市場調査部レポート

2016/08/05 14:00世界的な金融緩和の流れ!?

・【相場環境】世界的な金融緩和の流れ!?
・【全体観・米ドル】100円台では心理的なサポートも
・【ユーロ】ユーロ/ドルは方向感を欠く展開に
・【ポンド】ポンド安誘導は“国策”?
・【豪ドル】RBAが利下げも、豪ドル売り圧力が強まる状況ではなさそう
・【NZドル】11日の利下げは織り込み済み。「その次」があるかどうかが焦点?


【相場環境】 世界的な金融緩和の流れ!?

4日、BOE(英中銀)は、利下げや債券購入を含む「異例の」包括的刺激策を発表。カーニー総裁は会見で、追加利下げの用意があると明言しました。7月29日の日銀の追加緩和、8月2日のRBA(豪中銀)の利下げ、そして4日のBOEと続き、11日のRBNZ(NZ中銀)の会合でも利下げが確実視されています。世界的な金融緩和の新しいラウンドが再開されたかのようです。

そうしたなか、今週(4日まで)の通貨の強さの序列は、総じて主要国通貨<新興国通貨です。また、一時40ドルを割れた原油価格(WTI先物)は42ドル近辺まで反発しています。世界的な金融緩和が経済成長に寄与し、資源価格の上昇につながるとの観測が背景にありそうです。

円は、主要国通貨としては例外的に堅調でした。29日の日銀の追加緩和が市場の期待に届かなかったことが一つ。そして、発表文にあった「(次回会合での)総括的な検証(を行う)」との文言が国債購入の減額などの金融緩和の縮小を示す可能性があるとの見方から、国債利回り(市場金利)が上昇したことがもう一つの背景でした。

しかし、2日に黒田日銀総裁が「そうしたこと(緩和縮小)にはならない」と発言。4日にも岩田副総裁が「早期に2%(の物価目標)を達成するために何か必要か、検証する」、「金融緩和の程度を緩めることはありえない」と明言しました。こうした発言を受けて、国債利回りが改めて低下に向かうのか、9月20-21日の次回会合に向けて追加緩和期待が再び高まるのか、その結果として円の上昇圧力が低下するのか、大いに注目されます。

他方、米利上げ観測は低いままです。FFレート(政策金利)先物に基づけば、市場が織り込む年内の利上げ確率は4日時点で4割弱。換言すれば、市場は6割強で「年内据え置き」を織り込んでいることになります。足元の景気の底堅さ、労働市場の堅調や賃金のジリ高傾向(本稿執筆時点で5日の雇用統計は未発表)などから、市場の利上げ織り込み度合いはやや低すぎるように感じます。

もっとも、「年内利上げはせいぜい1回、その後はしばらく据え置きが続く」という程度なら、ドルを大きく押し上げるには力不足でしょう。ドルが上向きの推進力を得るには、BREXIT(英国のEU離脱)の悪影響や世界経済の低迷にもかかわらず、米国経済が1人勝ちしていることが確認される必要があるかもしれません。

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米大統領選挙では、共和党のトランプ候補が、米兵遺族に対する中傷や共和党幹部への不支持表明などで、党内からも痛烈な批判に晒(さら)されています。トランプ候補は、共和党幹部から路線修正を迫られても、それを無視しているとのことです。共和党の選挙陣営は空中分解の危機に瀕しており、「トランプ候補辞退も」といった憶測まで聞こえてくる始末です。

8日には、トランプ候補がデトロイトで経済政策について講演する予定です。接戦州で民主党のクリントン候補にリードを広げられているとの報道もあるようですが、トランプ候補はリカバリーショットを打てるのか。トランプ候補の失速や選挙戦からの脱落が金融市場にどのような影響を及ぼすかは未知数ですが、引き続きトランプ候補の言動から目が離せません。

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来週は経済指標などの相場材料に乏しい週です。7月の米小売売上高(12日)は引き続き個人消費の堅調を示す可能性があります。ガソリン価格の低下は売上高の減少要因ですが、一方で既報の自動車販売台数は昨年11月以来の高い水準でした。また、8月のミシガン大学消費者信頼感指数(同)は、BREXITを受けて大きく低下した7月から小幅反発しそうです。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 100円台では心理的なサポートも

[ドル/円、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ドル/円:レンジ相場:100.00-104.00円

4日(木)の東京時間終盤、日銀が指数連動型の上場投資信託(ETF)を約700億円買い入れ、またその前日にも347億円購入していることが公表され、事実上の株価PKO(価格維持政策)が執行されている東京株式市場。

