、予算編成でしょう。従来の常識からみれば型破りな閣僚人事に対して、承認を拒む議員が共和党からも出る可能性は否定できません。

2月の予算教書発表を受けて、10月に始まる2018年度の予算編成が開始されます。3月のデットシーリング(債務上限)の引き上げや、2017年度残りの予算措置(現行の暫定予算は4月28日まで)など重要イベントも控えています。政府と議会との予算や減税の交渉がスムーズに決着するか、それとも新年度開始以降にずれ込むのか。後者の可能性にも留意する必要はありそうです。

新大統領と議会の「蜜月」とされる最初の100日間(4月末まで)に、トランプ政権はどれだけのことを成し遂げられるでしょうか。

そうしたなか、FRBは利上げを継続するでしょう。トランプノミクスが一部でも実現に向かうなら、インフレ懸念の高まりを通じて利上げペースが速まり、米ドルのサポート材料となりそうです。そうでなくても、米経済はすでに完全雇用に近いとみられ、一段の雇用改善は賃金上昇圧力につながり易い状況です。そのため、FRBが速いペースで政策金利の正常化を進めようとする可能性も否定できません。

ただ一方で、財政赤字増大の懸念から長期金利が過度に上昇すれば、株価の下落を招き、また景気にブレーキをかけることで、FRBの利上げペースは鈍るかもしれません。また、中国や日本との間で通商摩擦が激化するならば、米国への資金流入の停滞を通じて、米ドルに下落圧力が加わる可能性が出てきます。

日本では、日銀の「長短金利操作付き量的質的金融緩和」がいつまで続くのか、続けることができるのかが注目されます。世界的に長期金利の上昇圧力が高まるなかで、日本だけ0%近辺に維持する必要があるのか、それともある程度の金利上昇(変動)は容認されるでしょうか。また、速やかな達成を目指してきた「2%の物価」を中期目標に変更する可能性もありそうです。市場金利上昇の容認や、物価目標の中期化は、金融緩和の後退とみなされかねず、一時的にせよ円高要因となるかもしれません。

欧州では政治の不安定化が進みそうです。重要な国政選挙が、オランダ(3月)、フランス(4-6月)、ドイツ(8-10月?)で予定されています。また、イタリアでも2017年の早い段階で総選挙が実施されるかもしれません。いずれも、反ユーロ、反EUを唱えるポピュリスト政党が躍進する可能性があり、ユーロ崩壊の危機が意識されるかもしれません。イタリアの銀行の不良債権問題は足元では金融危機に発展するようにはみえませんが、思わぬ形で信用不安が高まる可能性もあり、注意は怠れません。日銀同様にECBも国債購入の限界が近いとの指摘もありますが、かかる状況下では金融緩和を続ける可能性が高そうです。

英国は、いよいよEUとの離脱交渉を開始します。経済の便益を優先すれば、英国はEUの単一市場への残留を選択するかもしれませんが、交換条件として移民の受け入れを迫られるでしょう。その場合、EU離脱の悪影響は小さいかもしれません。逆に、EUから距離を置くほど、英国経済への打撃は大きくなりそうです。とりわけ後者のケースにおいて、スコットランド独立の機運が再燃するかもしれません。

以上のメインシナリオの下では、金融政策の方向性の差を基にして、米ドル高・円安・ユーロ安が基本軸となりそうです。英ポンドやトルコリラは固有の要因により下向き圧力が加わりやすく、資源国通貨は対ドルでは軟調、対円では堅調な展開が想定されます。

そして、以下のようなリスクシナリオに十分な注意が必要でしょう。

1つめは、資源価格の下落です。産油国の減産協定が破られれば、あるいは米国のシェール産業が大幅な増産に踏み切れば、原油価格に再び下落圧力が加わるでしょう。中国は2016年に景気拡張的な経済政策をとった形跡があります。しかし、2017年には秋に全人代を控えて、経済成長目標の下方修正とともに、不動産投資など膨張した信用の収縮に向けて舵を切る可能性があります。中国景気が失速するようであれば、資源価格は下落しそうです。2016年の鉄鉱石価格の上昇は中国の輸入増が一因でしたが、それが実需ではなく投資(投機?)の結果だったとすれば、価格の下落に拍車がかかるかもしれません。

