市場調査部レポート

2016/10/07 13:0710月=相場クラッシュ=押し目買いのチャンス?

【相場環境】ドルに追い風は吹くか?
【全体観・米ドル】10月=相場クラッシュ=押し目買いのチャンス?
【ユーロ】ユーロ/円、短期トレンド転換の可能性も?
【ポンド】“ハードブレグジット相場”発生の可能性も
【豪ドル】RBAは政策金利据え置き。次の最大の相場材料はインフレ統計!?
【NZドル】NZドル/米ドルは下落圧力が加わりやすい地合いか
【トルコリラ】マイナス材料相次ぐも、トルコリラ/円は底堅い可能性も!?


【相場環境】 ドルに追い風は吹くか?

10月に入って(6日まで)、ドルが主要通貨に対して上昇する展開となっています。「ドル高」の背景はいくつか考えられます。

まず、米国の経済指標は事前予想を上回るものが増えました。9月20-21日のFOMC以降、数人の地区連銀総裁が早期に利上げすべきとの見解を表明しました。彼らはもともと利上げに積極的な「タカ派」ですが、利上げのタイミングとして現在でも次回11月1-2日のFOMCも視野に入れていることが新たに材料視されたのでしょう。

そして、大統領候補による第1回目のディベート(TV討論)を終えて、民主党クリントン氏が共和党トランプ氏に対してリードを広げつつあるようにみえます。このことは、市場の先行き不透明感を後退させ、ドル高につながった面があるかもしれません。

他方、英国のEU離脱が厳しいものになるという「ハードブレグジット」との見方が、ポンドの下落圧力となりました。また、ユーロ圏では、米国から巨額の罰金を課されるドイツ銀行を筆頭に、金融機関の経営問題(危機?)がユーロの重石となりました。それら各国独自の材料にも「ドル高」要因がありました。

今後、ドルに対して更なる追い風が吹くかどうか、以下の4つのポイントから考察しました。

(1)米国の早期利上げはあるか
7月のFOMC直前に12地区連銀のうち8つが公定歩合引き上げを支持したことが示唆するように、地区連銀総裁の間では早期利上げ論が根強いとみられます。FFレート(政策金利)先物に基づけば、10月6日時点で、11月利上げが24%、年内利上げが64%の確率で織り込まれています。市場はFOMC内の利上げ機運を過小評価しているかもしれません。
12日に公表されるFOMC議事録(9/20-21開催分)で、当時利上げ派がどのような議論を展開したかをチェックする必要がありそうです。来週はFOMC関係者の発言機会も多く(14日イエレン議長など)、要注意かもしれません。また、7日の9月雇用統計(本稿執筆時点で未発表)、13日の9月小売売上高などで、米景気の回復基調が確認できるかも注目したいところです。

(2)米大統領選挙戦でクリントン氏がさらにリードを広げるか
劣勢に立ったトランプ氏が2回目のディベート(現地9日午後9時)で、納税問題を乗り切って挽回できるか。中傷合戦が一段と激化する可能性もあり、トランプ氏が暴言・放言で自爆しないとも限りません。一方で、クリントン氏は「信頼できない」イメージを覆せるか。同氏の健康状態も引き続き気になるところです。

(3)欧州通貨は一段と下落するか
ポンドは対ドルで31年ぶりの安値をつけましたが、当時は、サッチャー首相の経済改革である「サッチャリズム」が実を結んで、慢性的な経済停滞、いわゆる「英国病」を完全に克服する前夜でした。英国のメイ政権がEU離脱交渉に臨んで、経済ベネフィットよりも、移民規制など国家主権の保全を優先するようであれば、「英国病」の懸念がポンドやポンド建て資産の下落につながるかもしれません。今後、英国のEU離脱交渉が接近し、英国やEU側の対応が相場材料になる場面は増えそうです(日本時間7日朝のポンド急落はその一例)。
一方、ドイツ銀行に対する米当局の罰金は当初(140億ドル)に比べて少ない額で決着しそうな雲行きです。ただし、ユーロ圏発の金融危機は可能性の低いテールリスクながら、事態の進展に十分注意する必要はありそうです。

