市場調査部レポート

2016/10/21 12:03ドル/円、上抜けor下押しの重要ポイントに

【相場環境】日米英の金融政策の材料にも注目!
【全体観・米ドル】ドル/円、上抜けor下押しの重要ポイントに
【ユーロ】ユーロ/ドル、6/24安値と-2σラインを意識する動き!
【豪ドル】26日のインフレ統計に注目!RBAの金融政策への影響大か
【NZドル】RBNZの11月利下げ観測を材料に、NZドルが売られる状況ではなさそう
【トルコリラ】TCMBが単純化をいったん休止、再開はトルコリラがカギ!?


【相場環境】 日米英の金融政策の材料にも注目!

19日に行われた第3回目で最後となる米大統領候補のディベート(TV討論)は、前2回同様に中傷合戦に終始した感があります。そして、選挙結果を受け入れないかもしれないとのトランプ氏の発言は、民主主義の根幹に関わる問題だけに、コアな支持者を除く一般の有権者をトランプ氏からさらに遠ざけたかもしれません。
大統領選挙は、よほどのサプライズがなければ、クリントン氏が優位なままで最終盤に雪崩れ込むことになりそうです。「トランプ大統領の誕生」はテールリスク(可能性は極めて低いが、実現すれば影響が大きい現象)になりつつあります。

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来週は米大統領選挙キャンペーンを横目で見ながらも、日米英の金融政策に影響を与えかねない材料にも注目すべきかもしれません。

26日、英国の7-9月期GDP速報値が発表されます。6月下旬のBREXIT(英国のEU離脱)決定後の経済情勢に関する最初の包括的データです。小売売上高など個々のデータは比較的底堅い状況ですが、それでも経済成長のペースダウンは避けられなかったかもしれません。

OIS(翌日物金利スワップ)によれば、BOE(英中銀)の利下げは年内で10%程度、来年末まで見渡しても20%程度しか市場に織り込まれていません。一方で、Bloombergの調査によれば、7割近い数のエコノミストが年内に政策金利を過去最低の0.10%程度に引き下げるとみているようです。

来年早々にもメイ首相が「離脱」を宣言してEUとの交渉が始まれば、英経済に下押し圧力が加わるとの懸念もあるでしょう。金融政策効果の波及ラグ(時間的な遅れ)を考慮すれば、BOEが早めに予防的な利下げに踏み切る可能性はあるでしょう。

次回11月3日に開催されるBOEのMPC(金融政策委員会)に向けて、市場の観測がエコノミストのそれに近づくようであれば、ポンドに一段の下落圧力が加わるかもしれません。

28日、日本の9月CPI(消費者物価)が発表されます。昨年半ば以降の「円高」が引き続き物価の下押し要因となりそうです。一方で、悪天候による生鮮食品(野菜)やエネルギー価格の上昇は物価の押し上げ要因となる可能性があります。ただし、CPIが2%の物価目標から遠く離れた状況に大きな変化はなさそうです。

ただし、10月31日-11月1日の金融政策決定会合で、日銀が追加緩和を打ち出す可能性は低そうです。9月に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という新しい枠組みを打ち出したばかりであり、まだしばらくはその効果を見極めようとするでしょう。「金融緩和限界説」が根強いなかで、無駄に弾を打ちたくないとの心理も働くかもしれません。

同28日に、米国の7-9月期GDP速報値。在庫の取り崩しが成長率を大きく押し下げた4-6月期(前期比年率1.4%)よりは成長率は高まりそうです。アトランタ連銀の短期予測モデルGDPNowは19日時点で2.0%、NY連銀の同Nowcastは14日時点で2.3%をそれぞれ予想しています。

