市場調査部レポート

2016/09/23 14:22「祭」の後、日米金融政策会合を振り返る

【相場環境】「祭」の後、日米金融政策会合を振り返る
【全体観・米ドル】ドル/円、98円台も視野に!?
【ユーロ】ユーロ/円、下降トレンドが強まりそう
【NZドル】RBNZは追加利下げの可能性を改めて示す
【トルコリラ】TCMBは翌日物貸出金利を引き下げ、単純化を進める
【南アフリカランド】SARBの利上げサイクルは終了か!?


【相場環境】 「祭」の後、日米金融政策会合を振り返る

「総括的な検証」は日銀の自己弁護か
9月20-21日の日銀の金融政策決定会合では、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」が新たに打ち出されました。これにより、金融政策の軸足は「量」から「金利」へシフトしたとされています。

新たな枠組みの主な内容は、(1)長短金利操作を行う「イールドカーブ・コントロール」と、(2)物価が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大を継続する「オーバーシュート型コミットメント」です。

(1)はイールドカーブ(利回り曲線)で、短期金利<長期金利の右上がりの傾斜を強くして、金融機関の収益悪化を防ぐとともに、市場のインフレ期待を強めようとするものです。

ただし、イールドカーブのコントロールについて、短期金利は-0.1%のマイナス金利でアンカーする一方で、長期金利は現行ペースを「めど」とした国債買入れによって「ゼロ%程度」に誘導することで行います。これは従来の「マイナス金利付き量的・質的緩和」の枠組みを大きく変えるものではなさそうです。国債購入が限界に近いとの指摘に対する苦肉の策と言えるかもしれません。

(2)は、物価が「2%を超えるまで」、つまり2%の目標をオーバーシュートするまで続けるとコミット(約束)することで、金融緩和の長期化期待、いわゆる時間軸効果を強化するものです。もっとも、2%を目指して、それに届かない状況が長く続くなかで、「2%を超えるまで」続けると宣言することにどれだけの効果があるのか、かなり疑問が残ります。

「新たな」枠組みが従来の微調整にとどまったのは、従来の枠組みが有効だったと評価したからでしょう。「総括的な検証」は、「(マイナス金利付き)量的・質的金融緩和」はデフレ脱却に有効だったものの、2%の物価目標が達成できていないのは、原油安や消費税増税、新興国経済の減速など外的要因に起因するとの結論でした。

一方で、長期金利を「ゼロ%程度」に誘導するとの新たな目標、「長期金利ターゲット」は、債券市場の機能を一段と低下させる、金利上昇時に日銀が際限ない国債購入を余儀なくされるなどの弊害も内包している可能性があります。

今後、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」が期待される効果を発揮するのか、それとも早晩修正を迫られるのか、引き続き注目したいところです。

米FRB、年内利上げの公算大、来年は?
一方、日銀の会合と同じ日程(時差の関係で約半日遅れ)で開催された米FOMCは、金融政策の現状維持を決定しました。声明文では「利上げの根拠は強まったが、さらなる証拠を待つことにした」との旨が示されました。

今回の決定には、10人の投票メンバーのうち3人が即座の利上げを主張して反対票を投じました。3人が反対票を投じたのは2014年12月以来です。当時は2人が利上げに積極的な「タカ派」、1人が慎重な「ハト派」で、いずれも声明文の文言に対して異議を唱えただけでした。3人が同方向の行動を主張して反対票を投じるのは極めて異例であり、近年では記憶にありません。それだけFOMC内で、(投票権を持たない参加者も含めて)利上げを求める声が強かったということでしょう。

FOMC参加者17人の個々の政策金利見通し、いわゆる「FOMCのドット」によれば(次ページ、図参照)、14人が年内の利上げを想定しています。3人は年内据え置きの想定です。引き続き「経済データ次第」との但し書きは付きますが、大きな状況変化がなければ、11月か12月、恐らく12月のFOMCで利上げが実施される可能性が高そうです。

