市場調査部レポート

2016/04/22 13:31日米中央銀行のランデブー

【概観】日米中央銀行のランデブー

今週(4/15-21)は、円が全面安の展開でした。新興国・資源国通貨がドルに対しても上昇したので、典型的なリスクオン相場だったといえそうです。ドーハ産油国会合の失敗にもかかわらず、原油価格が反発したことでカナダドルが買われ、また中銀の会合で新総裁が無難な船出をしたことでトルコリラが買われるといった固有の事情もありました。

主要通貨の対円騰落率(4/15-4/21)

出所:Bloombergより作成

21日のECBの理事会では、金融政策の「現状維持」が決定されました。ドラギ総裁は記者会見で、ユーロ圏の経済成長を支えてきたのは金融政策のみだったと指摘。金融政策が有効に機能しているとした上で、ECB批判はその効果を阻害するとけん制しました。ECBは3月に実施した追加緩和の効果を見極めたうえで、必要であれば更なる措置を打ち出す意向のようです。

来週は、米FOMCと日銀の金融政策決定会合が開催されます。そして、わずか10時間程度の差で双方の結果が判明します。

米FRBは「ゆっくりとした利上げを続ける」意向を表明か
26-27日開催のFOMCでは、金融政策の「現状維持」が決定されそうです。4月21日時点で、FFレート(政策金利)の先物に織り込まれた利上げ確率は、4月FOMCではゼロ%。6月までで20%弱、年内では60%強です。年内利上げの確率は18日に一時50%を下回り、わずかな差ながらも「年内に利上げなし」がメインシナリオとなりましたが、再び「年内利上げあり」がメインシナリオへと目まぐるしく変化しています。

ボストン連銀のローズグレン総裁は18日の講演で、「金融市場は悲観的すぎる」と発言しており、年内1回を超えるペースでの利上げを想定しているようです。FOMCのメンバーのなかでも、ローズグレン総裁は利上げに慎重な「ハト派」の一人と目されており、その総裁が上記の発言をしたことに意味があるかもしれません。

アトランタ連銀の短期モデルGDPNowによれば、今年1-3月期の実質GDPは前期比年率0.3%増と予想されています(4月19日時点)。弱いGDPの発表が想定されるなかで、その前日に利上げに踏み切るのは、さすがにタイミングが悪そうです。せいぜい、「ゆっくりとした利上げを続ける」との意向が表明される程度でしょう。

日銀は「躊躇なく行動する」可能性も
27-28日開催の日銀の会合は、もっと読みが難しそうです。日銀の「量的・質的金融緩和」、最近では1月に始まった「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の効果に対する疑念が強まりつつあります。その一方で、黒田総裁は13日のNYでの講演でも、「マイナス金利を導入していなければ、日本の金融市場はより悪い状況になっていただろう」と日銀の政策対応に自信を示しました。そのうえで、必要であれば躊躇なく行動するとの意向を改めて表明しました。

マイナス金利導入以降、ドル安円高が進行しています。日銀短観3月調査によれば、大企業・製造業が想定する2016年度の為替レートは117円台半ばです。現行水準はそれより10円近く円高に振れており、企業収益や景気への悪影響が懸念される状況です。

先週のワシントンG20(財務相・中央銀行総裁会議)の共同声明では、「金融政策のみでは、均衡ある成長につながらない」、「競争力のために為替レートを目標とはしない」と改めて釘を刺されています。

それでも、今回の会合後に公表される「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」で、景気や物価見通しが下方修正されるかもしれません。熊本地震の影響は未知数ながら、すでに多くの工場が操業を停止するなど、決して無視できるものではないでしょう。そうであれば、日銀が「躊躇なく行動する」可能性はありそうです。

FOMCの結果判明は日本時間28日午前3時ごろ、金融政策決定会合の結果判明は同日の正午過ぎです。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【米ドル】 110円を越えれば、上値余地拡大も?

