市場調査部レポート

2016/04/15 13:13ワシントンG20後の注目点は?

【概観】 ワシントンG20後の注目点は?

今週(4/8-14)は、円が米ドルやユーロを除くその他の通貨に対して軟化しました。円の全面高だった先週の流れが逆行した形です。日本の当局から「急激な円高」をけん制する発言が相次いだこと、週末にワシントンG20(財務相・中央銀行総裁会議)を控えて、様子見のムードが広がったことが背景だったようです。

主要通貨の対円騰落率(4/8-4/14)

出所:Bloombergより作成

水準訂正のための為替介入は困難!?
12日、麻生財務大臣は閣議後の会見で為替相場について、「一方的な偏った投機的な動きがあれば、必要な措置を取る」と語り、為替介入の可能性に言及しました。そして、「必要な措置はG20(財務大臣・中央銀行総裁会議)の合意に沿って行える」と付け加えました。

2月27日に閉幕した上海G20の声明では、「通貨の競争的な切り下げを回避する」と謳われています。一方で、「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを再確認する」ともしており、これが麻生発言の背景にあります。

「過度の変動や無秩序な動き」を抑えるための為替介入は可能という認識でしょう。ただ、現行程度の「円高」の水準を訂正するための介入は困難とみられます。12日に発表されたIMFの世界経済見通しに付随するドル円の購買力平価(PPP)は2016年で103.32円です。したがって、介入の条件の一つである「経済ファンダメンタルズから正当化できない円高」と判断するのは難しそうです。

ワシントンG20で力点が置かれるのは?
上海G20の声明では、「(成長、投資及び金融安定の強化の)目標を達成するため、我々は全ての政策手段‐金融、財政及び構造政策‐を個別にまた総合的に用いる」とも宣言されました。

15日に閉幕するワシントンG20で、前回の声明に盛り込まれた、(1)全ての政策手段を利用、(2)競争的な通貨切り下げを回避、(3)過度な変動や無秩序な動き(に対応)、のいずれに力点が置かれるでしょうか。(1)であれば、景気対策や金融緩和強化の期待の高まり(ユーロや円の売り材料)、(2)であれば、仕掛け的な円買いの動き、(3)であれば、ドル円は動きづらい展開、などがみられるかもしれません。

来週は、TCMB(トルコ中銀)とECBの金融政策会合が開かれます。TCMBが金融政策正常化の一環として、一部の政策関連金利を引き下げる可能性はありますが、それを除けばいずれも現状維持となりそうです。ただ、G20のお墨付きをもらったうえでの「サプライズの緩和」に注意が必要かもしれません。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【米ドル】 米景気は冴えないながら、賃金圧力は増大!?

3月の小売売上高は前月比-0.3%、自動車とガソリンを除いて同+0.1%と、いずれも市場予想より弱めでした。前年比でみれば、昨年終盤から今年初めにかけて伸びが高まった後にややペースダウンした格好です。「悪化」とは言えないまでも「冴えない」状況です。



3月のCPI(消費者物価)は前年比+0.9%と前月の+1.0%から鈍化、食料とエネルギーを除くCPIコアも前年比+2.3%と前月の+2.2%から鈍化しました。ただ、いずれも上昇トレンドの中での一服と見えなくもありません。FRBが重視しているPCE(個人消費支出)コアは2月時点で前年比+1.7%と、目標の2%に届かない状況が続いています。ただ、こちらも昨年半ばごろからジリジリと加速しているようにみえます。



13日に公表されたベージュブック(地区連銀経済報告)によれば、「景気は拡大を続けたが、そのペースは地区によりマチマチ」とのことでした。「個人消費は緩やかに増加」と総括されたものの、「ガソリン価格の低下や労働市場の改善が消費押し上げに貢献していない」と指摘する地区がありました。一方で、低迷が続く製造業に関しては、「ほとんどの地区で拡大した。2地区だけが縮小を報告した」とされており、やや明るさが出てきたのかもしれません。

