市場調査部レポート

2016/06/03 12:13米利上げは6月か、7月か・・

・【相場環境】 米利上げは6月か、7月か・・
・【全体観・米ドル】 米政府が望む“マーケットの三位一体”は「ドル安・株高・原油高」?
・【ユーロ】 ユーロ/ドル、レンジ推移後反発を示唆!
・【ポンド】 英国民投票後のゆくえの根拠とすべきはテクニカルチャート
・【豪ドル】 7日のRBA政策金利発表、注目点は声明になりそう
・【NZドル】 RBNZは9日の会合で政策金利据え置きか


【相場環境】 米利上げは6月か、7月か・・

4月のFOMCの議事録には、「今後のデータが、景気の反発、労働市場の改善、インフレ率の目標への接近などを示すのであれば、ほとんどの参加者は6月の利上げが適切となる公算が大きいと判断した」とありました。昨年12月にFOMCが利上げに踏み切った際には、直前10月のFOMC議事録に類似の記述がありました。

4月のFOMC後の経済指標は改善を示すのが増えています。また、6月1日に公表されたベージュブック(地区連銀経済報告)では、労働市場の広範な引き締まりや物価上昇圧力の高まりが指摘されました。6月14-15日のFOMCまでには、雇用統計(本稿執筆時点で未発表)や小売売上高など、経済指標の発表は少ししかなく、それらがよほど下振れしない限りは、6月に利上げが実施される可能性が相応にありそうです。

一方で、6月14-15日のFOMCで利上げが見送られるだろう理由もあります。EU離脱に関する英国の国民投票が23日に予定されており、その結果が不透明だからです。4月のFOMCの議事録には、「国際金融市場は英国の国民投票に対して神経質になりうる」との一節がありました。大きな懸念ではないかもしれませんが、僅差であれば、判断を「6月見送り」へ傾かせる効果はありそうです。

ただ、6月利上げが見送られるとしても、英国がEU残留を決定するとの前提に立てば、大きな不透明要因が取り除かれた7月26-27日のFOMCでの利上げが強く示唆されるかもしれません。

******
来週は大きな経済イベントや指標に乏しく、再来週の日米金融政策の決定に関する思惑が相場材料となりそうです。

6日にイエレン議長の講演。FOMC直前だけにどこまで金融政策に関して言及するか不透明です。7日にカリフォルニア州等を最後に大統領予備選が終了。民主党のクリントン氏の指名獲得は確実ですが、サンダース氏に対して苦戦するようであれば、共和党の「トランプ大統領」に現実味が出てくるかもしれません。

8日に日本の1-3月期GDP改定値。速報値は前期比年率+1.7%と非常に好調でしたが、法人企業統計に基づけば設備投資を中心に上方修正される可能性がありそうです。そうであれば、日銀の追加緩和期待が一段と後退するかもしれません。

その他、7日にRBA(豪中銀)の会合、9日にRBNZ(NZ中銀)の会合があります。いずれも「据え置き」が予想されますが、RBNZに関しては見方が分かれており、いずれの結果が出てもNZドルに影響があるかもしれません。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 米政府が望む“マーケットの三位一体”は「ドル安・株高・原油高」?

[ドル/円、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ ドル/円:レンジ相場:107.60-111.20円

ドル/円・日足・一目均衡表を見てみると、今週は【三役好転】に失敗したと総括できそう。



ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)を上抜けすることなく、いわば行く手を遮られるような形となっており、また遅行線がローソク足と絡み合うような形から、当面は【レンジ相場】が継続すると捉えてよさそうです。

また、別の角度から今後のドル/円のトレンドとコアレンジを確認するために、以下、ドル/円・日足・ボリンジャーバンド+DMIをご覧ください。



上記チャートから、1) 21MA(21日移動平均線)の方向性が横向き、2) –DI>+DI 、3) ADX=40.51 であることを総合すると、ドル/円の日足レベルでの方向性は横向き(=レンジ相場)であるものの、2)より上方硬直性、つまり上値余地が限定された値動きが継続しそうです。

想定コアレンジは、±2σラインである107.60-111.20円ローソク足が-2σライン(≒107.60円)を割り込んだ場合は、下降基調が強まる可能性も念頭に入れておくべきと考えます。

