市場調査部レポート

2016/07/15 14:38安倍政権、日銀は市場の「期待」に応えられるのか

【相場環境】 安倍政権、日銀は市場の「期待」に応えられるのか
【全体観・米ドル】 “ヘリマネ”期待感先行には疑心暗鬼の姿勢で
【ユーロ】 ECB追加緩和は見送りの方向?
【ポンド】 ポンド/円は売られ過ぎの修正段階か
【豪ドル】 豪ドル/米ドル、上昇トリガーのポイントは?
【NZドル】 18日CPI発表数値に要注目!
【トルコリラ】 トルコリラ/円、戻りは限定的?


【相場環境】 安倍政権、日銀は市場の「期待」に応えられるのか

参院選での与党圧勝がアベノミクスに信任を与えた形となり、日本の経済政策に対する期待が大きく膨らんでいます。

安倍首相はただちに経済対策の策定を指示、月内にも政府案を固める見通しです。事業規模は10兆円超とみられ、4年ぶりの建設国債発行も視野に入るようです。

一方、日銀が「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」の発表に合わせて、7月28-29日の金融政策決定会合で追加緩和に踏み切るとの見方が強まっています。評判の悪いマイナス金利の拡大は見送られ、国債、J-REIT、ETFなどの購入額の増額が有力視されています。

ここへきて、にわかに注目を集めているのが、「ヘリコプター・マネー」です。ヘリコプター・マネーとは、ヘリコプターで上空からお金をばら撒くかの如く、中央銀行が制約や制限なしに資金を放出することをいいます。折しも、ヘリコプター・マネーの信奉者でもあるバーナンキ前FRB議長が来日、黒田日銀総裁、安倍首相と相次いで会談したことから、ヘリコプター・マネーが現実味を帯びてきました。政府はヘリコプター・マネーの検討を否定していますが、少なくとも市場はそう解釈しています。

もっとも、ヘリコプター・マネーが、国債発行を日銀が直接引き受ける形をとるならば、「財政ファイナンス」、あるいは「国債のマネタイゼ―ション(貨幣化)」と同じことです。よほど慎重に運用されなければ、財政規律の喪失や野放図の貨幣発行を通して、悪性のインフレ(やその結果としての「悪い円安」)を招きかねません。そのため、長く「禁じ手」とされてきました。

これから7月末にかけて、政府や日銀の政策に対する期待が一段と高まって、株高や円安が進行するかもしれません。ただ、市場の期待が行き過ぎるほど、しっぺ返しを受ける可能性も高まることに注意が必要でしょう。

政策対応への期待は、日本に対するものだけではなさそうです。「BREXIT(英国のEU離脱)ショック」で急落した主要国株価が、早い段階で英国民投票前の水準を取り戻したのも、米株が最高値を更新しているのも、世界的に金融緩和の動きが強まっているとの見方が背景にあるでしょう。こちらも、市場の期待が過剰となっていないか、要注意でしょう。

7月14日のBOE(英中銀)は、利下げが有力視されていたのに、現状維持を決定しました。8月4日の次回会合に向けて金融緩和の可能性が示されたものの、それも確実とは言えないでしょう。

また、OIS(翌日物金利スワップ)で米国の利上げ確率が5割を超えるのは来年6月のFOMC以降です。米経済に対する「BREXITショック」の悪影響は小さいとみられるので(むしろ、逃避資金が米国に流入して株高を演出している面もありそうです)、今後の景況次第で、米利上げ観測が前倒しになる可能性はありそうです。

来週の注目点は、21日のECB理事会です。英国民投票後の最初の理事会でどのような判断が下されるか。ドラギ総裁は、BREXITがユーロ圏の経済成長を押し上げるとの警戒感をみせています。一方で、理事会メンバーの中には追加緩和は不要との意見も根強いようです。購入可能な国債が限られていることで量的緩和(QE)の継続が困難になりつつあるため、購入対象の拡大や購入条件の緩和が決定されそうですが、追加緩和はないかもしれません。

その他、19日にTCMB(トルコ中銀)、21日にSARB(南ア中銀)の会合があります。TCMBは政策金利の単純化措置を進め、上限の貸出金利をさらに引き下げる可能性が高そうです。SARBは昨年11月から3連続で利上げした後、5月は据え置きました。ランドが落ち着いて推移しているので、今回も据え置きとなりそうです。

18日のNZの4-6月期CPI(消費者物価)と21日のRBNZ(中銀)の経済報告は、金融政策を考える上で重要でしょう。CPIが弱めだったり、景況判断が下方修正されるようなら、8月11日の会合での利下げ期待が一段と高まるかもしれません。<チーフエコノミスト 西田明弘>

 


【全体観・米ドル】 “ヘリマネ”期待感先行には疑心暗鬼の姿勢で

[ドル/円、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ドル/円:戻り売り相場:100.60-107.60円

今週のマーケットの注目ワードとなり得たのが・・・「ヘリコプター・マネー」(“ヘリマネ”)

