市場調査部レポート

2016/07/01 13:42【マンスリー・アウトルック(2016/7)】日米欧金融政策に要注目!

― 2016年7月の為替相場展望 ― 
日米欧金融政策に要注目!


《相場環境》

BREXITの余震はしばらく続きそう。EU離脱交渉のタイミングや内容が不透明なため。7月は、日米欧の金融政策会合が開催される。米国の利上げ観測は大きく後退、BOEは総裁が金融緩和を示唆。日銀やECBも追加緩和の可能性あるが、市場が両中銀の政策手詰まりを見透かせば、通貨安は一時的に終わるか、逆に通貨高に振れる可能性も。米国の二大政党の党大会も大統領選挙の行方を考える上で興味深い。

<主要通貨の動向>
・【米ドル】ドル/円、100円を強く意識する相場展開になりそう
・【ユーロ】ユーロ/ドル、7月はレンジ相場主体の展開に?
・【ポンド】ポンド/円、金融緩和でさらなる下押しも?

<資源国・新興国通貨の動向>
・【豪ドル】豪総選挙とCPIに注目!!
・【NZドル】CPIで、RBNZの金融政策見通しはどう変化するか?
・【カナダドル】引き続き原油価格に注目
・【トルコリラ】TCMBは単純化措置をさらに進めるか
・【南アランド】SARBの利上げが、必ずしもランド買いにつながらない可能性も!?

◆主要経済指標・イベント
◆OIS(翌日物金利スワップ)に基づく金融政策見通し


≪相場環境≫

英国の国民投票は、BREXIT(EU離脱)という衝撃の結果となりました。金融市場はやや落ち着きを取り戻しつつあるようにも見えますが、リスクオフを誘発する材料には事欠かないように思われます。例えば、英国とEUとの離脱交渉がいつ、どのように始まるのか、英国の政局がどのように進展するか、残留派が主流だったスコットランドや北アイルランドでどのような動きが出てくるか、そして何より英国がEUとどのような関係を構築しようとするのか、英国以外で反EUの動きが活発化するのか、多くの不透明要因が残されています。

なお、キャメロン首相が表明したように、新首相がリスボン条約第50条を発動するのであれば、交渉開始は10月以降ということになります。交渉開始前にも紆余曲折があるかもしれません。保守党の党首選は9月9日までに結果が出るようです。そして、10月2日に始まる保守党の党大会で新党首(=新首相)が誕生する予定です。

7月の注目イベント
7月は、日米欧の金融政策会合が開催されます。金融政策を取り巻く環境は英国民投票によって一変したように思われます。

米FRBの利上げ観測は大きく後退しました。6月30日時点のFFレート(政策金利)先物に基づけば、2017年末までに利上げが実施される確率は40%程度まで低下しています。つまり、2016年だけでなく、2017年も「利上げなし」が市場のメインシナリオになったということです。また、2016年末までをみれば、利上げが9.2%、利下げが7.2%織り込まれており、利上げと同程度に利下げが予想されています。

現時点での米利下げ観測はやや行き過ぎのように思われますが、事実が後から付いてくることにならないか、注意したいところです。仮に、6月分の雇用統計やその他の経済指標が堅調であっても、早期利上げ観測が高まる可能性は低そうです。一方で、それらの統計が軟調となれば、利上げ観測が一段と後退、利下げ観測が高まるなどして、ドルに一段の下押し圧力が加わる可能性もありそうです。

6月30日、BOE(英中銀)のカーニー総裁は、BREXIT(EU離脱)の悪影響に関して「夏に何らかの金融緩和が必要になる公算が大きい」と語りました。これにより、にわかに利下げ観測が高まりました。

日銀やECBも追加緩和に踏み切るかもしれません。ただし、市場が両中銀の政策手詰まりを見透かすようであれば、追加緩和による通貨安(とくに円安)は一時的に終わるか、あるいは逆に反動で通貨高方向に振れる可能性も否定できません。

その他、7月は米国の民主党と共和党の党大会が開催されます。党大会に向けて、クリントン氏とトランプ氏の政策や副大統領候補選びが注目されますが、相場材料にはなりにくいかもしれません。ただし、英国民投票の結果を受けて、米国内でも「ポピュリズム(大衆迎合主義)」が一段と強まってトランプ氏が勢いを増すのか、それとも逆に、投票結果判明後の混乱を他山の石として、「ポピュリズム」が下火になるのか、大変興味深いところです。足元では後者の流れになっているように見受けられますが、まだまだ予断を許しません。