足もとでは、「米利上げは6月か、それとも7月か?」と言うのがドル/円相場の動意となっていますが、結局のところFRBのみならず米政府が望む“マーケットの三位一体”は【ドル安・株高・原油高】

FRBが早期利上げを望むのは、将来の不景気下における金融政策のバッファー(=利下げ余地)を稼いでおきたいという、極々シンプルな論理に過ぎません。よって、利上げ時期を巡る様々な観測は、言わばその過程であり方法論であるため、トレードにおいて一喜一憂することは賢明ではないと考えます。

『2016年はドル安の年になる』(ジェフリー・ガンドラック)の言葉を座標軸に置いた上で、今後のトレードに臨むのが得策と考えます。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/ドル、レンジ推移後反発を示唆!

[ユーロ/円・ユーロ/ドル、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ユーロ/円:レンジ相場:121.70-124.30円
○ユーロ/ドル:レンジ相場:1.1090-1.1360ドル

ユーロ/ドルについては、今週もテクニカルチャートを中心に見ていきたいと思います。
以下、ユーロ/ドル・日足チャート・フィボナッチリトレースメント+MACDをご覧ください。



現在のユーロ/ドルは、3/10安値1.0820ドルと5/3高値1.1615ドルを結んだフィボナッチリトレースメント61.8%押し水準の1.1124ドルを意識して動いている状態と言えます。

また、オシレーター系のMACD(通称“マックディー”)では、売られ過ぎからの反発を示唆する「ゴールデンクロス」間近との判断も可能です。

よって、足もとはレンジ相場で推移するものの、将来的には売られ過ぎからの反発(=上昇)が予想されます。<津田>


【ポンド】 英国民投票後のゆくえの根拠とすべきはテクニカルチャート

[ポンド/円、来週のトレンドおよびコアレンジ予想]
○ポンド/円:レンジ相場:156.00-163.20円

ポンド/円についても、テクニカルチャートを中心に見ていきたいと思います。
以下、ポンド/円・日足チャート・ボリンジャーバンド+DMIをご覧ください。



現在のポンド/円は、21日ボリンジャーバンドの±2σライン内が“居心地のいい”状態として推移していると捉えてよさそうです。

その根拠として、1) 21MA(21日移動平均線)の方向性が横向き、2) –DI>+DI 、3) ADX=41.76 となっていることから、ポンド/円の日足レベルでの方向性は横向き(=レンジ相場)であることから、概ね±2σラインを意識して当面は推移するものと予想します。

足もとのポンド/円は、今月23日に行われる英国民投票において英国のEU離脱(Brexit)に関する世論調査結果で一喜一憂する状態となりそうですが、その方向性の根拠の重点は英ブックメーカーのオッズ(現在は残留派が優勢)とともにテクニカルチャートにした方が無難と言えます。(世論調査の結果は先のスコットランド独立住民投票を見ても“当たらない”とした方がいいかも知れません。あくまで個人的意見ですが。) <津田>


【豪ドル】 7日のRBA政策金利発表、注目点は声明になりそう

RBA(豪中銀)が6月7日(火)、政策金利を発表します。RBAは前回5月の会合で、0.25%の利下げを決定(政策金利を2.00%から1.75%へ)。声明では、利下げの理由としてインフレ圧力が予想以上に弱いことを挙げました。

その後、RBAのスティーブンス総裁は5月24日の講演で、「インフレ率は本当にやや低すぎる」と発言。追加利下げの可能性が残っていることを改めて示しました。

一方で、5月17日に公表された議事録では、5月の会合で政策金利を据え置くことも検討されたことが判明。また、スティーブンス総裁は5月24日の講演で、インフレ目標の枠組みは柔軟であり、「インフレ率が目標レンジを外れたとしても、条件反射的な対応を求められるものではない」との認識を示しました。また、4月住宅建設許可件数や1-3月期GDPは堅調な結果でした。

そう考えると、6月7日の会合では、政策金利は現行の1.75%に据え置かれそうです。最大の注目点は、金融政策に関する文言になりそうです。5月の声明では、最後を「インフレ率が徐々に目標に戻り、経済が持続的に成長するとの見通しは、今回の会合で金融政策を緩和する(=利下げ)ことによって改善されると判断した」と締めくくり、今後の金融政策について特に言及しませんでした。

