市場調査部レポート

2016/11/25 15:06【マンスリー・アウトルック(2016/12)】長期金利上昇と日米欧金融政策

― 2016年12月の為替相場展望 ― 
長期金利上昇と日米欧金融政策


《相場環境》

米国に主導された世界的な長期金利上昇は、新興国通貨の下落圧力になるとともに、米国を含めた主要国の金融政策にも影響を与える可能性がある。米FOMCは利上げを実施しそうだが、その後の利上げペースに関してヒントがでてくるか。日銀の金融政策決定会合では、長期金利の「ゼロ%」目標に修正はあるか。ECBの理事会では、QE(量的緩和)の延長に向けた準備がすすめられるか、等に注目したい。

<主要通貨の動向>

・【全体観・米ドル】ドル/円、2012年バレンタイン緩和以来の“買い転換”となるのか?
・【ユーロ】ユーロ/ドル、重要な下値サポートラインを割り込む可能性も
・【ポンド】ポンド/円、足もとは“戻り”基調も、大きなトレンドは依然下向き

<資源国・新興国通貨の動向>

・【豪ドル】鉄鉱石価格が豪ドルの支援材料になるか!?
・【NZドル】NZドル自体の環境は比較的良好、今後上昇要因になる可能性あり
・【カナダドル】11月30日のOPEC総会に注目!
・【トルコリラ】対米ドルで一段と下落か。対円も引き続き注意が必要
・【南アランド】2日の格付け見直し結果が大きな材料になりそう

◆主要経済指標・イベント
◆OIS(翌日物金利スワップ)に基づく金融政策見通し


≪相場環境≫
 

米大統領選でのトランプ氏勝利を受けて、足元で米長期金利が大幅に上昇しています。長期金利の上昇と、株高やドル高が同時に示現しているので、「トランプ大統領」の政策が経済成長を高めるとの期待が反映されているのでしょう。いわゆる「良い金利の上昇」と判断できます。

ただし、米長期金利の上昇は、FRBの利上げが近いとの見方と相まって、新興国通貨への大きな下落圧力となっています。新興国の中銀は通貨防衛に動き始めていますが、なかなか有効な手段を打てない状況です。

「トランプ大統領」の政策は不確実性が高いだけに、「良い金利の上昇」が財政赤字拡大を懸念した「悪い金利の上昇」に転じる可能性もあるでしょう。その場合は、株価やドルに下落圧力が加わる可能性があります。また、そうでなくても、長期金利の上昇は、主要国中銀の政策判断にも影響を与えそうです。とりわけ、12月には日米欧の金融政策会合が予定されており、要注目でしょう。

12月13-14日の米FOMCでは利上げがほぼ確実とみられます。より重要なのは、その後の利上げのペースに関するヒントが示されるかどうかでしょう。FFレート(政策金利)先物に基づけば、現時点の市場のメインシナリオは、今年12月の利上げの後、「来年6月と12月に追加利上げ」というものです。

大統領選挙前の11月1-2日に開催されたFOMC議事録によれば、「市場からの信任を維持するためにも、12月に利上げすべき」との意見が数人の参加者から出ていました。ただ、一方で、「長期金利の急騰や一段のドル高は、物価下押しを通じて、利上げを先送りさせる可能性がある」との指摘もありました。このFOMC後に、まさに「金利上昇とドル高」が起きました。11月25日のブラック・フライデーから本格的に始まるクリスマス商戦や12月2日の雇用統計でよほどのサプライズがない限り、12月のFOMCでは利上げが決定されそうです。ただ、その後のペースは金利やドルの状況にも影響を受けそうです。

12月19-20日には、日銀の金融政策決定会合が開催されます。9月会合での「量」から「金利」への金融緩和の枠組みはすぐには変更されないでしょう。ただ、長期金利が「ゼロ%で推移するよう」、国債を購入することの意味合いは変わってきたかもしれません。

当初、市場が懸念したのは、長期金利がマイナスで推移している場合に、日銀が国債購入額を減らすことで金融緩和を後退させるのではないかということでした。足元ではむしろ、世界的に長期金利が上昇しているなかで、日銀が長期金利ゼロ%の維持を目指せば、国債購入が際限なくなることが懸念されます。

日銀やECBの金融緩和姿勢を反映して、日欧の長期金利の上昇は小幅にとどまっています。そして、日米あるいは欧米の長期金利差が拡大していることで、ドルはとりわけ円やユーロに対して上昇しています。果たして、日銀が長期金利ゼロ%の目標を堅持するのか、それとも修正を図るのか、要注目です。

