市場調査部レポート

2016/10/28 13:47【マンスリー・アウトルック(2016/11)】米大統領選挙と市場の反応!?

― 2016年11月の為替相場展望 ― 
米大統領選挙と市場の反応!?


《相場環境》

11月8日投開票の米大統領選挙について、大まかなシナリオと予想される市場の反応を考察した。単にどちらが勝つかだけでなく、どれぐらい勝つか(とくにクリントン氏勝利の場合)、議会選挙の結果はどうなるかなどにも注目する必要がある。
11月初に予定される日米英の中銀会合や米雇用統計についても考察した。

<主要通貨の動向>
・【全体観・米ドル】注目の11・8 米大統領選挙!そのリスクシナリオとは?
・【ユーロ】ユーロ/ドル、下降トレンドが徐々に強まる可能性も!
・【ポンド】ポンド/円、週足・ボリンジャーは“力を溜め込む”形状?

<資源国・新興国通貨の動向>

・【豪ドル】RBAは政策金利据え置きの可能性大。その後は資源価格の影響を受けやすい地合いになりそう
・【NZドル】RBNZは10日に0.25%利下げの可能性大。今後さらに利下げがあるのかどうかが焦点
・【カナダドル】BOCは利下げも議論。原油価格が堅調に推移すれば、カナダドルは比較的底堅い展開か
・【トルコリラ】対米ドルで過去最安値を記録、対円はレンジも注意が必要か
・【南アランド】ゴーダン財務相をめぐるニュースに注意が必要か

◆主要経済指標・イベント
◆OIS(翌日物金利スワップ)に基づく金融政策見通し


≪相場環境≫

米大統領選挙の投票日は11月8日です。結果判明は、早ければ当日の深夜、日本時間では9日の昼過ぎごろとみられます。ただし、接戦のために開票結果が確定しない州が出てくれば、状況によって後日にずれ込む可能性があります。

【3つのシナリオ】
シナリオ1:民主党クリントン候補が圧勝し、議会でも民主党が躍進するケース
クリントン氏が圧倒的大差をつけて「地滑り的(landslide)勝利」を収めるならば、自身の政策を推進する原動力になりそうです。そして、クリントン氏の圧勝が議会選挙で民主党候補を有利にする、いわゆるコートテイル効果が働くことで、民主党が議会の上下両院を握る共和党の牙城を切り崩せるかもしれません。

シナリオ2:クリントン候補が辛勝し、議会の勢力に変化がないケース
クリントン氏の勝利が僅差であった場合、消去法的選択とのイメージから、同氏に対する求心力のなさが印象付けられるでしょう。大統領に当選しても、政権運営に苦労することになりそうです。上下両院で共和党が議席の過半数を維持するならば、大胆な政策の実現は難しく、自身の政策がほとんど日の目を見ないということも起こりうるでしょう。現在と同じく、行政府と立法府を別々の党が支配する「分断された政府(divided government)」が続くことになります。

シナリオ3:共和党トランプ候補が勝利するケース
もちろん、窮地に追い込まれたようにみえるトランプ氏が「奇跡のカムバック」を果たす可能性もゼロではありません。トランプ氏が当選し、上下両院を共和党が支配するならば、共和党の政策が実現する可能性が高まります。ただし、選挙戦を通じて、トランプ氏と共和党主流との間には深い溝ができており、政権運営はギクシャクしたものになるかもしれません。

トランプ大統領の政策運営として、大まかに2つのスタイルが考えられそうです。

一つは、選挙戦で口にしたことを次々に実行に移そうとするスタイル。大企業やウォール街(金融業界)を敵に回し、ワシントンの政治家を攻撃し、移民を排斥するような政策です。また、中国や日本などに対して強硬な姿勢で臨むでしょう。

もう一つは、放言・暴言は計算されたものであり、大統領就任後は現実的な政策を追求するスタイル。その場合、閣僚には優秀な実務者を配して、自身はオーガナイザーに徹するでしょう。大成功した実業家として、自らのイデオロギーとは切り離して、物事を着地させることを優先する側面があるかもしれません。