米経済が2%や、それを上回る成長ペースを達成できれば、労働需給は一段とタイト(=人手不足)になるとみられます。その場合は、一段の失業率の低下や賃金上昇率の高まりが予想されるため、FRBによる利上げの支援材料になるかもしれません。大統領選挙直前の11月のFOMCでは様子見をしそうですが、12月のFOMCでは利上げを決定しそうです。FFレート(政策金利)先物によれば、20日時点で11月利上げは17%、年内利上げは68%の確率で市場に織り込まれています。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 ドル/円、上抜けor下押しの重要ポイントに

[ドル/円、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ドル/円:レンジ相場102.80-105.00円

現地時間19日(日本時間20日)、11月8日の大統領選挙(本選)に向けて最後となる第3回米大統領候補TV討論会がネバダ州ラスベガス・ネバダ大学で開催されました。

今回の討論会も、事前に予想された通り、民主党・クリントン氏はトランプ氏の過去の女性蔑視発言や、実際に被害にあった女性がインタビューに答えた件について言及し、「大統領として不適格」であると攻撃したのに対して、一方の共和党・トランプ氏は、前回・前々回同様、クリントン氏の私用メール問題について言及し、「そもそも大統領選に立候補する資格なし」「犯罪者」との攻撃をし、まさに泥仕合の様相に。

前回(第2回目)の討論会について、ワシントンポスト紙が『(米大統領選)史上最も醜い討論会』と酷評しましたが、今回も前回・前々回同様、自己弁護と相手批判の応酬合戦となりました。

具体的な政策論争や、米国や世界の政治・経済に関する今後のパースペクティブ(見通し、展望)を述べることは少なく、互いの揚げ足取りをする両者の姿勢は、当事者である米国の有権者にとっては気の毒ですが、第三者として客観的に見てもウンザリしてしまいます。

もっとも、今回の大統領選挙は「近年稀に見る嫌われ者同士の戦い」とも言われている通り、超大国のリーダーを選ぶビッグ・イベントにしては極めて寒々しい光景と言わざるを得ません。

一部報道では、「米大統領選に冷めるミレニアル世代」※とも言われており、今回の大統領選をきっかけに若者のさらなる政治離れが加速する可能性も取り沙汰されています。(※1980年代半ばから2000年代初めの間に生まれた若者世代のこと。「M世代」「米国版“さとり世代”」とも。)

そもそも、資本主義の本丸・牙城である米国で、クリントン氏の対抗馬であったバーニー・サンダース氏(民主党)のような民主社会主義者がここまでミレニアル世代と呼ばれる若者から圧倒的な支持を集めたこと自体、米国社会の歪み(ひずみ)を表していると言っていいのかもしれません。

若者たちの圧倒的な支持の下、「サンダース旋風」を巻き起こしたバーニー・サンダース氏のスローガンは『Political Revolution(政治革命)』。所得格差が親の世代より広がり、既存の政治に“No”を叩き付ける若者が多く存在する米国社会の空気そのものが、『Make America Great Again(アメリカを再び偉大にしよう)』という、トランプ氏の前時代的懐古主義とも言える情動的運動をある意味後押ししていると言えそうです。

3回にわたるTV討論会や、その他諸々の情勢を鑑みると、そのトランプ氏が劣勢であることに疑念を差し挟む余地はなさそうですが、最近のトランプ氏は投票が始まる前から投票における不正行為や大手メディアによる陰謀論を喧伝し、選挙結果を認めないといった“将棋盤返し”とも取れる姿勢を見せています。

ということは、11月8日の本選が終わったとしても、「ノーサイド」とはなり得ず、発言力を持った私人としてクリントン氏批判、政権批判の急先鋒になる可能性も視野に入れておいた方がいいかもしれません。

いずれにせよ、審判が下るのは約3週間後の11月8日。それまでに、まだまだ風雲急を告げる事態が起こらないとも限らないため、しばらくは事の成り行きを見守る必要がありそうです。

米大統領選挙と相場の動向については、お客様専用ページである「マイページ」→「マーケット情報」→「市場調査部・レポート」の中にある「シナリオレポート」に、『米大統領選でどうなる!?』(PDF)が掲載されていますので、詳細はそちらをぜひご確認ください。

