市場調査部レポート

2016/09/02 13:07米FOMCに向けた思惑が相場材料か

【相場環境】米FOMCに向けた思惑が相場材料か
【全体観・米ドル】米雇用統計後の変動シナリオについて
【ユーロ】ユーロ/円、レンジ相場を示唆?
【ポンド】ポンド/円、行く手には大きな抵抗帯が存在
【豪ドル】RBAは政策金利を据え置く可能性大、声明に注目!
【NZドル】6日の乳製品オークションに反応する可能性も!?
【南アフリカランド】下落圧力が加わりやすい地合い


【相場環境】 米FOMCに向けた思惑が相場材料か

8月26日のジャクソンホールでのイエレン議長の講演前後から、次回FOMC(9/20-21開催)での利上げ観測が高まってきました。
FFレート(政策金利)先物に基づけば、8月31日時点で市場が織り込む9月利上げの確率は36.0%、年内利上げの確率は59.9%、そして来年末までの複数回利上げの確率は46.8%です。「年内利上げ」はともかくとしても、それ以外の確率が50%を上回るかどうか(=市場のメインシナリオとなるかどうか)。上回るようであれば、ドル円が節目とされる105円を目指す、あるいはさらに上値を追う展開となるかもしれません。

いずれにせよ、8月の雇用統計(本稿執筆時点で未発表)をはじめ、今後の景気・物価指標がますます重要な鍵となりそうです。

来週(9/5-)、注目したいのは7日公表のベージュブック(地区連銀経済報告)です。これは20-21日のFOMCで金融政策を議論する際の資料になります。

前回(7/13公表)は、製造業が総じて改善するなど、「経済活動はほとんどの地区で改善した」と総括されました。雇用について「引き続き緩やかに増加」としたうえで、賃金上昇圧力は「総じて緩やか」とされたものの、個別には「熟練労働者の賃金上昇圧力が最も強い」、「入門レベルでも賃金が上昇」、「賃上げしない企業は採用に苦戦」など、労働需給のひっ迫が賃金上昇につながりつつあるとの報告が散見されました。
「完全雇用」「労働需給のひっ迫」は、最近のFRB関係者が利上げに前向きとなっている最大の根拠だとみられます。賃金上昇圧力の高まりが報告されるようであれば、利上げに積極的な「タカ派」がさらに勢いを増すかもしれません。

FOMC関係者の講演も予定されています。7日にウィリアムズSF連銀総裁、8日にローゼングレン・ボストン連銀総裁

ウィリアムズ総裁は8月18日の講演で、「国内経済が力強く、勢いもあることから、できれば割合早い時期に緩やかな利上げペースへと戻ることが妥当」、「賃金上昇はプラスの兆候、インフレ圧力は増大へ」などの見解を披露しました。
他方、ローゼングレン総裁は8月31日の講演で、「物価安定と最大雇用という二大目標は比較的早期に達成される公算が大きい」、「金利を長期間、低水準に維持することにリスクがないわけではない」などと語りました。

いずれの総裁も、「タカ派」と分類できそうです。8月雇用統計の結果を受けて、両総裁の発言がどう変化するのか、しないのか、大いに注目したいところです。

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4-5日に、G20財務大臣・中央銀行総裁会議が中国(杭州)で開催されます。共同声明では、BREXIT(英国のEU離脱)決定後の混乱から世界の金融市場が落ち着きを取り戻しつつあることが指摘されるかもしれません。また、「為替相場を目的としない」ことが改めて確認されることで、日本の当局者による口先介入は鳴りを潜めるかもしれません。

6日にRBA(豪州中銀)、7日にBOC(カナダ中銀)、8日にECB(欧州中銀)が金融政策を決める会合を開催します。いずれも現状維持となりそうですが、声明の中に今後の金融政策に関するヒントが盛り込まれるかどうかが、注目ポイントでしょう。

5日に黒田日銀総裁の講演、8日に中曽(なかそ)同副総裁の講演。7月の金融政策決定会合では「総括的な検証」を行うように執行部に指示が出されました。それを踏まえて20-21日に金融政策の変更が検討されるでしょう。「総括的な検証」の結果や、政策変更の有無やその中身に関して、何らかのヒントが出されるか、注目されます。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 米雇用統計後の変動シナリオについて

[ドル/円、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ドル/円:戻り売り相場100.00-105.00円

いよいよ“運命の”9月相場がスタートしました。

先月26日のジャクソンホール会合においてマーケットの関心事であったイエレンFRB議長の講演内容は、いかにも“バブルの守護神”“ウォール街の女神”の異名通りの慎重な発言に終始し、同会合のテーマ通り、Resilient(=しなやか)な言い回しとなった感も。イエレンFRB議長の講演内容骨子は以下の通りです。

