市場調査部レポート

2016/12/16 13:10米ドル/円、120円台到達は時間の問題?

【相場環境】米FRBは利上げをペースアップ!? 日銀の反応は?
【全体観・米ドル】米ドル/円、120円台到達は時間の問題?
【ユーロ】ユーロ/米ドル、弱気基調が継続しそう
【豪ドル】豪雇用統計がプラス材料も、対米ドルでは上値が重い展開か
【NZドル】20日の乳製品オークションや22日のGDPに注目!
【トルコリラ】20日のTCMB会合に注目!追加利上げに踏み切るか!?


【相場環境】 米FRBは利上げをペースアップ!? 日銀の反応は?

12月14日、米FOMCは0.25%の利上げ(0.25-0.50%⇒0.50-0.75%)を決定しました。リーマン・ショック後では昨年12月に次ぐ2度目の利上げとなりました。

声明文では、利上げの根拠は「労働市場とインフレの実際や見通しに鑑みて」でした。失業率が11月に4.6%とほぼ完全雇用(さらに低下すると賃金インフレになる水準)を達成していること、食料とエネルギーを除くPCE(個人消費支出)コアが10月に前年比+1.7%と、目標の2%に届いていないものの、ジリジリと接近していることを反映したのでしょう。今後については「FFレート(政策金利)の緩やかな引き上げだけが正当化されるだろう」として、従来の見解を繰り返しました。

FOMCの結果を受けて、市場金利と米ドルが上昇、株価が下落しました。市場が反応したのは、FOMCの経済見通しのなかで、政策金利予想、いわゆる「ドット」が来年3回の利上げを示唆したからでした。従来の予想(直近は9月)は2回でした。

もっとも、「ドット」はFOMC参加者17人の個人的見解です。また、2017年の「利上げ3回」は中央値であり(6人が予想)、1回から6回と予想はバラバラです。ただし、利上げに積極的なタカ派に傾いた参加者がやや多かったということでしょう。



15日時点のOIS(翌日物金利スワップ)によれば、市場は来年3回以上の利上げを47.3%の確率で織り込んでいます。言い換えれば、メインシナリオにはなっていないということです。これまでは、「ドット」が多めの利上げを予想する一方で、市場は少なめの利上げを予想し、結果的には市場が正しかったケースが続いていましたが、来年についてはどうなるのか。今後の雇用や物価などの経済情勢、「トランプノミクス」の行方などが注目されるところです。

なお、FOMC後の会見で、参加者の政策金利見通しが9月に比べてやや引き上げられたことに関連して、イエレン議長は「財政政策の変化を見通しに盛り込んだ参加者も数人はいた」と述べ、これとは別に「完全雇用を達成するのに、財政刺激が必要でないことは明らかだ」とも語りました。それらはトランプ次期大統領が主張している減税やインフラ投資に言及したものとみられます。そうした財政面からの景気刺激は必要ないし、実現するならば利上げのペースが早まる可能性もあるというメッセージでしょう。

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来週は、19-20日に日銀の金融政策決定会合が開催されます。「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を9月に導入したばかりであり、現状維持が決定される可能性が高そうです。

ただ、一部では「景気の総合判断引き上げ議論の可能性」、「日銀、長期金利ターゲットの引き上げも」との報道もみられました。米大統領選のトランプ氏勝利やFRBの利上げを受けて米国主導で世界の長期金利が上昇圧力を受けるなかで、日本の長期金利をゼロ%近辺に維持するとの目標が妥当かどうか、改めて検討されるかもしれません。

日米長期金利差の拡大が米ドル高円安を後押ししてきただけに、「ゼロ%近辺に維持」との目標が修正され、日本の長期金利の上昇が容認されることになれば、一時的にせよ円高要因となるかもしれません。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 米ドル/円、120円台到達は時間の問題?

[米ドル/円、来週の予想レンジ]
○米ドル/円:114.00-120.00円

【相場環境】にもある通り、14日の米FOMC会合において、昨年12月以来1年ぶりとなる0.25%の利上げが決定されました。

同会合でのサプライズとなり得たのは、来年の利上げペース(回数)。0.25%の利上げ予想回数が、従来(9月時点)の2回から3回へと上方修正されたことが「想定外」と受け止められ、米ドル/円は今年2月以来の高値となる118.65円まで上昇しています。(15日NYクローズ時点)

米ドル/円相場の動きを、週足チャート+フィボナッチリトレースメントで見てみると、昨年6月時高値(125.86円、下図A)と今年6月時安値(98.76円、下図B)を結んだ、フィボナッチ61.8%ライン(115.51円、下図C)を明確に上抜けしていることが分かります。



同ライン上抜け後は、さしたる抵抗帯となるメルクマールは見当たらず、いわば“無抵抗真空地帯”へ突入したような形とも言えます。

あえて次のメドを設定するならば、今年1月時に付けた高値である121.66円(上図D)。市場参加者の心理的メドを勘案してみると、その手前である「120円」と捉えてもよく、その到達は現在の相場環境を見る限り「時間の問題」となりそうです。