2つめは、人民元安です。中国景気が失速するリスクに加えて、人民元が大きく下落するリスクがあります。米国の利上げなどを背景に、すでに中国から資金が流出しており、人民元に下落圧力が加わっています。中国当局は人民元買い介入を行ってきましたが、外貨準備(や米国債保有額)が大幅に減少しており、どこかで人民元安を容認するかもしれません。それは米中通商摩擦を激化させる可能性があります。

もっとも、最大のリスクはトランプ政権でしょう。トランプ大統領が選挙戦中の過激な主張を強引に実現しようとすれば、国内の分断や諸外国との軋轢が一段と鮮明になるでしょう。現在の世界経済・金融は密接につながっており、また、外交は敵と味方といった単純な対立軸ではなく極度に複雑化しています。トランプ政権がそうしたことを理解していなければ、思わぬところで思わぬ影響が出るかもしれません。

さらに、メインシナリオでも指摘した、米財政赤字の増大や長期金利の上昇、欧州における政治不安なども、度を超せば急激なリスクオフを招きかねず、金融市場の反応も上述のものとは大きく異なってくる可能性があるでしょう。その他にも、中東、東アジア、ロシアなどを含め地政学的なリスク要因が散見され、大きなショックが起こる可能性にも十分に留意する必要はありそうです。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観】 “曰く付き”の1月相場とシーズナリー・サイクルについて

今回の【全体観】については、2017年第一回目ということもあり、やや長めのスパン(1-4月)を意識した、豪ドル/円のシーズナリー・サイクル(季節循環性)について言及したいと思います。

さて、昨今のマーケットにおいて、市場参加者の“共通認識”となりつつある・・・【1月安】

昨年(2016年)1月のマーケットにおいても、新年早々1月4日と同7日に上海株式市場のサーキットブレーカー制度が適用された、いわゆる『チャイナ・ショック』があったことは記憶に新しいところ。

その前年の2015年1月には『ギリシャ危機』が、またその前の2014年1月には『アルゼンチン・ショック』からの『新興国危機』があり、世界的なリスクオフ(リスク回避)フローが発生したという事例もあり、いわば【1月相場】は“曰く付き(いわくつき)”と捉えてみていいのかもしれません。

かつては『1月効果』(January effect)と呼ばれ、12月中に起こりやすい『タックス・ロス・セリング』※がひと段落した1月相場は上昇しやすいというアノマリーがマーケットには存在しましたが、ここもとのマーケットではその流れは変化していると言わざるを得ません。(※ 節税目的で、含み損が出ている株式等を売却して実損を出すこと。毎年12月半ばにかけて発生しやすいとも。)

そんな中、直近10年間(2007-2016年)の1月における動向について具体的に検証していきたいと思います。以下、主要銘柄(日経225、NYダウ、米ドル/円、豪ドル/円、NZドル/円)の1月 陽線・陰線表をご覧ください。


※陽線:〇、陰線:×

上記表からも分かる通り、過去10年間(2007-2016年)における1月の月足・陰線確率は、日経225・NYダウ・米ドル/円では.600、NZドル/円で.700、豪ドル/円に至っては.800の確率で月足・陰線となっており、つまり1月相場は下げやすいというのが過去の事例からも見て取れます。

直近3年の動向に絞ってみると、その傾向はより顕著となっており、2014年以降で1月時に月足・陽線となったのは、2015年の日経225と、昨年の米ドル/円のみとなっており、その他の1月はすべて月足・陰線、つまり【1月安】となっています。(直近3年間をベースとすると、1月陰線確率は.866。)

これらをもとに仮説を立ててみると、以下のようになります。

<仮説1>
過去10年間(2007-2016)のデータでは、1月の豪ドル/円は下落しやすい。※(※1月陰線確率=0.800)

また、この【1月安】の傾向を別の視点から検証するために、過去20年(1997-2016)におけるNYダウ/日経平均株価の月別平均騰落率を見てみたいと思います。以下をご覧ください。



