市場調査部レポート

2016/09/09 13:10世界的な金利上昇の意味とは?

【相場環境】世界的な金利上昇の意味とは?
【米ドル】9月の「サプライズ利上げ」はないのか
【ユーロ】ECBはQE「検証」へ。現状維持によるユーロ高は短命!?
【豪ドル】RBA政策会合はサプライズなし、次の材料は15日の雇用統計
【NZドル】対ドルで一段と上昇する可能性も!?
【カナダドル】BOCは政策金利を据え置き、経済とインフレの下振れリスクに言及


【相場環境】 世界的な金利上昇の意味とは?

7月下旬以降、世界的に市場金利(=国債利回り)が上昇傾向にあります。ただ、その背景には大きく性質の異なる2つの要因があるようです。

まず7月29日の日銀の金融政策決定会合の結果を受けて、日本の国債利回りが急騰しました。会合で指示の出た「総括的な検証」がQE縮小など金融緩和の「出口」を模索する動きではないかとの市場の観測が背景でした。のちに、黒田総裁や岩田・中曽両副総裁が「検証=緩和縮小」を強く否定しましたが、その前から金融緩和限界説が根強くあることは間違いないでしょう。
そして、8月中旬以降は、ジャクソンホールでのイエレン議長の講演などを受けて米利上げ観測が高まったことが市場金利上昇の背景でした。ただ、9月に入ると弱めの米経済指標が相次ぎ、利上げ観測は再び後退しました。FFレート(政策金利)先物に基づく9月の利上げ確率は8月中旬までの20%前後から下旬には40%に上昇しましたが、足元では再び20%台へと低下しています。
そして、足元では8日のECB理事会での現状維持の決定を受けて、市場金利が上昇しています(米原油在庫の減少を受けた原油価格の急騰も一因)。

金融緩和限界説は、リスクオフ要因であり、株安や「円高」をもたらす要因と考えることができそうです。これに対して、米利上げ観測の高まりはリスクオン要因であり、株高、資源価格の上昇や「ドル高」をもたらす要因といえそうです。

今後、9月の最大の相場材料である日米の金融政策会合(ともに20-21日開催)に向けて、金融緩和限界説や米利上げに関する思惑が引き続き為替相場を動かすことになりそうです。

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来週は、15日にBOE(英中銀)のMPC(金融政策委員会)が開催されます。BREXIT(英国のEU離脱)の悪影響を懸念して、BOEは8月に追加緩和(利下げと債券購入の再開)を決定しました。その後に発表された英経済指標に比較的底堅いものが多かったこともあり、2か月連続の金融緩和はなさそうです。ただ、カーニー総裁は改めて「必要なら追加緩和に踏み切る用意がある」姿勢を鮮明にするかもしれません。

20-21日のFOMCを前に、一連の重要な米経済指標が発表されます。総じて、弱めが予想され、早期利上げを後押しする材料にはならないかもしれません。
15日発表の8月の小売売上高は、既報の自動車販売台数の減少やガソリン価格の下落などが下押し要因となりそうです。同日の8月の鉱工業生産は2014年11月以来の高い伸びをみせた前月から反動が出そうです。8月のISM製造業景況指数は6か月ぶりの50割れでした。さらに、同日の9月のNY連銀やフィラデルフィア連銀の製造業景況指数は、製造業が9月に盛り返してきたかどうかの目安となりそうです。
16日には8月のCPI(消費者物価)。食料とエネルギーを除くコアは9か月連続で前年比2%を超えています。FRBはCPIよりもPCE(個人消費支出)を重視しているとはいえ、CPIの上振れ継続は「タカ派」の味方になるかもしれません。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【米ドル】 9月の「サプライズ利上げ」はないのか

9月に入って発表された8月の米経済指標は、ISM製造業・非製造業景況指数など市場予想を下回るものが増えました。2015年春以降に改善傾向にあった景気サプライズ指数は、今年8月をピークに低下しています。足元の経済指標の下振れにより、20-21日のFOMCでの利上げは難しくなったかもしれません。