(4)長期金利の上昇傾向は続くか
日銀の金融政策の「量」から「金利」へのシフトは、いずれ量的緩和縮小(テーパリング)につながるとの懸念が根強くあります。ECBが非公式にテーパリングの必要性で合意したとの未確認情報もあります。日銀やECBの金融緩和縮小の観測は、円やユーロの上昇要因とみなせるかもしれません。ただし、足元ではむしろ「ドル高」要因となっているようです。それは、それらが世界的な長期金利上昇の背景にあり、日<米、あるいは欧<米の金利差が米有利の方向に拡大しているからです。
長期金利の上昇傾向が続くようであれば、金利差が拡大して「ドル高」要因となる可能性があります。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 10月=相場クラッシュ=押し目買いのチャンス?

[ドル/円、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ドル/円:戻り売り相場101.00-105.00円

「10月相場」がスタートして1週間。(7日時点)

「10月相場」と言えば、世界の株式市場における月別平均パフォーマンスが「9月相場」に次いで2番目に悪く、国内市場でも、戦後67年の日経平均株価の月別平均パフォーマンスは【9月:-0.66%[ワースト1]】、【10月:+0.04%[ワースト2]】となっています。(10/5付 日本経済新聞電子版 前田編集員記事より)

つまり、“10月は株安になりやすい月”と言ってもよく、株式市場とのシンクロ性から勘案すると、為替市場(特にドル/円やその他クロス円がメイン)にとっても“10月は下がりやすい月”と捉えていいのかもしれません。

参考ながら、その「10月相場」の根拠とも言える、10月の歴史的な事件や出来事は以下の通りです。

1929年10月24日 世界大恐慌(暗黒の木曜日)
1973年10月6日 第四次中東戦争 → 第一次石油ショック
1987年10月19日 ブラックマンデー(暗黒の月曜日)
1998年10月 ロシア財政危機 → LTCM(ロングタイム・キャピタル・マネジメント)の破綻
2008年10月7日 アイスランド危機
2008年10月24日 リーマンショック後の最終C波クラッシュ

皆さまの記憶に新しいのは、8年前(2008年)10月24日のリーマンショック後の最終C波クラッシュではないでしょうか。

また、歴史の教科書に掲載されているような1929年の世界大恐慌や1987年のブラックマンデーはあまりにも有名で、その歴史的事実が【10月=相場クラッシュ】の固定観念やイメージを助長している側面もあるのかもしれません。

しかしながら、仮に【10月=相場クラッシュ】ということは、裏を返せば【10月=押し目買いのチャンス】と置き換えることも可能です。その検証事例の一つとして、以下、過去20年(1996/1-2015/12)におけるNYダウと日経平均株価の月別騰落率についてご覧ください。



上図、過去20年のデータによると、日経平均の月別騰落率平均から見られる傾向は、8-10月に安くなりやすく、その後11-12月にかけて高くなりやすいということ。

一方で、NYダウの同期間における月別騰落率平均から見られる傾向は、8-9月に安くなりやすく、その後10-12月にかけて高くなりやすく、1月にクラッシュを経た後、翌年4月にピークを迎えやすいということ。

あくまで20年間の月別騰落率(月末-月初の平均値)であるということ、また日経平均とNYダウという限定的な指標であるため、一括りにマーケット全般の傾向と断定することはできませんが、あくまで傾向として見るならば、株価とシンクロしやすい通貨ペア(ex.ドル/円、クロス円)にもその傾向があると仮定してもよさそうです。

つまり、【10月=相場クラッシュ】という歴史的事実は受け入れつつ、10月までのスパイク・ロー(瞬間安値)を買い拾うことによって、12月、ないしは翌年4月までのパフォーマンス向上に貢献しやすいとも言えます。

あくまで過去の事例を基準にした仮説ということで認識していただければ幸いです。

上記“アノマリー”とは別に、現時点のドル/円相場を取り巻くテクニカル環境について見ていきたいと思います。以下ドル/円・日足チャート+75日移動平均線をご確認ください。