FRBや日銀の会合に先駆けて、12月8日にECBの理事会が開催されます。ECBの国債購入(QE=量的緩和)は「少なくとも2017年3月まで」続けられる予定です。これまでECBはその延長を検討していたようです。そして、12月の理事会では、(購入対象の国債が減少してきたことで)購入条件の緩和などの準備がなされるとの見方もありました。ただし、足元の長期金利の上昇(*)やユーロ安によって、それらが見送られる可能性もありそうです。後述するイタリア国民投票の影響も含めて、8日の理事会でECBはどのような判断を下すのでしょうか

(*)ECBは、預金金利(-0.4%)を下回る利回りの債券を購入しないルールとしています。一時は期間8年以下のドイツ国債は購入できませんでしたが、24日時点で期間6年以上のドイツ国債の購入が可能性となっています。

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12月4日、イタリアの国民投票が実施されます。これは、憲法を改正して、(1)上院の議席を減らし、権限を縮小させること、(2)地方政府を簡素化して中央政府との重複を解消することの是非を問うものです。

現在のイタリア議会では、上院と下院が同等の権限を持っており、両院を同一の条文の法案が通過しない限り、立法化できません。そのため、多くの改革に時間がかかり、あるいは日の目をみないこともあるからです。レンツィ首相は憲法を改正したうえで、法人税減税や銀行制度健全化などの成長戦略を推進しようとしています。

現時点で、憲法改正の反対派が勢いを増しているようです。レンツィ首相は「No」が勝利した場合には辞任する意向を表明しています。その場合に政局が流動化して2017年早々に総選挙が実施される可能性が出てきます(実施期限は2018年初)。そこで、反EUのポピュリスト政党である「五つ星運動」が勢力を増すようであれば、英国に続くEU離脱の機運が高まるかもしれません。

2017年には、フランスやドイツ、オランダでも総選挙が予定されており、イタリアの政治情勢から影響を受ける可能性もあります。また、今年12月4日にはオーストリアの大統領選挙も予定されています。5月に敗れた極右の自由党ホーファー候補が今回のやり直し選挙では勝利するかもしれません。オーストリアの大統領には儀礼的な役割しかありませんが、「流れ」という意味で、こちらも注目されるところです。

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アトランタ連銀の短期予測モデル(GDPNow)によれば、10-12月期の米GDPは前期比年率+3.6%の高い伸びが見込まれています(11/23時点)。来週は、30日のベージュブック(地区連銀経済報告)、1日のISM製造業景況指数(11月)2日の雇用統計(同)などで、そうした米景気の堅調が示唆されるかに注目です。また、金融政策の観点からは、ベージュブックや雇用統計で、労働需給のひっ迫やそれに伴う賃金圧力の上昇が確認されるかも重要です。ただし、雇用統計のNFP(非農業部門雇用者数)については、企業の採用減少ではなく人手不足により増加ペースが鈍化している可能性がありますが、FRBはそれを認識しており、利上げのハードルは下げているものとみられます。

米経済指標以外では、28日のOECD経済見通し(世界経済見通しの上方修正はあるか)、30日のOPEC総会(減産合意はあるか)、などが注目されます。<チーフエコノミスト 西田明弘>


<主要通貨の動向>

【全体観・米ドル】 ドル/円、2012年バレンタイン緩和以来の“買い転換”となるのか?

“トランプ・ラリー”旋風が渦巻くマーケット。現在の相場環境は、相場格言にある通り『買いにくい相場ほど高くなる』という言葉を地で行く状況と言えます。

一部には、欧米の短期筋やマクロ系ヘッジファンドなどが、米国の政治的空白期間という“隙”を突いた仕掛けが主体との見方もありますが、問題はどのあたりが転換ポイントとなり得るのか否か。

まずはファンダメンタルズの側面から推測していくと、やはり政治日程が今後の大きなポイントになり得ます。以下、トランプ次期大統領の就任までのスケジュールにつき、ご確認ください。

<トランプ次期大統領就任までのスケジュール>
12月9日 選挙人による投票
[2017年]
1月6日 正副大統領の正式決定
1月20日 大統領就任式

上記スケジュールからも分かる通り、「トランプ大統領」の正式就任は来年1月20日となっており、制度上致し方ないことではあるものの、今後約2ヶ月間における政治的空白期間が生じることにより、ドル独歩高の恣意的勢力にとってはまさに“無法地帯”となり得ます。