ただし、「サプライズ利上げ」の可能性は無視できないでしょう。8日時点でFFレート先物が織り込む9月利上げの確率は28%あります。FOMCが利上げに踏み切るとすれば、その理由は「労働需給のひっ迫と、それに伴う賃金上昇圧力の高まり」となりそうです。

8月の雇用統計はやや弱めの内容でした。ただ、フィッシャーFRB副議長やダドリーNY連銀総裁が指摘するように、労働市場が完全雇用に接近しているのであれば、雇用増加ペースの鈍化は求人が少ないのではなく、人手不足が主因である可能性があります。
8月の雇用統計では賃金上昇率の加速は確認できませんでした。しかし、最新のベージュブック(地区連銀経済報告)では、労働市場について「ほとんどの地区で引き締まっており、賃金上昇圧力は一段と強まった」と報告されました。
個別事例としても、「ボストンでは異例なほど求人が増えた」、「リッチモンドでは初級レベルでの人の出入りが激しくなった」、「多くの地区で熟練労働者の抜けた穴を埋めるのが難しい」などの報告がありました。

前回7月のFOMC直前には全12地区のうち8地区の連銀が公定歩合引き上げを支持していたことも明らかになっており、20-21日のFOMCでは「利上げ」が少なくとも真剣に議論されるのではないでしょうか。<西田>


【ユーロ】 ECBはQE「検証」へ。現状維持によるユーロ高は短命!?

8日の理事会でECBは金融政策の現状維持を決定しました。そして、直後の会見でドラギ総裁は、「(追加緩和を)正当化できるほど、重大な変化はなかったと判断した」と説明し、少なくとも2017年3月まで実施される予定のQE(量的緩和=債券購入)の延長について「協議しなかった」と述べました。

ECBの決定やドラギ総裁の会見を受けて、ユーロは対ドルで一時1.132ドルまで上昇しましたが、その後は反落しました。ユーロが反落した一因は、ドラギ総裁がQEプログラムの「検証」を担当者に指示したと明らかにしたことかもしれません。これはQEの購入対象となる債券が減少しており、来年3月までに、あるいはそれ以降の実施が困難になる可能性があるからです。

検証の結果、債券1銘柄当たりの購入上限の引き上げ、発行残高の大きい国債の比率引き上げ(現在はECBへの出資比率に応じて各国国債を購入)、購入条件の緩和(現在は利回りが預金金利=-0.4%以上であること)などが、次回理事会以降に発表されそうです。

QE延長や増額などを含めて追加緩和の期待が高まる場面では、ユーロに下押し圧力が加わりそうです。ただし、米利上げ観測が高まらないようであれば、ユーロドルが今年の中心レンジである1.10-1.15ドルを大きく下放れすることもないかもしれません。<西田>


【豪ドル】 RBA政策会合はサプライズなし、次の材料は15日の雇用統計

RBA(豪中銀)は6日の会合で、政策金利を過去最低の1.50%に据え置くことを決定しました。

声明では、インフレについて「依然として極めて低い」と指摘。「非常に抑制された労働コストの伸びや海外の極めて低いコスト圧力を踏まえると、この状況はしばらく続く可能性が高い」との見解を示しました。

労働市場や豪ドルに関する文言は、前回8月とほぼ同じ。それぞれ「労働市場の指標は引き続き、ややまちまちとなっているが、雇用拡大が目先続くことを示唆している」、「豪ドル高は、経済が必要な調整を複雑にする可能性がある」との見方を示しました。

住宅市場についても8月の判断から大きな変化なし。「入手可能な情報では、住宅価格が過去1年全般的に緩やかに上昇し、住宅向け貸し出しの伸びが減速したことが示唆されている」と指摘しました。

