市場調査部レポート

2016/06/27 16:54英国、EU離脱の衝撃!

<お知らせ>
「ウィークリー・アウトルック」は通常、金曜日の配信ですが、今回は24日の英国民投票の結果を反映させるために月曜日配信としました。なお、「マンスリー・アウトルック」の次号は7月1日(金)にお送りします。よろしくお願い申し上げます。

【相場環境】英国、EU離脱の衝撃!
【全体観・米ドル】ドル/円、戻り売りのスタンスを継続!
【ユーロ】ユーロ/ドルはレンジ・プレイ、ユーロ/円は戻り売り
【ポンド】ポンド/円、短期的反発もありそう!しかし・・・
【豪ドル】7月2日の豪総選挙に注目!!
【NZドル】外部材料に左右される展開になりそう
【トルコリラ】トルコ中銀の金融政策は材料視されず
【南アランド】ランド/円はリスク意識に反応しやすい状況


【相場環境】 英国、EU離脱の衝撃!

6月23日の英国民投票で、「EU離脱」が勝利したことで、世界の金融市場は大荒れとなりました。事前の世論調査では拮抗していましたが、開票前に「残留」優勢との楽観的ムードが漂っていたことも、市場の反応を大きくしたようです。

BREXIT(英国のEU離脱)は、ロンドン金融市場の地盤沈下、対英投資の減少、移民の減少に伴う長期経済成長力の低下など、英国経済にとってマイナス面が大きそうです。また、英国経済ほどではないまでも、EU加盟国の経済にとってもマイナスとなりそうです。

ただし、英国とEUとの交渉はこれから始まり、実際の離脱までに2年ないしそれ以上の時間がかかる模様です。また、メディアでは「リーマン・ショック並み」とのフレーズが散見されますが、これはあくまでも一日の相場の変動幅のことを指しているのであって、世界経済に同様の影響があるということではないでしょう。

リーマン・ショックは、サブプライム・ローンやそれを基にした証券化商品という「仕組みの破たん」であって、それが巨額の損失や金融システムの麻痺を招いた結果でした。

それに対して、BREXITは、EU内の英国からEU外の英国へという「仕組みの変更」です。英国やEUがそれぞれにとってベストとなるような離別の仕方をこれから模索するのであり、必ずしも悲惨な結末が待っているわけではないはずです。

もっとも、英国とEUがどのように離別するのか、どんな影響があるのかは不透明です。その「不透明」自体が経済活動を委縮させ、投資家の一段のリスク回避的行動を招きかねない点にはやはり要注意でしょう。

そして、もう一つ懸念されるのは、BREXITが他のEU加盟国の政治情勢に与える影響でしょう。フランスやイタリアなど多くの国で反EU派が勢力を増しており、それらの国がEU離脱への動きを見せないとも限りません。

6月26日のスペインの総選挙では、与党である国民党が議席を伸ばし、急進政党が議席を減らしました。英国の政治混乱が反面教師となったのかもしれません。ただし、国民党が過半数に足りない、いわゆる「ハング・パーラメント」の状況に変化はなく、楽観はできません。

目先的には、主要国の中央銀行に金融緩和方向への圧力が加わりそうです。現状維持を継続しながらも、次の一手は利上げとみられていたBOE(英中銀)が金融緩和に踏み切る可能性が浮上してきました。日銀やECBも早晩、追加緩和に踏み切るかもしれません。

他方、FRBの追加利上げの観測が大きく後退しています。FFレート(政策金利)先物に基づけば、6月24日時点で、市場が織り込む利上げ確率は、7月と9月がいずれもゼロ%、年内でも15%に過ぎません。そして、いずれの会合でも10%前後の「利下げ」が織り込まれています。

現段階での米利下げ観測はさすがに行き過ぎではないかと思われますが、株価の大幅な下落が続くなどして、米経済に大きな下向きの力が加わるようであれば、そうした見方も否定できなくなりそうです。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 ドル/円、戻り売りのスタンスを継続!

