市場調査部レポート

2016/08/19 15:00ドル安=米国の国策? 99円台割れの可能性も視野に

【相場環境】 日米金融政策のプチイベント
【全体観・米ドル】 ドル安=米国の国策? 99円台割れの可能性も視野に
【ユーロ】 ユーロ/ドル、三役好転を示現!
【ポンド】 ポンド/円、下限割れには要注意!
【豪ドル】 RBAの追加利下げ観測が後退すれば、豪ドルのプラス材料に
【NZドル】 NZドル売り圧力が強まる状況ではなさそう
【トルコリラ】 19日のフィッチの格付け見直しが注目材料


【相場環境】 日米金融政策のプチイベント

ドル円が100円ちょうどを挟んでの揉み合いとなってきました。このまま100円割れが定着するなら、それも95円程度で推移するなら、2013年4月4日の黒田日銀の「量的質的緩和」第一弾直前とほぼ同じ水準ということになります。そうなれば、黒田日銀が行ってきた金融緩和策の「円安」効果が消滅すると言い換えることもできそうです。

一方、ドルの実効レートをみると、足元では今年1月のピークから約7%下落しているものの、2013年4月の水準を15%近く上回っています。2014年の半ば以降、ドルが対ポンドや対ユーロで顕著に上昇したからであり、また資源価格の軟調を背景に、新興国や資源国の通貨に対しても堅調だったからです。

ただし、8月に入って、BREXITに揺れるポンド以外の主要通貨に対してドルはほぼ全面安の展開となっています。米経済指標が総じて軟調となり、FRBの利上げ期待が後退していることが背景です。それも、次の利上げがいつあるか(ないか)以上に、「利上げしてもせいぜい1回」との見方が大きいように思われます。

FFレート(政策金利)先物に基づけば、8月17日時点で市場が織り込む「年内利上げ」の確率は48.5%。同様に、「2017年末までに利上げ」の確率は75.6%ですが、このうち、「利上げ1回」の確率が38.9%となっており、「利上げ2回以上」の確率36.7%を上回っています。また、「2017年末まで利上げなし」の確率も24.4%あります。

米FOMC議事録(7/26-27開催)によれば、ハト派とタカ派の見解相違が鮮明でした。
「数人は、インフレ率の上昇が想定より早まるとしても、それに対応する時間は十分にある。したがって、物価が継続的に2%となる状況に近づきつつあると、もっと自信を持てるまで利上げを先送りしたい」とのことでした。
その一方で、「他の数人は、労働市場は完全雇用の状況に近づいており、緩やかな利上げを複数回行っても、物価目標の達成に向けた前進は続くと考えた」とありました。
また、「自分たちの経済見通しを前提とすれば、利上げはすでに正当化されているか、少なくとも間もなく正当化されると皆が判断した。そして、2(ないし3)人が即座の利上げを提唱した」とのことです。

NY連銀のダドリー総裁は16日のメディアとのインタビューで、「追加利上げが適切となる時期がじわりと近づいている」と述べ、9月の利上げの可能性を問われて「ありうると思う」と答えました。ダドリー総裁は、「市場は向こう1年程度に短期金利を緩やかに引き上げる必要性を過小評価している」とも述べました。

今後の経済情勢次第では、9月の可能性は低いとしても、「年内利上げ」や「2017年末までに複数回利上げ」の観測が高まることは十分にありそうです。

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来週は、日米金融政策に関連するプチイベントがあります。

26日のイエレンFRB議長の講演が最も注目を集めそうです。カンザスシティ連銀が主催する年次金融シンポジウム(ワイオミング州ジャクソンホール)でのものです。2010年の会合で当時のバーナンキ議長がQE2(量的緩和第2弾)の実施を示唆したことで有名です。イエレン議長は昨年の同会合への参加を見送りましたが、今回は何を語るでしょうか。