ベージュブックで注目されたのは、多くの地区で人手不足が指摘されたことです。そして、それは小売業、製造業、建設業、ITなど多岐にわたっていました。その結果、1地区を除いて賃金の上昇が報告されており、いくつかの地区では「賃金上昇率が加速する兆候がある」とされました。

FOMCの参加者、とりわけ地区連銀総裁の間では、ディスインフレ(物価上昇率の鈍化)よりもインフレ(物価上昇率の加速)に対する懸念が強まっているように見受けられます。インフレにつながりかねない賃金上昇率の加速が、雇用統計その他で確認されれば、追加利上げの機運が高まるかもしれません。<西田>


【ユーロ】 4月理事会では政策据え置きの公算大

ECBの政策金利発表を21日に控え、ECB高官やユーロ圏諸国の関係者からの発言が増えています。

メルケル独首相は「ECBはインフレを目標水準に引き上げる責務を負っている」と述べ、ECBの金融緩和政策に対する相次ぐ批判に反論しました。ただ、ショイブレ独財務相が通信社のインタビューで「ECBの低金利政策がドイツの銀行や年金生活者に大きな問題を引き起こしている」と答えるなど、独政府内でも意見が分かれているようです。

コンスタンシオECB副総裁は「マイナス金利を政策手段として使うことには「明確な限界」がある」と述べるとともに、マイナス金利は「ユーロ圏全体で見ればプラス」と評価。マイナス金利導入の効果を見極める姿勢を示しました。

市場の想定を超える大規模な金融緩和策を決定した翌月でもあり、4月のECB理事会では追加緩和が見送られる公算が大きいと推測されます。<シニアアナリスト 山岸永幸>


【ポンド】 EU離脱派が増加も、絶対的多数を占めるに至らず

14日のMPC(英金融政策委員会)では、金融政策の据え置きが決定されました。市場の予想通りでした。同日公開された議事録では「Brexit(ブレクジット、英のEU離脱問題)」への懸念が改めて示されました。

12日に発表されたICM(調査会社)による世論調査では、EU離脱支持が45%、残留支持が42%と離脱支持が3ポイント上回っていることが分かりました。6日に発表された前回調査では、残留派が離脱派を1ポイント上回っていました。

ただ12%が未定と回答していることから、「一方が絶対的な多数を占めるまでに至っていない」(ICM関係者)とされ、Brexitを巡る不透明感は依然残り、ポンドの重石となりそうです。<山岸>


【カナダドル】 カナダ中銀は金利据え置きを決定

13日の会合で、BOC(カナダ中銀)は政策金利据え置きを決定しました。据え置きは6会合連続です。BOCは前回に続き、「インフレ動向をめぐるリスクは概ね均衡」「金融政策は適切」と述べました。

BOCは「世界的な経済成長は1月時点の予想より軟調になる」との見方を示し、ここもとのカナダドルの上昇が輸出の阻害要因になると指摘したことから、中銀がカナダドル安を目指していると市場では捉えられ、同日の米国市場では一時カナダドルが軟調となりました。ただ、ポロズBOC総裁は、そうした見方を否定しています。<山岸>


【豪ドル】 豪労働市場の改善継続を確認、豪ドルの下支え材料に

14日に発表された豪州の3月雇用統計は、失業率が5.7%と2月の5.8%から改善し、2013年9月以来の低水準。雇用者数が前月比2.61万人増と、昨年11月(7.27万人増)以来の強い伸びになりました。それぞれ市場予想の5.9%、1.70万人増に比べて良好な結果となりました。

ただ、2月の雇用者数は300人増から700人減へと下方修正されました。また、3月の内訳をみると、パートタイム就業者が3.49万人増加した一方、フルタイム就業者が0.88万人減少しました。