上記表から分かることは、日米株価とも傾向として8月と9月に下げやすく、その後10月はマチマチながら、11-12月にかけては「掉尾の一振」(とうびのいっしん)や「サンタクロース・ラリー」もあり上昇しやすいという傾向が見て取れます。

その後、3-4月にかけては日米株価とも上昇傾向があり、4月はNYダウが年間における月別平均上昇率が一番高い月となっています。(+2.67%)

そんな中、その足もとで注目すべきは、やはり1月相場の動向。過去20年のデータでは日米ともに1月は下がりやすい月となっており、ある程度の下押し→底練りを形成した後に3-4月にかけて上昇しやすいという傾向・パターンが見られます

つまり、シーズナリー・サイクルの観点からは、1月に下押ししたところを(月内に)積極的に買い拾い、その後の3-4月の時点で売り逃げるというパターンをルーティンとして続けていくことが、リスク資産の運用において相対的に高い勝率をあげるためのポイントと言えるのかもしれません。

そうなると、リスク選好の一対象でもあり、また株価との相関性が比較的高い資源国通貨・豪ドル/円についても、同じようなシーズナリー・サイクルが当てはまると捉えていいのかもしれません。以下、仮説をご確認ください。

<仮説2>
株価との相関性が比較的高い資源国通貨・豪ドル/円は、1月の下押しを買い、その後4月に売るとそのパフォーマンスが上がりやすくなる。

そこで、上記仮説を検証するために、豪ドル/円の過去10年(2007-2016年)における期間中、1月の安値で買い、その後4月の終値で売った場合のパフォーマンスについて見ていきたいと思います。以下、豪ドル/円の「1月安値買い、4月終値売り」の勝敗表についてご確認ください。


※勝ち:〇、負け:×
※単位:円

上記勝敗表より、過去10年(2007-2016年)の期間において、豪ドル/円の1月安値を買い、その後4月終値で売った場合の勝敗は9勝1敗、勝率は.900という結果に。

ここでの問題は「1月安値」ですが、当然これはあくまで過去10年における期間での仮説が前提となっていること、また、1月中に豪ドル/円の買いポジションを保有したものの、維持率に余裕のない場合はロスカット(東京15時LC or自動LC)の憂き目にあってしまう可能性についても十分注意する必要があります。

具体的な戦術アイデアは以下の通りです。

1. 維持率に余裕を持たせることを主目的に、実質レバレッジ2-3倍前後をベンチマークとする。
2. 不測の事態に備え、ロスカットの設定や、キャッシュポジション(現金残高)の向上を心掛ける。
3. 1.2を確認後、下押しを買い拾う<買い・トラップトレード>(※)を設定する。(※トラップIFDも一案)

繰り返しながら、これらはあくまで期間を特定した中でのパターン分析に基づく仮説であるため、絶対の法則ではないこと、また、「押し目待ちに押し目無し」の格言通り、そのまま上方向へ進んでしまう“逸失リスク”も考慮する必要があります。投資アイデアの一例としてご参考にしていただければ幸いです。

以下、参考までに、豪ドル/円・月足チャートをご確認ください。



詳細につきましては、1/5(木)のM2TV(FXマーケットスクウェア)『シーズナリー・サイクルを利用した豪ドル/円の投資戦略』も合わせてご確認いただくよう、お願いいたします。(※動画のため音声にはご注意ください。)<チーフアナリスト 津田隆光>


【豪ドル】 RBAの金融政策に注目。中国や資源価格に注意

2017年の豪ドルは、RBA(豪中銀)の金融政策が主な材料になりそうです。2016年のRBAは、豪州の低インフレを背景に、5月と8月にそれぞれ0.25%の利下げを実施しました。その後は、政策金利の据え置きを続けています(現在は過去最低の1.50%)。

RBAは、先行きの金融政策について政策会合時の声明等でガイダンスを示していません。ただ、市場では政策金利は当面、据え置かれるとの見方が有力です。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、RBAが2017年7月まで政策金利を据え置く確率が80.2%、利下げの確率が10.3%、利上げの確率が9.5%織り込まれています(2017年1月5日時点)。

