市場調査部レポート

2016/06/10 14:03日米金融政策よりも英国民投票が相場材料?

・【相場環境】 日米金融政策よりも英国民投票が相場材料?
・【全体観・米ドル】 ドル/円、104円台も想定すべき!?
・【ユーロ】 ユーロ/ドル、“三役好転”間近!
・【ポンド】 英世論調査結果で一喜一憂する一週間になりそう
・【豪ドル】 1か月ぶり高値をつけた豪ドル/米ドル。上値追いは難しそう!?
・【NZドル】 対米ドルで1年ぶり高値。上昇のペースは鈍化する可能性も
・【南アランド】 格下げ回避し、レンジ上限を目指す展開か


【相場環境】 日米金融政策よりも英国民投票が相場材料?

来週は日米の金融政策の会合があります。いずれも政策変更はなさそうですが、そうであっても中央銀行からどのようなメッセージが発信されるか注目したいところです。

14-15日の米FOMCでは、金融政策の現状維持が決定されそうです。5月の雇用統計が非常に弱い結果でした。直後の講演でイエレンFRB議長はゆっくりとした利上げの継続を示唆したものの、時期には言及せず、「数か月以内」とした5月下旬の発言から大きく後退した印象です。7月以降の利上げに関しても不透明感が強まっています。

今回のFOMC後にはメンバーの経済・金融政策見通しの公表、議長の記者会見が予定されています。それらを通してどのようなメッセージが発信されるか、要注目です。

15-16日に日銀の金融政策決定会合。こちらも現状維持が決定されそうです。先のG7やG20(財務大臣・中央銀行総裁会議)では、世界経済のテコ入れのために政策を総動員するとの合意がなされました。消費増税が延期され、財政出動が見込まれるなかで、金融政策も追加緩和によって支援するとの見方は可能でしょう。

ただし、翌週に英国民投票を控えていること、参院選前に不人気のマイナス金利拡大に躊躇しかねないこと、7月の「展望レポート」公表時が望ましいと判断するかもしれないこと、緩和余地が限られるなかでタイミングを慎重に図るであろうことなどから追加緩和があるとすれば、7月の方が可能性は高そうです。

日米の金融政策変更の観測が後退するなかで、23日に迫る英国のEU離脱に関する国民投票が相場材料になるかもしれません。BOE(英中銀)によれば、昨年11月以降のポンド実効レートの下落分のうち半分が国民投票に関わる不確実性によるものと分析されています。EU残留が決まれば、ポンドは顕著に上昇するかもしれません。

一方で、EU離脱となれば、ポンドはBOEいわく「おそらく、かなり大幅に」下落しそうです。ポンド円の1か月物インプライド・ボラティリティ(予想変動率)はブルームバーグが情報提供する20通貨(対円)のなかでも、新興国通貨をも上回って最大となっています。国民投票に関する世論調査結果などを受けて、ポンドが乱高下する可能性には要注意でしょう。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 ドル/円、104円台も想定すべき!?

[ドル/円、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ドル/円:戻り売り相場:104.00-110.00円

今週のドル/円は、先週末の“米雇用統計ショック”の余韻が残るような相場展開となりました。

加えて、国際商品市況の堅調さが目立つ一週間となり、“無国籍通貨”と呼ばれる金(ゴールド)が買われる背景には、ドルに対する信認低下という側面が見え隠れします。

先週の米雇用統計結果を受け、“新債券王”ジェフリー・ガンドラック氏曰く「今月(6月)の利上げは困難」「(米雇用統計結果は)正真正銘のボディーブローとなり得る」「非正規雇用者数の増加と派遣社員数の減少は“坑道のカナリア”」とのコメントを残しました。

つまり、彼自身の経済環境判断はL.サマーズ氏の「長期停滞論」そのものであり、自身49年物の政府機関債を買うという債券投資の背景には、「米低金利政策の長期化」「ドルの弱さ」といった観測や見立てが根底にあると捉えてよさそうです。

また、「金(ゴールド)は1400ドルを目指す」(ジェフリー・ガンドラック氏)、「金鉱株の上昇ポテンシャルは3倍から10倍」(“陰鬱博士”マーク・ファーバー氏)といった“相場猛者”の見立てに従うと、値頃感での安易なドル買い姿勢は控えるべきなのかも知れません。