後者の可能性もなくはないでしょうが、少なくとも就任早々は前者のスタイルが強く出そうです。

筆者独自の定性的な判断では、シナリオ1=30%、シナリオ2=60%強、シナリオ3=10%未満。

◇予想されるマーケットの反応
シナリオ1では、「トランプ大統領誕生」リスクの消滅を市場は好感するでしょう。不確実性が低下し、市場ではリスクオンが基本になります。ドルやドル資産が買われるでしょう。ただし、「クリントン勝利」はかなり高い確率で織り込まれているとみられるので、市場の反応は限定されるかもしれません。
そして、比較的早い段階で、市場の関心は「クリントン大統領」の政策に向けられるでしょう。企業より労働者、富裕層より中間層や貧困層、グローバルより内向きを強く意識した政策であるため、経済成長は二の次になるかもしれません。それらはドルやドル資産を買いにくくする材料となりそうです。

シナリオ2でも、初期反応は基本的にシナリオ1と同じようなものでしょう。ただし、「クリントン大統領」の政権運営に関しては、シナリオ1よりも不透明感が強いかもしれません。市場は政策の実現性を測るために、クリントン政権の閣僚人事や、議会共和党との関係を吟味することになりそうです。
「分断された政府」の下では、民主党と共和党の両党が賛成できる穏健な政策しか実現しないため、市場が最も望むのはこのシナリオかもしれません。

シナリオ3は、可能性は低いが、実現した場合の影響が大きい「テールリスク」と言えます。クリントン氏が勝利する場合でも、結果判明が遅れれば、「テールリスク」が意識されて、市場は動揺を続けるかもしれません。「トランプ大統領」が誕生すれば、ドルやドル資産(およびメキシコやカナダの通貨)は大きく売り込まれる可能性があります。
ただし、トランプ大統領が実務家の側面を打ち出すならば、市場は次第に落ち着きをみせるでしょう。トランプ氏が主張している減税やインフラ投資は経済成長を高める政策であり、それらが現実味を帯びれば、ドルやドル資産は大きく買われる可能性があります。いずれにせよ、「トランプ大統領」の下では市場のボラティリティ(変動)は高まりそうです。

◇来週の注目材料
11月に入るとすぐに主要中央銀行の金融政策決定会合があります。結果の発表は、1日に日銀、2日にFRB(FOMC)、3日にBOE(英中銀)です。 いずれも市場のコンセンサスは現状維持ですが、何らかのサプライズがあるのかもしれません。そして、4日には米雇用統計が発表されます。

日銀は、金融政策の決定と同時に「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」を公表します。そのなかで、2%の物価目標の達成時期を従来の「2017年度中」から「18年度中」への1年先送りが検討されているとの報道もあります。物価目標達成の遅れは追加緩和を促す材料になりうるでしょう。また、前回の会合で表明された「長期金利のゼロ%近辺での維持」や「(年間80兆円という)買入れのめど」などは微調整されるかもしれません。

FOMCについては、「11月見送り、12月利上げ」との見方が支配的です。ただ、前回9月20-21日のFOMC直前には12地区連銀のうち9行が公定歩合の引き上げを支持するなど、利上げの機運はかなり高まっています。11月に利上げがあるとすれば、(1)敢えて選挙前に実施することで金融政策が政治から独立していることを強調する、(2)議長の記者会見が予定されていない11月に実施することで、どのFOMCでも政策変更は可能とのメッセージを送る、などの意図がある場合でしょう。

BOEも、「現状維持」との見方が有力です。足下のポンド安も利下げを躊躇する要因になるかもしれません。ただし、エコノミストの間では、カーニー総裁が「ハード・ブレグジット」に備えて予防的に利下げを決断するとの見方も根強くあります。

10月の米雇用統計は、NFP(非農業部門雇用者数)が3か月連続で前月比15-17万人程度の増加にとどまるかもしれません。これは昨年のペース(平均22.9万人増)や年初来のペース(同17.8万人増)に比べればやや弱めです。ただし、雇用減速の背景が、求人側ではなく求職側にある、言い換えれば人手不足であるならば、賃金上昇圧力は高まるので、FRBが利上げを躊躇する要因にはならないでしょう。NFPとともに、すでに低水準になる失業率、上昇率が高まりつつある賃金などにも注目する必要がありそうです。<チーフエコノミスト 西田明弘>


<主要通貨の動向>

【全体観・米ドル】 注目の11・8 米大統領選挙!そのリスクシナリオとは?