豪州のインフレ率はRBAのインフレ目標(+2から+3%)を下回る状態が続いています。2016年7-9月期は、CPIが前年比+1.3%、基調インフレ率が同+1.5%でした。ただ、原油安の影響が剥落するとともに、インフレ率は今後、徐々に上昇率を高めていくと考えられます。雇用など経済指標の改善が続けば、2017年後半にも利上げするとの観測も浮上するかもしれません。その場合、豪ドルを押し上げる要因になる可能性があります。

ただし、中国経済や資源価格の動向に注意が必要です。国外への資金流出懸念を背景に、人民元は対米ドルで下落基調にあり、中国経済の先行き懸念も根強くあります。豪州最大の輸出先である中国のネガティブな材料が出てくる、あるいは鉄鉱石など資源価格が下落基調を強める場合、豪ドルには下押し圧力がかかる可能性があります。<アナリスト 八代和也>


【NZドル】 RBNZに利上げ観測。上昇基調を強める可能性も

2017年のNZドルは、RBNZ(NZ中銀)の金融政策がポイントになりそうです。RBNZは2016年11月、2015年以降で7回目となる利下げを実施ました。ただし、その時の声明では、追加利下げに含みを残しながらも、「われわれの予測と想定は、今回の緩和(=利下げ)を含む政策設定によってインフレ率が目標レンジの中央付近で安定するのに十分な力強い成長が実現できると見込んでいる」とし、利下げが2016年11月で打ち止めになる可能性を示しました。

NZの環境をみると、比較的良好です。乳製品国際価格の指標であるGDT価格指数は、足もとで2014年6月以来の高値圏にあります。オセアニアの天候不順や、EU(欧州連合)が生乳の減産政策を実施(生乳生産量を減らした酪農家に補助金を支払う)したことで、乳製品の供給が減少するとの観測が、乳製品価格の押し上げにつながっているようです。

RBNZの2016年の利下げは、国内のインフレ圧力の弱さが主因でした。NZの2016年7-9月期のCPI(消費者物価指数)上昇率は前年比+0.4%と、RBNZのインフレ目標(+1から+3%)を下回りました。ただ、RBNZは原油安の影響が剥落するとともに、CPI上昇率は2016年10-12月期に+1.1%と、目標範囲内に戻るとの見通しを示しています。

市場では、RBNZが2017年後半にも利上げに転換するとの観測が浮上しています。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、RBNZが2017年9月まで利上げを行う確率が58.9%、政策金利を据え置く確率が41.0%、利上げの確率が0.2%織り込まれています(2017年1月5日時点)。10-12月期のCPIがRBNZの目標範囲内に戻れば、市場ではRBNZの利上げ観測が一段と強まる可能性があります。10-12月期CPIは、2017年1月26日に発表されます。

乳製品価格の上昇や、RBNZの利上げ観測が強まる(実際にRBNZが利上げに踏み切る)ことは、NZドルにとってプラス材料と考えられます。米FRBが2017年に利上げを継続する可能性が高い一方、日銀は金融緩和環境を維持するとみられます。NZドルは対米ドルよりも、対円の方が上昇しやすいかもしれません。<八代>


【加ドル】 原油価格や米国経済が加ドルを下支えするか

加ドルの特徴として、原油価格の影響を比較的受けやすいことが挙げられます。2017年の加ドルは、資源価格の動向に注目する必要がありそうです。

OPEC(石油輸出国機構)加盟国と非加盟国は2016年12月、2017年1月から6か月間、協調して原油を減産することで合意しました。減産規模はOPEC加盟国全体で日量約120万バレル、非加盟国全体で約60万バレル。減産規模が守られるのかどうか不透明感が残るものの、それでも産油国が減産で合意したことは、原油価格を下支えしそうです。

また、カナダの輸出先の7割超を占める米国経済が堅調なことも、加ドルにとってプラスと考えられます。

2017年の加ドルは堅調に推移しそうです。クロス円である加ドル/円は、米ドル/円の動向に注意する必要があるものの、底堅く推移しそうです。<八代>


*原油価格・・・米WTI原油先物
出所:Bloombergより作成


【トルコリラ】 憲法改正の行方に注目。トルコリラに大きな影響!?