同じ26日には、日本の7月のCPI(消費者物価)が発表されます。6月のCPIは前年比-0.4%、食料とエネルギーを除くコアは同+0.5%でした。日銀が重視するコアはプラス圏にはありますが、2%の目標に届いておらず、むしろ差が広がっているようにもみえます。
7月以降も同様の状況が続く見通しならば(足元の「円高」は物価下押し要因)、日銀は9月20-21日の金融政策決定会合で予定している「総括的な検証」によって、大胆な追加緩和に踏み切るかもしれません。「総括的な検証」は物価目標の中長期化(現在は2年程度の期間で達成を目指す)や国債購入額の縮小(テーパーリング)などを含むとの市場の観測もあります。しかし、黒田総裁や岩田副総裁は、金融緩和を後退させる選択肢を明確に否定しています。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 ドル安=米国の国策? 99円台割れの可能性も視野に

[ドル/円、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ドル/円:戻り売り相場:98.40-102.30円

8月相場も3週間が経過し、ドル/円の19日時点までの月足高低差は3.38円となっています。(高値:102.79円、安値:99.41円)

過去10年間(2006-2015年)における8月の月間高低差平均は4.59円。これは12カ月における月間高低差平均の4.45円を上回る数字となっており、およそ「夏枯れ相場」とは言い難い状況と言えます。ただし、その背景は昨年(2015年)8月24日の“フラッシュ・クラッシュ”が要因となっています。

以下、ドル/円・過去10年の月別高低差とその平均につきご確認ください。

昨年(2015年)の8月における月間高低差は9.40円となっており、株価のクラッシュとともに記憶に残っている方が多いかもしれません。

8月における歴史的な出来事の多さについては先週号でお伝えした通りですが、今年の8月に限っては今のところ目立った材料も少なく、マーケットの耳目は次週26日のジャクソンホールでのイエレンFRB議長の講演内容に集中していると言えます。

無論、出来事や事件というのは突発的に発生する事例が多いため、現段階で一概に「無風」と決め付ける訳にはいきませんが、本格的な相場動意となり得るのは26日以降と考えた方がいいかもしれません。

そんな中、ドル/円のトレンドを予想する上で重要な意味を持つと考えられるのは、先般8月1日にインドネシア・バリ島で行われたダドリーNY連銀総裁発言。その発言骨子は以下の通りです。


「ドルが大幅に上昇すればFRB自らがより緩和的な政策経路をとり※(1)、影響を相殺しなければならないかもしれない」

「仮に海外の景気見通しが悪化し、他国の中銀が追加緩和策を打ち出すことになれば、(中略) 米金利に対する海外の相対的な金利先安観を背景にドルは上昇する公算が大きい。その場合、米国は金融政策の経路を調整しなければならない※(2)
 

上記発言の※(1)(2)は、FRBによるQE4も含めた金融緩和措置について言及しており、FOMCの副委員長の立場にある要人が明確にドル高牽制をしていることが見て取れます。

つまり、次の利上げを(ファイティングポーズも含めて)早めに実施したいFRBにとって、ドルが比較的軟調に推移し続けることはまさに「渡りに船」であり、足もとでのドル安基調は今後の利上げ判断におけるFRBの懸念事項が一つ減ることを意味すると捉えてよさそう。

となると、現段階では「ドル安=米国の国策」と捉えることができ、当面はドルの軟調地合いが継続すると考えた方がいいのかもしれません。これらを踏まえた上で、イエレンFRB議長が次週26日にどのような見解を示すのかには大いに注目する必要がありそうです。

閑話休題。以下、ドル/円・日足・一目均衡表+パラボリック+DMIをご覧ください。

上記チャートより、1) 21MA(21日移動平均線)の方向性が下向きであること、2) ローソク足の上方に赤い雲(=抵抗帯)があること、3) 遅行スパンの先端部分がローソク足の下方に位置していること、4) DMIが-DI>+DIとなっていることから、ドル/円の日足レベルでのトレンドは【下降基調】と判断できます。

上記チャートから勘案するドル/円の上値メドは、21MAラインである102.26円、下値メドは-2σラインである98.42円と考えます。

概ね102円台前半では上方硬直性相場が継続すると考え、ドル/円における当面のメインレンジは21日ボリンジャーバンドの-2σから21MAである98.40-102.30円と考えます。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/ドル、三役好転を示現!

