市場調査部レポート

2016/05/20 13:50米FOMCは6月利上げがメインシナリオ!?

・【相場環境】 米FOMCは6月利上げがメインシナリオ!?
・【全体観・米ドル】 ドル/円は110円近辺でやや上値が重そう
・【ユーロ】 ユーロ/ドル、テクニカルチャートでは目先反発を示唆?
・【ポンド】 EU残留ならポンド円はさらに10円上昇?
・【豪ドル】 依然として下押し圧力が加わりやすい状況
・【トルコリラ】 新首相決定、次の注目は副首相人事か
・【南アランド】 SARBは利上げ休止も、追加の可能性残す


【相場環境】 米FOMCは6月利上げがメインシナリオ!?

20-21日の仙台G7(財務相・中央銀行総裁会議)や、26-27日の伊勢志摩サミットに関連して、具体的な政策協調が打ち出されるのか、はたまた各国から公式・非公式にどんなメッセージが発信されるのか、金融市場は大いに興味を持って見守っていることでしょう。

そうしたなか、日米の中央銀行が同じタイミングで政策変更に踏み切るとの観測も浮上してきました。市場は4月の会合では肩透かしをくらいましたが、日銀に対する追加緩和期待は根強くあります。6月、あるいは展望レポートが公表される7月の会合に向けて改めて期待が高まりそうです。一方で、FRBは、6月や7月のFOMCでの利上げの可能性を市場に織り込ませようとしているようです。

日銀の緩和とFRBの利上げの組み合わせは、大幅なドル高円安を招くかもしれません。それはFRBにとってはあまりありがたくないことですが、「事後的な協調」の可能性は否定できません。

*******
米FOMCの議事録(4月25-26日開催)によれば、「今後のデータが、4-6月期の景気の反発、労働市場の改善の継続、インフレ率の2%目標への接近などを示すのであれば、ほとんどの参加者は6月の利上げが適切となる公算が大きいと判断した」とのことです。

昨年12月にFOMCが利上げに踏み切った際には、直前10月のFOMC議事録に次のような記述がありました。「景気、労働市場、物価の現状や見通しに基づけば、ほとんどの参加者は次回に利上げの条件が満たされる可能性が十分にあると判断した」。

とりわけ、上記の2つの下線部分は酷似しています。これは、「6月利上げ」がFOMC参加者のサブシナリオからメインシナリオに変更されたことを示しているのかもしれません。つまり、今後のデータがFOMC参加者の予想通り改善を示せば「利上げ」、何らかの理由で期待外れに終われば「見送り」というように。

4月のFOMC後に発表されたデータをみると、雇用統計はNFP(非農業部門雇用者数)こそ市場予想に届きませんでしたが、総賃金が堅調に増加するなど、内容は悪くありませんでした。小売売上高はマイナスだった3月から大幅に増加。消費者信頼感は上昇し、住宅着工件数や鉱工業生産は市場予想を上回りました。

そして、アトランタ連銀が公表している短期予測モデルGDPNowによれば、5月17日時点で4-6月期のGDPは前期比年率+2.5%と、前期の同+0.5%から大幅に反発する見通しです。

また、CPI(消費者物価)は、食料とエネルギーを除くコアが4月まで6か月連続で前年比+2%を上回っています。FRBが重視するPCE(個人消費)のコアは最新の3月時点で1.6%と、2%に届いていませんが、「接近しつつある」とみることはできそうです。

次回6月14-15日のFOMCまでに発表されるデータ次第では、利上げは「ありうる」とみるべきでしょう。市場では、6月23日の英国のEU離脱に関する国民投票の結果が判明する前の利上げは難しいのでは、との見方もあります。ただ、議事録には、1か所だけ「世界の金融市場は英国の国民投票に対して神経質になるかもしれない」との記述がありましたが、FOMC参加者がとりわけ強く意識している様子はみられませんでした(ただし、19日の講演でダドリーNY連銀総裁は国民投票が6月FOMCの判断に影響を与える可能性を指摘)。