その理由は、ドル/円とNY金を並べたチャートが何よりも雄弁に語ってくれています。
以下、ドル/円とNY金の日足・ラインチャートをご覧ください。



「金(ゴールド)1400ドルを目指す」という仮説に従えば、長期的にはドル/円の100円台割れの可能性もそう低いものではないのかも知れません。

以下、ドル/円・週足・ボリンジャーバンド+DMIをご覧ください。



上記チャートのメルクマールを確認すると、1) 21MA(=21週移動平均線)が下向きであること、2) ローソク足が-2σから-1σライン内に位置している(=【下降バンドウォーク】こと、3) 5本のボリンジャーバンドの方向性がパラレル(=平行)であることから、ドル/円のトレンドは緩やかな下降基調であることが見て取れます。

仮に来週以降の段階で、方向性指数である+DI(=赤い線)が-DI(=青い線)を上抜けクロスした場合は短期的に上昇する可能性もありますが、現状では21MAラインである111.68円を上回るエネルギーはなさそうです。

また、仮に5月に付けた105.55円を終値レベルで下回った場合は、-2σラインである103.94円レベルまでの下落も事前に想定しておいた方がいいのかも知れません。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/ドル、“三役好転”間近!

[ユーロ/円・ユーロ/ドル、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ユーロ/円:戻り売り相場:119.40-124.20円
○ユーロ/ドル:押し目買い相場:1.1150-1.1550ドル

ユーロ/ドルについては、今後のトレンド予想を行う上で2つのチャートを見ていきたいと思います。

まずは、ユーロ/ドルとNY金の日足・ラインチャートについてご確認ください。



上記チャートからは、概ねユーロ/ドルとNY金はシンクロしていると捉えることも可能と言え、「金(ゴールド)が1400ドルを目指す」という仮説に従えば、ユーロ/ドルが上昇すると見ることも可能です。

これはあくまで相対的な関係による見方ですが、一方でユーロ/ドル・週足・一目均衡表を見てみると、来週中にも上昇サインが確認できるかも知れません。

以下、同チャートをご覧ください。



上記チャートのメルクマールを確認すると、1) 遅行線がローソク足の上方に位置していること、2) 転換線が基準線の上方に位置していることより、最終的にローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)を上抜けた場合(青点線)は晴れて【三役好転】となり、上昇トレンドのサインとなり得ます。

その意味でも来週14-15日に開催される米FOMCやイエレンFRB議長のコメント内容が、ローソク足の上抜けorダマし(=下押し)の動意となりそうです。

ユーロ/円については、6/10(金)に掲載した『注目のチャート(ユーロ/円、さらなる下値を探る展開に?)』をご確認いただければ幸いです。<津田>


【ポンド】 英世論調査結果で一喜一憂する一週間になりそう

[ポンド/円、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ポンド/円:レンジ相場:151.60-160.00円

ポンド/円については、6/23に実施される英国民投票に向けての世論調査の結果や動向が足もとの動意となりそうですが、来週のポンド/円に関してはテクニカル的にはレンジ相場を予想しています。

以下、ポンド/円・日足・21日ボリンジャーバンドをご覧ください。



注意すべきポイントは2つ。まず1つ目は-2σライン(≒153.08円)。そして2つ目が4/7に付けた151.60円。当該ライン(=151.60円)を下抜けた場合は、下落速度が加速する可能性もありそうです。<津田>


【豪ドル】 1か月ぶり高値をつけた豪ドル/米ドル。上値追いは難しそう!?

RBAは7日の会合で、政策金利を過去最低の1.75%に据え置くことを決定しました。

声明では、5月の利下げの理由になったインフレ率について、「極めて低い」と指摘。そのうえで、「この状況はしばらく続く可能性が高い」との見方を示しました。

金融政策については、「入手可能な情報や、5月の会合で金融政策を緩和したことを踏まえると、理事会は、今回の会合で政策スタンスを維持することが、持続可能な経済成長とインフレの目標水準への回復と一致していると判断した」とし、追加利下げを示唆しませんでした

ただし、インフレ率が低い状況は続くとの見通しが示されたことから、RBAが今後、追加利下げに踏み切る可能性は残っているとみられます。RBAは前回5月の会合で、インフレ率が予想外に低かったことを理由に0.25%の利下げを決定しました。