そんな中、現在のような一本調子の強気基調が続く米ドル/円相場を見るにあたっては、以下の相場猛者たちの箴言(しんげん)やルールに耳を傾けた方が無難なのかもしれません。

・『筋の通らない、馬鹿げたマーケットは予想以上に長く続くものだ。下手に逆らえば、あなたの口座残高などすぐに無くなってしまう。』
・『マーケットと言い争うな。』
・『トレード方法はシンプルに。複雑な方法は、自分で自分を混乱させることになる。』

(“コモディティ王”デニス・ガートマン「22のトレード・ルール」)

・『あらゆる矛盾は一度極限まで行く。』
・『トレンド・イズ・フレンド』

(“稀代の投資家”“イングランド銀行を潰した男”ジョージ・ソロス)

本邦相場格言でも「買いにくい相場は高い」「押し目待ちに押し目なし」といった有名な言葉もある中、相場の流れに素直に乗ること、また下手な値頃感は持たないことが重要と言われます。「言うは易し、行うは難し」の典型例かもしれませんが、ぜひご参考にしていただければ幸いです。

そんな中、足もとの材料で注目しているのが・・・12/19に行われる米大統領選挙・選挙人投票。この期に及んで「何をいまさら?」と思われる方も多いかと思います。

先の米大統領選挙(11/8)はあくまで「選挙人」を選ぶ選挙であって、19日の選挙人投票の結果を受けて、そこで正式決定となります。(最終的な当選者の認証は、1/6の米連邦議会合同会議で決まります。)

通常時では、あくまで形式的な位置付けである選挙人投票であるものの、一般投票ではクリントン氏の方が得票多数であったこともあり、仮に37人の『不誠実な選挙人』、つまり造反者が出れば、先の結果が覆る可能性も。(連邦法および合衆国憲法上では「自由」。ただし、州によっては一部罰則規定あり。)

とはいえ、この『不誠実な選挙人』は1948年以降9人存在するという事実があるものの、かつて結果が覆るような事例は一度もないことに加え、過去70年弱の歴史において9人“しか”でなかった『不誠実な選挙人』が、今回一挙に37人出る可能性は相当低いと言わざるを得ません。

ただし、依然として全米各地(特にクリントン支持者の多いカリフォルニア州やNY等の大都市圏)で「反トランプ」デモが繰り返されていること、また“ハネムーン”期間が早くもさめ、「本当にトランプ氏に国政を任せていいのか」と遅疑逡巡とする選挙人がいたとしても、それは不思議ではありません。

仮に『謀反』とも言えるような行動に出た場合は、世界の政治・経済は灰神楽が立つような状態となることは必至。その発生確率は必ずしも高くはないものの、今年を振り返ってみても、6月の“まさかの”英国のEU離脱決定(Brexit)や、11月の“まさかの”トランプ氏勝利等、“まさかの坂”が現実となり、過去の通例や予想・統計が役に立たなかったことは皆さんの記憶に新しいことと思います。

あくまで“ブラックスワンイベント”※として、頭の片隅に入れておいた方がいいのかもしれません。(※ 事前に殆ど予想できず、起きた時の衝撃度が大きい事象のこと)<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/米ドル、弱気基調が継続しそう

[ユーロ/円・ユーロ/米ドル、来週の予想レンジ
○ユーロ/円:121.00-125.00円
○ユーロ/米ドル:1.0300-1.0600米ドル

以下、ユーロ/米ドル・月足・スパンモデル®+ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。



上記チャート(上部)では、1) 21MA(21カ月移動平均線)がやや右肩下がりとなっていること、2) 遅行スパン(先端部分)がローソク足の下方に位置していること、3) ローソク足の上方に分厚い赤い雲(=抵抗帯)があること、そして4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方で点灯していることから、ユーロ/米ドルの月足チャートは上方硬直性相場が継続中と見ることができます。

また、トレンド系順張り指標であるDMI(方向性指数)を見ると(チャート下部)、現状マイナスの方向性を示す-DIがプラスの方向性を示す+DIを上抜いており(上図青丸印)、かつローソク足が-2σラインを下抜けています(上図青四角印)。

これはかつて、2014年9月時にも同様のテクニカルシグナルが発生しており、その後大幅な下落トレンドが発生していることが分かります。

月足チャートレベルでこのようなシグナルが出ているという事実を深く認識し、今後しばらくはユーロ/米ドルの弱気基調が継続すると捉えた方がよさそうです。<津田>


【豪ドル】 豪雇用統計がプラス材料も、対米ドルでは上値が重い展開か

豪州の11月雇用統計が12月15日に発表され、以下の結果になりました。
 ・失業率:5.7%(市場予想:5.6%、前回:5.6%)
 ・労働参加率:64.6%(市場予想:64.5%、前回:64.4%)
 ・雇用者数(前月比):+3.91万人(市場予想:+1.75万人、前回;+1.52万人)
 ・フルタイム雇用者数(前月比):+3.93万人(市場予想なし、前回:+4.57万人)
 ・パートタイム雇用者数(前月比):-0.02万人(市場予想なし、前回:-3.05万人)