75日移動平均線の「75日」とは、“人の噂も七十五日”の言葉と全く無縁というわけではなく、概ね3カ月程度の市場参加者の平均コスト(=損益分岐ライン)と捉えることが可能です。

上記チャートは今年1月スタート時からを描画していますが、凡そ4回(青色丸印部分。1月・5月・7月・9月)にわたって同線突破のチャレンジをしているものの、4回とも“上抜け失敗”となっています。

そんな中、今月4日時点のドル/円・日足チャートでは同線を上抜け突破しており、仮に7日のNYクローズ時点でローソク足が同線上抜けを確認できる場合は、グランビルの法則で言うところの【重要な買いサイン】となる可能性も。

その状態を確認する意味でも、7日の米9月雇用統計からは目が離せませんが、さらに9日(日本時間10日)の第2回米大統領候補TV討論において、トランプ候補の巻き返しのありなし(あり:リスク回避のドル売り・円買いフロー[逆回転フロー]、なし:安心感ベースのドル買い・円売りフロー[【重要な買いサイン】の示現])にも注目が集まりそうです。

具体的には、上記75日移動平均線である102.40円をキープできるのか否かに注目したいところです。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/円、短期トレンド転換の可能性も?

[ユーロ/円・ユーロ/ドル、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ユーロ/円:戻り売り相場114.00-117.00円
○ユーロ/ドル:レンジ相場1.1080-1.1270ドル

以下、ドル/円と同じく、ユーロ/円・日足チャート+75日移動平均線をご確認ください。



上記チャートを見てみると、ユーロ/円の75日移動平均線上抜け突破チャレンジは、今年に入ってほぼ毎月※行われていたといってよく、ドル/円同様今月4日時点でローソク足が同線を上抜け突破しています。(※8月は除く。2月は1月部分に含まれています。)

ドル/円同様、仮に7日のNYクローズ時点でローソク足が同線上抜けを確認できる場合は、グランビルの法則で言うところの【重要な買いサイン】となる可能性もありそうです。

ユーロ/円は、三角保ち合い(さんかくもちあい)に関しても上抜け突破をしており、終値レベルでの確認が必要ではあるものの、短期的にはトレンドが転換する可能性も視野に入れた方がよさそうです。

具体的には、上記75日移動平均線である114.30円をキープできるのか否かに注目したいところです。<津田>


【ポンド】 “ハードブレグジット相場”発生の可能性も

[ポンド/円、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ポンド/円:戻り売り相場123.70-134.00円

ポンド/円は、7日の東京時間午前8時頃に急落の動きを見せ、まさにフラッシュクラッシュが到来し、10分近くの時間で6.35円もの下落幅を示現しました。

その事由については様々な見方があるものの、欧州市場が真夜中でもあったため、情報が錯綜していたというのが事実。

メルケル独首相が英国の3月までの離脱通告、いわゆる“ハードブレグジット”に関して、今までのような英国の特権は認めないとの発言があったとのことですが、この発言自体は目新しいものではなく、何らかのアルゴリズムの瞬間反応が広がったとの予測。(FTではオランド仏大統領発言との記事も)

ポンド/ドル(ケーブル)は今世紀の安値を塗り替える動きとなっており、一時1.18ドル台(BloombergのBid値)まで大幅下振れしました。

しばらくは本日のような“ハードクブレグジット相場”が発生する可能性もあることから、ポンド/円の動向には引き続き注意が必要です。

以下、ポンド/円・週足・スパンモデル®+21週ボリンジャーバンドをご確認ください。



上記チャートを見てみると、1) 21MA(21週移動平均線)が右肩下がりであること、2) 遅行スパンがローソク足の下方に位置していること、3) ローソク足の上方に抵抗の“雲”があることから、典型的な下降トレンド形状をしているのが分かります。

本日東京時間朝方の急落により、7月6日に付けた年初来安値を更新し、対円相場では4年ぶりの安値となっています。

テクニカル上の理論的下値メドは、21週ボリンジャーバンド・-2σラインである119.40円。しばらく乱高下を経た後、当該ポイントまでの下落の可能性も視野に入れた方がよさそうです。<津田>


【豪ドル】 RBAは政策金利据え置き。次の最大の相場材料はインフレ統計!?