[ユーロ/円・ユーロ/ドル、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ユーロ/円:レンジ相場:111.40-115.00円
○ユーロ/ドル:押し目買い相場:1.1200-1.1420ドル

以下、ユーロ/ドルの日足・をご覧ください。

上記チャートより、1) 21MA(21日移動平均線)の方向性が上向きであること、2) 遅行線がローソク足の上方に位置していること、3) 転換線>基準線となっていること、4) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)の上方に出ていること、さらに5) DMIが+DI>-DIとなっていることから、ユーロ/ドルの日足レベルでのトレンドは【上昇基調】と判断できます。

上記2)3)4)より、日足・一目均衡表では【三役好転】が確認できており、日足判断でのユーロ/ドルは強い上昇トレンドを形成しつつあると考えてよさそうです。

上記チャートから勘案するユーロ/ドルの上値メドは、6/24に付けた高値である1.1425ドル、下値メドは先行スパンの上辺(先行2スパン)である1.1201ドルと考えます。

今後のユーロ/ドルに関しては、ドルの上方硬直性とともに、18日に公表された7月ECB理事会会合議事要旨の内容(=ECBによる追加緩和をめぐる、行き過ぎた市場の観測に対する牽制姿勢)が足もとのユーロ高モメンタムの追い風と捉えてよさそうです。

これらを踏まえた上で、ユーロ/ドルにおける当面のメインレンジは、日足・一目均衡表・先行2スパンから6/24高値である1.1200-1.1420ドルと考えます。<津田>


【ポンド】 ポンド/円、下限割れには要注意!

[ポンド/円、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ポンド/円:戻り売り相場:128.00-134.00円

以下、ポンド/円・日足・ボリンジャーバンド+スパンモデル®+DMIをご確認ください。

上記チャートより、1) 21MA(21日移動平均線)の方向性が下向きであること、2) 遅行スパンがローソク足の下方に位置していること、3) ローソク足の上方に赤い雲(=抵抗帯)があること、4) DMIが-DI>+DIとなっていることから、ポンド/円の日足レベルでのトレンドは【下降基調】と判断できます。

ポンド/円は日足チャートのみならず、週足チャートおよび月足チャートでも【下降基調】を示唆しており、しばらくの間、ポンド安基調が継続すると考えた方がよさそうです。

上記チャートから勘案するポンド/円の上値メドは、21MAラインである134.00円、下値メドは-2σラインである128.04円と考えます。

概ね134円前後では上方硬直性相場が継続すると考え、ポンド/円における当面のメインレンジは21日ボリンジャーバンドの-2σから21MAである128.00-134.00円と考えます。一方で、仮に128.00円を終値レベルで割り込んだ場合は、21週ボリンジャーバンド・-2σラインである124.90円付近までの下落も視野に入れておいた方がよさそうです。<津田>


【豪ドル】 RBAの追加利下げ観測が後退すれば、豪ドルのプラス材料に

RBA議事録
RBA(豪中銀)は8月2日、0.25%の利下げを決定(政策金利を過去最低の1.50%へ)。その会合の議事録が、16日に公表されました。

議事録によると、2日の利下げはインフレや経済成長を押し上げることが狙いで、豪住宅市場への懸念が後退したことで、より利下げに動きやすくなったようです。

議事録では、「最近(4-6月期)のCPI(消費者物価指数)によって、インフレ率がしばらくの間、低水準にとどまる可能性が高いことが確認された」と指摘し、「経済見通しは前向きで、より力強い経済成長の余地があり、利下げによって支援できる」と説明。住宅市場については、「家計部門のレバレッジ拡大と住宅価格の急激な上昇に関連するリスクが低下した」との見解が示されました。市場では、過熱気味にある豪住宅市場がRBAの利下げの障害になるとみられていました。

そして、政策メンバーは最終的に「今回の会合で金融政策を緩和(=利下げ)することにより、インフレ率が徐々に目標に戻り、経済が持続的に成長するとの見通しが改善する」との判断から、利下げに踏み切ったことが明らかになりました。