先週の後半から週末にかけて、ドル安円高要因と考えられる材料が相次ぎました。15日に閉幕したワシントンG20(財務相・中央銀行総裁会議)では、通貨安を目的としないことが改めて確認され、日本政府の円高対応に釘が刺されました。3月の鉱工業生産が大幅なマイナス、消費者信頼感が低下するなど、米経済指標は軟調なものが目立ちました。週末のドーハ産油国会合では、生産凍結の合意に至らず、原油先安感が強まりました。さらに、熊本地震はリスク回避の観点から円高要因と考えられなくもありませんでした。



そうした中で、ドル円は108円割れで今週をスタートしましたが、すぐに反発。その後は原油価格の反発や米利上げ観測の若干の高まりなど、ドル高円安材料が後からついてきた印象がありました。

材料の割にドル円が意外にしっかりだったのは、短期のポジションが「円買い」に大きく傾いていたからかもしれません。CFTCによれば、先物のネットの円買いポジションは4月12日に過去最大だったようです。そのため、投機筋の円買い余力は大きくないのかもしれません。

もっとも、それは、ドル円の「下げ渋り」材料であっても、必ずしも「上昇」材料ではないでしょう。ドル円は、2月中旬から4月上旬にかけてのレンジ相場(110-115円)の下限である110円で頭を抑えられる展開が続いています。日米中央銀行の会合の結果などを受けて、まず110円を越えられるかが上昇余地拡大の大きなカギとなりそうです。<西田>


【ユーロ】 ドラギECB総裁は政策の正当性を主張

ECBは21日の理事会で、金融政策の据え置きを決定しました。前回3月に市場予想を超える大規模な金融緩和策を決定した翌月でもあり、据え置きは市場予想どおりでした。

また、3月会合で決定された月額800億ユーロの資産買い入れ策の一環として、ECBが6月から社債の購入を開始。起債、流通の両市場で実施することが明らかにされました。

理事会後の会見でドラギECB総裁は、「ECBの金融緩和政策は『機能しており効果的』で、完全な効果を発揮するのを待つべき」と述べました。ドラギ総裁は、「適切な水準の金融緩和策を必要な限り維持することが極めて重要」との認識を示すとともに「大規模な資産買い入れ策やマイナス金利の実施に踏み切っていなければ、状況はさらに悪化していた」と述べ、ECBが導入している低金利政策やマイナス金利の正当性を主張しました。

ドイツではECBの低金利政策に対する批判が高まっています。メルケル独首相は21日にオランダのルッテ首相と会談し、「預金者や年金受給者の生活に影響を及ぼし、銀行の利益率を圧迫している」とのドイツ国内の批判に理解を示しつつ、「ドイツ国内の批判が正当化されることと、ECBの政策の独立性への介入と混同すべきでない。私はECBの独立性を完全に支持している」と語りました。

ECBの政策据え置きをうけて、21日の欧米市場ではユーロ/米ドルは一時1.1395ドルに上昇しましたが、その後は1.12ドル台へと押し戻されました。市場の関心は27日のFOMCに移っており、ユーロ/米ドルは鈍い動きが続くかもしれません。<シニアアナリスト 山岸永幸>


【豪ドル】 28日の豪CPIに注目、RBAの金融政策判断に影響しそう

27日に豪州の1-3月期のCPI(消費者物価指数)が発表されます。RBA(豪中銀)はインフレ目標を採用しており、CPIの前年比を中期的に+2から3%の範囲に収まるように金融政策運営を行います。そのため、CPIの結果がRBAの金融政策判断に影響を与える可能性があり、注目です。

市場では、RBAの追加利下げ観測が根強くあります。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)が織り込む、RBAが利下げを行う確率は、次回5月3日の会合では14.7%ですが、8月までになると42.9%へと上昇します(21日時点)。

昨年10-12月期のCPIは前年比+1.7%と、RBAのインフレ目標(+2から3%)を下回ったものの、同1-3月期の+1.3%を底に、徐々にRBAの目標に近づいています。

1-3月期のCPIが市場予想よりも強い内容になれば、RBAの先々の追加利下げ観測が後退するとみられます。その場合、豪ドルの支援材料となりそうです。市場予想は+1.7%となっています。<アナリスト 八代和也>


出所:Bloombergより作成


【NZドル】 28日のRBNZ政策金利発表、据え置きか利下げか!?

