市場調査部レポート

2016/07/08 15:35日米欧それぞれの注目点

・【相場環境】日米欧それぞれの注目点
・【全体観・米ドル】ドル/円、100円台割れも視野に
・【ユーロ】ユーロ/円、上方硬直性に変化なし
・【ポンド】ポンド/円、強烈な下降トレンドを示唆
・【豪ドル】上値が重い展開になる可能性も!?
・【NZドル】RBNZの利下げ観測後退。18日のCPIが重要
・【トルコリラ】トルコの材料よりも、外部環境に左右されやすい地合い


【相場環境】 日米欧それぞれの注目点

来週の注目点は、(1)米景況感の変化、(2)日本の参院選、(3)BOE(英中銀)の会合、(4)イタリアの銀行問題、でしょう。

足元の米景気は堅調を維持していそうです。6月のISM指数は、製造業、非製造業ともに事前予想を上回り、前者は昨年2月以来、後者は昨年11月以来の高水準でした。雇用統計は本稿執筆時点で未発表ですが、5月の軟調さが「一時的」であることが明らかになり、またベージュブック(地区連銀経済報告)や小売売上高、鉱工業生産、消費者信頼感などが堅調であれば、徐々に米経済の良好さが意識されるかもしれません。

FFレート(政策金利)先物によれば、年内の利上げは1割程度しか織り込まれていません。今後の経済指標次第で、利上げ観測が高まるようであれば、ドルの支援材料となりそうです。

一方で、雇用統計その他が軟調であれば、「2017年末まで据え置き」とのシナリオが一段と強化され、ドルにとって重石になりそうです。

7月10日投開票の日本の参院選では、与党が改選過半数となる勢いです。そうであれば、アベノミクスが有権者の信を得たと解釈され、改革への期待や金融緩和による支援の期待も相まって、株高・円安となりそうです。

ただ、与党が圧勝するようであれば、安倍政権の「慢心」を生む可能性があり、また安倍首相が憲法改正に注力することで、経済運営が二の次になるかもしれません。その場合は、株高・円安の反応は意外に短命に終わるかもしれません。

一方、与党が改選過半数などの事前目標を達成できなければ、アベノミクスの推進力は一段と低下しそうです。安倍首相のレームダック化が始まるかもしれません。その場合は、株安・円高の反応が予想されます。

14日、BOE(英中銀)は金融緩和を実施する可能性があります。利下げとなれば、2009年3月のリーマン・ショック直後以来となります。永らく「次の一手」は利上げとみられていましたが、英国民投票でBREXIT(EU離脱)が選択されたことで、カーニー総裁はその悪影響に対応するための早期の金融緩和を示唆しました。

英国の不動産ファンドから資金が大量に流出して、顧客との取引停止が相次いでいることも、流動性供給の必要性などを通じて金融緩和に踏み切る根拠となるかもしれません。

BREXITの影響で欧州の銀行株が大きく下落するなか、イタリアの銀行の不良債権問題が浮上してきました。イタリア政府は公的資金注入による不良債権処理(ベイルアウト)を目指していますが、欧州委員会は公的資金(=税金)が使われる場合には、銀行への投資家や高額預金者も相応の負担をすべき(ベイルイン)として待ったをかけている模様です。

とりわけ問題となっているのが、イタリアで第3位のモンテ・パスキ銀行です。同行は、ECBからも文書による不良債権削減の要請を受けています。また、今月末にはEUの銀行ストレス・テストの結果が公表される見込みでもあり、迅速に不良債権処理を進めることが重要な課題になっています。

英国の不動産ファンドやイタリアの銀行の問題など、欧州で金融不安が高まらないか、要注意でしょう。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 ドル/円、100円台割れも視野に

[ドル/円、今週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ドル/円:戻り売り相場:99.00-102.00円

上記の通り、英国のEU離脱(Brexit)に伴う英不動産ファンドの問題や、新たにイタリアの銀行問題が浮上するなど、欧州金融情勢に先行き不透明感が漂っています。

これらファンダメンタルズ材料を逐一挙げてみると、まさに不透明感満載と言えますが、為替相場に限らず相場全般に言えることは『相場は極めてシンプルなロジック(論理)に従って動く』ということに尽きます。
『単純であることは究極の洗練である』とは、かのレオナルド・ダ・ヴィンチの言葉ですが、ここでは視点をシンプルなテクニカル分析に絞り、ドル/円および欧州通貨の相場動向を確認していきたいと思います。

まずは、以下ドル/円の日足・スパンモデル®+ボリンジャーバンドをご確認ください。

上記チャートを見てみると、1) 21MA(21日移動平均線)が下向きであること、2) ローソク足の上方に赤い雲(=抵抗帯)があること、3) 遅行スパンがローソク足の下方にあること、そして4) ローソク足が-1σから-2σラインの間に位置(=下降バンドウォーク)していることから、典型的な下降トレンドを示唆しているのが確認できます。