「為替の歴史は政治の歴史」と言われる通り、過去の事例を振り返ってみても、通貨の長期トレンドを決定する最大の材料は米国の通貨戦略、延いては米国の政治的思惑や意向・政策と言っても過言ではありません。そのような状況下、トランプ次期大統領の過去の発言を見ていくと、そこには「本音」「建て前」が見え隠れし、今後の通貨の方向性を見る上で何かのヒントとなる可能性もありそうです。以下、参考までに過去のトランプ氏の発言をご確認ください。

[2016年5月]
「(FRBの)利上げでドル高になれば大問題になる」「私は低金利主義者だ」

この5月時の発言は、トランプ氏が共和党全国大会(7/18-21)以前の発言でもあり、当然共和党の正式な大統領候補になる前段階での発言ということもあり、概ね自身のビジネス感覚から出た「本心」と言えなくもありません。つまりビジネスで大成功を収めた「一不動産王」としての「本音」と言えそうです。

一方で、共和党全国大会後に正式な共和党の大統領候補となった9月の発言は、以下の通りです。

[2016年9月]
「イエレン(FRB議長)は、オバマ(大統領)が株高を望んでいるから低金利政策を続けている」「恥を知るべき」「低金利(政策)は預金者を最も苦しめる

9月26日には第1回TV討論会を控えていたこともあり、上記発言は「一国のリーダー」を意識した、選挙対策発言と取ることも可能です。つまり、政治的な含みのある「建て前」と取れなくもありません。

直近では、当選後初めて11月22日に録画での施政方針を明らかにし、まずは自身の政策の一丁目一番地であるTPP(環太平洋パートナーシップ協定)からの離脱意思を、1月20日の就任初日に参加国に通知すると述べた上で、改めて「米製造業の再興」について強調したことは、今後の為替相場を勘案する上で非常に重要なポイントではないかと考えます。

“ラストベルト”と呼ばれる五大湖周辺の工業地帯を大票田としたトランプ次期大統領および共和党にとって、当該地域の製造業にとって不利益を与えることとなる一方的なドル高を、政治的にどこまでも放置することはあり得ないと捉える方が自然ではあるものの、問題は「政治的空白期間」という横軸の隙間期間。

かつて、オバマ政権・ルー財務長官が、ドルインデックス(ドル指数)が100に近づきつつある段階で「ドル高牽制発言」をするという、厳然たる「100の壁」がありましたが、これから約2ヶ月間にわたっては、先述した通り「政治的空白期間」もあり、さらなる上値トライがあることも想定する必要があるのかもしれません。



ここからは、テクニカル分析の側面でドル/円相場の動きを見ていきたいと思います。以下、ドル/円・月足チャート+20ヵ月移動平均線+パラボリック+DMIをご確認ください。



ドル/円の喫緊のポイントは、20ヵ月移動平均線である114.33円を終値レベルで上抜けブレークするのか否か。仮に同線を上抜けブレークした場合は、今年2月に下抜けブレークして以来9カ月ぶりのトレンド転換(下降トレンド→上昇トレンド)となり得ます。

その他テクニカル指標として、パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)は11月時点で買いサインに転換していることもあり、ローソク足の20ヵ月移動平均線の上抜けブレークとともに、DMIにおいて+DIと-DIがクロスした後、+DI>-DIとなった場合は、2012年2月の「白川日銀によるバレンタイン緩和※」(上図赤丸印)以来の重要な買いサインへの転換となり得ます。(※後に“アベノミクス相場”における上昇トレンドの起点となったテクニカルサインの大転換ポイント)

足もとのドル/円は、20ヵ月移動平均線(≒114.33円)を大いに意識する展開となりそうです。<チーフアナリスト 津田隆光>

【ユーロ】 ユーロ/ドル、重要な下値サポートラインを割り込む可能性も

早速ですが、以下ユーロ/ドル・月足・ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。



上記チャートより、1) 21MA(21週移動平均線)が若干右肩下がりであること、2) SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方にあること、3) DMIで、-DIが+DIの上方に位置していることから、下降トレンド相場シグナルであることが確認できます。

今後、ローソク足が終値レベルで-2σライン(≒1.0574ドル)を割り込み、また2015年3月時に付けた安値である1.0457ドルラインを割り込んだ場合は、下落速度が加速する可能性もありそうです。

ユーロ/ドルの12月相場の動意となり得るのは、≪相場環境≫にもある通り、12月4日のイタリア国民投票の結果とともに、同8日のECB理事会での内容となりそうです。<津田>