RBAは4日、政策金利を過去最低の1.50%に据え置くことを決定しました。

声明では、インフレ率について「依然として極めて低い」と指摘。「非常に抑制された労働コストの伸びや海外の極めて低いコスト圧力を踏まえると、この状況はしばらく続く可能性が高い」との見解が示されました。この文言は前回9月と同じです。

豪ドルに関する文言も9月から変化なし。「豪ドル高は、経済が必要な調整を複雑にする可能性がある」と指摘されました。

一方、労働市場については、以下のように9月から若干弱めに変化しました。
<9月>
・労働市場の指標は引き続き、ややまちまちとなっているが、雇用の拡大が短期的に続くことを示唆
<10月>
・労働市場の指標はややまちまちとなっている。
・失業率は一段と低下したが、国内の雇用の伸びにかなりのばらつきがみられる
・パートタイム雇用が力強く伸びている一方、フルタイム雇用が抑制されている
・将来に関する指標は雇用の拡大が短期的に続くことを示す

そして、RBAは声明の最後を「入手可能な情報や、5月と8月の会合で金融政策を緩和したことを踏まえると、理事会は今回の会合で政策スタンスを維持することが、持続可能な経済成長およびインフレ目標の達成と一致していると判断した」と締めくくり、先行きの金融政策について言及しませんでした。

RBAの政策会合がほぼ予想通りの結果となったことで、次は10月26日発表の豪州の7-9月期のインフレ率が最大の相場材料になりそうです。RBAの今年5月と8月の利下げは低インフレが主因だったため、7-9月期のインフレ率が次回11月1日の会合におけるRBAの政策判断に影響を与えそうです。来週(10日の週)は、豪州の主要な経済指標が少ないことから、豪ドルは米FRBの利上げ観測や資源価格の動向など外部要因に左右される展開になりそうです。<アナリスト 八代和也>


【NZドル】 NZドル/米ドルは下落圧力が加わりやすい地合いか

NZドル/米ドルは今週、8月初め以来、約8週間ぶりの安値をつけました。米FRB当局者が相次いで利上げに前向きな姿勢を示したこと(米ドル買い材料)や、乳製品価格の下落(NZドル売り材料)が背景にあります。4日に開催されたGDT(乳製品電子オークション)で、乳製品国際価格の指標であるGDT価格指数は885と、前回9月20日の913から若干下落しました。

テクニカル面からみても、NZドル/米ドルは8月半ば以降のレンジである0.72-0.74米ドルの下限を下回りました。NZドル/米ドルには目先、下落圧力が加わりやすいと見ることができそうです。<八代>

NZドル/米ドル(日足、2016/6/23-)

(出所:M2Jチャート)


【トルコリラ】 マイナス材料相次ぐも、トルコリラ/円は底堅い可能性も!?

今週はトルコリラにとってマイナス材料が続出しました。トルコ政府は3日、非常事態宣言を3か月延長すると発表。4日にはトルコのGDP成長率見通しを下方修正する一方、財政赤字や経常赤字見通しを上方修正しました。


出所:Bloombergより作成

9月23日の格付け会社ムーディーズによるトルコの格下げ(長期国債格付けを「Baa3」から「Ba1」へと1段階引き下げ)に続く、マイナス材料が出てきたことで、トルコリラには下押し圧力が加わりやすいとみられ、とりわけ米FRBの利上げ観測が高まっている対米ドルで強まる可能性があります。一方、クロス円であるトルコリラ/円は、ドル/円の影響も受けます。ドル/円が堅調に推移すれば、トルコリラ/円は比較的底堅い展開になるかもしれません。目先、33-34円台を中心とした動きが続く可能性があります。<八代>



 

※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。

※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。

バックナンバー

「市場調査部レポート」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。

そのほかのマーケット情報

ページトップへ