上記日足チャート上でのドル/円の上値メド・下値メドについては・・・
■ 上値メド:101.76円(≒-1σライン) ないしは 102.86円(≒先行1)付近
■ 下値メド:99.91円(≒-2σライン) ないしは 6/24安値である98.76円付近
と想定します。

一方で、タイムフレームを一つ広げて、同テクニカル指標の週足チャートを見てみると以下の通りです。


上記チャートを見てみると、1) 21MA(21週移動平均線)が下向きであること、2) ローソク足の上方に赤い雲(=抵抗帯)があること、3) 遅行スパンがローソク足の下方にあること、そして4) ローソク足が-2σライン付近に位置していることから、日足と同様、典型的な下降トレンドを示唆しています。

上記週足チャート上でのドル/円の上値メド・下値メドについては・・・
■ 上値メド:104.88円(≒-1σライン)付近
■ 下値メド: 6/24安値である98.76円付近
と想定します。

これらを総合すると、ドル/円の戻りは105円近辺では非常に重いと判断してよさそうです。あくまでテクニカル上の判断として、一つの参考としていただければ幸いです。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/円、上方硬直性に変化なし

[ユーロ/円・ユーロ/ドル、今週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ユーロ/円:戻り売り相場:110.00-113.00円
○ユーロ/ドル:レンジ相場:1.0950-1.1200ドル

今週はユーロ/円の日足チャートについて見ていきたいと思います。以下、ユーロ/円・日足・スパンモデル®+ボリンジャーバンドをご確認ください。


上記チャートを見てみると、1) 21MA(21日移動平均線)が下向きであること、2) ローソク足の上方に赤い雲(=抵抗帯)があること、3) 遅行スパンがローソク足の下方にあること、そして4) ローソク足が-1σから-2σラインの間に位置(=下降バンドウォーク)していることから、ドル/円同様、典型的な下降トレンドを示唆しているのが確認できます。

上記日足チャート上でのユーロ/円の上値メド・下値メドについては・・・
■ 上値メド:112.83円(≒-1σライン) ないしは 114.39円(≒先行1)付近
■ 下値メド:109.83円(≒-2σライン) ないしは 6/24安値である109.32円付近
と想定します。

ユーロ/円の同週足チャートでは、ローソク足が-2σラインを大きく割り込んでいる状態のため、足もとでは下げ過ぎの修正(上昇)もありそうですが、いずれにしても上方硬直性、つまり上値が重い展開に変化はなさそうです。<津田>


【ポンド】 ポンド/円、強烈な下降トレンドを示唆

[ポンド/円、今週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ポンド/円:戻り売り相場:134.00-142.00円

ポンド/円についても、日足チャート中心に見ていきたいと思います。以下、ポンド/円・日足・スパンモデル®+ボリンジャーバンドをご確認ください。


上記チャートを見てみると、1) 21MA(21日移動平均線)が下向きであること、2) ローソク足の上方に赤い雲(=抵抗帯)があること、3) 遅行スパンがローソク足の下方にあること、そして4) ローソク足が-1σから-2σラインの間に位置(=下降バンドウォーク)していることから、ドル/円・ユーロ/円同様、典型的な下降トレンドを示唆しているのが確認できます。σラインの傾斜から言えば、ドル/円やユーロ/円以上に“強烈な”下降トレンドと言えるのかもしれません。

上記日足チャート上でのポンド/円の上値メド・下値メドについては・・・
■上値メド:133.97円(≒-1σライン) ないしは 139.09円(≒先行1)付近
■下値メド:124.92円(≒-2σライン) 付近
と想定します。

ポンド/円については、先月24日のいわゆる“Brexitショック”時の安値を大きく下回っており、また週足・月足チャートとも強烈な下降トレンドを示唆しています。
短期的には売られ過ぎの修正(上昇)の可能性があるものの、このチャート形状での“逆張り”はリスクが高いと言わざるを得ません。上記上値メドを参考にしつつ、戻り売りを基本戦略にすべきと考えます。<津田>


【豪ドル】 上値が重い展開になる可能性も!?