11月のマーケットのおける最大の注目イベントは、≪相場環境≫にある通り米大統領選挙のゆくえ。

そのシナリオについては、上記【3つのシナリオ】の通りですが、少し別の角度から大統領選における<3つのリスクシナリオ>について見ていきたいと思います。

[米大統領選における3つのリスクシナリオ]

1) トランプ氏、大逆転勝利のケース
2) トランプ氏、敗北を認めず訴訟を起こすケース
3) 民主党、地滑り的(圧倒的)勝利のケース


まず1)について見ていくと、≪相場環境≫にある定性的確率では10%未満となっている通り、このシナリオが実現した場合は世界のマーケットにおいて、まさに『ブラックスワン・イベント』※となり得ます。(※事前にほとんど予想できず、実際に起きたときの衝撃が多大である事象のこと。)

ある研究所のレポートによると、株価は世界的に10-15%程度下落し、原油相場も4ドル超の下落、そして“壁構築”で何かと取り沙汰されているメキシコの通貨ペソが25%程度暴落するとの予想もされています。このケースでは世界的かつ急激なリスク回避フローが発生すると考えた方がよさそうです。

そして2)について。これは3回行われたTV討論会でのトランプ氏の発言や、その前後の言動から見ても、十分あり得るケースではないかと個人的に考えます。その中身は、クリントン氏個人に対する訴訟のみならず、メディアや連邦選挙委員会に対する訴訟も含めてですが、このケースでは政治的不透明感がマーケットにも波及し、リスクを取りづらいマーケット環境においてリスク回避フローが発生する可能性も。

最後に3)のケースについて。この『地滑り的勝利』がもたらす安定政権の樹立ということで、一見リスク選好ムードの高まりも期待できそうですが、1932年以降6回の同勝利を見てみると、うち4回のケースでは選挙後3カ月以内の間にS&P500が2-4%ほど下落しているという過去の事例も。

また、圧倒的な勝利の場合は、大きな政策変更が実現しやすくなるという負の側面も。例えば、「国民皆保険」を政策の一丁目一番地に据えるクリントン氏は、従前よりジェネリック医薬品(割安な後発薬)の開発・利用を促す一方で、それ以外の医薬品価格の値上げ反対や製薬会社の広告宣伝費の税控除制度見直しを主張していることもあり、製薬会社の業績にマイナスの影響を与えかねないと言われています。

さらに、遺産相続税率について、現在の米国における最高税率が40%のところ、クリントン氏は最大65%までの引き上げ※を提案しているという情報も。(※遺産金額が10億ドル以上の超富裕層に対して。超富裕層への増税は少なからず景気への影響に繋がりそうです。)

11月8日に予定されている米大統領選挙に関しては、単なる「勝ち」「負け」といった側面のみならず、その「勝ち方」「負け方」についても、マーケットの変動要因となりそうです。

閑話休題。ここものとドル/円相場の堅調推移の中身を改めて見てみると、「ドル高+円安両エンジンによる飛行」という訳ではなく、「ドル高片肺エンジンによる飛行」と置き換えることが可能なのかもしれません。

これは、年内利上げ観測の高まりやそれに伴う米国債利回りの上昇が背景となっていますが、ドルの実効レートであるドルインデックス(ドル指数)の動きを見ると、その航続距離が気になるところ。

以下、ドルインデックスの日足・ラインチャートをご確認ください。



10月28日時点でのドルインデックス(ドル指数)は98.86となっており、上図で示した100ラインに徐々に近付いている(上図赤点線丸)ことが分かるかと思います。

上図で表した通り、2015年以降に何度かドルインデックス(ドル指数)=100の上抜けトライを試みたものの、いずれも米政府要人によるドル高牽制発言その他により、当該ライン近辺で圧し負けている(上図青丸)ことが見て取れます。

11月8日の大統領選挙において、仮にクリントン氏が当選した暁には、ブレイナードFRB理事が女性初となる次期財務長官に就任するという噂もあり、そのブレイナード氏はドル高に嫌悪感を示しているということもあり、改めてドル高牽制発言が為される可能性も。