2017年に関しては、14人の参加者が2回以上の利上げを想定する一方で、3人が今年と来年を通しても計1回または2回の利上げに留まるとみています。

これに対して、9月22日時点のFFレート(政策金利)先物に基づけば、市場が織り込む年内利上げの確率は58.6%と、FOMC前の58.2%からあまり変化していません。また、2017年末までに少なくとも1回の利上げが実施される確率は82.4%ですが、このうち2回以上の利上げの確率は40%程度に過ぎません。

FOMCのドット(参加者個々の政策金利見通し)

青い点(ドット)1つが参加者1人の見通し(各年末時点の政策金利の水準)
出所:FOMC資料より抜粋

これまでは、FOMCの想定(ドットの中央値)よりも市場の見方(FFレート先物)の方が結果的には正しかったですが、来年はどうなるでしょうか。FOMCの想定通りならドルには上昇圧力が加わるとみられます。

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9月26日に、大統領候補による第1回目のディベート(TV討論)が実施されます。クリントン氏とトランプ氏の支持率の差は接近しています。トランプ氏がクリントン氏をリードしているとの世論調査結果も出てきました。やはり、「911」の式典でクリントン氏の体調不良が明らかになった点が影響しているようです。

クリントン氏は幅広く深い知識や国務長官としての経験をもとに、自身が大統領に相応しい候補であることをアピールするはずです。一方で、私用Eメール問題、クリントン財団に関わる疑惑、自身の健康状況などについて、どこまでクリアカットに説明できるかも気になるところです。
トランプ氏の言動は予測不能かもしれません。共和党の予備選中や党大会前までのように、歯に衣着せぬ発言や、時に暴言によって、クリントン氏を激しく攻撃するのか。それとも、幅広い有権者にアピールできるように、自重して大統領に相応しい振る舞いに終始するのか。

ディベートを視聴した有権者が受ける印象によって、候補の支持率が大きく上下する可能性もあるだけに、要注目でしょう。ディベートやその他の材料を受けて、トランプ氏がクリントン氏をリードするようであれば、「トランプ・リスク」が今以上に意識されて金融市場でリスクオフの強まりがみられるかもしれません。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 ドル/円、98円台も視野に!?

[ドル/円、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ドル/円:戻り売り相場98.00-104.00円

【相場環境】で詳しく解説があった通り、今週20-21日にかけて日米の金融政策会合が開催され、結果はそこで述べられた通りです。

今後のドル/円相場の見通しを練る上で、先週のレポートで記載した日銀会合のシナリオ予想について少し振り返ってみたいと思います。以下、ご確認ください。

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<量>
[予想]
国債増額:80兆円→70-90兆円
[結果]
80兆円で据え置き。質部分でも建設国債や財投債、または外債等の購入というサプライズはありませんでした。あくまで焦点は「量」ではなく「金利」としたことで、為替相場にとっては極めてインパクトの薄い決定と言えるでしょう。

<期間>
[予想]
2%物価目標の柔軟化。ただし、期間の「2年」は事実上撤回
[結果]
「期間の2年は事実上撤回」予想は正でした。会合では2%物価目標を安定的に持続できるまで「長短金利操作付き」で量的・質的金融緩和を実施し、目標達成までオープンエンド(=出口は前もって決めない)方式でマネタリーベースの拡大方針を継続する『オーバーシュート型コミットメント』を実施。これに関しては突っ込みどころが満載で、現状2%目標がかなり厳しい状況となっているにも関わらず、果たして「安定的に」2%物価目標を継続できるのでしょうか。この部分に関しては、論理的な金融政策らしからぬ「意気込み」「気合い」の範疇となっており、大いに疑問符が付くところ。このペースで進むと、あと1年強でマネタリーベースの対名目GDP比率が100%(約50兆円)となることもあり(※日銀発表文にもその旨記載)、日銀のB/S悪化に伴う“政策限界感”が露呈することも考えられます。