にわかに注目ワードとなり得た要因は、今週来日したバーナンキ前FRB議長が、11日(月)に黒田日銀総裁と、そして翌12日(火)に安倍首相と会談をしたという事実で、この会談が大々的に取り扱われて「今月28-29日の日銀会合において“ヘリマネ”が実施されるのでは?」との市場の憶測、ないしは希望的観測がさらに注目度を加速させたと言えます。

しかも、その会談のタイミングが10日の参院選で自公が圧勝した余韻冷めやらぬ週明けというタイミングであったこと、また選挙結果を受けて政治的フリーハンドを得た安倍首相が10兆円規模の経済対策について言及したことも、市場の憶測を加速させた要因となりました。

そんな中、14日(木)に本田悦郎駐スイス大使(前内閣官房参与)がバーナンキ氏と永久国債発行についてのアイデアを4月の時点で議論していたとことを明らかにしたとの報道がBloombergで流れ、菅官房長官や浜田宏一イェール大名誉教授が否定した“ヘリマネ”論議は実際には為されていたのでは?との見方が優勢となってきました。

ただし、こういった期待感先行の相場というのは得てして失望感の大きさにつながることが多々あることを忘れてはなりません。

また“ヘリマネ”自体功罪併せ持つことを認識する必要があり、デフレの特効薬というメリットがある一方で、日銀のバランスシートにおいて債務超過となり得ること、またインフレの進展を当初想定したスピードより超過させてしまう可能性があるというデメリットも想定する必要があります。

その論議なしで、いうなれば「いい話」だけがスポットライトを浴びて進む「“ヘリマネ”万能薬」の見方にはやや違和感を覚えてしまうのは私だけではないはずです。“ヘリマネ”期待感が先行している現在のマーケット環境には疑心暗鬼の姿勢で臨むのが得策と考えますが、いかがでしょうか。

稀代の相場師であるジョージ・ソロス氏の言葉に、「あらゆる矛盾は一度極限まで行く」というのがありますが、その言葉を念頭に置きながら、次週もチャートを確認しながら粛々とトレードを行うべきと考えます

以下、ドル/円・週足・ボリンジャーバンド+スパンモデル®+DMIをご確認ください。

上記チャートを見てみると、1) 21MA(21週移動平均線)が下向きであること、2) ローソク足の上方に赤い雲(=抵抗帯)があること、3) 遅行線がローソク足の下方にあること、そして4) –DIが+DIの上方に位置していることから、緩やかな下降トレンドが継続中であることが確認できます。

上記週足チャートから勘案するドル/円の上値メド・下値メドについては・・・
■ 上値メド:107.65円(≒先行1スパン) ないしは 108.46円(≒21MAライン)付近
■ 下値メド:100.65円(≒-2σライン) 付近
と想定します。

チャート形状からは、上値抵抗が相当強いということも想定されるため、短絡的にドル/円が上昇トレンドに転換したと早合点しない方が得策と言えます。

戻り(=上昇)は限定的なものと想定し、基本トレード戦略は戻り売りを採用した方がよさそうです。<チーフアナリスト 津田隆光>

 


【ユーロ】 ECB追加緩和は見送りの方向?

[ユーロ/円・ユーロ/ドル、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ユーロ/円:戻り売り相場:112.80-118.70円
○ユーロ/ドル:レンジ相場:1.0950-1.1220ドル

以下、ユーロ/円・週足・ボリンジャーバンド+スパンモデル®+DMIをご確認ください。

上記チャートを見てみると、1) 21MA(21週移動平均線)が下向きであること、2) ローソク足の上方に赤い雲(=抵抗帯)があること、3) 遅行線がローソク足の下方にあること、そして4) –DIが+DIの上方に位置していることから、ドル/円同様、ユーロ/円も緩やかな下降トレンドが継続中と判断することができます。

上記週足チャートから勘案するユーロ/円の上値メド・下値メドについては・・・
■ 上値メド:118.75円(≒先行1スパン) ないしは 121.69円(≒21MAライン)付近
■ 下値メド:112.85円(≒-2σライン) 付近
と想定します。

現状のユーロ/円は、売られ過ぎ水準である-2σライン近辺からの反発過程と見て、概ね先行1スパン(≒118.75円)付近では上値が重いと想定した方がよさそうです。また、21日に予定されているECB理事会とその後のドラギECB総裁会見内容にも注目が集まりますが、【相場環境】コメントにもある通り、今回のECB会合での追加緩和は来月以降にスライドされるというのが市場のコンセンサスとなっています。<津田>

 


【ポンド】 ポンド/円は売られ過ぎの修正段階か

[ポンド/円、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ポンド/円:戻り売り相場:135.70-144.60円

以下、ポンド/円・週足・ボリンジャーバンド+スパンモデル®+DMIをご確認ください。

上記チャートを見てみると、1) 21MA(21週移動平均線)が下向きであること、2) ローソク足の上方に赤い雲(=抵抗帯)があること、3) 遅行線がローソク足の下方にあること、そして4) –DIが+DIの上方に位置していることから、ポンド/円も緩やかな下降トレンドが継続中と判断することができます。