という事は、今のところ「円安エンジン」が不燃焼となっている昨今、ドルインデックス(ドル指数)の航続距離が「100」あたりまでと仮定するならば、「ドル高エンジン」片肺飛行を続けているドル/円相場もいずれ天井感がでてくるのかもしれません。

ただし、ドル/円の週足チャートにおいて、28日時点で26週移動平均線(26MA)を明確に上抜けていることもあり、足もとではグランビルの法則で言うところの【重要な買いサイン】となり得、当面は上昇トレンドが継続する可能性も。以下、ドル/円・週足チャート+26週移動平均線をご覧ください。



28日のNYクローズを以て、同線レベルである104.00円を上抜けるか否かに注目が集まります。<チーフアナリスト 津田隆光>

【ユーロ】 ユーロ/ドル、下降トレンドが徐々に強まる可能性も!

早速ですが、以下ユーロ/ドル・週足・ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。



上記チャートより、1) 21MA(21週移動平均線)が右肩下がりであること、2) SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方にあること、3) DMIで、-DIが+DIの上方に位置していることから、下降トレンド相場の初期段階であることが推察されます。

また、DMIにおけるADXがやや上方に向かいつつあることから、下降トレンドが徐々に強まる可能性もありそうです。

11月はECB理事会の開催は予定されていませんが、他の会合(11/2・3:FOMC、11/3:BOE等)の金融政策方針変更やその示唆に伴う副次的フローを警戒した方がよさそうです。<津田>

【ポンド】 ポンド/円、週足・ボリンジャーは“力を溜め込む”形状?

同じく早速ながら、以下ポンド/円・・週足・ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。



上記チャートより、1) 21MA(21週移動平均線)が右肩下がりであること、2) SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方にあること、3) DMIで、-DIが+DIの上方に位置していることから、下降トレンド相場が継続中であることが確認できます。

また、DMIにおけるADXがやや下方に向かいつつあること、さらに各シグマライン(=ボリンジャーバンド)がセンターラインである21MAに向かって収縮(スクイーズ)しつつあることから、相場は力を溜め込む時間帯となっており、次なる拡張(エクスパンション)を待つ状態となっています。

足もとでのポンド/円の動意となり得るのは、11月3日に予定されているMPC(イングランド銀行[BOE]金融政策員会)での方針決定や今後の見通し。

仮に、11月3日の会合で結論が出ない場合でも、上図チャート形状を見る限り、上方硬直性相場であることに変化はなさそうです。<津田>


<資源・新興国通貨の動向>

【豪ドル】 RBAは政策金利据え置きの可能性大。その後は資源価格の影響を受けやすい地合いになりそう

RBA(豪中銀)が11月1日に政策金利を発表します。11月の会合で重要な判断材料になるとみられていた豪州の7-9月期のインフレ率は、CPI(消費者物価指数)が前年比+1.3%と、17年ぶりの低い伸びを記録した4-6月期の+1.0%から上昇率が加速。一方で、RBAがCPIとともに重視するとされる基調インフレ率(トリム平均と加重中央値の平均値)は同+1.50%と、4-6月期の+1.60%から若干鈍化しました。

7-9月期のCPIや基調インフレ率は、いずれもRBAのインフレ目標(+2から3%)を下回っており、RBAが今後、追加利下げに踏み切る可能性は依然として残っているとみられます。CPI上昇率が4-6月期から高まったことを踏まえると、RBAが利下げを急ぐ必要性は低く、11月1日の会合では政策金利を1.50%に据え置く可能性が高いと考えられます。

ただし、市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、RBAが11月の会合で政策金利を据え置く確率が95.8%織り込まれています(10月27日時点)。「据え置き」は、すでに市場にほぼ完全に織り込まれているとの見方もできます。焦点は、声明で“先行きの金融政策について新たな手掛かりが提供されるのか?”になりそうです。政策金利が据え置かれて、声明で先行きの金融政策について言及されなければ、豪ドルはそれほど反応しない可能性があります。