<金利>
[予想]
マイナス金利幅:マイナス0.1%→マイナス0.2から0.3%
[結果]
事前予想ではこのマイナス金利の深掘りが有力視されていましたが、結局今回は見送りとなりました。いわば銀行やその他金融機関に最大限配慮した形となっており、事実21日の東京株式市場では金融株を中心に総じて上昇し、特に銀行にとっては胸を撫で下ろす結果と言えそうです。
一方で、先週のレポートでも記載した通り、イールドカーブのスティープ化(=利回り曲線の勾配作り)を目的とするツイスト・オペ予想については、『イールドカーブ・コントロール』という名の長期金利ターゲティングが導入される結果となりました。
しかしながら、金融・経済のイロハでは長期金利をコントロールすることはほぼ不可能とされており、いわんや一プレーヤーに過ぎない日銀(といっても、既発債の4割を保有するビッグ・オーナーですが・・・)がコントロールすることが果たして可能なのでしょうか。
また、仮に長期金利が将来的に下落することになれば、スティープ化(=勾配をキープすること)のためには、1) (短期部分における)マイナス金利の深掘りか、2) 長期金利上昇を目的とする長期国債の売却をせざるを得ず、1) の場合は銀行や金融機関への逆風に、また2) の場合はテーパリング(=量的金融緩和の縮小)予想に繋がる可能性もあり得ます。

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以上、日銀の決定に対する私なりの“総括的検証”をしてみましたが、詰まるところは、日銀が美辞麗句を使いながら(個人的には「美」や「麗」とは思いませんが・・・)マーケット参加者を煙に巻き、結論を先延ばしにしたに過ぎないのではないかと邪推してしまいます。

一方で、景気というのはその言葉通り、「気」の持ち方が非常に重要であるため、根拠なき批判だけは避けるべきで、“フォワードルッキングな期待形成”の通り、我々は静かに期待しながら見守ることも大事。

今後のトレードについては、粛々と足もとのテクニカルシグナルを確認しながら取り組んでみてはいかがでしょうか。

閑話休題、以下ドル/円・週足・21週ボリンジャーバンド+スパンモデル®+DMIをご確認ください。



上記チャートより、1) 21MA(21週移動平均線)が右肩下がりであること、2) ローソク足の上方に抵抗帯(=雲)があること、3) 遅行スパンがローソク足の下方に位置していること、また4) DMIにおいて-DI>+DIとなっており、さらに乖離を広げていることなどを総合すると、ドル/円の下降トレンドがさらに強まりつつあると判断します。

特に2) において、先行1スパン(雲の下辺)と先行2スパン(雲の上辺)の乖離が広がっていることからも、抵抗帯が強化されていると捉えることもでき、しばらくは上方硬直性相場が継続しそうです。

上記チャートから勘案するドル/円のコアレンジは、-2σラインから21MAラインである98.00-104.00円と想定します。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/円、下降トレンドが強まりそう

[ユーロ/円・ユーロ/ドル、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ユーロ/円:戻り売り相場109.00-116.50円
○ユーロ/ドル:レンジ相場1.1080-1.1300ドル

以下早速ですが、ユーロ/円・週足・21週ボリンジャーバンド+スパンモデル®+DMIをご確認ください。



上記チャートを見てみると、1) 21MA(21週移動平均線)が右肩下がりであること、2) ローソク足の上方に抵抗帯(=雲)があること、3) 遅行スパンがローソク足の下方に位置していること、また4) DMIにおいて-DI>+DIとなっており、さらに乖離を広げていることなどを総合すると、ドル/円同様ユーロ/円も下降トレンドが強まりつつあります

これも特に2) において、先行1スパン(雲の下辺)と先行2スパン(雲の上辺)の乖離が広がりつつあり、ドル/円同様、しばらくは上方硬直性相場が継続しそうです。

上記チャートから勘案するユーロ/円のコアレンジは、-2σラインから21MAラインである109.00-116.50円と想定します。<津田>


【NZドル】 RBNZは追加利下げの可能性を改めて示す

RBNZ(NZ中銀)は22日、政策金利を2.00%に据え置くことを決定しました。

声明におけるインフレに関する文言は、前回8月11日から変化なし。CPI上昇率(インフレ率)は7-9月期に一段と弱含んだ後、10-12月期から高まるとの見方を示しました。長期インフレ期待は2%でしっかりと固定されている」とする一方、「総合インフレ率の持続的な弱さは、インフレ期待を一段と押し下げるリスクがある」としました。