FFレート(政策金利)の先物に基づけば、市場が織り込む利上げ確率は議事録公表後に32%へ上昇しました。公表前の17日時点では12%、小売売上高発表前の16日時点では4%でしたので、急速に利上げが織り込まれてきました。ただ、6月利上げがメインシナリオになるのなら、まだ織り込む余地(≒ドルの上昇余地)は残っているかもしれません。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 ドル/円は110円近辺でやや上値が重そう

今週は、相次ぐFRB高官による6月利上げ示唆発言とともに、今週18日(水)に公表されたFOMC議事録を受け、にわかに「6月利上げ」説が高まった一週間と言えます。

その「6月利上げ」説が高まった背景を見てみると、17日(火)に発表された米4月CPI(消費者物価指数)が上昇し、また昨今の原油価格の堅調さに代表される国際商品市況の回復基調もあり、「6月に利上げを行わないリスク」が少なからず顕在化したことがその要因と言えます。

また、「6月利上げ」説を阻む“重石”と捉えられていた6/23の英国民投票ですが、最新の調査ではEU残留派が数的優位となっており、英国のEU離脱(Brexit「ブレグジット」)がやや遠のいたことも、「6月利上げ」説に対して安心感を与える形となっています。

これら材料もあり、足もとのドル/円は4月28日以来の110円台を付け、ドルインデックス(ドル指数)は3月29日以来の高値を示現する一方で、NY株式市場は軟調推移となっています。

しかし、結論から言うと安易に「利上げ=ドル高・株安」と決めつけない方が無難です。その理由として挙げられるのは以下の2つ。

(1) FRBが利上げ判断を行うと言うことは、今後の景気において「景気後退リスク」<「インフレリスク」と判断しており、インフレ警戒に重きを置くと言うことは、通貨安・物価高(≒株高)の傾向がある。
(2)(1)は1971年以来のデータでも実証されており、過去の事例でもFF金利が上がった時は「ドル安」「株高」になっている傾向がある。

(2)のデータについて、以下をご確認ください。

ドル/円・FF金利・NYダウ平均 月足ラインチャート   [期間:1971/1-2015/12]   

出所:Bloombergより作成

当然、為替の短期要因として金利差はその動意になりますが、長期の経験則に基づけば、「FF金利が上がると、ドル/円は下がり、NYダウ平均は上がる傾向がある」と考えてよさそうです。

また、「ドル独歩高」にならないであろう要因としては以下2つの仮説が挙げられます。

(1)大統領選挙が行われる2016年にあえて通貨高政策を取る必要はなく、製造業関連従事者の票田を意識すれば「ドル安政策」はいわば国策と言えること。
(2) ドル建て借金を多く抱える新興国にとってドル高は致命傷となる可能性もあり、ひいては米国経済にも大きな影響を与える可能性があること。

ドル/円の中長期的な視野についてのご参考にしていただければ幸いです。

目先のドル/円については、以下ドル/円・日足・一目均衡表をご確認ください。

USD/JPY 日足(Bid)・一目均衡表)   [期間:2016/2/26-5/20]   
 
出所:M2J FX Chart Squareより作成

足もとのドル/円は、日足・一目均衡表の先行スパン1、いわゆる“雲”が抵抗ラインとなりそうです。

その先行スパン1のレートは、20日時点では110.17円レベル。本日20日から21日まで開催される仙台G7の結果にも注目が必要ですが、サミット関連についての見通しについては、今週18日(水)にアップした『市場調査部シナリオレポート vol.1 「伊勢志摩サミット」後の相場シナリオ検証』もご覧ください。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/ドル、テクニカルチャートでは目先反発を示唆?

ユーロ/ドルについては、今週もテクニカルチャートを中心に見ていきたいと思います。以下、ユーロ/ドル・日足・ボリンジャーバンド+ストキャスティクス(スロー)をご覧ください。

EUR/USD 日足(Bid)・ボリンジャーバンド+ストキャスティクス(スロー)   [期間:2016/1/22-5/20]   

出所:M2J FX Chart Squareより作成

ユーロ/ドルのローソク足(日足)が、「売られ過ぎ」判断指標となる-2σライン近辺にあること、またストキャスティクス(スロー)の%DおよびSDが、同じく「売られ過ぎ」判断基準となる「20%」を下回る水準でクロスする「ゴールデン・クロス」が確認できつつあります。

よって、ユーロ/ドルはショートカバー(=売り方の利食い)も含めた上昇基調に移ってもおかしくない時間帯ではないかと判断します。<津田>


【ポンド】 EU残留ならポンド円はさらに10円上昇?