4-6月期のCPIは、7月27日に発表されます。RBAは、次回7月5日の会合で政策金利を据え置き、4-6月期CPIの結果を見極めて、8月の会合で追加利下げが必要かどうかを判断すると考えられます。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、RBAが8月までに利下げに踏み切る確率が41.3%、据え置く確率が58.7%織り込まれています(9日時点)。

豪ドル/米ドルは9日、一時0.7499米ドルへと上昇し、約1か月ぶりの高値をつけました。背景として、3日の米雇用統計が弱い結果(米ドル安要因)や、RBA(豪中銀)の声明における金融政策に関する文言を受けて追加利下げ観測が後退したことが、挙げられます。

テクニカル面から見ると、豪ドル/米ドルは約1か月にわたって抑えられていた0.7380米ドルを超えたことで、5月3日高値である0.7711米ドルに向けて上昇する可能性が出てきました。

ただし、来週は14-15日にFOMC(米連邦公開市場委員会)、15-16日に日銀の政策会合があります。利益確定の動きが出てくる可能性があります。豪ドル/米ドルは上昇のペースが鈍化する、あるいはいったん値を下げる場面もあるかもしれません。<アナリスト 八代和也>

豪ドル/米ドル(日足、2016/3/1-)

(出所:M2J FX Chart Square)


【NZドル】 対米ドルで1年ぶり高値。上昇のペースは鈍化する可能性も

RBNZ(NZ中銀)は9日、政策金利を過去最低の2.25%に据え置くことを決定しました。

声明では、今後の金融政策について、「将来のインフレ率が目標レンジの中央付近で安定することを確実にするため、一段の政策緩和が必要となる可能性がある」と表明、追加利下げの可能性を残しました。

一方で、目標を下回るインフレ率について、「金融政策の緩和的なスタンスや、燃料などの商品価格の上昇、NZドルが下落するとの見通し、生産能力に伴う圧力の若干の高まりを反映し、インフレが加速すると予想している」と表明。CPI(消費者物価指数)上昇率見通しを、2016年10-12月期に前年比+1.3%、2017年10-12月期に同+2.0%とし、それぞれ今年3月時点の+1.1%、+1.8%から引き上げました。

住宅市場に関しては、「オークランドや他地域の住宅価格上昇が、金融安定に関する懸念を強めている」と表明。前回4月28日の声明では、「オークランドの住宅価格が上向いている可能性があるいくつかの指標がみられる」、「住宅市場の圧力は、他のいくつかの地区で高まっている」でした。RBNZが過熱気味にある住宅市場への警戒感を強めている様子がうかがえます。

RBNZは今回、将来的な利下げの可能性を残したものの、利下げは住宅市場をさらに過熱させる恐れがあります。利下げのハードルは高いかもしれません。

RBNZの会合の結果を受けて、市場では追加利下げ観測が後退。NZドル/米ドルは9日、一時0.7146米ドルへと上昇し、約1年ぶりの高値を記録しました。この流れは来週も継続する可能性があります。ただ、RBNZが今後追加利下げに動く可能性は残っており、また1年ぶりの高値圏ということで利益確定の動きが出てくることも考えられます。NZドル/米ドルの上昇のペースは鈍化するかもしれません。<八代>


【南アランド】 格下げ回避し、レンジ上限を目指す展開か

格付け会社のS&Pは3日、フィッチは8日、それぞれ南アフリカの信用格付けを投資適格級の最低水準である「BBB-」に据え置きました。仮に格下げが行われていれば、格付けは“投機的等級”、いわゆる「ジャンク」へと転落するところでした。

南アランド/円は5月に一時5.87円へと下落、今年1月以来の安値をつけましたが、背景に南アフリカの格下げ懸念がありました。

格付け見通しについては、S&P、フィッチの両社とも「ネガティブ(引き下げ方向)」を維持しており、将来的な格下げの可能性は残っています。それでも、今回格下げを回避したことは、南アランドにとってプラスで、南アランドの下支え材料となりそうです。

南アランド/円は今年に入り、おおむね6円台後半から7円台後半のレンジで上下を繰り返してきました。今後は、レンジ上限である7円台後半に向かう可能性があります。<八代>

南アランド/円(日足、2015/12/31-)

(出所:M2J FX Chart Square)





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