さて、ドル/円の来週にかけての見通しを推し量る上で、以下、ドル/円・週足チャート+26週移動平均線(26MA)をご確認ください。



 26週移動平均線(以下、26MA)とは、26週間(≒半年間)における市場参加者の平均的な売買コストを示しており、長期・大勢線と言われる通り、長期的なトレンドを推し量る上で非常に重要なテクニカル指標と言われています。

その26MAの方向性が右肩下がりとなっていることから、そのトレンドは依然下降モメンタム主体となっていますが、仮にローソク足(週足)が26MAラインを上抜けした場合は、グランビルの法則で言う「重要な買いサイン」となり得ます。

一方で、上抜け失敗となった場合は、下降トレンド(下押し)の起点となることも想定できるため、来週以降のドル/円のトレンドを推し量る意味で非常に重要なポイントに直面していると言ってもよさそうです。21日時点での26MAは104.09円。NYクローズ時点で上抜けor下押しとなるのかに要注目です。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/円、短期トレンド転換の可能性も?

[ユーロ/円・ユーロ/ドル、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ユーロ/円:レンジ相場112.30-116.00円
○ユーロ/ドル:戻り売り or レンジ相場1.0850-1.1040ドル

以下、早速ですがユーロ/ドル・週足・26週ボリンジャーバンド+DMIをご覧ください。



上記チャートを見てみると、1) 26週移動平均線(26MA)がやや右肩下がりとなっていること、2) ローソク足が-2σラインと重なっていること、3) DMI(方向性指数)において-DIが+DIの上方に位置していることから、ユーロ/ドルの週足トレンドは中長期下降基調の初期段階と見ることが可能です。

仮に、ローソク足(週足)が21日NYクローズ時点で-2σライン(≒1.0924ドル)を割り込んだ場合は、下降トレンドが加速する可能性もありそうです。

20日のECB理事会では、金融政策は現状維持となったものの、12月の同理事会でのさらなる金融緩和を示唆したこと、また少なくとも2017年3月まではQE(量的金融緩和)を継続することを示したことで、早期テーパリング(=量的金融緩和の縮小)観測が若干遠退いたことがユーロ売りの動意となっています。

足もとでは、6月24日のいわゆる“ブレグジット・ショック”の日に付けた安値である1.0910ドルを大いに意識する展開となりそうです。<津田>


【豪ドル】 26日のインフレ統計に注目!RBAの金融政策への影響大か

26日に豪州の7-9月期のインフレ率が発表されます。低インフレを理由に、RBA(豪中銀)は今年5月と8月にそれぞれ0.25%の利下げを実施。10月18日に公表された今月4日の会合の議事録では、7-9月期のインフレ率が次回11月1日の会合における重要な判断材料になることが明らかになりました。

市場では、RBAは政策金利を当面1.50%に据え置くとの見方が有力。OIS(翌日物金利スワップ)では、11月の会合で政策金利が据え置かれる確率が81.3%織り込まれています(10月20日時点)。据え置きの確率は来年5月までで58.1%へと低下するものの、それでも据え置きが50%を上回っており、市場のメインシナリオは来年5月まで据え置きであることが確認できます。

7-9月期のインフレ率の結果次第では、市場のRBAに対する金融政策見通しが変化する可能性があります。その場合、豪ドルが反応しそうです。26日のインフレ率の発表を受けて、豪ドルが大きく動く可能性があるため、注目です。<アナリスト 八代和也>


出所:Bloombergより作成


【NZドル】 RBNZの11月利下げ観測を材料に、NZドルが売られる状況ではなさそう

20日にNZドル/米ドルは一時0.72ドル台半ば、NZドル/円は一時75円台へと上昇し、それぞれ約2週間、約1か月ぶりの高値をつけました。NZドル上昇の背景には、18日に発表されたNZの7-9月期CPI(消費者物価指数)が市場予想をやや上回ったことや、乳製品価格の上昇があります。NZの7-9月期CPIは前年比+0.2%(市場予想:+0.1%)。同日開催されたGDT(乳製品電子オークション)で、乳製品国際価格の指標となるGDT価格指数は898でした(前回4日:885)。