<チーフエコノミスト 西田明弘>


<主要通貨の動向>

【米ドル】 ドル/円、100円を強く意識する相場展開になりそう

先月23日、EU離脱の是非を問う国民投票実施という、まさに一大国家イベントを終えた英国。

結果は今さら言うまでもなく離脱派の“まさかの”勝利に終わり、英国民だけでなく、世界中の耳目が集まったお祭り騒ぎもやや落ち着き、次なる焦点は次期首相選びに移ってきました。

そこで一旦立ち止まって、24日の<まさかの坂>ともいえる相場の動きの原因は何だったのでしょうか。

6月30日付けのWSJに書かれていた記事によると、先月24日の“Black Friday”(暗黒の金曜日)となり得たのは、「自分が好む結果に賭けた投資家(人間)が多過ぎたためで、これは市場における“投影バイアス”(“認知バイアス”)の典型的な例」とのこと。

実際、国民投票の前まではほぼすべての主要な世論調査の結果や、多くの市民・市場参加者、そして“伝説の相場師”と呼ばれるジョージ・ソロス氏までも公然と「Brexit(英国のEU離脱)すべきでない」といった是非論で見ていたのに対して、アルゴリズムやHFT(超高速取引)といったシステマチックトレードにはそのようなセンチメントやバイアスは一切なかったことで、「Brexit相場の勝者は機械、敗者は人間」という結果になったとも言えます。

そのあたりを“陰鬱博士”(Dr.Gloom)と呼ばれるマーク・ファーバー氏は鋭く指摘し、「Brexit決定後の市場の動きは過剰反応」「(24日に大相場となったのは)『Brexitは望ましくない』とする市場参加者の固定観念が招いた結果」「Brexitは市場の反応ほど劇的なものではない。市場参加者が残留GOOD、離脱NGと考えていただけといったコメントを残しています。

「Brexitは各国の追加緩和の“絶好の言い訳”になる」と言い切るファーバー氏ですが、今月14日に開催される英MPC(金融政策委員会)や21日に開催されるECB理事会、そして28-29日の日銀金融政策決定会合において“絶好の言い訳”となり得るのでしょうか。大いに注目が必要です。

英国民投票後初めて開催されたEU首脳会議(欧州議会)で、キャメロン英首相がリスボン条約第50条に基づく正式通知を行わず、9月以降に持ち越したことはすなわち、Brexitショックに伴う「第2波」「第3波」についてはしばらくビハインド・ザ・カーブ”(=意図的な先延ばし)と捉えることも可能で、足もとの相場は徐々に落ち着きを取り戻すと捉えてもいいのではないでしょうか。(あくまで時間制限付きという条件ではありますが)。

閑話休題。以下、ドル/円・月足チャート+フィボナッチリトレースメントをご覧ください。



2011年10月に付けたドル/円の過去最安値である75.57円と、昨年6月高値である125.86円を結んだフィボナッチリトレースメント50%押し水準が100.72円。7月においても当該ライン、より大まかに言えば100.00円を強く意識する相場展開となりそうです。

100.00円ラインを下抜けた場合の下値メドはフィボナッチリトレースメント61.8%押し水準の94.78円、また戻り高値のメドは同38.2%押し水準の106.65円付近と想定し、7月におけるドル/円の月間コアレンジを95.00から107.00円と予想します。<チーフアナリスト 津田隆光>

【ユーロ】 ユーロ/ドル、7月はレンジ相場主体の展開に?

ユーロ/ドルについては、週足テクニカルチャートを中心に見ていきたいと思います。以下、ユーロ/ドル・週足・ボリンジャーバンド+DMIをご覧ください。



上記チャートからは、1) 21MAの方向性が横向き、2) ADXが25.05となっており、週足レベルではレンジ相場(横ばい基調)を示唆しています。

今月21日、ECB理事会の開催が予定されていますが、ECBは先般の英国民投票やその後の政局混迷を受け、景気刺激プログラムにおける債券購入のルール緩和を検討、つまりQE(量的緩和)拡大に対して前向きな姿勢を示しています。

このままポンド安や英国のリセッション(景気後退)が続けば、輸出産業中心のドイツ経済を中心にユーロ圏経済の打撃ともなり得るため、ECBによるQE拡大の可能性は否定できませんが、今のところ7月での政策変更の可能性は低そうというのが市場のコンセンサスとなっています。

7月に政策変更がない限り、ユーロ/ドルは1.0950から1.1500ドルを月間コアレンジとするレンジ相場が継続しそうです。<津田>

【ポンド】 ポンド/円、金融緩和でさらなる下押しも?