「労働市場の堅調さが続いていることや、経済活動とインフレに対する当局の見通しを考慮すると、FF金利引き上げの論拠はこの数カ月間で強まったと考えられる」
「米経済は(FRBの)目標(=デュアル・マンデート※)達成に近付きつつある」 (※「物価の安定」と「完全雇用」)

また、“影のFRB議長”と言われるフィッシャーFRB副議長が、会合後のインタビューで「(米国は)完全雇用と考えられる水準にかなり近い」「インフレ率は(FRBが目標とする2%に達していないものの)上昇している」との援護射撃をし、ドル/円は100円台前半から103円台ミドルまで上昇しています。(2日執筆時点)

米国の金融政策を決定する実務の両巨頭が揃って“タカ派”スタンスを取ったことで、「9月利上げ近し」と考えたマーケットはドル買いで反応し、ドル/円・日足チャートで変形バブルボトム形成(=上昇基調のスタート)とする見方も出てくるほど。

ただし、両氏ともその発言の前提条件として、2日(金)に発表される米8月雇用統計結果を見極める必要があるとしており、個人的にも早合点に「ダブルボトム形成」と決め付けない方が無難だと思うのは、やや慎重すぎるでしょうか。

少なくとも、我々が認識すべきことは、米8月雇用統計結果を見てから動いても(戦略を構築しても)決して遅くはないということ。

そんな中、足もとのドル/円相場における「強気」「弱気」判断のベンチマークとして注目すべきは、NFP(非農業部門雇用者数)事前予想値である<18万人>という数字

仮に20万人を超えるような結果が出た際(A)は、「利上げをしないリスク」が台頭し、素直に「9月利上げ確率上昇」→「ドル買いフロー」が、また仮に10万人を割り込むような結果(B)が出た場合は「利上げを実施するリスク」が台頭し、「9月利上げ見送り」→「ドル売りフロー」が進展すると考えます。

いずれにしても、2日の米8月雇用統計は9月FOMCの“リトマス試験紙”とも言え、いわば2日を境にしてマーケットの景色がガラリと変化すると言っても大袈裟な表現ではありません。アルゴリズム主体の想定以上の値動きにも用心しながら、粛々とリスクシナリオを組み立てていくことが肝要と考えます。以下、ドル/円・日足・一目均衡表+ストキャスティクス(スロー)をご覧ください。



上記チャートより、1) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)に接近し、2) 2本の線(SDラインおよび%Dライン)が80%ライン上部でクロスしていることが確認できます。(本稿執筆は2日米雇用統計発表前)

これはかつて7/20以降(上図青丸+棒線)とよく似た動きとなっており、テクニカルシグナルの教科書と過去のパターンに従うと、先行スパンである104-105円付近でまとまった抵抗にあい、その後に下落フローが進展する確率は高いのではないかと考えます。

以下、2日の米8月雇用統計時のNFP数値をベンチマークとしたドル/円の変動シナリオです。

<上記(A)シナリオ> (NFP20万人以上)
(1)ローソク足の“雲”上抜け→(2)105円台突破→(3)その後7/21高値の107.48円レベルまでの上昇も

<上記(B)シナリオ> (NFP10万人未満)
(1)ローソク足の“雲”上抜け失敗→(2)下方への反落→(3)心理的ラインである100円台への接近も

当然相場の成り行きは複雑なオプション・プレイを伴うため、一概に二者択一の動きをする訳ではありませんが、今後の参考の一つとして見ていただければ幸いです。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/円、レンジ相場を示唆?

[ユーロ/円・ユーロ/ドル、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ユーロ/円:レンジ相場112.00-116.00円
○ユーロ/ドル:レンジ相場1.1090-1.1330ドル

以下、ユーロ/円の日足・一目均衡表+ストキャスティクス(スロー)をご確認ください。



上記チャートより、1) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)に接近し、2) 2本の線(SDラインおよび%Dライン)が80%ライン上部でクロスしつつあることが確認できます。(本稿執筆は2日米雇用統計発表前)

特にストキャスティクス(スロー)では80%ライン上部でクロス前ということもあり、いわゆる“ダマし”に注意する必要がありますが、概ねテクニカルの教科書に従うと、先行スパンである115.90-116.80円付近である程度の抵抗にあい、その後に横ばいフロー(レンジ相場)が進展する確率が高いと考えます。

仮に当該抵抗帯(115.90-116.80円)を上抜けした場合は、7/21高値である118.45円付近までの上昇の可能性も考えられます。

当該抵抗帯に圧し負けるような形となった場合は、概ね8月半ばに付けたレートと先行スパンの間のゾーンである112.00-116.00円をコアレンジとするレンジ相場が継続しそうです。<津田>