RBAの会合が終わると、豪ドルは原油など資源価格の左右される展開になりそうです。とりわけ原油は、11月30日にウィーンで開催されるOPEC(石油輸出国機構)総会が重要です。OPECが9月に原油の減産で合意したことを背景に、原油価格の代表的な指標である米WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物が10月に上昇、一時約1年3か月ぶりの高値をつけました。OPECは11月30日の総会で、原油減産の正式合意を目指しています。イラクが減産に消極的な姿勢を示すなど、各国の生産枠をめぐり不透明感があることから、原油価格は一段と上昇しにくいとみられる一方、減産合意期待が残るとみられることから下値もしっかりになるかもしれません。原油価格に明確な方向性が生まれなければ、豪ドルも方向感が乏しい展開になる可能性があります。<アナリスト 八代和也>

【NZドル】 RBNZは10日に0.25%利下げの可能性大。今後さらに利下げがあるのかどうかが焦点

RBNZ(NZ中銀)が11月10日に政策金利を発表します。今回は政策金利に加えて、“金融政策報告”が公表されて、RBNZのウィーラー総裁の会見が予定されています。

RBNZは前回9月22日の会合で政策金利を過去最低の2.00%に据え置く一方、声明で「われわれの現在の予想や想定は、将来のインフレ率が目標レンジの中央付近で確実に落ち着くようにするために、追加の政策緩和が必要になることを示唆している」と表明、追加利下げの可能性を示しました。

その後、10月18日に発表されたNZの7-9月期のCPI(消費者物価指数)上昇率は前年比+0.2%と、4-6月期の+0.4%から鈍化。RBNZのインフレ目標(+1から3%)の下限を一段と下回りました。7-9月期のCPI上昇率は、RBNZが8月の金融政策報告で予想した通りの結果でしたが、その見通しをもとに、追加利下げを示唆したことから、RBNZは11月10日の会合で0.25%の追加利下げを決定する可能性が高いと考えられます。

市場では、11月の会合で0.25%の利下げが決定されるとの見方が有力。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、0.25%の利下げの確率が87.7%織り込まれています(10月27日時点)。0.25%の利下げが決定された場合、声明や金融政策報告で、今後さらに利下げを行う可能性が示されるのかが焦点になりそうです。声明などで追加利下げが示唆された場合、NZドルが下落する可能性があります。一方、利下げ打ち止めを感じさせる内容になれば、今回0.25%の利下げが決定されたとしても、NZドルが上昇する可能性があります。<八代>

【カナダドル】 BOCは利下げも議論。原油価格が堅調に推移すれば、カナダドルは比較的底堅い展開か

BOC(カナダ中銀)は10月19日の会合で、政策金利を0.50%に据え置きました。声明では、カナダの2016年と2017年のGDP成長率見通しを下方修正し、経済の緩みを背景にインフレへの下押し圧力が継続するとの見解を示したものの、「リスクバランスは、現在の金融政策スタンスが適切となる領域にとどまっており、BOC理事会は政策金利を0.50%に据え置くことが適切と判断した」としました。

<BOCのカナダのGDP成長率見通し>
 ( )は従来見通し
 ・2016年:+1.1%(+1.3%)
 ・2017年:+2.0%(+2.2%)

BOCのポロズ総裁は会合後の会見で、景気回復を支援するために金融緩和策を議論したと表明。10月の会合では「利下げ」も検討されたことが明らかになりました。

カナダドルは原油価格に影響を受けやすい地合いが続いてきました。ただ、足もとでは原油価格との連動性がやや薄れている感があります。原油価格の代表的な指標である米WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は10月に、一時約1年3か月ぶりの高値をつけるなど上昇したものの、カナダドルは対米ドルで軟調に推移しました。BOCが10月の会合で利下げも検討したことが、カナダドルの重石になっていると考えられます。連動性がやや薄れているとはいえ、原油価格が堅調に推移すれば、カナダドルにとってある程度の下支え材料になりそうです。一方、原油価格が下落基調に転じた場合、カナダドルには一段の下落圧力が加わる可能性があります。<八代>