市場では、RBNZ(NZ準備銀行)が次回11月10日の会合で0.25%の追加利下げに踏み切るとの見方が有力です。その見方は、CPIの発表前と後で大きく変わっていないようです。市場の金融政策見通しを背景するOIS(翌日物金利スワップ)が10月20日時点で織り込む、RBNZが11月の会合で0.25%の利下げを行う確率は85.3%。17日時点は84.9%でした。

11月利下げ観測に大きな変化がない要因として、7-9月期のCPI上昇率がRBNZの見通し通りだったことが挙げられます。RBNZは8月の金融政策報告で、7-9月期のCPI上昇率が前年比+0.2%になると予想。その見通しをもとに、声明で「われわれの現在の予想や想定は、将来のインフレ率が目標レンジの中央付近で確実に落ち着くようにするために、追加の政策緩和が必要になることを示唆している」と、追加利下げの可能性を示しました。7-9月期のCPI上昇率が見通し通りで、インフレ圧力の弱さが確認されたことで、RBNZは11月の会合で0.25%の追加利下げに踏み切る可能性が大きいとみられます。

RBNZの追加利下げ観測は、NZドルにとってマイナス材料です。ただし、上述のOISを参考にすれば、11月の利下げはかなり織り込まれたと見ることができます。RBNZの11月利下げ観測を材料にNZドルが売られる状況にはなりにくいかもしれません。<八代>


出所:Bloombergより作成


【トルコリラ】 TCMBが単純化をいったん休止、再開はトルコリラがカギ!?

TCMB(トルコ中銀)は20日の会合で、3つの政策金利をすべて据え置くことを決定しました。TCMBは政策金利を最終的に一本化する「単純化」を今年3月に開始、9月まで7会合連続で翌日物貸出金利を引き下げる一方、1週間物レポ金利(主要政策金利)と翌日物借入金利を据え置きました。

トルコの9月CPI(消費者物価指数)は前年比+7.28%、食品とエネルギーを除いたコアCPIは同+7.69%でした。TCMBのインフレ目標(+5%)を上回ったものの、CPIは8月の+8.05%、コアCPIは同+8.41%から鈍化、それぞれ昨年8月、昨年7月以来の低い伸びとなりました。

インフレ圧力が鈍化したのにもかかわらず、TCMBが単純化を今回、いったん休止した背景には、トルコリラ安があるようです。トルコ政府が非常事態宣言を3か月延長したことや、経済成長率見通しを下方修正したことで、トルコリラは対米ドルで下落基調にあり、18日には対米ドルで過去最安値を更新しました。TCMBは今回の声明で、「為替レートやその他のコスト要因の最近の動向は、インフレ見通しの改善を抑制するため、慎重な金融政策スタンスの維持を必要する」と指摘。そのうえで、「委員会は政策金利を現行水準で据え置くことを決定した」と表明しました。

TCMBは声明で、「単純化プロセスの方向や次の措置のタイミングは、データ次第」と強調しました。今回の単純化の休止はトルコリラ安が主因とみられることから、トルコリラの動向が単純化再開のカギになりそうです。対米ドルでのトルコリラ安が一服すれば、TCMBは次回11月24日の会合で「単純化」を再開する可能性があります。

TCMBが今回、事実上の利下げ(=翌日物貸出金利の引き下げ)を見送ったことは、トルコリラにとってプラス材料になりそうです。トルコリラ/円は約1か月半にわたって、33円台前半から34円台半ばで上下を繰り返してきました。レンジ上限である34円台半ばに向かう展開になるかもしれません。<八代>


出所:Bloombergより作成




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※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。

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