【ポンド】 ポンド/円、足もとは“戻り”基調も、大きなトレンドは依然下向き

同じく早速ながら、以下ポンド/円・週足チャート+52週移動平均線+パラボリック+DMIをご覧ください。



上記チャートより、 ローソク足が52週移動平均線より下方にあることから、大きなトレンドは依然下降トレンドと判断することができますが、足もとでは1) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の下方で点灯していること、2) DMIにおいて、+DI>-DIとなっていることから、短期的には【戻り】基調を示しています。

この状態をキープした形で、仮にADXが高い位置への方向転換を始めた場合は、短期上昇トレンドが加速する可能性も考慮した方がよさそうです。

その場合の戻りのメドは、52週移動平均線である150.49円レベル。ローソク足が52週移動平均線を下回っている間の基本戦略は戻り売りとした方が得策と言えそうです。

足もとでのポンド/円の動意となり得るのは、12月15日に予定されているMPC(イングランド銀行[BOE]金融政策員会)での方針決定や今後の見通し。

その他、ECB理事会やイタリア国民投票の結果についても、ユーロ同様、その動意となり得そうです。<津田>


<資源・新興国通貨の動向>

【豪ドル】 鉄鉱石価格が豪ドルの支援材料になるか!?

豪ドルは11月、対米ドルで約5か月ぶりの安値をつけました。米10年債利回りの上昇や米FRBの利上げペースが速まるのでは?との観測を背景に、ドル高が進んだことが主因です。

市場の関心は現在、米国に向いており、豪ドルの材料に反応しにくい地合いです。この状況はまだしばらく続く可能性があり、豪ドル/米ドルは、米国の材料により影響を受ける可能性があります。

ただ、豪ドルにとってプラス材料はあります。中国の青島に荷揚げされる鉄鉱石(鉄分62%)価格は約2年ぶりの高値圏にあります。実需が増えているとの見方がある一方で、人民元安を背景に、中国の投資家が資産を鉄鉱石などの米ドル建てのものに移しているとの見方があるようです。鉄鉱石は豪州最大の輸出品であるため、その価格の上昇が続くのであれば、豪経済にとってプラスと考えられます。今後、鉄鉱石価格にも市場の目が向けば、豪ドルを押し上げる要因となる可能性があります。<アナリスト 八代和也>


※鉄鉱石価格=中国の青島に荷揚げされる鉄鉱石(鉄分62%)
出所:Bloombergより作成

【NZドル】 NZドル自体の環境は比較的良好、今後上昇要因になる可能性あり

NZドルは11月、対米ドルで約4か月ぶりの安値をつけました。豪ドルのケースと同様、ドル高が進んだことが主因です。

NZドルの環境は比較的良好です。乳製品国際価格の指標となるGDT価格指数は、11月15日のオークションで2014年7月以来、2年4か月ぶりの高水準を記録しました。NZにおいて乳製品は最大の輸出品であり、その価格の上昇はNZドルにとってプラスと考えられます。


※乳製品価格=GDT価格指数
出所:Bloomberg、GDTより作成

また、RBNZ(NZ中銀)は11月10日に0.25%の利下げを決定したものの、声明や金融政策報告で昨年開始した利下げが最終局面にあることを示唆しました。市場では、RBNZが来年中に利上げに転じるとの見方が浮上しているようです。そのこともやはりNZドルのプラスと考えられます。

市場の関心が現在、米国に向いているために、NZドルの材料には反応しにくい状況です。ただ、乳製品価格の上昇やRBNZの金融政策見通しが今後、NZドルの上昇要因になる可能性もあります。<八代>

【カナダドル】 11月30日のOPEC総会に注目!

11月30日にオーストリアのウィーンでOPEC(石油輸出国機構)総会が開催されます。その結果が、カナダドルの動向に影響を与える可能性があるため、注目です。

OPEC総会では、加盟国が原油の減産で合意できるかどうかが最大の焦点になりそうです。関係者の話として、リビアとナイジェリアを除く全加盟国が4-4.5%減産することが総会で協議されると伝わりました。ただ、イランやイラクがそれに応じるかどうかは不明です。リビアやナイジェリアが除外されたのは、内乱によって生産が減少していることが理由のようです。

OPEC総会で、減産合意できれば、原油価格が上昇するとみられます。その場合、カナダドルにとってプラス材料です。一方、合意できなければ、原油価格が下落し、カナダドルに下押し圧力が加わる可能性があります。<八代>


*原油価格・・・米WTI原油先物
出所:Bloombergより作成

【トルコリラ】 対米ドルで一段と下落か。対円も引き続き注意が必要

TCMBは11月24日の会合で利上げを決定。3つの政策金利のうち、1週間物レポ金利(主要政策金利)と翌日物借入金利を引き上げました。一方、翌日物借入金利は据え置きました。