これは、先の日銀会合において、「質」部分であるETF買い入れ額を現行の年3.3兆円から年6兆円と倍増することが決定されたことに伴う措置で、まさに東京株式市場に巨大なクジラが放り込まれたことと同じと言えます。(クジラが抜ける際の出口の議論は別として・・・。)

先般閣議決定された28兆円超の政府の大型経済対策とともに、市場にはじゃぶじゃぶの“官製マネー”が行き渡る動きとなっており、4日に決定された英国の異例の大規模金融緩和政策とともに、世界的なカネ余り(過剰流動性資金)時代への再突入となるのかもしれません。

そんな中、いやが上にも来月20・21日の日銀金融政策決定会合には注目が集まりますが、足もとの焦点は先の日銀発表文に記載された9月における「総括的検証」の解釈。

4日(木)の講演において、その「総括的検証」について岩田規久男日銀副総裁は「早期に2%(の物価目標)を達成するために何が必要か検証する」と説明し、さらに「金融緩和の程度を緩めることはありえない」と強気の発言をしたことを勘案すると、「総括的検証」とは大胆な金融緩和を実施するための地ならしのための修飾語と捉えてもいいのかもしれません。

いずれにしても、年後半のマーケットにおいても、メイン・プレーヤーは中央銀行であることに変わりはなく、“中央銀行カジノ相場”と呼ばれるような様相はしばらく継続すると見てよさそうです。

その意味でも、今後の主要各国の中央銀行会合スケジュールについては相場を見る上での1丁目1番地として押さえておく必要があると考えます。以下、FRB、ECB(欧州中央銀行)、日銀、BOE(イングランド銀行)の年内会合スケジュールにつき、確認いただくようお願いします。



閑話休題。以下、ドル/円・日足・一目均衡表+パラボリック+DMIをご覧ください。



上記チャートを見てみると、1) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)の下方にあること、2) 遅行線がローソク足と絡み合っていること、3) DMIが-DI>+DIとなっていることから、足もとのドル/円相場は上値の重い【横ばい基調】(レンジ相場)を示唆しています。

上記チャートから勘案するドル/円の上値メドは、先行1スパン(=“雲”の下辺)である103.91円

上値に関しては、概ね104円台で頭が抑えられる展開を想定していますが、下値については先述した通り「(9月の)総括的検証」という心理的抵抗もあり、100円台を大きく割り込んでいくような相場展開にはなりにくそうです。

あくまで米7月雇用統計発表前時点での予測ですが、次週ドル/円のコアレンジは100-104円と予想します。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/ドルは方向感を欠く展開に

[ユーロ/円・ユーロ/ドル、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ユーロ/円:レンジ相場:110.40-117.00円
○ユーロ/ドル:レンジ相場:1.1000-1.1220ドル

早速ですが、以下、ユーロ/ドルの日足・一目均衡表+パラボリック+DMIをご覧ください。



上記チャートを見てみると、1) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)の下方にあること、2) 遅行線がローソク足と絡み合っていること、3) DMIが+DI>-DIとなっていることから、足もとのユーロ/ドル相場は上下の力が相殺される形での【横ばい基調】(レンジ相場)を示唆しています。

上記チャートから確認できるユーロ/ドルの喫緊のポイントは、先行2スパン(=“雲”の上辺)である1.1262ドル

ユーロ/ドルが当該レベルを上抜けた場合は【三役好転】となり、上昇フローが加速することが予想され、中期的な上昇トレンドのトリガーとなる可能性もあります。

ただし、ユーロ圏自独自の材料は来週乏しいこともあり、足もとでは5日(金)の米7月雇用統計結果がその動意となりそうです。

ユーロ/ドルは、対ドルでの力学とともに対ポンドでの力学も孕むため、足もとの方向性は副次的となり、結果的には方向感を欠くレンジ相場主体の展開となりそうです。<津田>


【ポンド】 ポンド安誘導は“国策”?

[ポンド/円、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ポンド/円:戻り売り相場:129.00-139.00円

以下、ポンド/円・日足・ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご確認ください。



上記チャートを見てみると、1) 21MA(21日移動平均線)が横向きであること、2) DMIが-DI>+DIとなっていることから、足もとのポンド/円相場は【横ばい基調】(レンジ相場)を示唆しています。

ただし、方向性を示すDMIが-DI>+DI、つまりマイナスの方向性が優位であるため、今後は下降トレンドが強まる可能性もあります。

そのトリガーとなり得るのが、日足・-2σライン(≒130.97円)。凡そ、131円台割れが示現した場合は、ポンド/円の下落スピードが加速する可能性も。

4日、BOE(イングランド銀行)が約7年ぶりとなる政策金利の引き下げと量的緩和(QE)の再開を決定し、さらに国債買い入れ枠拡大や社債の購入、また新たな民間銀行向け供給スキーム(TFS)といった“異例の”包括的かつ大胆な金融刺激策を実施したことは周知の通りです。

