市場調査部レポート

2016/04/28 14:52【マンスリー・アウトルック(2016/5)】「6月の嵐」の前の静けさ?

― 2016年5月の為替相場展望 ― 
「6月の嵐」の前の静けさ?


《概観》

6月は英国のEU離脱に関する国民投票、日米の金融政策会合、米大統領予備選終了など、相場材料となりうるイベントが目白押し。5月はそれと比べてライトなカレンダー。ただし、伊勢志摩サミットや景気対策の検討など、日本関連の重要材料は散見される。6月の会合に向けた日米中銀からのメッセージにも要注意か。

<主要通貨の動向>
・【米ドル】 6月のFOMCに向けて利上げの地ならしが進められるか
・【円】 日銀はゼロ回答。それでも根強い追加緩和の観測
・【ユーロ】 ギリシャ財政問題がユーロの重石に
・【ポンド】 オバマ発言でEU残留派が増加

<資源国・新興国通貨の動向>
・【豪ドル】 RBAの5月追加利下げ観測高まる、結果に反応しそう
・【NZドル】 GDTとインフレ期待調査に注目
・【カナダドル】 原油堅調が続けば、カナダドルもジリ高に
・【トルコリラ】 TCMBは単純化措置を一段と進める可能性も!?
・【南アランド】 19日のSARB会合では、政策金利据え置きか

◆主要経済指標・イベント
◆OIS(翌日物金利スワップ)に基づく金融政策見通し


≪概観≫

4月の為替相場(27日まで)は、ドル円が「下へ行ってこい」の展開でした。上旬はドル円が急落、1ドル=112円台半ばから11日には一時107円台半ばまで下落。円が全面安となり、ドルは円以外の通貨に対して小動きでした。11日以降は、ドル円が反発。22日には日銀が金融機関への貸出に対してマイナス金利を検討しているとの報道を受けて、円が急落して全面安となりました。

そうした中で、原油などの資源価格が上昇、NYダウが昨年5月の最高値に接近するなど、リスクオンの展開となりました。月間でみれば、南アランドやカナダドルなどの資源国通貨の対ドルでの上昇が目立ちました。一方、追加利下げ観測の根強いオセアニア通貨は軟調でした。(28日の日銀会合の決定を受けて円が急伸したので、4月28日までに対円で上昇したのは、カナダドルのみとなりました)



6月は、英国のEU離脱に関する国民投票(23日)、日米の金融政策会合(米14-15日、日15-16日、ECBは2日)、米大統領予備選の終了(7日カリフォルニア州など)など、金融市場を大きく動かす可能性のあるイベントが相次ぎます。

それに比べると、5月は比較的ライトなカレンダーのように思われます。ただし、26-27日のG7伊勢志摩サミット、その前のG7財務相・中央銀行総裁会議(仙台)、さらには6月1日の通常国会会期末前に消費増税の延期を含めた景気対策が発表されるかなど、日本関連の材料には注意が必要かもしれません。

また、6月のFOMCに向けた利上げ地ならしの有無、日銀の決定会合に向けた追加緩和の思惑、なども相場材料となるかもしれません。そして、やや変化球としては、パナマ文書の全容が判明する予定です。<チーフエコノミスト 西田明弘>


<主要通貨の動向>

【米ドル】 6月のFOMCに向けて利上げの地ならしが進められるか

4月27日、FOMCは金融政策の「据え置き」を決定しました。票決は9対1で、カンザスシティ連銀のジョージ総裁が0.25%の利上げを主張して反対票を投じました。

声明文をみると、前回3月時点に比べて、世界経済や金融市場への懸念がやや後退する一方で、足元の米景気の減速を認識した形となっています。声明文は今後の方針について、3月時点と同様に、「利上げのタイミングと幅の決定については、実現した、あるいは予想される経済情勢を精査する」とし、「経済情勢は、ゆっくりとした利上げのみを正当化するだろう」と結論付けました。

昨年12月に利上げを実施した際、その一つ前の10月のFOMC声明文は、今後について「次回の利上げが適切かどうかを判断するため、目標に向けての進展を精査する」と、利上げが秒読み段階に入ったことを示唆しました。しかし、今回はそうした切迫感はないようです。27日時点で、政策金利(FFレート)が織り込む6月利上げの確率は21%です。利上げの確率が5割を超えるのは11月のFOMC以降です。

