市場調査部レポート

2016/07/22 14:50注目の日米中央銀行の会合

<お知らせ>
「マンスリー・アウトルック」は通常、最終金曜日に配信しますが、次号は8月1日(月)にお送りします。7月29日の日銀会合の結果をレポートにフルに反映させるためです。よろしくお願い申し上げます。

・【相場環境】注目の日米中央銀行の会合
・【全体観・米ドル】“ヘリマネ”攪乱相場に要注意の一週間
・【ユーロ】ユーロ/円の上値は限定的?
・【ポンド】ポンド/円、上方硬直性に変化なし
・【豪ドル】利下げは4-6月期インフレ率次第?
・【NZドル】高まる8月追加利下げ観測、NZドルの重石に!?
・【トルコリラ】政治情勢は引き続きリラ安要因か
・【南アフリカランド】SARBは当面、政策金利を据え置きか


【相場環境】 注目の日米中央銀行の会合

来週は日米中央銀行の会合があります。26-27日の米FOMCと、28-29日の日銀の金融政策決定会合です。

FOMCは現状維持が決定されそうです。注目は、年内、早ければ9月の利上げに向けてのタカ派的なトーンが声明などにみられるかどうかでしょう。前回(6/14-15)は、英国民投票の前ということもあって、全会一致で現状維持が決定されました。それまで0.25%の即時利上げを主張していたジョージ・カンザスシティ連銀総裁も賛成に回りました。

足元の米経済は比較的好調です。29日発表の4-6月期GDPは前期比年率+2.4%が予想されており(アトランタ連銀のGDPNow)、1-3月期の同+1.1%から加速する見込みです。また、BREXITショックで下落した世界の株価は反発しており、NYダウが過去最高値を更新するなど、リスクオンが強まっています。

そうしたなかで、ジョージ総裁は再び利上げを主張するかもしれません。また、声明に「(政策変更の是非を)次回会合で判断する」旨が盛り込まれれば、利上げ観測が高まりそうです。

一方、日銀の金融政策決定会合では追加緩和の可能性がありそうです。会合の結果について、いくつかのシナリオを考察してみます。

市場の期待に反して「現状維持」が決定されるケース。今年4月27-28日の会合では、「展望レポート」で物価目標の達成時期が半年先送りされたにもかかわらず、現状維持が決定されました。事前に、「日銀が貸出金利のマイナス化を検討」との報道が伝わっていたこともあり、28日の決定を受けて市場は大いに失望しました。ドル円は4月28日の一日で3円超下落し、翌日もさらに1.5円程度下落しました。また、28日の日経平均は前日比600円超の下落となりました。今回も、「ヘリコプター・マネー」、「永久国債」など大胆な緩和策が話題になっているだけに、4月28日と同様のネガティブな反応がみられるかもしれません。

限定的な追加緩和が決定されるケース。国債、ETFなどの資産購入額を小幅増額するケースがこれに該当します。市場はある程度決定を好感するかもしれませんが、株高・円安の反応は限られるでしょう。日銀が残り少ない手段を小出しにしている、限界が近いと市場が見透かすならば、株安・円高に振れる可能性もありそうです。パッケージに(当座預金金利の)マイナス金利の拡大が含まれれば、銀行株を中心に株価にとってマイナス(≒円高要因)、逆に日銀貸出金利のマイナス化が含まれれば、株価にとってプラス(≒円安要因)かもしれません。

思い切った追加緩和が決定されるケース。資産購入額の大幅増額か、あるいはそれ以上に財政と金融を一体化させた経済政策が打ち出されるケースです。日銀が国債を直接引き受けることは財政法によって禁じられています。ただし、政府が経済対策の規模や建設国債の発行額を明らかにし(菅官房長官は赤字国債の発行を否定しています)、日銀がそれと同規模の国債購入増額を発表すれば、「ヘリコプター・マネー」に似た効果を持たせることはできそうです。ただし、追加緩和が大胆・大規模であるほど、財政規律の喪失やハイパーインフレが想起されそうです。その場合は、円安でも「悪い円安」であり、株式や債券市場から資金が国外流出しないか、懸念されることになるかもしれません。