6月のBrexit(英国のEU離脱)決定直後に、「英経済や金融システムを守るために躊躇しない」との言葉を有言実行したカーニーBOE総裁ですが、額面通りに受け止めると、今後も“国策”としてのポンド安誘導は継続すると捉えてよさそうです。<津田>


【豪ドル】 RBAが利下げも、豪ドル売り圧力が強まる状況ではなさそう

RBA(豪中銀)は2日、政策金利を0.25%引き下げ、過去最低の1.50%にすることを決定しました。利下げは5月以来、今年2回目です。

声明では、「最近のデータは、インフレ率が依然として極めて低い水準であることを確認。非常に抑制された労働コストの伸びや海外の極めて低いコスト圧力を踏まえると、この状況はしばらく続く可能性が高い」と指摘しました。

労働市場や豪ドルに関する文言は、前回7月からほとんど変わりませんでした。一方、住宅市場については7月から変化。「最新の情報では、住宅価格は今年に入ってからほんの緩やかに上昇していることを示唆」「住宅向け貸し出しの伸びは今年、若干減速した」と指摘。そのうえで、「低金利が住宅市場におけるリスクを増幅させる可能性が低下したことを示唆している」としました。前回は、「住宅価格の上昇はこの数か月、多くの地域で再び上昇した」でした。

今回の利下げは、4-6月のCPI(消費者物価指数)などでインフレ圧力の弱さが確認されたことが主な理由のようです。住宅市場が一段と過熱するリスクが低下したことで、より利下げに動きやすくなったと考えられます。

RBAは声明の最後を「理事会は、今回の会合で金融政策を緩和する(=利下げ)ことによって、インフレ率が徐々に目標に戻り、経済が持続的に成長するとの見通しが改善されると判断した」と締めくくり、今後の金融政策について言及しませんでした

RBAの次の一手は「利下げ」とみられます。ただし、実際に利下げに踏み切るかどうかはデータ次第、特にインフレ統計が重要と考えられます。5月の利下げは1-3月期のインフレ率の低さが主な理由、今回も4-6月期のインフレ率が発表された後の会合です。10月26日に発表される7-9月期のインフレ統計まで待ち、そこでインフレ圧力が依然として弱いことが確認されれば、11月の会合で追加利下げに踏み切るかもしれません。

市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)が織り込む、RBAが9月の会合で利下げを行う確率は3.6%(4日時点)。利下げの確率は、10月までで18.4%、11月までで38.9%へと上昇するものの、当面は「据え置き」との見方が有力であることが確認できます。利下げがあるとしてもしばらく先と考えると、利下げ観測を背景に、豪ドルに対して売り圧力が強まる状況ではないのかもしれません。<アナリスト 八代和也>


【NZドル】 11日の利下げは織り込み済み。「その次」があるかどうかが焦点?

11日にRBNZ(NZ中銀)が政策金利を発表します。その結果がNZドルの動向に影響を与える可能性があり、注目です。

経済指標などをみると、追加利下げが決定される可能性が高いとみられます。NZの4-6月期のCPI(消費者物価指数)は前年比+0.4%と、RBNZのインフレ目標の下限である+1.0%を7四半期連続で下回りました。インフレ期待や賃金上昇率は依然として低水準です。

一方、NZではオークランドを中心に住宅市場が過熱気味にあり、一段の利下げは住宅市場をさらに過熱するおそれがあります。ただ、それに対しても、RBNZは7月に住宅ローン規制を強化する措置を打ち出しました。この措置により、RBNZは利下げに動きやすくなったと考えられます(利下げの障害となっている住宅市場の過熱にブレーキがかかる?)。

市場は、11日の利下げをほぼ確実視。OIS(翌日物金利スワップ)では、0.25%の利下げが89.0%織り込まれ、0.50%の利下げも11.0%織り込まれています(4日時点)。

RBNZの利下げは、NZドルにとってマイナス材料です。ただし、上述のOISを参考にすると、利下げはすでに市場に織り込まれています。そのため、利下げ自体はそれほど材料視されないかもしれません。焦点は、「その次」の利下げがあるかどうかになりそうです。市場では、8月を含めて年内に2回利下げが行われるとの見方もあります。11日に利下げを行い、さらに声明で追加利下げの可能性が示されれば、利下げ観測が残ることから、NZドルが下落する可能性があります。一方、声明が利下げ打ち止めを示唆する内容の場合、NZドルが上昇するとみられます。<八代>


出所:Bloombergより作成




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