RBA(豪中銀)は7月5日、政策金利を過去最低の1.75%に据え置き。声明で、「インフレは極めて低い」と指摘し、「非常に抑制された労働コストの伸びや海外の非常に低いインフレ圧力を踏まえると、この状況はしばらく続く可能性が高い」との見方を示しました。

金融市場については、英国民投票後の資産再評価を受けて、最近ボラティリティが高いと指摘したものの、大半の市場は引き続き効果的に機能しているとの認識を示しました。

英国民投票の結果が世界の経済活動に及ぼす影響は、依然として不明であり、英経済への影響以外については判断が難しいかもしれないとしました。

金融政策については、「入手可能な情報を踏まえて、理事会は今回の会合で金融政策を据え置くことが賢明と判断した。さらなる情報が、経済成長とインフレの見通しの評価を洗練させ、適切とみられる政策スタンスに調整することを可能にするだろう」としました。

今回の声明では金融政策スタンスが明確にされませんでしたが、豪州のインフレ率がRBAの目標を下回っていることを踏まえると、RBAの次の一手は「利下げ」とみられます

重要な鍵を握るインフレ動向
7月27日に豪州の4-6月期CPI(消費者物価指数)が発表されます。その結果が、RBAが追加利下げに踏み切るかどうかの重要な手掛かり材料となりそうです。

1-3月期のCPIは前年比+1.3%、基調インフレ率は同+1.55%と、いずれもRBAのインフレ目標(+2から3%)を大きく下回りました。RBAは今年5月に0.25%の利下げを決定した際に、1-3月期のインフレ率が予想外に低かったことを理由に挙げました。

4-6月期のCPIでインフレ圧力の弱さが確認されれば、その「さらなる情報」を基にRBAは8月2日の会合で追加利下げに踏み切るかもしれません。

市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、7月7日時点で、RBAが8月の会合で政策金利を据え置く確率が41.9%、利下げを決定する確率が58.1%織り込まれています。

格付け見通しが「ネガティブ」に
一方、S&Pが7月7日、豪州のソブリン格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げました。

S&Pは、「より強力な財政措置が導入されなければ、(豪州の)財政赤字は今後数年間継続し、ほとんど改善が見込めない」と指摘。「財政赤字の継続は豪州の高水準の対外債務と相いれず、“AAA(最上級)”の格付けと矛盾する可能性がある」としました。

S&P、ムーディーズ、フィッチの3大格付け会社は、いずれも豪州に対し最上級の格付けを付与(S&Pとフィッチは「AAA」、ムーディーズは「Aaa」)。ムーディーズとフィッチは、格付け見通しを「安定的」としています。

総選挙は結果が判明せず
7月2日に実施された豪総選挙については、依然として勝敗が未確定。与党の保守連合(自由党および国民党)が、最大野党の労働党をリードしているものの、過半数には達していません。

RBAの追加利下げ観測やS&Pによる豪州の格付け見通しの引き下げ、政局の不透明感などのマイナス材料を背景に、豪ドルは上値が重い展開になるかもしれません。<アナリスト 八代和也>


【NZドル】 RBNZの利下げ観測後退。18日のCPIが重要

RBNZ(NZ中銀)のスペンサー副総裁は7月7日、NZの住宅市場の不均衡拡大に懸念を示し、「一段の利下げは、金融安定へのリスクをもたらす可能性がある」と発言。これを受けて、RBNZの追加利下げ観測が後退しました。

市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、RBNZが次回8月11日の会合で政策金利を据え置く確率が51.5%、0.25%の利下げを決定する確率が48.5%織り込まれています(7月7日時点)。7月6日時点では、据え置きが31.3%、0.25%の利下げが68.7%の確率でした。

ただし、スペンサー副総裁は「CPI(消費者物価指数)見通しが最終的に金融政策を決定する」とも述べました。NZのCPI上昇率は2014年10-12月期以降、RBNZのインフレ目標(+1から3%)を下回る状態が続いています。1-3月期は前年比+0.4%でした。4-6月期のCPIは、7月18日に発表されます。その結果が、RBNZの金融政策のほか、NZドルの動向にも影響を与えそうです。<八代>


出所:Bloombergより作成


【トルコリラ】 トルコの材料よりも、外部環境に左右されやすい地合い

トルコの6月CPI(消費者物価指数)が7月4日に発表されました。CPI上昇率が前年比+7.64%、コアCPI上昇率が同+8.67%となり、いずれもTCMB(トルコ中銀)のインフレ目標である+5%を上回りました。ただし、コアCPIは5月の+8.77%から若干鈍化し、CPIは5月の+6.58%から加速したものの、8%を超えていた今年初めに比べれば、上昇率は緩やかです。

TCMBは金融市場の落ち着きを背景に、3つの政策金利を最終的に一本化する「単純化」措置を今年3月に開始。6月まで4会合連続で、1週間物レポ金利(主要政策金利)と翌日物借入金利を据え置く一方、翌日物貸出金利を引き下げました。

インフレを抑制するため、TCMBは短期市場金利を高めに誘導。短期市場金利(翌日物銀行間金利)は、一応の上限である翌日物貸出金利近辺で推移しています。

金融市場が落ち着いた状態が続けば、TCMBは単純化措置を今後さらに進めるとみられます。

ただし、最近のトルコリラはTCMBの金融政策などトルコの材料よりも、欧州の動向など外部環境の変化に影響を受けやすい状況になっています。トルコリラは引き続き、「リスクオン/オフ」に左右される展開になるかもしれません。<八代>


出所:Bloombergより作成




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