[ドル/円、今週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ドル/円:戻り売り相場:99.00-104.00

<6・24 Brexitショックの振り返り>
先週23日(木)、『マーケットスクウェア』(M2TV ※音声にご注意ください)に出演した際の番組タイトルを「英国民投票特別編 “暗黒の金曜日”は来るのか?」として解説したその翌日、まさにその“暗黒の金曜日”(ブラック・フライデー)が現実のものとなりました。

今回、番組内で取り上げた“伝説の投資家”ジョージ・ソロス氏の「予言」がまさに的中するような形となりましたが、番組内でも取り上げた「予言」は以下の通りです。

・「今週の金曜日(6/24)が“Black Friday”(暗黒の金曜日)になりかねない」
・「(Brexitとなれば)ポンド相場はポンド危機(1992年9月)時と同じく、15%以上、もしくは20%以上下落する可能性」

ソロス氏の“予言”のうち、“Black Friday”はまさに的中し、15から20%(以上)の下落も概ね的中と捉えてよさそうです。ポンドは24日、対ドルで11%以上下落し、対円での下落率は16%を超えました。(いずれも日足ベース)

この下落はいわゆる『ブラック・ウェンズデー(暗黒の水曜日)』と呼ばれる、ソロス氏自身が仕掛けた1992年9月16日のポンド危機時を超える下落率となり、ドル/円相場も一時99円台を割り込み、また、日経平均株価は前日比1286.33円の下落となりました。ドル/円の一日の変動幅としては2年7ヵ月ぶりの大きさ、また日経平均株価の一日の下落率は16年ぶりの大きさとなりました。

この動きを見るにつけ、2008年のリーマン・ショック時を思い起こされる方が多いかも知れませんが、同一かどうかの詳細な中身の議論は別として、心理的影響度や一日のボラティリティに関して言えば、先月伊勢志摩サミットが行われた際に安倍首相がリーマン・ショックに準えた事例はある意味正しかったのかも知れません。

ソロス氏はこのBrexitが現実となった後のコメントでも、「多くの人が恐れていた破局的なシナリオが現実となった」「金融市場は世界的な混乱が続く公算が大きい」と述べ、また「実体経済への悪影響は2007-08年の金融危機に匹敵するだろう」と、今回のBrexitショックに伴う実体経済への影響について改めて警告しています。

また、これから始まる英国とEUの交渉について、英FT(フィナンシャル・タイムズ)は『世界一複雑な離婚交渉が始まる』と伝えていますが、最も恐れるべきシナリオは、今回の英国の行動が“EU離脱ドミノ”のトリガー(=引き金)となってしまうことなのかも知れません。

マーケットには一部様子見ムードとも取れる動きも見受けられますが、投資家の立場としては常に最悪のシナリオを準備しておいた方が無難です。世に言うエリオット波動の中の「下げ(修正)3波」の中で一番恐ろしい波こそ、一先ず上昇(=B波)してやや安心した後にやって来る大幅下落を意味する「C波」

ソロス氏の相場格言の中にもある通り、「まず生き残れ!儲けるのはそれからだ!」を地道に実践していくことこそが、今の相場状況で一番重要と考えますが、どうでしょうか。

<足もとのドル/円相場について>
閑話休題、足もとのドル/円相場について見ていきたいと思います。

以下、ドル/円・週足・スパンモデル®+スーパーボリンジャー®チャートをご覧ください。



上記テクニカルチャートから確認できるドル/円は・・・1) 21MA(=21週移動平均線)が下向きであること、2) 遅行スパン(21)がローソク足の下方に位置していること、そして3) ローソク足の上方に赤い雲が存在することから、強い下降トレンドが継続すると判断してよさそうです。

一時的なスパイクハイ(=瞬間的な戻り高値のこと)があったとしても、せいぜい先行1スパン(≒107.65円)がいっぱいと見て、ドル/円は「戻った(=一時的な上昇があった)場合は“売る”」というスタンスを継続すべきと考えます。

あくまでテクニカル上の判断として、一つの参考としていただければ幸いです。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/ドルはレンジ・プレイ、ユーロ/円は戻り売り