NZドルについては、「貿易加重ベースのNZドルは、8月の金融政策報告における想定よりも高い」と指摘。NZドル高は、輸出商品価格の上昇を多少反映している可能性があるとしながらも、「通貨高が輸出および輸入の競合部門にさらなる圧力を加えており、世界的な低インフレとともに貿易財部門のマイナスのインフレ率を引き起こしている」と分析、「NZドルの下落が必要」と強調しました。

先行きの金融政策については、「われわれの現在の予想や想定は、将来のインフレ率が目標レンジの中央付近で確実に落ち着くようにするために、追加の政策緩和(=利下げ)が必要になることを示唆している」と表明、追加利下げを示唆しました。

RBNZの今年3月と8月の利下げは、低インフレに加えてインフレ期待の低下が主因でした。10月18日にNZの7-9月期CPI、11月2日にRBNZによるインフレ期待調査が発表されます。この2つの経済指標で、インフレ圧力やインフレ期待の弱さが確認されれば、RBNZは次回11月10日の会合で追加利下げに踏み切りそうです。<アナリスト 八代和也>


【トルコリラ】 TCMBは翌日物貸出金利を引き下げ、単純化を進める

TCMB(トルコ中銀)は22日の会合で、3つの政策金利のうち、翌日物貸出金利を0.25%引き下げる(8.50%から8.25%へ)一方、1週間物レポ金利と翌日物借入金利をそれぞれ7.50%、7.25%に据え置きました。TCMBは政策金利を最終的に一本化する「単純化」を今年3月に開始しており、その一環とみられます。

TCMBは声明で、「最近の経済指標は経済活動の減速を示している」と指摘。目標を上回るインフレ率については、総需要の減速がコアインフレ率の緩やかな鈍化に寄与しているとし、総合インフレ率は食品価格の下落を通じて短期的に下落することが見込まれるとしました。そのうえで、「単純化に向けた措置を慎重に進めることを決定した」と表明しました。

今回の声明では、今後の方針は明確に示されませんでした。ただ、経済やインフレに関する文言を踏まえると、TCMBは来月も単純化をさらに進める可能性が高いとみられます。

TCMBの今回の決定を受けて、エルドアン大統領のシニアアドバイザーは「1週間物レポ金利を引き下げることがより重要だ」と述べました。単純化を進める過程で、1度も動かさなかった1週間物レポ金利(主要政策金利)を今後どうするのかも注目です。<八代>


出所:Bloombergより作成


【南アフリカランド】 SARBの利上げサイクルは終了か!?

SARB(南アフリカ中銀)は22日、政策金利を7.00%に据え置くことを決定しました。

SARBは南アフリカの今年の成長率見通しを従来の0%から+0.4%へと上方修正。一方で、今年のCPI(消費者物価指数)上昇率見通しをこれまでの+6.6%から+6.4%へと下方修正し、今年10-12月期の+6.7%をピークに鈍化して、来年は平均5.8%になると予想しました。

クガニャゴ総裁は会合後の会見で、SARBの利上げサイクル終了の可能性を示しました。クガニャゴ総裁は、インフレ見通しのリスクはおおむね均衡していると指摘。MPC(金融政策委員会)はCPIの軌道を依然として懸念しているとしながらも、「2017年4-6月期には持続的に目標内で推移する」と述べました。

SARBは、インフレ圧力を背景に昨年7月以降、計4回、あわせて1.25%の利上げを実施しました。一方で、干ばつや主力輸出品の下落、過去の利上げの影響などによって南アフリカ経済は低迷。SARBは難しい金融政策運営を迫られてきました。SARBが今年のインフレ見通しを下方修正し、クガニャゴ総裁もインフレに対する警戒感をやや弱めたことで、SARBの利上げは今年3月でいったん終了した可能性があります。

SARBには現時点で利下げの選択肢はないようです。クガニャゴ総裁は、今回の政策金利据え置きの決定は全会一致であり、利下げは議論しなかったことを明らかにしました。一方で、「SARBが米FRB(連邦準備理事会)と協調して動くことはない」と発言。FRBが利上げした場合の追随利上げの可能性を否定しました。<八代>


出所:Bloombergより作成



 

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