RBA(豪中銀)は政策金利の2.00%据え置きを続けていますが、その背景に「労働市場の改善」があります。4月5日の会合時の声明では、「今後、新たな情報に基づいて、インフレの先行きや昨年明確になった労働市場の改善が続いているかどうか判断することになる」とし、インフレの動向や国内の労働市場を注視する姿勢が示されました。

今回の雇用統計では、失業率が改善し、雇用者数はフルタイム就業者が減少したものの昨年11月以来の強い伸びとなりました。労働市場の改善が続いていることが改めて示されたことで、RBAが直ちに追加利下げに動く可能性は低いとみられます。政策金利は当面、2.00%に据え置かれそうです。

RBNZ(NZ中銀)が近い将来に利下げに踏み切るとの見方が根強くあるなか、RBAが政策金利を当面据え置くとみられることは、豪ドルの下支え材料となりそうです。<アナリスト 八代和也>


【NZドル】 18日のCPIに注目、金融政策への影響大か

来週は、18日にNZの1-3月期CPI(消費者物価指数)が発表され、19日に乳製品電子オークション(GDT)が開催されます。この結果が、4月28日の会合でのRBNZ(NZ中銀)の政策判断に影響を与える可能性があるため、注目です。

RBNZはインフレ目標を採用していることから、CPIが特に重要と言えるかもしれません。市場予想は前年比+0.4%となっており、昨年10-12月期の+0.1%から若干加速するものの、依然としてRBNZの目標の下限である+1%を下回るとみられています。

RBNZは前回3月10日の政策会合で0.25%の利下げに踏み切りました。その時の声明では、「将来の平均インフレ率が目標レンジの中央近辺で安定するのを確実にするため、追加の政策緩和(=利下げ)が必要になる可能性がある」と指摘、追加利下げを示唆しました。

同じく3月に公表した金融政策報告では、1-3月期のCPIは前年比+0.4%となり、その後10-12月期に目標レンジ内に戻り、2018年1-3月期に2%に達するとの見通しが示されました。

市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、RBNZが4月28日の会合で政策金利を2.25%に据え置く確率が53.8%、0.25%の利下げを決定する確率が46.2%織り込まれており、「据え置き」と「0.25%利下げ」で見方が分かれています(14日時点)。

CPIの結果を受けて、市場のRBNZの金融政策見通しが変化する可能性があります。CPIがRBNZの3月時点の見通しである前年比+0.4%を下回れば、4月の利下げ観測が一段と高まるかもしれません。その場合、NZドルは上値が重くなりそうです。<八代>


【トルコリラ】 20日に政策金利発表、翌日物貸出金利を引き下げか

トルコ政府は11日、19日に任期満了となるTCMB(トルコ中銀)のバシュチュ総裁の後任にチェティンカヤ副総裁を起用することを決定しました。これにより、TCMB総裁人事の不透明感が解消されるほか、副総裁が内部昇格することで金融政策の継続性が維持されるとみられます。

チェティンカヤ副総裁は、新総裁として20日の政策会合に臨みます。TCMBは前回3月24日の政策会合で、世界の金融市場のボラティリティ低下を理由に、3つの政策金利を最終的に一本化する「単純化」措置を開始。主要政策金利である1週間物レポ金利を7.50%、翌日物借入金利を7.25%に据え置く一方、翌日物貸出金利を10.75%から0.25%引き下げ、10.50%とすることを決定しました。

金融市場が比較的落ち着いていることや、国内のCPI上昇率の鈍化を背景に、TCMBは20日の会合で単純化措置を一段と進める可能性があります。前回と同様に翌日物貸出金利を引き下げるかもしれません。市場では、主要政策金利と翌日物借入金利を据え置き、翌日物貸出金利を0.50%引き下げるとの見方が有力です。そのため、翌日物貸出金利が引き下げられたとしても、幅が0.50%以下ならば、トルコリラ売りに反応しにくいかもしれません。<八代>


出所:Bloombergより作成




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