もっとも、6月利上げの可能性が排除されたわけではありません。今後の状況に応じてその確率がどう変化するか、そしてFRB関係者が早いタイミングでの追加利上げに向けて「地ならし」を進めるか、などに要注目でしょう。



大統領予備選:共和党は、いよいよ「競争の党大会」実現へ?
共和党の予備選は、代議員の約8割の行方が既に決定し、5月中に5州、6月7日に5州を残すのみとなりました。ただ、トランプ氏が引き続きクルーズ氏を大きくリードしているものの、党指名獲得に必要な代議員の過半数に届くかどうかは不透明です。

予備選で決着が付かず、7月の党大会で実質的に指名が争われる「競争の党大会」となるかもしれません。その場合、代議員による2回目以降の投票で、誰が指名されるのかは予断を許しません。また、党大会の結果を不服として、トランプ氏が独立候補として本選に臨む、あるいは党指名を獲得したトランプ氏に対して、党主流派が本選に独立候補を擁立するなどのシナリオも「あり得なくはない」ようです。

一方、民主党予備選では、クリントン氏の指名獲得がほぼ確実とみられます。共和党が大統領候補選びで混乱するほど、本選では民主党候補(恐らくクリントン氏)に有利に働きそうです。<西田>



【円】 日銀はゼロ回答。それでも根強い追加緩和の観測

4月28日、日銀はFRBに約9時間遅れて金融政策の「据え置き」を決定しました。熊本地震を受けて被災地金融機関支援オペの導入はあったものの、追加緩和期待に対してほぼ「ゼロ回答」でした。22日に「日銀が金融機関向け貸出にマイナス金利を検討」との一部報道が伝わったことで、円が急落しましたが、その下落分を戻した格好となりました。

もっとも、「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」で、物価目標の達成時期を「2017年度前半ごろ」から「2017年度中」へ半年程度先送りしたこと、決定を受けて円高が進んだことなどから、追加緩和期待は根強く残るものとみられます。

伊勢志摩サミットに向けて安倍政権が包括的な経済対策を検討するとみられるなかで、日銀がそれを援護射撃するための弾を残しておいたとみることは可能かもしれません。<西田>

【ユーロ】 ギリシャ財政問題がユーロの重石に

ECBは4月21日の理事会で、金融政策の据え置きを決定しました。据え置きは市場予想どおりでした。同時に3月会合で決定した月額800億ユーロの資産買い入れ策の一環として、ECBが6月から社債の購入を開始。起債、流通の両市場で実施することが明らかにされました。

理事会後の会見でドラギECB総裁は、「ECBの金融緩和政策は『機能しており効果的』で、完全な効果を発揮するのを待つべき」と述べました。次のECB理事会は6月2日と間が空くこともあり、EUまたはユーロ圏の金融政策絡みでユーロが動く可能性は比較的低いかもしれません。

一方、ギリシャ財政を巡る問題は、足もと不透明感が高まっています。ギリシャは債権団による財政改革審査が遅れていることを受けて、学校や病院などの公的機関に対して、余剰資金を中銀に預けるよう義務付け、借り入れた資金を債権団への支払いに充てています。ギリシャは6-7月にECB、IMFなど債権団への返済のために50億ユーロ超を必要としています。しかし債権団による融資実施は凍結されたままで、厳しい状況に置かれています。

ギリシャのある政府関係者は「年金基金の準備金を活用するなどすれば、5月末か6月初旬までは財政破綻しないだろう」と述べましたが、ギリシャの財政問題はユーロの重石となるかもしれません。<シニアアナリスト 山岸永幸>

【ユーロ/米ドル(週足) 2015/8/2 – 2016/4/28】  

出所: FX Chart Square

【ポンド】 オバマ発言でEU残留派が増加

BOE(英中銀)は4月14日のMPC(金融政策委員会)で政策金利の据え置きを決定しました。市場の予想通りでした。同日公開された議事録では、「Brexit(ブレクジット、英のEU離脱問題)」への懸念が改めて示されました。

調査機関ICMがインターネットを介して4月22-24日に実施した世論調査では、EU離脱支持が46%と、残留支持の44%を上回りました。ただ、前回4月12日に発表された同社の調査ではEU離脱支持が45%、残留支持が42%だったことから、回答未定としていた「浮動票」が残留支持に流れた可能性があります。