【ポンド】 ポンド/円、行く手には大きな抵抗帯が存在

[ポンド/円、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ポンド/円:戻り売り相場130.00-141.50円

以下、ポンド/円の日足・一目均衡表+ストキャスティクス(スロー)をご確認ください。



上記チャートより、1) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)に接近し、2) 2本の線(SDラインおよび%Dライン)が80%ライン上部でクロスしていることが確認できます。(本稿執筆は2日米雇用統計発表前)

ポンド/円の先行スパン(いわゆる“雲”)の抵抗帯の厚さは、ドル/円やユーロ/円を大きく上回り、視覚上でも大きな抵抗帯がローソク足の行く手を遮るであろうことが予想できます。

目先のポイントは、抵抗帯の“雲”の下辺である先行1スパン(≒141.50円)を突破できるか否か。

仮に突破できたとしても、ローソク足が次なる突破メドである先行2スパンまでには大きな“乱気流”が想定されるため、上方硬直性相場(=上値が重い相場展開であること)が継続すると捉えた方がよさそうです。<津田>


【豪ドル】 RBAは政策金利を据え置く可能性大、声明に注目!

RBA(豪中銀)が9月6日(火)、政策金利を発表します。RBAは前回8月の会合で、0.25%の利下げを決定、政策金利を過去最低の1.50%に引き下げました。

今回9月の会合では、政策金利の据え置きが決定されそうです。8月の利下げは4-6月のCPI(消費者物価指数)などでインフレ圧力の弱さが確認されたことが主な理由とみられることから、RBAは10月下旬に発表される7-9月期のインフレ率のデータを待つと考えられます。

市場では9月6日の会合で、政策金利が据え置かれるとの見方が有力。OIS(翌日物金利スワップ)では、8月31日時点で「据え置き」の確率が98.7%織り込まれています。「0.25%の利下げ」の確率は1.3%です。

9月の会合では、声明における金融政策に関する文言に注目です。8月の声明では、「理事会は、今回の会合で金融政策を緩和する(=利下げ)ことによって、インフレ率が徐々に目標に戻り、経済が持続的に成長するとの見通しが改善されると判断した」とし、先行きの金融政策について言及されませんでした。今回、追加利下げを示唆する文言に変われば、RBAの追加利下げ観測が高まり、豪ドルが売られる可能性があります。一方、可能性は低いとみられますが、政策金利を当面据え置くことを示唆する文言に変化した場合、追加利下げ観測が後退し、豪ドルが上昇しそうです。<アナリスト 八代和也>


【NZドル】 6日の乳製品オークションに反応する可能性も!?

9月6日(火)にGDT(グローバル・デイリー・トレード。NZのフォンテラ社が主催し、毎月2回行われる乳製品電子オークション)が開催されます。乳製品はNZの輸出全体の約3割を占める最大の輸出品であるため、その価格動向はNZ経済に影響を与え、またRBNZ(NZ中銀)も注視しています。

乳製品の国際価格の指標とされるGDT価格指数(以下、乳製品価格)は、今年3月の628を底に反発傾向にあり、前回8月16日のオークションでは833と、昨年10月以来の高水準となりました。NZドルにとってGDTの上昇はプラス材料、下落はマイナス材料です。

最近の市場の関心がFRB(米連邦準備理事会)の利上げ時期に向いているためか、NZの経済指標やイベントに対してNZドルの反応が鈍くなっている感があります。それでも、GDTが前回から大きく上昇あるいは下落すれば、NZドルが反応する可能性があり、注目です。<八代>


出所:GDTより作成


【南アフリカランド】 下落圧力が加わりやすい地合い

南アフリカの財政再建を主導し、市場からの信認が厚いゴーダン財務相が交代するのではとの懸念が、引き続きランドの下落圧力となるなか、8月31日に南アフリカ最大の民間債券運用会社であるフューチャーグロース・アセット・マネジメントが、国営企業6社に対する融資を停止することが明らかになりました。

加えて、同国の主力輸出品である金(ゴールド)や白金(プラチナ)が足もと下落していることも、ランドにとってマイナス材料です。それぞれ代表的な指標であるNY金先物や白金先物は、約2か月ぶりの安値圏にあります。FRB(米連邦準備理事会)の早期利上げ観測や、主要産出国である南アフリカの増産観測(ランド安で鉱山会社の採算が改善し、増産に動くとの見方)が背景にあります。

ネガティブ材料が相次ぐランドには、下落圧力が加わりやすい地合いとみられます。クロス円であるランド/円は、ドル/円の上昇に支えられて、比較的底堅く推移しているものの、注意が必要かもしれません。<八代>




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