今週に入って、英国でEU残留派が離脱派をリードしたとの世論調査結果が発表され、ポンド高要因となりました。6月23日の国民投票実施まで予断は許されませんが、仮にEU残留が決まればポンドが大幅に反発する可能性がありそうです。

12日にBOE(英中銀)が公表した「インフレ報告」には、昨年11月以降にポンドの実効レートは9%下落し、そのうち半分はEU離脱に関する国民投票に起因するものだとの分析結果がありました。

これをポンド円に当てはめると、昨年11月19日のピーク188.77円から4月7日のボトム151.60円までの下落分37.17円のうち、18.6円が国民投票を嫌気した分だとみることができそうです。

EU残留派の優勢もあって、ポンド円は5月19日(終値)に160.64円まで、4月のボトムから約9円上昇しました。仮に上記の分析が正しく、かつ国民投票でEU残留が決定するならば、ポンド円はさらに10円近く上昇すると試算することも可能でしょう(ただし、国民投票以外の要因に基づくポンド円の変動は考慮していません)。<西田>

ポンドの実効レートと国民投票の影響

2015年11月18日を起点とした累積変化(%)
青実線=ポンド実効レート、 黄実線=国民投票の影響分 黄点線=誤差の範囲
出所:BOE(英中銀)の「インフレ報告」より抜粋


【豪ドル】 依然として下押し圧力が加わりやすい状況

今週の豪ドルは軟調に推移。豪ドル/米ドルは2か月半ぶりの安値をつけました。RBA(豪中銀)の追加利下げ観測が引き続き豪ドルの重石となるなか、18日に発表された1-3月期の賃金価格指数がさらなる下落圧力となりました。1-3月期の賃金価格指数は前期比+0.4%、前年比+2.1%と、ともに1998年の統計開始以来最低の伸びとなりました。

RBAは政策金利を据え置いた4月の会合時の声明で、「インフレ見通しや昨年明確になった労働市場の改善が継続するかどうかを判断する」と表明。その後、5月3日の政策会合で、インフレ圧力が予想以上に弱いことを理由に、0.25%の利下げに踏み切りました。

賃金上昇率の鈍化は、インフレ率が引き続き低水準に抑えられることを示唆し、RBAの追加利下げへとつながる可能性があります。ただ、底堅い労働市場を踏まえると、RBAが追加利下げを急ぐ必要性は低いとみられます。

18日に発表された豪州の4月雇用統計は、失業率が5.7%、雇用者数が前月比1.08万人増でした。失業率は市場予想(5.8%)と比べて良く、雇用者数は市場予想の+1.2万人増を下回りました。雇用者数は3月分が2.61万人増から2.57万人増へと下方修正されました。また、4月分の内訳をみると、パートタイム就業者が2.02万人増加した一方、フルタイム就業者が0.93万人減少しました。

今回の雇用統計では、失業率は2014年9月以来の低水準を維持し、雇用者数も質の問題(パートタイム就業者が増加し、フルタイム就業者が減少)があるものの、2か月連続で増加しました。豪州の労働市場は引き続き底堅いと言えそうです。

RBAは6月9日、7月5日の会合では政策金利を据え置き、7月27日に発表される4-6月期のCPI(消費者物価指数)をみたうえで、8月2日の会合で追加利下げの是非を判断するとみられます。

RBAの追加利下げはしばらく先と考えられますが、それでも追加利下げ観測が豪ドルに下落圧力を加え続ける可能性があります。<アナリスト 八代和也>


【トルコリラ】 新首相決定へ、次の注目は副首相人事か

与党AKP(公正発展党)は19日、ダウトオール党首(=首相)の後任に、ユルドゥルム運輸海事通信相を充てることを決定しました。ダウトオール氏の辞任を受けて、AKPは22日に臨時党大会を開催し、党首選を実施しますが、他に候補者は出ないと予想され、ユルドゥルム氏の首相就任が確実な情勢です。AKPの党規では、党首と首相は同一人物が務めることになっています。