22日に訪英したオバマ米大統領は、米英関係は英国が欧州連合(EU)の加盟国であることによって強化されているとし、英国がEUを離脱すれば英国との貿易交渉を後回しにする可能性があるとの考えを示しました。EU残留を支持するオバマ発言をうけて、英ポンドの対米ドル3カ月物予想変動率は昨年5月以来となる下げ幅を記録。EU離脱予想の後退が反映された形です。

賭け屋ベットフェアのデータによれば、英国のEU残留確率が昨年9月以来の高水準に急上昇。EU離脱確率は前週の37%から27%前後に低下したということです(4月25日時点)。

6月23日の国民投票まで、まだかなりの日数があり、同問題を巡る不透明感は依然強いものの、EU残留派の勢力が拡大すれば、ポンドは徐々に戻りを試す展開となるかもしれません。<山岸>

【ポンド/円(週足) 2015/8/2 – 2016/4/28】  

出所: FX Chart Square


<資源・新興国通貨の動向>

【豪ドル】 RBAの5月追加利下げ観測高まる、結果に反応しそう

4月27日に発表された豪州の1-3月期CPI(消費者物価指数)は前年比+1.3%と、市場予想(+1.7%)を下回り、10-12月期の+1.7%から上昇率が鈍化。また、RBA(豪中銀)がCPIとともに重視するとされる基調インフレ率(トリム平均と加重中央値の平均値)は前年比+1.55%と、10-12月期の+2.00%から大幅に鈍化、1983年の統計開始以来最低となりました。CPI、基調インフレ率ともに、RBAのインフレ目標の下限である+2%を下回りました。

インフレ圧力の鈍化は、利下げへとつながる可能性があります。CPIを受けて、RBAが次回5月3日の会合で利下げを決定するとの観測が高まりました。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、RBAが0.25%の利下げを決定する確率が60.8%、政策金利を据え置く確率が39.2%織り込まれています(27日時点)。

ただ一方で、豪州の労働市場は順調に回復、失業率は2年半ぶりの水準まで改善しました。最大の輸出品である鉄鉱石の価格は、昨年末以降、上昇傾向にあります。

こうした状況を踏まえると、RBAは次回5月3日の会合で、追加利下げを見送る(=政策金利を据え置く)可能性の方が高いと考えられます。利下げ観測が高まっているため、据え置きの場合には豪ドルが上昇する展開が予想されます。

5月は、RBAの政策金利とともに、19日に発表される豪州の4月雇用統計にも注目です。RBAが政策金利の据え置きを続けた理由のひとつに労働市場の回復がありました。そのため、雇用統計の結果を受けて、市場の金融政策見通しが変化し、それが豪ドルの動向に影響を与える可能性があります。<アナリスト 八代和也>


出所:Bloombergより作成

【NZドル】 GDTとインフレ期待調査に注目

RBNZ(NZ中銀)は4月28日の会合で、政策金利を過去最低の2.25%に据え置きました。声明では、「将来の平均インフレ率が目標レンジの中央近辺で推移することを確実にするため、一段の政策緩和が必要になる可能性がある」と表明、追加利下げを示唆しました。

NZドルについては、「NZの商品輸出価格の低さを踏まえると、適切な水準よりも依然として高い」と指摘、「インフレの押し上げや貿易セクターを支援するために、NZドルの下落が望ましい」としました。

今回の会合について、市場では「据え置き」と「0.25%利下げ」で見方が割れていたため、据え置き決定を受けて、NZドルが上昇しました。

ただし、市場ではRBNZは次回6月9日の会合で、追加利下げに踏み切るとの見方が有力。OIS(翌日物金利スワップ)では、RBNZが6月に利下げを行う確率が71.2%織り込まれています(27日時点)。RBNZの追加利下げ観測がNZドルの上値を抑える可能性があります。

5月は、3日と17日に乳製品電子オークション(GDT)が開催され、同じく17日には四半期に1度のRBNZによるインフレ期待調査が発表されます。RBNZが昨年4回実施した利下げは乳製品価格の下落、今年3月の利下げはインフレ期待の低下が一因でした。GDTやインフレ期待調査が弱い結果になれば、追加利下げ観測が一段と強まる可能性があります。その場合、NZドルには下押し圧力が加わりやすくなりそうです。<八代>