ポンド/円についても、週足テクニカルチャートを中心に見ていきたいと思います。以下、ポンド/円・週足・ボリンジャーバンド+DMIをご覧ください。



上記チャートからは、1) 21MAの方向性が下向き、2) ローソク足が-2σラインの下方に位置、3) –DI>+DIとなっていること、さらには4) ±2σラインの方向性に相反性が見られることから、下落速度がさらに加速する可能性も視野に入れるべきと考えます。

6月30日、離脱派の象徴的存在と目されていたボリス・ジョンソン前ロンドン市長の“まさかの”敵前逃亡もあり、レイムダック化が懸念される英国政治の混迷にさらに拍車を掛ける可能性も指摘されています。

同日、カーニーBOE(イングランド銀行)総裁が、英国のEU離脱選択の影響に対処するため、数ヵ月以内に金融緩和を実施する可能性について明らかにしており、早ければ14日のMPC(金融政策委員会)で結論が出る可能性もありそうです。

政局混迷とともに、BOEの次の一手に注目が集まる中、ポンド/円のさらなる下落を視野に入れておいた方が無難と言えそうです。

7月のポンド/円の月間コアレンジを126.00から150.00円と予想します。<津田>


<資源・新興国通貨の動向>

【豪ドル】 豪総選挙とCPIに注目!!

豪州では7月2日に総選挙が実施されます。世論調査では、与党の保守連合と最大野党の労働党の支持率が拮抗しており、接戦になると予想されています。ただ、英国民投票を受けて、金融市場が動揺、世界経済の不透明感が高まったことから、与党有利との見方もあるようです。

保守連合、あるいは労働党のいずれかが過半数を獲得できれば、政治的な不透明感が解消されて、豪ドルが上昇するかもしれません。一方、どの政党も過半数を獲得できず、「ハング・パーラメント(宙ぶらりんの議会)」に陥った場合、政局の不透明感から、豪ドルが下落する可能性があります。

7月5日のRBA(豪中銀)の政策金利発表については、一部に0.25%の利下げ観測があるものの、据え置きとの見方が有力です。

7月27日に豪州の4-6月期のCPI(消費者物価指数)が発表されます。RBAは今年5月に利下げを実施した際、インフレ率が予想外に低かったことを理由に挙げました。CPIでインフレ圧力の弱さが確認されれば、RBAは8月の会合で追加利下げに踏み切るかもしれません。豪ドルにとって重石になりそうです。一方、CPIが強ければ、RBAの早期利下げ観測が後退し、豪ドルに上昇圧力が加わる可能性があります。<アナリスト 八代和也>


出所:Bloombergより作成

【NZドル】 CPIで、RBNZの金融政策見通しはどう変化するか?

NZドル/米ドルは6月に一時0.72米ドル台半ばへと上昇、昨年5月以来の高値をつけました。RBNZ(NZ中銀)が6月の会合で、追加利下げの可能性に言及したものの(政策金利は2.25%に据え置き)、インフレ見通しを上方修正し、過熱気味にある住宅市場に警戒感を示したことが、背景です。FRB(米連邦準備理事会)の年内利上げ観測が後退したことも、NZドル/米ドルの支援材料となりました。

7月のNZドルは、18日に発表されるNZの4-6月期CPI(消費者物価指数)が最大の相場材料となりそうです。1-3月期のCPIは前年比+0.4%と、RBNZのインフレ目標の下限である+1%を下回りました。RBNZはCPI上昇率が今後徐々に加速すると見ており、6月の金融政策報告では、4-6月期のCPIを前年比+0.6%との見通しを示しました。今回のCPI発表では、前年比+0.6%が強弱の判断のひとつの目安になるかもしれません。

市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、RBNZが次回8月11日に政策金利を据え置く確率が47.6%、0.25%の利下げを決定する確率が52.4%織り込まれています(6月30日時点)。「据え置き」と「利下げ」で見方が分かれていることが確認できます。