そして、RBAは声明の最後を「入手可能な情報や、5月と8月の会合で金融政策を緩和したことを踏まえると、理事会は今回の会合で政策スタンスを維持することが、持続可能な経済成長およびインフレ目標の達成と一致していると判断した」と締めくくり、先行きの金融政策について言及しませんでした

RBAの追加利下げの有無や時期について、新たな手掛かりが提供されなかったことから、今回の声明はそれほど材料視されないかもしれません。15日に豪州の8月雇用統計が発表されます。結果次第では、豪ドルが反応する可能性があるため、注目です。

豪ドル/円は6日に一時79.09円へと上昇し、7月29日以来、1か月半ぶりの高値をつけました。その後は、90日移動平均線を挟んだ動きとなっています。豪ドル/円は6月以降の上昇局面では、90日移動平均線近辺で反落する状況が続いてきました。同移動平均線以上の水準を数日間維持すれば、90日移動平均線がサポートラインとして意識されて、今度は200日移動平均線に向かう展開になるかもしれません。8日時点で、90日移動平均線は78.22円、200日移動平均線は81.47円に位置します。<アナリスト 八代和也>

豪ドル/円(日足、2016/6/2-9/9 9:00時点)

出所:M2J FX Chart Square


【NZドル】 対ドルで一段と上昇する可能性も!?

乳製品価格が上昇しています。乳製品国際価格の指標であるGDT価格指数は6日の電子オークション(GDT)で898と、前回8月16日の833から上昇、昨年3月以来の高値をつけました。NZの乳業最大手のフォンテラが8月25日、乳製品の世界的な供給過剰が緩和し始めたとして、2016-17年の酪農家への乳価支払い見通しを5.25NZドルから5.35NZドルへと引き上げたことが、今回のGDT価格指数上昇の背景にあるようです。

乳製品はNZの輸出全体の約3割を占める最大の輸出品です。GDT価格指数(乳製品価格)の上昇は、NZドルにとってプラス材料です。

NZドル/米ドルは今週、0.74ドル台へと上昇し、昨年5月以来の高値を記録しました。GDTの好結果(=NZドル買い材料)や、米国の8月ISM非製造業景況指数が弱かった(=米ドル売り材料)ことが、背景でした。NZドル/米ドルは7月以降、0.73ドル台に入ると反落する状況が続いてきましたが、0.74ドル台に乗せてきたことでその状況が終わる可能性があります。今後は、昨年4月高値の0.7739ドルに向かう展開になるかもしれません。<八代>

NZドル/米ドル(週足、2014/11/2-)

出所:M2J FX Chart Square


【カナダドル】 BOCは政策金利を据え置き、経済とインフレの下振れリスクに言及

BOC(カナダ中銀)は7日、政策金利を9会合連続で0.50%に据え置くことを決定。声明では、今回の決定について「リスクバランスは、現在の金融政策スタンスが適切となる領域にとどまっており、BOC理事会は政策金利を0.50%に据え置くことが適切と判断した」としました。

カナダ経済は4-6月期にマイナス成長(前期比年率-1.6%)に陥りました。それについて、BOCはアルバータ州で5月に発生した森林火災が原油生産などに打撃を与えたことが要因と指摘。森林火災からの復興や政府の刺激策に後押しされて、国内経済は年後半に大幅に持ち直すとの見通しを示しました。

声明では、カナダの7月の輸出の力強さは心強いとする一方、過去数か月にわたる低迷によって「経済活動は7月時点の予想を下回る可能性がある」と指摘。また、「インフレ見通しに対するリスクは、若干下向きに傾いている」としました。BOCが経済やインフレの下振れリスクに言及したことで、7日にカナダドルが売られました。

ただし、市場ではBOCは政策金利を年内据え置くとの見方が有力です。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)が織り込む、年内据え置きの確率は87%、利下げの確率は13%です(9月8日時点)。OISを参考にすると、利下げ観測を背景に、カナダドル売り圧力が強まる状況ではなさそうです。<八代>




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