2017年のトルコリラは、トルコの政治動向、とりわけ憲法改正の行方が最大の材料になりそうです。

トルコの与党AKP(公正発展党)は2016年12月10日、大統領の権限拡大を目的とする憲法改正案を議会に提出。憲法改正案には、「首相を廃止して行政権を大統領に集中させる」「政令を発令する権限、および副大統領や閣僚の指名権を大統領に与える」などが盛り込まれています。

憲法の改正には、議会定数(550)の3分の2(367)以上の議員が賛成して大統領が承認する、あるいは5分の3にあたる330以上の賛成で可能となる国民投票で過半数の支持を得る必要があります。AKPの議席は330に届きませんが、野党のMHP(民族主義者行動党)が協力する姿勢を示しています。両党合わせても367に足りないものの、330を上回ることから、国民投票が実施される可能性が高いとみられます。

議会が憲法改正案を承認(330以上367未満の場合)後、60日以内に国民投票が実施されます。AKPは2017年3月から5月の国民投票実施を計画しているようです。

市場は、憲法改正によってエルドアン大統領が独裁色を一段と強めることを懸念しており、それがトルコリラへの下落圧力となっています。国民投票で結果が判明するまでは、トルコリラには下落圧力が加わりやすいとみられます。国民投票で憲法改正案が反対多数となれば、トルコリラが反発する可能性がある一方、賛成多数となった場合、トルコリラ売りが一段と進むことが考えられます。トルコリラは引き続き注意が必要です。

現時点で、トルコリラに歯止めをかける最も効果的な方法として、TCMB(トルコ中銀)が大幅な利上げを行うことが考えられます。

TCMB(トルコ中銀)は2014年1月に、当時、対米ドルで過去最安値を更新していたトルコリラ防衛のために緊急利上げを実施。1週間物レポ金利を「4.50%→10.00%(利上げ幅5.50%)」、翌日物貸出金利を「7.75%→12.00%(同4.25%)」、翌日物借入金利を「3.50%→8.00%(同4.50%)」へとそれぞれ大幅に引き上げました。TCMBによる利上げを受けて、トルコリラ安は一服。トルコリラはその後、6月にかけて対ドルや対円で緩やかに上昇しました。

TCMBは2016年11月に利上げを行いましたが、トルコリラ安に歯止めはかかりませんでした。この時の利上げ幅は、1週間物レポ金利が0.50%、翌日物貸出金利が0.25%。2014年1月と比べてかなり小幅であり、翌日物借入金利にいたっては、据え置きました。トルコリラ安に歯止めがかからなかったのは、利上げ幅が「不十分」と市場が受け止めたためと考えられます。<八代>


【南アフリカランド】 南アフリカの政局や格付けに注意

南アフリカランド/円は2017年に入り、約1年1か月ぶりの高値をつけました。格付け会社のS&Pが南アフリカの格付けを据え置いた(=格下げを回避)ことや、原油価格の反発が、南アフリカランドの支援材料となりました。

2017年の南アフリカランドは、原油などの資源価格の影響を受けやすいとみられます。資源価格が堅調に推移すれば、南アフリカランドは底堅い展開になる可能性があります。

一方で、南アフリカランドにとってリスク要因としては、南アフリカの政局や格付けが挙げられます2016年はゴーダン財務相が逮捕される、あるいは財務相が交代するとの懸念から、南アフリカランドが売られる場面が何度かありました。ズマ大統領の求心力が低下しているとの指摘もあり、政治の不透明感が高まるかもしれません。また、経済の低迷を背景に、市場では南アフリカ国債の格下げ懸念が根強くあります。政局や格付け絡みでネガティブな材料が出てくれば、南アフリカランドに下落圧力が加わる可能性があります。

SARB(南アフリカ中銀)の政策金利は当面、据え置かれそうです。南アフリカの2016年11月のCPI(消費者物価指数)は前年比+6.6%と、SARBのインフレ目標(+3から+6%)を上回りました。ただし、SARBはCPI上昇率が今後鈍化するとの見通しを示しています。対米ドルで南アフリカランド安が加速するなどしてインフレ見通しが悪化しなければ、SARBが利上げを行う可能性は低いと考えられます。<八代>




※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

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