上記週足チャートから勘案するポンド/円の上値メド・下値メドについては・・・
■ 上値メド:144.58円(≒-1σライン) ないしは 149.06円(≒1先行1スパン)付近
■ 下値メド:135.64円(≒-2σライン) 付近
と想定します。

14日に行われたMPC(英金融政策委員会)において、BOE(イングランド銀行)政策金利が“まさかの”据え置きとなったことから、売り方の踏み上げや短期筋のロングポジション構築等でやや反発しているポンド/円ですが、上記チャートを見る限り、上値は限定的と見たほうがよさそうです。<津田>

 


【豪ドル】 豪ドル/米ドル、上昇トリガーのポイントは?

[豪ドル/米ドル、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○豪ドル/米ドル:押し目買い相場:0.7470-0.7800ドル

以下、豪ドル/米ドル・週足・ボリンジャーバンド+スパンモデル®+DMIをご確認ください。

上記チャートを見てみると、1) 21MA(21週移動平均線)が上向きであること、2) ローソク足の下方に青い雲(=サポート帯)があること、3) 遅行線がローソク足の上方にあること、そして4) +DIが-DIの上方に位置していることから、豪ドル/米ドルは緩やかな上昇トレンドが発生中と判断することができます。

上記週足チャートから勘案する豪ドル/米ドルの上値メド・下値メドについては・・・
■ 上値メド:0.7805ドル(≒+2σライン) 付近
■ 下値メド:0.7469ドル(≒21MAライン) 付近
と想定します。

6月後半時点で+DIが-DIを上回っており、方向性プラスの相場となっています。豪ドル/米ドルの目先のポイントは+1σライン(≒0.7639ドル)。当該ラインを終値レベルで上抜けした場合は、上昇スピードが加速するかもしれません。<津田>

 


【NZドル】 18日CPI発表数値に要注目!

[NZドル/米ドル、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○NZドル/米ドル:押し目買い相場:0.7470-0.7800ドル

以下、NZドル/米ドル・週足・ボリンジャーバンド+スパンモデル®+DMIをご確認ください。

上記チャートを見てみると、1) 21MA(21週移動平均線)が上向きであること、2) ローソク足の下方に青い雲(=サポート帯)があること、3) 遅行線がローソク足の上方にあること、そして4) +DIが-DIの上方に位置していることから、NZドル/米ドルは緩やかな上昇トレンドが継続中と判断することができます。また、ローソク足が+1σ~+2σライン内にあることから【上昇バンドウォーク】が継続しており、非常に“美しい形”のチャート形状であるNZドル/米ドルの上昇トレンドはしばらく継続すると見てよさそうです。

上記週足チャートから勘案するNZドル/米ドルの上値メド・下値メドについては・・・
■ 上値メド:0.7266ドル(≒+2σライン) 付近
■ 下値メド:0.7086ドル(≒+1σライン) 付近
と想定します。

チャートの一般的セオリーでいけば、+1σライン(≒0.7086ドル)までの下げは、押し目買いポイントと捉えてよさそうです。

NZドル/米ドルの足もとのファンダメンタルズ材料は18日(月)第2四半期消費者物価指数(CPI)
CPIの結果数値は8月11日に予定されているRBNZ(NZ準備銀行)の政策金利に大いに影響を与えそう。
当該発表数値は今後のNZドルの対ドル・対円相場にとって大きなカタリスト(きっかけ、イベント)となりそうです。<津田>

 


【トルコリラ】 トルコリラ/円、戻りは限定的?

[トルコリラ/円、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○トルコリラ/円:戻り売り相場:34.40-37.40円

以下、トルコリラ/円・週足・ボリンジャーバンド+スパンモデル®+DMIをご確認ください。

上記チャートを見てみると、1) 21MA(21週移動平均線)が下向きであること、2) ローソク足の上方に赤い雲(=抵抗帯)があること、3) 遅行線がローソク足の下方にあること、そして4) –DIが+DIの上方に位置していることから、トルコリラ/円は緩やかな下降トレンドが主体と判断することができます。

上記週足チャートから勘案するトルコリラ/円の上値メド・下値メドについては・・・
■ 上値メド:37.39円(≒21MAライン) 付近
■ 下値メド:34.39円(≒-2σライン) 付近
と想定します。

7月15日時点ではローソク足が-1σライン(≒35.89円)を上抜いているため、5月より続いた強い下降トレンドの勢いは若干弱まっていると見ることもできますが、ローソク足の上方に聳える赤い雲(=抵抗帯)を突破できるほどの勢いではなさそうです。よって、戻りは限定的と想定し、基本戦略は戻り売りとした方がよさそうです。19日(火)に発表されるトルコ中銀政策金利にも注目が必要です。<津田>

 


 

※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

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