CPIの結果を受けて、市場のRBNZの金融政策への見方が変化する可能性があります。NZドルにとって、RBNZの利下げ観測の後退はプラス材料、利下げ観測の高まりはマイナス材料です。<八代>


出所:Bloombergより作成

【カナダドル】 引き続き原油価格に注目

7月のカナダドルは、引き続き原油価格の動向に影響を受けやすいとみられます。下のグラフは、米ドル/カナダドルと原油の代表的な指標であるWTI先物を重ねたものです。両者は似た動きをすることが確認できます。


出所:Bloombergより作成

原油価格は今年2月に一時、1バレル=26米ドルへと下落した後、反発傾向にあります。資源国通貨であるカナダドルにとって、原油価格の上昇はプラス材料、原油価格の下落はマイナス材料です。原油価格の反発傾向が続けば、カナダドルは対米ドルで堅調に推移しそうです。ただし、クロス円であるカナダドル/円は、ドル/円の影響も受けるため、ドル/円の動向にも注意する必要があります。

7月13日のBOC(カナダ中銀)政策金利発表については、現行の0.50%に据え置かれるとの見方が有力。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、据え置きの確率が94.4%、0.25%の利下げの確率が5.6%織り込まれています(6月30日時点)。注目点は、前回5月の会合時の声明で、「現在のスタンスは依然として適切」とされた金融政策に関する文言が変化するのかどうかです。文言が変化した場合、カナダドルが反応する可能性があります。<八代>

【トルコリラ】 TCMBは単純化措置をさらに進めるか

トルコリラにとって、7月最大の相場材料は19日のTCMB(トルコ中銀)の政策金利発表になりそうです。

TCMBは前回6月の会合では、3つの政策金利のうち、1週間物レポ金利(主要政策金利)と翌日物借入金利を据え置く一方、翌日物貸出金利を0.50%引き下げました。

当時の声明では、5月と同様に「世界の金融市場のボラティリティが最近やや高まった」との見解を示したものの、「単純化に向けた措置を講じることを決定した」とされました。TCMBは3つの政策金利を最終的に一本化する「単純化」を今年3月に開始、前回まで4会合連続で翌日物貸出金利を引き下げました。

トルコの5月のCPI(消費者物価指数)上昇率は前年比+6.58%、コアCPI上昇率は前年比+8.77%でした。いずれもTCMBのインフレ目標である+5%を上回ったものの、CPI上昇率は4月からほぼ横ばい、コアCPI上昇率は4月の9.41%から大幅に鈍化しました。

金融市場が落ち着いた状態が続けば、TCMBは単純化措置を今後さらに進めるとみられます。7月の会合では、翌日物貸出金利が引き下げられる可能性があります。その場合、トルコリラの重石になるかもしれません。<八代>


出所:Bloombergより作成

【南アランド】 SARBの利上げが、必ずしもランド買いにつながらない可能性も!?

SARB(南ア中銀)が7月21日に政策金利を発表します。

SARBは、ランド安や食料品価格の上昇などを背景としたインフレ見通しの悪化を理由に、2015年7月以降、計4回の利上げを実施。前回5月の会合では、政策金利を7.00%に据え置いたものの、6人の政策メンバーのうち1人が0.25%の利上げを主張。クガニャゴ総裁はその時の会見で、「インフレ見通しは依然として上向き」「インフレ期待は居心地が悪いほど高水準」と指摘し、「対応が必要な場合、SARBは適切に行動することを躊躇しない」と述べ、追加利上げの可能性を示しました。

南アフリカでは、ランド安や食料品価格の上昇などを背景にインフレ圧力が強く、5月のCPI上昇率は前年比+6.1%と、SARBのインフレ目標の上限である+6%を5か月連続で上回りました。

一方で、主力輸出商品価格の下落や干ばつなどにより、南アフリカ経済は低迷。1-3月期のGDP成長率は前期比年率換算1.2%減と、マイナス成長に転落しました。利上げは、景気をさらに冷えこませる恐れがあります。

対米ドルでのランド安は足もと落ち着いています。5月のCPI上昇率はSARBの目標を上回ったとはいえ、4月の前年比+6.2%から若干鈍化しました。SARBは7月の会合で、政策金利を現行の7.00%に据え置く可能性が高そうです。一方、利上げが決定された場合、南アフリカ経済の先行き懸念が強まるかもしれません。利上げが必ずしもランド買いにつながらない可能性もあります。<八代>


出所:Bloombergより作成




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