[ユーロ/円・ユーロ/ドル、今週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ユーロ/円:戻り売り相場:110.70-116.70円
○ユーロ/ドル:押し目買い相場:1.0950-1.1220ドル

先週の当レポートでお伝えしたユーロ/ドル・週足・一目均衡表を改めて検証してみたいと思います。以下、ユーロ/ドル・週足・一目均衡表をご覧ください。



先週のレポートでは、ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)を上抜けして初めて【三役好転】になり得るとお伝えしましたが、先週24日のBrexitショックで陰線となり、その上抜けに失敗しました

ただし、現状のユーロ/ドル・週足・一目均衡表では『横ばい基調』(レンジ相場)を示唆していることもあり、当面のユーロ/ドルはレンジ・プレイ(=リピートオーダーがワークしやすい)環境なのかもしれません。<津田>


【ポンド】 ポンド/円、短期的反発もありそう!しかし・・・

[ポンド/円、今週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ポンド/円:戻り売り相場:134.00-142.00円

同じく、先週のレポートでポンド/円については「君子危きに近寄らず」との表現をしましたが、上記【全体観】でも記載した通り、対円での下落率は16%を超え、先週一週間における高低差は26.84円となる大相場になりました。

以下、ポンド/円・週足・スーパーボリンジャー®をご覧ください。



上記テクニカルチャートから確認できるポンド/円は・・・1) 21MA(=21週移動平均線)が下向きであること、2) 遅行スパン(21)がローソク足の下方に位置していること、そして3) ローソク足が-3σライン付近に位置していることから、現状強い下降トレンドが発生しているものの、足もとの下げ過ぎから多少反発する可能性も視野に入れるべきと考えます。

その戻り(=短期上昇)のメドとしては、-1σ(≒149.04円)付近まで上昇する可能性があるものの、当該ライン付近では上値の重い状態となりそうです。

ポンド/円も、ドル/円同様、「戻った(=一時的な上昇があった)場合は“売る”」というスタンスを継続すべきと考えます。<津田>


【豪ドル】 7月2日の豪総選挙に注目!!

豪ドル/円は6月24日、一時72円台へと下落。2011年10月以来、4年8か月ぶりの安値をつけました。英国の国民投票を受けて、リスク回避の動きが強まったことが要因です。引き続き、リスク回避の動きになりやすいとみられ、豪ドルには下落圧力が加わるかもしれません。豪ドル/円は再び72円台へと向かう可能性があります。

7月2日に豪州の総選挙が実施されます。世論調査によると、与党の保守連合と最大野党の労働党の支持率はそれぞれ50%と、拮抗しており、接戦となっています。今後、豪総選挙が材料視される可能性もあります。上下院同時選挙は29年ぶりで、上院(定数73)と下院(同150)が争われます。

世論調査では、保守連合(与党)と労働党(最大野党)の支持率が拮抗しており、接戦。「ハング・パーラメント(どの政党も議席の過半数を獲得できない状態)」に陥る可能性も指摘されています。そのため、保守連合あるいは労働党が過半数を獲得した場合、豪ドルにとってプラス材料になりそうです。一方、「ハング・パーラメント」の場合、政局の不透明感から豪ドルが下落する可能性があります。<アナリスト 八代和也>


【NZドル】 外部材料に左右される展開になりそう

英国民投票の結果を受けて、リスク回避に伴う円高圧力が高まったことで、NZドル/円は6月24日、2012年12月以来、3年半ぶりの安値をつけました。NZの経済指標は今週、5月の貿易収支(27日)や住宅建設許可(30日)が発表されますが、小粒の感があります。今週のNZドルは、NZサイドの材料よりも、外部材料に左右されそうです。リスク回避の動きが今週も継続する場合、NZドル/円は下値を試す展開になり、再び70円を割り込む可能性があります。<八代>


【トルコリラ】 トルコ中銀の金融政策は材料視されず

TCMB(トルコ中銀)は6月21日、政策金利を発表。3つの政策金利のうち、1週間物レポ金利(主要政策金利)と翌日物借入金利を据え置く一方、翌日物貸出金利を0.50%引き下げました。翌日物貸出金利の引き下げは4会合連続です。