ユルドゥルム氏はエルドアン大統領がイスタンブール市長を務めていた1990年代からの盟友。2002年のAKP政権発足後は、2013年に汚職疑惑で辞任したものの、その後返り咲き、ほぼ一貫して運輸相を務めています。

エルドアン大統領の側近であるユルドゥルム氏が新首相に就任することで、エルドアン大統領の影響力増大が予想されます。

また、ユルドゥルム氏は首相就任後、内閣を改造するとみられており、ダウトオール氏主導で起用したとされるシムシェキ副首相が留任するのかどうかに市場は注目しています。

TCMB(トルコ中銀)はエルドアン大統領からの利下げ圧力にさらされていますが、シムシェキ副首相は中銀の独立性を訴えるなど、大統領の利下げ圧力を和らげる役割を果たしてきたとみられています。副首相がエルドアン大統領の意向を反映しやすいとみられる人物に交代すれば、TCMBの独立性への懸念から、トルコリラに下押し圧力が加わる可能性があります。トルコの政局に注意が必要かもしれません。<八代>


【南アランド】 SARBは利上げ休止も、追加の可能性残す

SARB(南ア中銀)は昨日、政策金利を7.00%に据え置くことを決定しました。

南アフリカの4月のCPI(消費者物価指数)は前年比+6.2%と、3月の+6.3%から上昇率が若干鈍化したものの、SARBのインフレ目標(+3から6%)の上限を4か月連続で上回りました。インフレ率が高止まりするなか、昨年11月から3会合連続で行ってきた利上げを休止しました。

今回の会合では、政策メンバー6人のうち、5人が据え置き、1人が利上げを主張しました。

クガニャゴ総裁は会合後の会見で、インフレ見通しは依然として上向きと指摘。上向きリスクとして、ランドや食料品価格、原油価格を挙げました。とりわけ、ランドについては「4月のランドの反発は長続きしなかった」「ランド安はインフレ見通しへの上向きリスクをもたらす」などと懸念を表明しました。

SARBは今回、2016年の平均インフレ見通しを前年比+6.7%と、前回の+6.6%から上方修正。2017年は+6.2%、2018年は+5.4%との見通しを示しました。

クガニャゴ総裁は「現在の政策スタンスは依然として緩和的」「SARBは適切に行動することを躊躇しない」と述べ、追加利上げの可能性があることを示しました。

SARBの次回政策会合は7月21日に開催されます。ランド安が進行するなど、インフレ見通しが悪化する事態となれば、追加利上げに踏み切るかもしれません。<八代>




※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。

※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。

バックナンバー

  • 2018.08.10 更新トランプの戦争2各通貨ペアの投資戦略については「Weekly投資戦略ガイド」をご参照ください。原則、毎月曜更新(次回は8月13日)です。◆ファンダメンタルズ◆<<相場環境>> …
  • 2018.08.03 更新米中貿易摩擦と日米通商協議各通貨ペアの投資戦略については「Weekly投資戦略ガイド」をご参照ください。原則、毎月曜更新(次回は8月6日)です。◆ファンダメンタルズ◆<<相場環境>>  …
  • 2018.07.27 更新【マンスリー・アウトルック(2018/8)】「通商交渉」の夏― 2018年8月の為替相場展望 ― 《相場環境》8月は通商交渉の行方が相場材料になりそう。米中通商交渉(対中追加制裁関税)、NAFTA再交渉(米国とメキシコに…
  • 2018.07.20 更新自動車関税と主要国の金融政策各通貨ペアの投資戦略については「Weekly投資戦略ガイド」をご参照ください。原則、毎月曜更新(次回は7月23日)です。◆ファンダメンタルズ◆<<相場環境>> …
  • 2018.07.13 更新貿易摩擦は米欧(EU)間、日米間に拡大も!?各通貨ペアの投資戦略については「Weekly投資戦略ガイド」をご参照ください。原則、毎月曜更新(16日が祝日のため次回は7月17日火曜日)です。◆ファンダメンタ…

「市場調査部レポート」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。

そのほかのマーケット情報

ページトップへ