 <TCMBの政策金利結果>
 ・1週間物レポ金利:7.50%から8.00%へ(0.50%の利上げ)
 ・翌日物貸出金利:8.25%から8.50%へ(0.25%の利上げ)
 ・翌日物借入金利:7.25%(据え置き)

TCMBが今回、利上げを実施した理由として、トルコリラ安が挙げられます。トルコ国内の政治不安(エルドアン大統領の一段の独裁化懸念)や、国外への資金流出懸念を背景に、トルコリラは対米ドルで今週に入り、過去最安値を度々更新しました。TCMBは今回の声明で、「為替レートの動向がインフレ見通しに対して上振れリスクをもたらす」と指摘。そのうえで、「インフレ期待や企業の価格決定行動への悪影響を抑えるために、金融引き締めを実施することを決定した」と表明しました。


出所:Bloombergより作成

TCMBは2014年1月に、トルコリラ防衛のために利上げを実施したことがあります。トルコリラが当時、対米ドルで過去最安値を更新するなか、TCMBは1月28日に緊急会合を開催し、1週間物レポ金利を「4.50%→10.00%(利上げ幅5.50%」、翌日物貸出金利を「7.75%→12.00%(同4.25%)」、翌日物借入金利を「3.50%→8.00%(同4.50%)」へと、それぞれ大幅に引き上げました。そして、利上げを受けてトルコリラ安は一服し、6月にかけて対米ドルで緩やかに上昇しました。


出所:Bloombergより作成

今回(11月24日)のTCMBによる利上げを受けて、トルコリラが対米ドルでいったん反発する場面がありました。ただ、反発は長続きせず、その後はトルコリラ安が再び加速。結局は対米ドルで過去最安値を更新しました。その背景として、市場では今回の利上げでは不十分、TCMBのトルコリラ安対応が手詰まりとの見方もあるのかもしれません。2014年1月は、3つの政策金利をすべて大幅に引き上げた一方、今回は翌日物借入金利を据え置いたうえ、1週間物レポ金利や翌日物借入金利の引き上げ幅はそれぞれ0.50%、0.25%でした。

今後はトルコ政府やTCMBのトルコリラ安への対応を試す展開となって、トルコリラは対米ドルで一段と下落する可能性があります。対円(トルコリラ/円)は、ドル/円の上昇に支えられて比較的落ち着いているものの、30円台に向けて下落する可能性があり、引き続き注意が必要です。<八代>

【南アランド】 2日の格付け見直し結果が大きな材料になりそう

SARB(南アフリカ中銀)は11月24日の会合で、政策金利を7.00%に据え置くことを決定。クガニャゴ総裁は会見で、インフレ見通しに対するリスク判断を前回9月の「おおむね均衡している」から「わずかに上向き」へと修正しました。

南アフリカのCPI(消費者物価指数)上昇率はSARBのインフレ目標を上回っています。10月の上昇率は南アフリカの10月のCPI上昇率は前年比+6.4%と、9月の+6.1%から加速。SARBのインフレ目標の上限である+6%を2か月連続で上回りました。ただ、SARBは、CPI上昇率が今年10-12月期の+6.6%をピークに鈍化し、来年4-6月期までに目標レンジ内に収まるとみているようです。

クガニャゴ総裁は今回の据え置きの決定は全会一致であり、会合では利下げを議論せず、利上げの提案もなかったことを明らかにしました。対米ドルでランド安が加速するなどしてインフレ見通しが悪化する事態になれば、SARBが利上げに傾く可能性はあります。SARBの年内の定例会合は11月24日で終了。次回は来年1月の予定です。

12月の南アフリカランドは、2日の格付け会社S&Pによる南アフリカ国債の格付け見直し結果発表が大きな材料になりそうです。S&Pは南アフリカ国債に対し、投資適格最低の「BBBマイナス」を付与し、見通しを「ネガティブ(引き下げ方向)」としています。

今回、格下げが行われれば、南アフリカ国債の格付けは「投機的」、いわゆるジャンクに転落します。その場合、南アフリカランドに下落圧力が加わりそうです。一方で、更迭されると懸念されたゴーダン氏が財務相にとどまったことは、格付けにとってプラス材料になりそうです。ゴーダン財務相は南アフリカの財政再建に取り組み、市場からの信認が厚い人物です。今回、格下げが見送られる可能性もあります。その場合、南アフリカランドは上昇しそうです。ただし、クロス円であるランド/円は、ドル/円の動向にも目を向ける必要があります。<八代>




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