*原油価格・・・米WTI原油先物
出所:Bloombergより作成

【トルコリラ】 対米ドルで過去最安値を記録、対円はレンジも注意が必要か

10月28日、トルコリラは対米ドルで過去最安値を更新しました。


出所:Bloombergより作成

対米ドルでのトルコリラ安は、米FRBの利上げ観測の高まったことでドル買いに加え、以下の要因がトルコリラ売り圧力を強めていると考えられます。

(1)トルコの格下げ
(2)資本流入の鈍化、あるいは資本流出への懸念
(3)エルドアン大統領の独裁色が一段と強まることへの懸念

(1)トルコの格下げ
7月のクーデター未遂事件後、3大主要格付け会社のうち、S&Pとムーディーズはトルコ国債の格付けをそれぞれ1段階引き下げました。残るフィッチは格付けを「投資適格級最低」に据え置いたものの、見通しを「安定的」から「ネガティブ(引き下げ方向)」へと修正しました。下図のように、3社中2社がトルコ国債の格付けを「投機的等級」に位置付けています。

3大格付け会社のトルコ国債の格付け

出所:Bloombergより作成

(2)資金流入の鈍化、あるいは資金流出への懸念
トルコは経常収支が赤字であり、国外からの資金流入によって赤字を穴埋めする必要があります。S&Pやムーディーズがトルコの格付けを「投機的等級」に位置付けていることで、市場ではトルコへの資金流入が鈍化する、あるいは国外へ流出するとの懸念があります。
例えば、世界の大手投資ファンドの一部は、2社以上の主要格付け会社から投資適格級の格付けを得ることを投資の最低条件としています。現在、トルコに対して「投資適格級」の格付けを付与しているのはフィッチのみであり、こうしたファンドはトルコから資金を引き揚げる可能性があります。

(3)エルドアン大統領が独裁色を一層強めることへの懸念
トルコ政府はエルドアン大統領の権限拡大に向けて動いているようです。ユルドゥルム首相は10月12日、大統領権限の拡大を柱とする憲法改正案を可能な限り速やかに提出する意向を表明しました。市場は、憲法改正によってエルドアン大統領の独裁色が強まることを懸念しています。

憲法改正を問う国民投票の実施には、国会定数の5分の3にあたる330議席が必要です。与党AKP(公正発展党)の議席数は317であり、国民投票実施には野党の協力が必要です。ただ、野党の一部が政府の憲法改正案に反対しない姿勢を示しており、国民投票が今後実施される可能性があります。

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トルコリラには引き続き下落圧力、とりわけ対米ドルで加わりやすいとみられます。一方、クロス円であるトルコリラ/円は、ドル/円の上昇に支えられて、足もと33-34円台を中心に上下を繰り返していますが、注意は必要かもしれません。

TCMB(トルコ中銀)は10月20日の会合で、3つの政策金利を最終的に一本化する「単純化」をいったん休止。3つの政策金利をすべて据え置くことを決定しました。単純化休止の背景には、対米ドルでのトルコリラ安があるようです。TCMBは声明で、「為替レートやその他のコスト要因の最近の動向は、インフレ見通しの改善を抑制するため、慎重な金融政策スタンスの維持を必要する」と指摘。そのうえで、「委員会は政策金利を現行水準で据え置くことを決定した」と表明しました。<八代>

【南アランド】 ゴーダン財務相をめぐるニュースに注意が必要か

11月のランドは、南アフリカのゴーダン財務相の去就が相場材料になる可能性があります。ゴーダン財務相は、前回の任期(2009-2014年)中に不適切な支出を違法に黙認したとの容疑で、検察当局から11月2日に裁判所に出廷するよう求められています。ズマ大統領とゴーダン財務相はかねてより財政再建をめぐり対立が取りざたされていました。裁判所への出廷を口実にズマ大統領がゴーダン財務相を更迭するとの懸念が根強くあります。南アフリカの財政再建に取り組み、市場からの信認が厚いゴーダン財務相が更迭された場合、ランドに下落圧力が加わる可能性があります。

11月24日のSARB(南アフリカ中銀)の会合では、政策金利の7.00%への据え置きが決定されそうです。南アフリカの9月のCPI(消費者物価指数)上昇率は前年比+6.1%と、SARBのインフレ目標(+3から6%)を上回ったものの、上昇率が今後鈍化するとの見通しをもとに、クガニャゴ総裁らSARB当局者は2014年に開始した利上げサイクルが最終局面にある可能性を示唆しています。11月24の会合で政策金利が据え置かれた場合、ランドはそれほど反応しない可能性があります。<八代>




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※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

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