【カナダドル】 原油堅調が続けば、カナダドルもジリ高に

4月13日の会合で、BOC(カナダ中銀)は政策金利据え置きを決定しました。据え置きは6会合連続です。BOCは前回に続き、「インフレ動向をめぐるリスクは概ね均衡」「金融政策は適切」と述べました。

BOCは「世界的な経済成長は1月時点の予想より軟調になる」との見方を示し、足もとのカナダドル上昇が輸出の阻害要因になると指摘。カナダ中銀がカナダドル安を目指していると市場では捉えられ、一時カナダドルが軟調となる場面がありました。ただ、ポロズBOC総裁は、そうした見方を否定しています。

カナダ経済に影響を与える原油価格の動向は、WTI原油先物(直近限月)が4月27日には45ドル台に上昇、昨年11月以来の高水準にあります(4月27日現在)。

原油価格と連動性の高い米ドル/カナダドルは一時1.26ドルを割り込むなど、ジリジリと上昇しています。原油価格の強含み推移が続けば、カナダドルのジリ高推移も続きそうです。<山岸>



【トルコリラ】 TCMBは単純化措置を一段と進める可能性も!?

TCMB(トルコ中銀)は、チェティンカヤ新総裁(前副総裁)の就任初日である20日に会合を開催。主要政策金利である1週間物レポ金利と翌日物借入金利を据え置く一方、翌日物貸出金利を0.50%引き下げることを決定しました。


出所:Bloombergより作成

声明では、今回の決定について、「世界の(金融)市場のボラティリティの低下が継続し、世界の金融環境が改善した。こうした出来事に伴い、広い金利コリドーの必要性が低下した」と説明しました。

TCMBは3つある政策金利を最終的に一本化する「単純化」措置を3月に開始、4月と同様に翌日物貸出金利を引き下げました(3月は0.25%)。

総裁が交代し(バシュチュ氏からチェティンカヤ氏へ)、TCMBの金融政策に変化があるのか注目されましたが、チェティンカヤ総裁はバシュチュ前総裁の金融政策を継続した格好です。

次回会合は5月24日に開催されます。金融市場が落ち着いた状態が続けば、5月の会合でも単純化措置をさらに進め、3月、4月と同様に、翌日物貸出金利を引き下げる可能性があります。5月に翌日物貸出金利を引き下げるとの観測が市場で強まれば、トルコリラの上値を抑える要因になりそうです。<八代>

【南アランド】 19日のSARB会合では、政策金利据え置きか

5月19日のSARB(南アフリカ中銀)の政策金利発表が、ランドにとって最大の相場材料になりそうです。SARBは前回3月17日の会合で、3回連続の利上げを決定。政策金利を6.75%から7.00%へ、0.25%引き上げました。

商品価格の下落や慢性化する電力不足を背景に、南アフリカ経済が減速するなかで、ランド安や食料品価格上昇を背景としたインフレへの対応を優勢した格好となり、3月の会合では6人の政策メンバーのうち、3人が据え置き、3人が0.25%の利上げを主張して意見が割れ、最終的にクガニャゴ総裁が利上げを決定しました。

政策メンバーであるカシム氏は3月の会合後、「SARBは利上げ局面にある」と明言し、追加利上げを示唆する一方、「毎回、利上げを行うことを意味するわけではない」と述べました。

南アフリカの3月CPI(消費者物価指数)は前年比+6.3%と、SARBのインフレ目標(+3から6%)の上限を3か月連続で上回ったものの、2月の+7.0%から上昇率が鈍化しました。

クガニャゴ総裁は4月22日、「3月のCPIはSARBの見通しに沿ったものだった」とした一方、「4月は、3月よりも上昇率が鈍化する可能性がある」と述べました。

前回会合以降、ランドが対米ドルで反発したこともあり、5月の会合では政策金利の据え置きが決定されそうです。ただし、クガニャゴ総裁の会見などで、SARBは依然として利上げ局面にあることが改めて示されるとみられます。その場合、追加利上げ観測が残ると考えられることから、ランドは底堅い展開になりそうです。<八代>




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