豪雇用統計
8月18日、豪州の7月雇用統計が発表されました。失業率は5.7%と、6月の5.8%から若干改善。雇用者数は前月比2.62万人増と、昨年11月(7.24万人増)以来の大幅な伸びを記録しました。市場予想は、失業率が5.8%、雇用者数が+1.00万人増でした。7月の雇用総計は好結果と言えそうです。

ただし、雇用者数の内訳をみると、パートタイム就業者が7.16万人増加した一方、フルタイム就業者が4.54万人減少しており、雇用者数はヘッドラインほど良くないと言えるかもしれません。

それでも、失業率が改善し、雇用者数が大幅に増加したこともあって、市場でRBAの追加利下げ観測が後退すれば、豪ドル(対円、対ドルとも)にとってプラス材料になりそうです。OIS(翌日物金利スワップ)が8月18日時点で織り込む、RBAの利下げの確率は、9月が3.0%、10月までが19.0%、11月までが35.1%です。
<アナリスト 八代和也>


【NZドル】 NZドル売り圧力が強まる状況ではなさそう

RBNZ(NZ中銀)は8月11日、政策金利を2.25%から0.25%引き下げ、過去最低の2.00%にすることを決定。声明で追加利下げを示唆しました。

RBNZの年内の政策会合は、9月22日と11月10日の2回です。後述のRBNZのマクダーモット総裁補佐の発言や、今後の経済指標の発表スケジュールを踏まえると、追加利下げがあるとすれば、11月の会合の可能性が高いとみられます。

マクダーモット総裁補佐は8月11日のインタビューで、「インフレを押し上げるために追加利下げが必要になるだろう」との見解を示す一方、「金融政策報告とともに金利を動かすことが望ましい」「金融政策報告は、政策スタンスを効果的に伝達する良い機会」と述べました。金融政策報告が発表される会合では、RBNZ総裁の記者会見が実施されます。次回の金融政策報告は、11月10日に公表。そして、NZの7-9月期CPI(消費者物価指数)が10月18日、四半期ごとのRBNZのインフレ期待調査が11月2日に発表されます。

市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、RBNZが9月の会合で利下げを行う確率が35.4%織り込まれています。利下げの確率は11月までで73.2%へと上昇します(8月18日時点)。

RBNZの追加利下げ観測は、NZドル(対円、対ドルとも)にとってマイナス材料です。ただし、多くの中央銀行が金融緩和を強化しています。BOE(英イングランド銀行)やRBA(豪中銀)は今月利下げに踏み切りました。日銀は来月にも追加緩和を決定するとの観測があります。FRB(米連邦準備理事会)の利上げは、年内1回あるかどうかまで見方が後退しました。そう考えると、RBNZの利下げ観測を材料に、NZドル売り圧力が強まる状況ではないのかもしれません。<八代>


【トルコリラ】 19日のフィッチの格付け見直しが注目材料

格付け会社のフィッチが8月19日に、トルコ国債の格付けの見直し結果を発表する予定です。執筆時点では結果は判明していませんが、もし今回格下げが行われれば、トルコ国債は「投機的等級(ジャンク)」に転落することになります。その場合、トルコリラに下落圧力が加わる可能性があります。一方、格下げがなかった場合、トルコリラが上昇するかもしれません。

*黄色がトルコ国債の格付け(外貨建て、8月18日時点)
出所:Bloombergより作成

TCMB(トルコ中銀)が8月23日に政策金利を発表します。TCMBは今年3月、3つある政策金利を最終的に一本化する「単純化」を開始。前回7月の会合まで、5会合連続で1週間物レポ金利(主要政策金利)と翌日物借入金利を据え置き、翌日物貸出金利を引き下げました。

今回の会合では、単純化がさらに進められて、これまでと同様に翌日物貸出金利の引き下げが決定される可能性が高いとみられます。翌日物貸出金利が1週間物レポ金利に次第に近づくなか、TCMBが単純化措置を今まで通り続けるのかどうか、それともそのペースを落とすのかどうか、その手掛かりを得るうえで、声明に注目です。<八代>


※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。

※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。

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