失業率は市場予想に反して10月の5.6%から悪化しました。一方で、雇用者数は前月比3.91万人増と、市場予想の1.75万人増を上回りました。月ごとのブレが大きい雇用者数の傾向を把握するために、6か月移動平均をみると、昨年11月の+3.08万人をピークに鈍化傾向にありましたが、直近3か月は増加傾向にあります。加えて、雇用者数の内訳をみると、今回の増加がパートタイム雇用者数ではなく、フルタイム雇用者数によるものであることが確認できます。そのことは、労働市場にとって明るい材料と考えられます。RBA(豪中銀)は雇用の内訳に度々言及。12月6日の会合時の声明では、「パートタイム雇用は力強く伸びているが、全般的な雇用の伸びが鈍化している」と指摘しました。

11月の雇用統計は、豪ドルにとってプラス材料になりそうです。ただし、12月14日のFOMCを受けて、米FRBの利上げ加速観測が一段と高まっており、米ドル高が進行する可能性があります。その場合、豪ドル/米ドルは上値が重い展開が予想されます。一方で、豪ドル/円は米ドル/円が堅調に推移すれば、比較的底堅い展開が予想されます。<アナリスト 八代和也>


出所:Bloombergより作成


【NZドル】 20日の乳製品オークションや22日のGDPに注目!

NZドルの材料をみると、比較的良好です。NZ最大の輸出品である乳製品の価格(GDT価格指数)は2年半ぶりの高値水準にあり、RBNZ(NZ中銀)は11月で利下げが打ち止めとなる可能性を示しています。市場では、RBNZは来年利上げを行うとの見方も浮上。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では12月15日時点で、RBNZが来年6月までに利上げを行う確率が30.6%織り込まれています(据え置きが68.8%、利下げは0.6%)。

ただし、市場の関心は現在、米FRBの金融政策に向きがちで、こうしたNZドルのプラス材料に反応しにくい地合いです。12月14日のFOMCを受けて、米FRBの利上げ加速観測が一段と高まっていることを考えると、NZドル/米ドルは上値が重い展開になる可能性があります。

12月20日にGDT(乳製品電子オークション)が開催され、21日にNZの11月貿易収支22日には同7-9月期GDPが発表されます。GDTやGDPなどが堅調な結果になれば、NZドルを下支えしそうです。<八代>


【トルコリラ】 20日のTCMB会合に注目!追加利上げに踏み切るか!?

トルコの与党AKPは12月10日、憲法改正案を議会に提出しました。現行憲法では象徴的な意味合いが強い大統領の権限を強化することが憲法改正案の柱となっています。

<憲法改正案の主な内容>
 ・首相を廃止し、行政権を大統領に集中させる
 ・大統領を補佐する副大統領を新たに置く
 ・政令を発令する権限、および副大統領や閣僚、上級国家公務員の任命権を大統領に与える
 ・非常事態宣言の発令権を大統領に与える
 ・大統領は政党に所属することができ、役職の兼務も可能とする
 ・国会議員の定数を550から600へ拡大
 ・国会議員の被選挙権を25歳以上から18歳以上に引き下げる
 (出所:各種報道より)

憲法改正には、国会議員の367人以上が賛成して大統領が承認する、あるいは330人以上の賛成で可能となる国民投票で過半数の賛成を得る必要があります。与党AKP(公正発展党)の議会における議席は317。国民投票の実施に必要な330議席に足りませんが、野党のMHP(民族主義者行動党、40議席)がAKPに協力する姿勢を示しており、憲法改正の賛否を問う国民投票が実施される可能性大です。

国民投票は来年春にも実施される可能性があります。ジャニクリ副首相は9日、AKPは国民投票を来年3月から5月の実施を計画していることを明らかにしました。

12日に発表されたトルコの7-9月期GDPは前年比1.8%減でした。マイナス成長を記録したのは、2009年7-9月期以来、7年ぶり。7月のクーデター未遂事件の影響で、GDPの7割弱を占める個人消費が大きく落ち込んだ(前年比3.2%減)ことが主因でした。

憲法改正の実現に向けて前進し、GDPでトルコ経済の低迷が浮き彫りとなったことで、トルコリラには引き続き下落圧力が加わりやすいとみられます。

20日にTCMB(トルコ中銀)が政策金利を発表します。前回11月の会合では、トルコリラ安がインフレ圧力を強める懸念があるとして、利上げを決定。利上げは2014年1月以来、2年10か月ぶりでした。市場では、トルコリラ安に歯止めをかけるには最終的に大幅な利上げが必要との見方が根強くあります。その中で、TCMBが11月に続いて利上げに踏み切るのかどうかに注目です。前回会合以降、トルコリラ安が対米ドルで一段と進行しました。利上げは低迷する経済をさらに冷え込ませる恐れがあるものの、TCMBは追加利上げに踏み切る可能性の方が高そうです。ただし、利上げをしたとしても幅が不十分との見方が広がれば、トルコリラが売られる可能性もあります。3つの政策金利がすべて据え置かれた場合、トルコリラ売りが加速することも考えられるため、注意が必要です。<八代>




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