今回変わるとすれば、追加利下げを示唆する文言になるとみられます。その通りになれば、RBAの追加利下げ観測が高まり、豪ドルが売られる可能性があります。

市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、RBAが6月の会合で政策金利を据え置く確率が93.6%、利下げを行う確率が6.4%織り込まれています(6月2日時点)。利下げの確率は7月までで19.6%、8月までで、51.1%へと上昇。市場では、8月にも追加利下げがあると見ているようです。<アナリスト 八代和也>


【NZドル】 RBNZは9日の会合で政策金利据え置きか

RBNZ(NZ中銀)が6月9日(木)、政策金利を発表します。RBNZは3月の会合で、0.25%の利下げを行い、政策金利を過去最低の2.25%へ引き下げました。前回4月28日の会合では、政策金利を据え置いたものの、声明で「将来の平均インフレ率が目標レンジの中央近辺で推移することを確実にするため、一段の政策緩和が必要になる可能性がある」と表明、追加利下げを示唆しました。

その後、RBNZは5月17日、企業経営者を対象に実施した四半期ごとのインフレ期待調査を発表。CPI(消費者物価指数)の今後2年間の上昇率予想は+1.64%となり、1994年4-6月期以来の低水準を記録した1-3月期(+1.63%)とほぼ同じでした。3月の利下げはインフレ期待の低下が理由であったことから、インフレ期待の低迷はRBNZの追加利下げにつながる可能性があります。

一方で、NZでは最大都市オークランドを中心に住宅市場が過熱気味にあります。NZ政府の不動産鑑定機関であるQV(クオータブル・バリュー)によると、オークランド地域の平均住宅価格は今年5月までの1年間で15.4%上昇、過去3年間では51.4%上昇しました。

RBNZは5月11日の金融安定報告で、住宅市場について、「オークランドの住宅価格は依然として収入に比べて高水準にあり、全国の多数の地域でも住宅価格が大幅に上昇し始めている」と指摘。「住宅市場の不均衡は引き続き拡大しており、金融の安定に対するリスクとなっている」とし、住宅市場に警戒感を示しました。一段の利下げは住宅市場をさらに過熱させる恐れがあります。

低インフレと住宅市場の過熱の狭間で、RBNZは6月9日の会合で、追加利下げに踏み切るかどうか難しい判断を迫られそうです。ただ、5月ANZ企業景況感調査が+11.3と、4月の+6.2から改善するなどNZの経済指標が比較的良好、また前回会合以降にNZドル高は一服しました。それを踏まえると、RBNZは6月の会合で、政策金利を据え置く可能性の方が高そうです。

市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、6月の会合での0.25%の利下げの確率が30.5%、据え置きの確率が69.5%織り込まれています(6月2日時点)。市場では据え置きとの見方が有力ですが、利下げの確率も3割程度織り込まれていることから、「据え置き→NZドル上昇」「利下げ→NZドル下落」と反応する可能性があります。<八代>




※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。

※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。

※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。

※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。

バックナンバー

  • 2018.10.19 更新サウジ、イタリア、ブレグジットなどのリスク要因が浮上!?◆ファンダメンタルズ◆<<相場環境>>   トルコのサウジアラビア総領事館におけるサウジ人記者失踪事件は、地政学リスクに発展する可能性があります。サウジ皇太子の…
  • 2018.10.12 更新決算発表が本格化、米株価の動きに要注意各通貨ペアの投資戦略については「Weekly投資戦略ガイド」をご参照ください。次回は10月15日更新です。◆ファンダメンタルズ◆<<相場環境>>   10-11…
  • 2018.10.05 更新米長期金利の行方に要注意各通貨ペアの投資戦略については「Weekly投資戦略ガイド」をご参照ください。次回は10月9日更新です(8日が祝日のため)。◆ファンダメンタルズ◆<<相場環境>…
  • 2018.09.28 更新【マンスリー・アウトルック(2018/10)】「10月相場」のアノマリー各通貨ペアの投資戦略については「Weekly投資戦略ガイド」をご参照ください。原則、毎月曜更新(次回は10月1日)です。― 2018年10月の為替相場展望 ― …
  • 2018.09.21 更新市場のリスクオンは続くか各通貨ペアの投資戦略については「Weekly投資戦略ガイド」をご参照ください。次回は9月25日更新です(24日が祝日のため)。◆ファンダメンタルズ◆<<相場環境…

「市場調査部レポート」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。

そのほかのマーケット情報

ページトップへ