28日にRBNZ(NZ中銀)が政策金利を発表します。この結果に、NZドルが反応する可能性があるため、注目です。RBNZは前回3月10日の会合で、0.25%の利下げ(2.50%から2.25%へ)を決定。声明では、「将来の平均インフレ率が目標レンジの中央近辺で安定するのを確実にするため、追加の政策緩和(=利下げ)が必要になる可能性がある」と指摘、追加利下げを示唆しました。

4月18日に発表されたNZの1-3月期CPI(消費者物価指数)は、前年比+0.4%でした。RBNZのインフレ目標の下限である+1%を6四半期連続で下回ったものの、10-12月期の+0.1%から若干上昇率が高まりました。RBNZは3月の金融政策報告で、1-3月期のCPIは+0.4%との見通しを示しており、その通りの結果となりました。

NZ最大の輸出品である乳製品の国際価格の指標となるGDT価格指数は、前回会合以降、若干上昇しました。3月1日のオークションの646に対し、4月19日は666でした。

一方で、NZドル/米ドルが今週、約10か月ぶりの高値を記録するなど、前回3月の会合以降、NZドル高が進行しました。通貨高は物価への下押し圧力につながります。

そのため、市場では4月28日の会合について「据え置き」と「0.25%の利下げ」で見方が割れているようです。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、28日の会合で政策金利が据え置かれる確率が50.4%、0.25%の利下げが行われる確率が49.6%織り込まれています(21日時点)。

28日の会合ではNZドル高を背景に、0.25%の利下げが決定される可能性もあります。ただ、RBNZは今後状況が悪化した場合の利下げ余地をできるだけ残したいとみられ、また現在の政策金利は過去最低です。CPIやGDT価格指数の結果も踏まえると、政策金利は据え置かれそうです。市場の見方が割れているだけに、どちらの結果になっても、NZドルは変動するかもしれません。<八代>


【トルコリラ】 トルコ中銀、翌日物貸出金利を引き下げ

TCMB(トルコ中銀)は、チェティンカヤ新総裁(前副総裁)の就任初日である20日に政策会合を開催。主要政策金利である1週間物レポ金利と翌日物借入金利を据え置く一方、翌日物貸出金利を0.50%引き下げることを決定しました。

声明では、今回の決定について、「世界の(金融)市場のボラティリティの低下が継続し、世界の金融環境が改善した。こうした出来事に伴い、広い金利コリドーの必要性が低下した」と説明しました。

TCMBは3つある政策金利を最終的に一本化する「単純化」措置を3月に開始、今回と同様に翌日物貸出金利を引き下げました。

総裁が交代し(バシュチュ氏からチェティンカヤ氏へ)、TCMBの金融政策に変化があるのか注目されましたが、チェティンカヤ総裁バシュチュ前総裁の金融政策を継続した格好です。

金融市場が落ち着いた状態が続けば、TCMBは今後も小幅ずつ単純化措置を進めると考えられます。次回5月24日の政策会合でも、3月、4月と同様に、翌日物貸出金利を引き下げるかもしれません。5月の会合で、単純化措置の一環で翌日物貸出金利が一段と引き下げられるとの観測が市場で強まれば、トルコリラの上値を抑える要因になりそうです。<八代>


出所:Bloombergより作成




※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。

※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。

バックナンバー

  • 2018.08.17 更新トルコリラは流動性低下に要注意各通貨ペアの投資戦略については「Weekly投資戦略ガイド」をご参照ください。原則、毎月曜更新(次回は8月20日)です。◆ファンダメンタルズ◆<<相場環境>> …
  • 2018.08.10 更新トランプの戦争2各通貨ペアの投資戦略については「Weekly投資戦略ガイド」をご参照ください。原則、毎月曜更新(次回は8月13日)です。◆ファンダメンタルズ◆<<相場環境>> …
  • 2018.08.03 更新米中貿易摩擦と日米通商協議各通貨ペアの投資戦略については「Weekly投資戦略ガイド」をご参照ください。原則、毎月曜更新(次回は8月6日)です。◆ファンダメンタルズ◆<<相場環境>>  …
  • 2018.07.27 更新【マンスリー・アウトルック(2018/8)】「通商交渉」の夏― 2018年8月の為替相場展望 ― 《相場環境》8月は通商交渉の行方が相場材料になりそう。米中通商交渉(対中追加制裁関税)、NAFTA再交渉(米国とメキシコに…
  • 2018.07.20 更新自動車関税と主要国の金融政策各通貨ペアの投資戦略については「Weekly投資戦略ガイド」をご参照ください。原則、毎月曜更新(次回は7月23日)です。◆ファンダメンタルズ◆<<相場環境>> …

「市場調査部レポート」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。

そのほかのマーケット情報

ページトップへ