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本日(22日)以降のその他のイベントでは、23-24日のG20財務相・中央銀行総裁会議(中国、成都)。世界経済の成長策や構造改革、人民元を含む為替相場、BREXIT(英国のEU離脱)の影響などが議論されそうです。また、29日にはEUの銀行ストレステストの結果が公表されます。資本不足が指摘されているドイツ銀行やモンテ・パスキ銀行(イタリア)などの成績が注目されるところでしょう。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 “ヘリマネ”攪乱相場に要注意の一週間

[ドル/円、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ドル/円:戻り売り相場100.50-108.00円

引き続きマーケットの注目ワードは・・・「ヘリコプター・マネー」(“ヘリマネ”)

注目となっている証左こそ、昨日21日の欧州時間序盤におけるドル/円の動きなのかもしれません。

21日日本時間15時頃に107円台前半で推移していたドル/円が、16時を過ぎたあたりから急落し、一時105.40円まで2円近く下落するという動きがありました。その要因となったのが、黒田総裁発言。

英BBCラジオ4の番組内で、黒田日銀総裁がインタビューに答え、「(現段階で)ヘリコプター・マネーは必要も可能性もない」と語ったとのニュースが流れ、そのワードに反応したアルゴリズムの動きが主体となって瞬時に機械的なドル売り・円買いフローが加速しました。

アルゴリズムとはコンピューターによる高速取引のことで、事前に設定した執行ストラテジーに応じて一度に大量かつシステマチックな発注を伴うためレート形成に大きな影響を与えると言われています。

その執行ストラテジーに「ヘリコプター・マネー」というワードが組み入れられていることは、昨日の値動きを見ればほぼ明らか。(のちにその発言は6/17のものであることが判明し、下げ止まる動きに。)

当面はこの「ヘリコプター・マネー」というワードがマーケットの攪乱要因となることも想定されるため、次週に迫る28-29日の日銀金融政策決定会合までは神経質な相場展開となりそうです。

早速ですが、以下ドル/円・週足・ボリンジャーバンド+スパンモデル®+DMIをご覧ください。



上記チャートを見てみると、1) 21MA(21週移動平均線)が下向きであること、2) ローソク足の上方に赤い雲(=抵抗帯)があること、3) 遅行線がローソク足の下方にあること、そして4) –DIが+DIの上方に位置していることから、先週と変わらず緩やかな下降トレンドが継続中であることが確認できます。

上記週足チャートから勘案するドル/円の上値メド・下値メドについては・・・
■上値メド:107.65円(≒先行1スパン) ないしは 108.02円(≒21MAライン)付近
■下値メド:100.47円(≒-2σライン) 付近
と想定します。

ちなみに、先週の当レポートでお伝えしたドル/円の上値メド・下値メドは以下の通りです。

■上値メド:107.65円(≒先行1スパン) ないしは 108.46円(≒21MAライン)付近
■下値メド:100.65円(≒-2σライン) 付近

22日午前10時時点でのドル/円の週間高低レンジは105.27から107.48円となっており、やはり赤い雲の下辺である先行1スパン付近では上値が重くなっていることが分かります。

いずれにしても、現状のドル/円の週足チャートにおけるテクニカルシグナルは【上方硬直性】となっており、上値は限定的であることを示唆しています。

来週末の日銀会合において、仮にヘリコプター・マネーやそれに準じる追加緩和措置が実施された場合は当初はドル買い・円売りフローとなることが予想されますが、上記チャート形状を見る限り、スパイク・ハイ(瞬間的高値)を示現した場合は『戻り売り』で対応してみてもいいのではないでしょうか。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/円の上値は限定的?

[ユーロ/円・ユーロ/ドル、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ユーロ/円:戻り売り相場112.00-118.80円
○ユーロ/ドル:レンジ相場1.0950-1.1220ドル

以下、ユーロ/円・週足・ボリンジャーバンド+スパンモデル®+DMIをご確認ください。



上記チャートを見てみると、1) 21MA(21週移動平均線)が下向きであること、2) ローソク足の上方に赤い雲(=抵抗帯)があること、3) 遅行線がローソク足の下方にあること、そして4) –DIが+DIの上方に位置していることから、先週と変わらずユーロ/円は緩やかな下降トレンドが継続中と判断することができます。