TCMBは金融市場の落ち着きを背景に、3つの政策金利を最終的に一本化する「単純化」措置を今年3月に開始しました。今回の翌日物貸出金利の引き下げは、その一環とみられます。

TCMBは今回の声明で、前回5月と同様に「世界の金融市場のボラティリティが最近やや高まった」との見解を示したものの、「単純化に向けた措置を講じることを決定した」としました。

インフレについては、「主に未加工食品価格の好ましい軌道、およびコアインフレのトレンドの改善により、最近数か月で著しく鈍化した」と指摘する一方、「サービス部門のインフレや単位労働コストの動向は、引き締め的な流動性スタンスの維持を必要とする」との見解が示されました。

今後の金融政策については、「インフレ見通し次第」と改めて表明。そのうえで、「インフレ期待や価格決定行動、インフレ率に影響を与えるその他の要因を考慮すると、引き締め的な金融政策スタンスが維持されるだろう」としました。

今回の声明は、前回5月から大きな変化はありませんでした。

トルコの5月のCPI(消費者物価指数)上昇率は前年比+6.58%、コアCPI上昇率は前年比+8.77%でした。コアCPIは4月の9.41%から大幅に鈍化したものの、いずれもTCMBのインフレ目標である+5%を上回りました。

インフレを抑制するため、TCMBは短期市場金利を高めに誘導。短期市場金利(翌日物銀行間金利)は、一応の上限である翌日物貸出金利近辺で推移しています。資金供給を絞っている(引き締め的な流動性スタンス)と言えるかもしれません。

金融市場が落ち着いた状態が続けば、TCMBは単純化措置を今後さらに進めるとみられます。インフレ圧力の一段の鈍化が確認された場合、単純化措置はより進めやすくなりそうです。

ただし、市場の関心は現在、英国民投票の結果に向いており、TCMBの金融政策は材料視されていません。トルコリラ/円は6月24日に過去最安値を記録しました。リスク回避の動きが継続すれば、トルコリラ/円は一段と下落する可能性があります。<八代>


出所:Bloombergより作成


【南アランド】 ランド/円はリスク意識に反応しやすい状況

南アフリカの5月CPI(消費者物価指数)が6月22日に発表されました。CPI上昇率は前年比+6.1%と、SARB(南アフリカ準備銀行)のインフレ目標(+3から+6%)を5か月連続で上回ったものの、4月の+6.2%から若干鈍化しました。

SARBは、ランド安や食料品価格の上昇などを背景としたインフレ見通しの悪化を理由に、2015年7月以降、計4回の利上げを実施しました。

前回5月の会合では、政策金利を7.00%に据え置きました。ただし、6人の政策メンバーのうち1人が0.25%の利上げを主張。クガニャゴ総裁はその時の会見で、「インフレ見通しは依然として上向き」「インフレ期待は居心地が悪いほど高水準」と指摘し、「対応が必要な場合、SARBは適切に行動することを躊躇しない」と述べ、追加利上げの可能性があることを示しました。

一方で、主力輸出商品価格の下落や干ばつなどにより、南アフリカ経済は低迷。1-3月期のGDPは前期比年率換算1.2%減と、マイナス成長に転落しました。利上げは、経済をさらに冷えこませる恐れがあります。

「インフレ圧力」と「経済の低迷」という政策上のジレンマに直面するなか、わずかとは言え、5月のCPI上昇率が4月から鈍化したことで、SARBが政策金利を据え置く余地が広がりそうです。SARBの次の一手は「利上げ」と考えられますが、状況に変化がなければ、SARBは当面様子見、次回7月21日の会合では政策金利を据え置く可能性が高そうです。


(出所:Bloomberg)

英国民投票の結果を受けて、リスク回避に伴う円高圧力が強まり、ランド/円は6月24日に過去最安値をつけました。ランド/円や南アフリカや日本の材料よりも、リスク意識の変化(リスクオン/オフ)に反応しやすい状況です。リスク回避(リスクオフ)の動きが続く場合、ランド/円は一段と下落する可能性があります。<八代>




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