上記週足チャートから勘案するユーロ/円の上値メド・下値メドについては・・・
■上値メド:118.75円(≒先行1スパン)付近
■下値メド:112.04円(≒-2σライン) 付近
と想定します。

ちなみに、先週の当レポートでお伝えしたユーロ/円の上値メド・下値メドは以下の通りです。

■上値メド:118.75円(≒先行1スパン) ないしは 121.69円(≒21MAライン)付近
■下値メド:112.85円(≒-2σライン) 付近

22日午前10時時点でのユーロ/円の週間高低レンジは116.14から118.45円となっており、ドル/円と同様やはり赤い雲の下辺である先行1スパン付近では上値が重くなっています。

現状のユーロ/円の週足チャートにおけるテクニカルシグナルは、ドル/円と同様【上方硬直性】となっており、上値は限定的であると捉えてよさそうです。<津田>


【ポンド】 ポンド/円、上方硬直性に変化なし

[ポンド/円、今週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ポンド/円:戻り売り相場133.30-142.90円

以下、ポンド/円・週足・ボリンジャーバンド+スパンモデル®+DMIをご確認ください。



上記チャートを見てみると、1) 21MA(21週移動平均線)が下向きであること、2) ローソク足の上方に赤い雲(=抵抗帯)があること、3) 遅行線がローソク足の下方にあること、そして4) –DIが+DIの上方に位置していることから、ポンド/円はしばらく緩やかな下降トレンドが継続すると判断してよさそうです。

上記週足チャートから勘案するポンド/円の上値メド・下値メドについては・・・
■上値メド:142.90円(≒-1σライン) 付近
■下値メド:133.30円(≒-2σライン) 付近
と想定します。

ちなみに、先週の当レポートでお伝えしたポンド/円の上値メド・下値メドは以下の通りです。
■上値メド:144.58円(≒-1σライン) ないしは 149.06円(≒1先行1スパン)付近
■下値メド:135.64円(≒-2σライン) 付近

22日午前10時時点でのポンド/円の週間高低レンジは138.32から142.41円となっており、ドル/円・ユーロ/円以上に上値は重く、概ね-1σライン近辺で上値が抑えられている状態です。

当面のポンド/円は、ドル/円・ユーロ/円と同様【上方硬直性】相場となっており、基本的なトレード方針は「戻り売り」がワークすると考えてよさそうです。<津田>


【豪ドル】 利下げは4-6月期インフレ率次第?

RBA(豪中銀)議事録が7月19日に公表されました。政策金利の1.75%据え置きを決定した7月5日の政策会合の議事録です。

議事録では、政策メンバーが「今後1か月で入手できるインフレ圧力や労働市場、住宅市場の活動に関する情報が、経済成長とインフレの見通しの評価を洗練させ、適切とみられる政策スタンスに調整することを可能にする」と考えていることが判明しました。

豪州の4-6月期のインフレ率が7月27日に発表されます。CPI(消費者物価指数)は2014年10-12月期以降、RBAのインフレ目標(+2から3%)を下回り続けており、2016年1-3月期は前年比+1.3%でした。また、RBAがCPIとともに重視するとされる基調インフレ率(トリム平均と加重中央値の平均値)は、1-3月期に1983年の統計開始以来最低を記録。RBAは今年5月に利下げを実施した際、1-3月期のインフレ率が予想外に低かったことを理由に挙げました。27日に発表されるインフレ統計でインフレ圧力の弱さが確認されれば、RBAは8月2日の会合で追加利下げに踏み切るかもしれません。市場予想は、CPIが前年比+1.1%、基調インフレ率が同+1.4%です(22日9時時点)。

市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、RBAが8月の会合で0.25%の利下げを行う確率が67.7%、政策金利を据え置く確率が32.3%織り込まれています(7月21日時点)。<アナリスト 八代和也>


出所:Bloombergより作成


【NZドル】 高まる8月追加利下げ観測、NZドルの重石に!?

今週は、RBNZ(NZ中銀)の8月の利下げ観測を強める材料が相次ぎました。

18日に発表されたNZの4-6月期のCPI(消費者物価指数)は前年比+0.4%と、市場予想の+0.5%、そしてRBNZの6月時点の予測である+0.6%を下回りました。

翌19日には、RBNZが住宅価格の高騰を抑制するために住宅ローン規制を強化する措置を発表しました。この措置により、利下げの障害となっている住宅市場の過熱にブレーキがかかり、RBNZは利下げに動きやすくなると見ることができます。

そして、21日にRBNZの経済見通しが公表されました。経済見通しでは、インフレについて、「CPIの総合指数は目標レンジを下回る状態が続いている」「長期インフレ期待は2%でしっかりと固定されているが、短期インフレ期待は依然として低い」と指摘。「生産余力の減少からくる物価上昇圧力の高まりや最近の燃料価格の上昇にもかかわらず、NZドル高はインフレ見通しが6月の金融政策報告以降、弱まっていることを示唆する」としました。

最後を「現時点では、将来の平均インフレ率が目標レンジの中央付近で安定するのを確実にするため、一段の金融緩和(=利下げ)が必要になる可能性が高いとみられる。我々は引き続き今後の経済指標を注視する」と締めくくり、追加利下げを示唆しました。

CPIの弱い結果や住宅ローン規制の強化、経済見通しを踏まえると、RBNZは次回8月11日の政策会合で追加利下げに踏み切る可能性が高いとみられます。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、RBNZが8月の会合で0.25%の利下げを行う確率が94.5%織り込まれています(7月21日時点)。追加利下げ観測は、NZドルの弱気材料になりそうです。<八代>


【トルコリラ】 政治情勢は引き続きリラ安要因か

7月15日にトルコで発生したクーデターは、失敗に終わりました。その後、エルドアン大統領は、計画に関与したとして軍幹部や裁判官、検察官などを拘束しました。さらに、事件の首謀者とみなすギュレン師の支持者を一掃するとして、テレビ・ラジオ24局の免許を取り消すことを決定し、教員ら2万人以上を解雇。20日には3か月間の非常事態を宣言しました。

エルドアン大統領は自身の権限を強化するため憲法改正を目指しています。市場では、憲法改正によって、エルドアン大統領が独裁色を強めることが懸念されていました。

今回のクーデター未遂事件を口実に、エルドアン大統領が対抗勢力を一掃し、一段と独裁色を強めるとの懸念が強まっています。加えて、格付け会社のS&Pが20日にトルコ国債の格付けを引き下げたことで、トルコリラは同日、対米ドルで過去最安値をつけました。

トルコリラには引き続き下落圧力が加わりやすいかもしれません。クロス円であるトルコリラ/円は、ドル/円の上昇に支えられて、6月24日につけた33.19円を割り込んでいません。ただ、7月28-29日の日銀の金融政策決定会合の結果次第で、円高圧力が加わるならば、トルコリラ/円は33.19円を割り込む可能性もあります。<八代>


【南アフリカランド】 SARBは当面、政策金利を据え置きか

SARB(南アフリカ中銀)は7月21日、政策金利を2会合連続で7.00%に据え置くことを決定しました。

今回の会合では、政策メンバー全員一致で据え置きが決定され、利上げと利下げのいずれも議論されませんでした。前回5月の会合では、政策メンバー6人のうち、5人が据え置き、1人が利上げを主張していました。

南アフリカの6月のCPI(消費者物価指数)は前年比+6.3%と、SARBのインフレ目標(+3から6%)の上限を6か月連続で上回りました。一方で、主力輸出産品価格の下落や干ばつなどにより、南アフリカ経済は低迷しています。1-3月期のGDP成長率は前期比年率換算1.2%減と、マイナス成長に転落。SARBは今回、南アフリカの今年GDP成長率見通しを従来の+0.6%からゼロ%へと下方修正しました。

クガニャゴ総裁は会合後の会見で、「MPC(金融政策委員会)は引き続き、インフレ見通しの大幅な変化に適切に行動する用意がある」とし、追加利上げに含みを持たせました。一方で、「CPI見通しは若干改善」「インフレに対するリスクは和らいでいる」との見方を示し、「利上げサイクルの一時停止ボタンを押す余地がある」と述べました。

ランド安が進行するなど、インフレ見通しが悪化する事態にならなければ、SARBは当面、政策金利を据え置きそうです。SARBの次回政策会合は9月22日に開催されます。<八代>


出所:Bloombergより作成




※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。

※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。

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